感情を把握していないリーダーが、いいチームをつくれない必然。「感情を知る力」の高め方

池照佳代さん「自分とメンバーの感情を知る方法」01

リーダーの仕事はじつに多岐に渡ります。なかでも最大の仕事は、「いいチームをつくる」ことに尽きるでしょう。仕事におけるチームのミッションは、求められる成果を挙げることであり、その目的達成のためのいいチームをつくることがリーダーのミッションです。

では、どうすればいいチームをつくれるのでしょうか。著書『感情マネジメント 自分とチームの「気持ち」を知り最高の成果を生みだす』(ダイヤモンド社)を上梓した池照佳代(いけてる・かよ)さんは、感情に着目することがその鍵だと言います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

チームビルディングのための「TEAM」

ふたり以上の人間が力を合わせ、なんらかの課題を解決する、あるいは価値を創造するといった共通の目的達成のために構成されるのが「チーム」です。では、そのチームが成果を挙げるために、リーダーが実践すべきこととはなんでしょうか。私は、その要素の頭文字をとって、そのままズバリTEAMというものを提唱しています。

【リーダーが実践すべき「TEAM」】
T:Trust(信頼をつくる)
E:Empathy(共感をつくる)
A:Assertive(関係をつくる)
M:Motivate(やる気をつくる)

これら「TEAM」を実践することは、チームが成果を挙げるために数多くのメリットをもたらします。信頼をつくることができれば、メンバーからより多くの情報を引き出せたり、ミスやトラブルの深刻化を防げたりといったこともできるでしょう。共感をつくることができれば、互いの共通点を通じて関係性を強化できたり、メンバーが納得してそれぞれの仕事に臨めたりします。

ただ、これらがリーダーにとって重要だということは、勉強熱心なビジネスパーソンにとっては目新しいものではありません。共感性を発揮してメンバーを信頼し、やる気を醸成して関係づくりをするのは、チームづくりにおいては「当たり前」です。リーダーの方々はその重要性をよく理解しており、そのためにどう「行動」したらよいかも認識しています。

池照佳代さん「自分とメンバーの感情を知る方法」02

感情をないがしろにして、いいチームはつくれない

しかし、世のリーダーの多くに抜け落ちているものがあります。それは、自分の感情に意識を向けて自分自身について深く理解する「自己の感情理解」であり、セルフアウェアネスという力です。リーダーの多くが、「もっとチームをよくしたい」「もっと部下を成長させたい」というふうに、他者にばかり意識を向けがちなのです。

でも、自分の感情や特性といったものをきちんと把握できていなければ、「TEAM」を実践することも、その実践のために重要である「傾聴」することも難しくなります

世のなかには、私のように話量が多い人と、逆にもともと静かに相手の話に耳を傾けられる人がいます。傾聴が得意なのは、当然ながら後者です。ただ、だからといって前者の人が無理をする必要もありません。無理をして自分に合わないスタイルで傾聴しようとしても、長続きしないからです。

そこで、セルフアウェアネスを発揮して自分の感情や特性を知り、それに合ったスタイルを見つければいいだけのこと。話量が多いことがもち味なら、量は変えず、話の区切りや間をとるという工夫をすることも可能です。自分の特性やもち味にふたをせず、表明しながら活かす方法を選択していけばよいのです。

そして、そのセルフアウェアネスの力を高めるために、自分の「感情を知る力」を高めていきましょう。また、「TEAM」をきちんと実践するためにも、メンバーの「感情を知る力」が重要になります。チーム内で信頼をつくるにも、共感や関係ややる気をつくるにも、そこには必ずメンバーそれぞれの感情が絡んでくるからです。事象はひとつでも「感情」は人それぞれ、「感情」を理解することが「個」を理解することにつながります。

人間は「感情の生き物」とも言われます。感情をないがしろにして、いいチームをつくることはできないのです。

池照佳代さん「自分とメンバーの感情を知る方法」03

「感情を知る力」を高めてくれる「ムードメーター」

「感情を知る」力を磨くために活用してほしいのが、ムードメーターです。これは、アメリカのイェール大学の感情知性センターという研究機関が開発したもので、日本語は弊社が作成しました。

【「感情を知る力」を高める「ムードメーター」】

池照佳代さん「自分とメンバーの感情を知る方法」04

※画像をクリックし、拡大表示してご覧ください。

縦軸が身体のエネルギーレベル、横軸が感情の良し悪しを表すフィーリングレベルを示します。「昨日は仕事が早く終わってしっかり休めたからエネルギーレベルは10点満点だけど、家族と喧嘩しちゃったからフィーリングレベルは4点」といった具合に、どちらも自分の主観で採点します。

この例なら、それぞれが交わるところには「Jittery(神経質)」とあります。これは、その点数の感情状態に名前をつけたもので、自分の感情状態の目安として使います。この言葉で決めつける必要はなく、自分で言語化できるのならその言葉を使えばよいでしょう。このように目安として例が示されることで、複雑で多種多様な感情を自分で認識し、感情に注意を向けることを意識づけてくれます。自分の「感情を知る力」を高める助けになってくれるでしょう。

そして、チームでミーティングを行なう際には、このムードメーターをミーティングのスタート時点で活用し、メンバー全員が自分の感情状態とその理由を伝えるようにしてみてください。先に、「TEAM」をきちんと実践するためにもメンバーの「感情を知る」力が重要だと述べましたが、エスパーでもない限り他人の感情を推し量ることは簡単ではありません。そうであるなら、本人に発してもらうことが最も手っとり早い方法です。

メンバーが自分自身の感情や心身の状態を自ら話し、それらを知ることができれば、それぞれに適したかたちで「TEAM」を実践することができます。同じように気分が沈んでいるように見える人も、「いまの仕事がおもしろくないと思っている」のか、それとも「家族の健康面に気がかりなことがある」のかで、かけるべき言葉や行なうべき働きかけはまったく違ってくるのですから。

池照佳代さん「自分とメンバーの感情を知る方法」05

【池照佳代さん ほかのインタビュー記事はこちら】
優れたリーダーになりたいなら “感情” を軽視してはいけない。いまこそ高めるべき「EQ」とは
いまの状態を「100の感情」から選び言語化する習慣で、パフォーマンスが最大化する理由

【プロフィール】
池照佳代(いけてる・かよ)
1967年、台湾生まれ。株式会社アイズプラス代表取締役。日本で育ち、高校卒業後に米国でTESL(Teaching English as a Second Language)を学び帰国。ECC外語学院で講師・学校運営など経験後に、マスターフーズ(現マースジャパン)に人事職で入社後、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザー、日本ポールで人事職を中心に担当する。2015年、法政大学経営大学院にて経営学修士(MBA)を取得。子育てと仕事の両立を目指し、2016年、大学院在学時にアイズプラス社を設立。IC(インディペンデント・コントラクター)として独立を経て、現在は株式会社化してパートナーシップによる協働プロジェクトで企業の人事、経営課題の解決に取り組んでいる。組織向けにコンサルティングを提供するなかで、EQ(感情知性)の重要性に気づき、以降、制度設計、人材・組織開発、キャリアデザインなどにEQを取り入れたプログラムを独自に構築し、提供を開始する。2019年、日本初のEQオウンドメディア「EQ+LAB.」を立ち上げ、国内外のEQ関係者を巻き込みながら「心豊かなポジティブチェンジの場と機会づくり」に取り組んでいる。山野美容芸術短期大学特任教授も務める。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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