嫌な目にあったときや、嫉妬や劣等感を抱いたとき、あなたはどのような行動をとりますか?
「自分はダメな人間だ」「こんな目にあうのは自分のせいだ」などと自分を責めてしまうでしょうか。それとも、「あの人がいなくなればいいのに……」と相手の不幸を願ってしまうでしょうか。
このような嫉妬や不満、劣等感は、コントロールすることが大切です。今回は、芸人の山里亮太さんも実践していた、悪い感情をプラスのエネルギーに変える「嫌だったことメモ」をご紹介しましょう。
嫉妬心や劣等感は捉え方次第で、プラスに働く
他人と自分を比べて劣等感を抱いてしまうのは、誰にでも起こりうること。そして、これは必ずしも悪いことではありません。
嫉妬には、非生産的でネガティブな感情である「エンビー型」と、生産的でポジティブな感情である「ジェラシー型」があります。
エンビー型は、マイナスの感情です。たとえば、職場で自分よりも評価されているAさんに嫉妬したとしましょう。このとき、「Aさんなんていなくなればいいのに」と願い、足を引っ張りたくなるような嫉妬はエンビー型に当てはまります。この嫉妬は非生産的で、自分のためになりません。
一方、ジェラシー型は、「Aさんより結果を出せるように頑張ろう」のような、生産的でポジティブな感情を指します。ジェラシー型の嫉妬は、悔しい気持ちをきっかけに、自分に足りないものに気づけたり、スキルを磨くモチベーションが上がったりと、プラスの作用を与えてくれるのです。
そして、これからご紹介する「嫌だったことメモ」は、エンビー型に陥りそうな嫉妬心を客観視し、ジェラシー型に変換させるポイントとなります。
南キャン山里さんが「復讐心」をプラスに変えた方法
今では大人気芸人の南海キャンディーズ山里亮太さんも、かつては劣等感の塊だったそう。「何者かになりたい」という漠然とした思いは抱えていたものの、「これぞ」という自分の強みも見当たらず、自分の凡才さに嫌気が差していたのだとか。
芸能事務所・吉本興行の養成所(NSC)に通っていた頃も、同期の芸人キングコングが在学中にプロのコンテストで賞を獲るなど活躍する姿に嫉妬し、「自分は芸人に向いていないのではないか?」と悩んだようです。
そんな山里さんが自分を鼓舞し、努力を続けられたコツが「嫌だったことをノートに書き留める習慣」だったのだとか。嫌なことがあったときや、劣等感に苛まれたときは、「『ムカつく奴』を見返すためにはどうするべきか」を考えて書き出すことによって、イライラの感情を収め、さらにモチベーションを高めていたそう。
山里さんは、この習慣について次のように述べています。
「思いを書き込んだら、それで悩むのは終了です。すぐに、そいつをぶっ潰すためにはどういう努力が必要なのかを考える。そうやって勝利のための公式を作っていくと、ただのストレスを、自分が頑張るための燃料に変えることができます。例えば、『あいつを潰すために、面白いネタを10個考えるまで寝てはいけない』と自分自身に課す。そうするとあんなクソ野郎でも、ネタを考えるための原動力にはなるんです。(後略)
(引用元:文春オンライン|蒼井優と結婚、レギュラーは16本……山里亮太が明かす“成功に導くノート術”)
「時間」を大切にしている山里さんは、相手に対して不快な感情を抱き続けると「時間を奪われた」と感じるそう。そのため、ノートに恨みつらみを書き込むことで、気持ちを切り替え、嫉妬や劣等感を自分にとってプラスのエネルギーに変えているのだとか。
ちなみに、山里さんの行なっていた習慣のように、マイナスの感情をノートや紙に書きだす行為は、科学的に効果が証明されています。米国の心理学者であるジェームス・W・ペネベイカー氏の研究によると、心の内にこもったネガティブな感情を筆記し、表に出すことはセラピー効果、つまり感情を落ち着かせる効果があるのだそう。嫌なことがあったときに紙に書き出す行為は、「ライティングセラピー」とも呼ばれ、臨床心理にも使われている方法です。
負の感情は、書き出すことで頭の中に留まることを防ぎます。また、紙に書き出すことで客観視できるようになり、解決の糸口が見つかる可能性も高まるのです。
「嫌だったことメモ」の書き方
では、山里さんの「嫌だったことメモ」の手法を効果的に取り入れるには、どのようなメモの取り方をすればよいのでしょうか?
人材育成の支援を行なう株式会社Bodytune-Partners代表取締役社長・阿部 George 雅行氏によると、ストレスを感じたときに書き出すべきことは、以下の3点。
- ストレスに対し、自分がどう感じているかを書く
ストレスを受けたときの自分の心や体の状態を書き出します。感情、心拍や緊張などの身体の状態まで、細かく書くことがポイントです。 - ストレスの原因を書く
なぜストレスを感じたのか、具体的に書き出します。出来事だけでなく、「なぜそれがストレスになったのか」を詳しく分析し言語化しましょう。 - ストレスを回避、解決する方法を書く
どうすればストレスを解消することができるか考え、今後の目標や作業などにつなげます。
実際にやってみた
筆者も、「嫌だったことメモ」を実践してみました。
実際に「嫌だったことメモ」を書いてみて気づいたのは、書くという行為でつらさが軽減したことです。
つらい経験は、つい何度も頭の中で考えてしまっていたのですが、書くことで頭の中に留めておく必要がなくなったように思います。それと同時に、ノートの上で文章として見つめてみると、「自分が思っているよりも大したことのない出来事なんだな」と冷静な気持ちになれました。紙の上に書き出すことで「感情的」な状態から「客観的」な状態にシフトできた気がします。
さらに「裏切られた相手に腹を立てるよりも、結果を出して見返したい」という明確な目標が見出せました。目標ができて、そのための行動をリスト化すると、モチベーションも上がってきます。自分にとってつらかった出来事が「嫌だったことメモ」によってポジティブな感情に変換され、心から良かったと思えました。
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つらい出来事に落ち込んでしまうのは誰にでもあること。それを乗り越えてプラスのエネルギーに変えるのか、へこんだまま腐ってしまうのかは、その後の行動で決まります。
ぜひ、「嫌だったことメモ」を利用して、山里さんのように、劣等感・嫉妬などの負の感情をポジティブな目標や作業に変換させてください。
(参考)
山里亮太(2018), 『天才はあきらめた』, 朝日新聞出版.
B-plus| 心理学で仕事に強くなる vol.3 後輩に嫉妬を感じてしまうとき
日経ビジネス|手を動かし、「書く瞑想」をしよう
文春オンライン|蒼井優と結婚、レギュラーは16本……山里亮太が明かす“成功に導くノート術”
ダ・ヴィンチニュース|“復讐”をエネルギーにすると、嫌いなやつに会うことが“幸せの布石”になる――南海キャンディーズ・山里亮太インタビュー
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。