「思うように仕事が進まず、あまりにイライラしてつい同僚に当たってしまった」
「業務量の多さに頭がパンク状態。焦りすぎてミスを連発した」
……など、落ち着きを失って失敗した経験はありませんか?
感情や思考が混乱して冷静でいられなくなったときは、今回紹介する対処法を試してみてください。パターン別に9個ご紹介します。ありがちなシチュエーションの例も添えましたので、ご自分に当てはまるものから読んでみてくださいね。
【1】カッとして冷静さを失ったとき
仕事相手から失礼なことを言われた。何度も指導しているのに、部下がまた同じミスをした。そのせいで、頭に血がのぼり、怒りに任せて乱暴なことを言ってしまった!
こんな経験がある人は、アンガーマネジメントコンサルタントの安藤俊介氏がすすめる、カッとしたときの対処法を知っておきましょう。
1.「6秒」待つ
怒りの感情にうまく対処するには、「反射的に行動しない」ことが最重要だと安藤氏。そこで、怒りを感じたときは、まず6秒待つといいそうです。
アンガーマネジメントで「6秒ルール」と呼ばれるこの方法には、脳の仕組みが関係しています。脳研究の第一人者・柿木隆介氏によると、感情をつかさどる大脳辺縁系で怒りが発生してから、理性をつかさどる前頭葉が働き始めるまでには、3〜5秒かかるのだそう。前頭葉が働くまで待てば、いくらか冷静さを取り戻すことができます。
2.「怒りを点数化」する
6秒待つあいだ、平穏な状態を0、人生最大の怒りを10として、10段階で怒りに点数をつけることを安藤氏はすすめます。
怒りを客観視すれば、「いまのは3点だから怒らなくていいかも」「7点なのできちんと相手に言って解決したほうがいいな」と、その後の行動を冷静に判断できるとのこと。
3. いったん「その場を離れる」
6秒たっても怒りが鎮まらない場合は、一度その場を離れましょう。「トイレへ行く」「部屋の外へ出る」などして、怒りの対象から気をそらせば冷静になれると安藤氏は言います。
3つの方法で怒りの感情に振り回されなくなれば、冷静さを失うことは減るはずです。
【2】頭がパンクして冷静さを失ったとき
重要なプレゼンで頭が真っ白になった。
多すぎるタスクを前に、何から手をつければいいかわからなくなった……!
こういうことがよくある人は、頭がパンクしたときに効果的な対処法を試してみましょう。公認心理師の川島達史氏が、以下の方法を提案しています。
1.「16秒呼吸法」を実践する
深呼吸をすると、混乱が落ち着いて冷静に行動できるそうです。手順は以下のとおり。
- 鼻から息を5秒吸う。腹式呼吸を意識する。
- 息を3秒止める。体が空気で満たされているのをイメージする。
- 8秒かけて口から息を吐く。
実際、敬和学園大学の研究(2010年)により、深呼吸はストレスを低下させ、気持ちを落ち着かせるのに役立つと示されているとのこと。
2.「ポジティブな状態」をイメージする
川島氏いわく、人は「失敗してはならない」と考えるときほど、冷静さを失うもの。緊張して落ち着かないときは、以下の例のようにポジティブな状態をイメージするといいそうです。
「プレゼンをミスしたら格好悪い」
→「格好よくなくていいので、自分なりにやろう」
「言葉に詰まったらどうしよう」
→「スムーズに話せなくても、要点が伝われば合格だ」
失敗イメージからポジティブイメージへシフトすれば、落ち着きを取り戻せますよ。
3.「優先順位」をつけてから取り組む
川島氏によると、タスクが山積みで頭がパンクしてしまうのは、自身の情報処理能力の限界にまで来ているから。
こういうときほど、「これだけは絶対やる」「これは早く終わらなくてもなんとかなる」と優先順位をつけて、ひとつひとつの作業を丁寧に進めるといいそうです。この手法は、川島氏が実際にカウンセリングで使っているものなのだとか。「ほかの人に任せる」と決めてタスクを手放すのもひとつの手です。
冷静でいられそうにないときは、以上の3つを試してみてください。
【3】ネガティブになって冷静さを失ったとき
そんなあなたは、一流の成功者がやっているネガティブになったときの対処法で負のループから抜け出しましょう。
上場企業社長、世界企業CEO、医者、弁護士など3,000人以上のVIP顧客に対応した経験をもつビジネス書作家の後田良輔氏によると、彼らは以下のようにしてネガティブ思考を断っているそうです。
1. 現状を書き出して「見える化」する
成功者の多くは壁にぶつかったとき、事実や課題をすべて紙に書き出し現状を「見える化」するそう。状況を俯瞰しないと、「失敗した」「嫌われた」といった出来事の一面にとらわれるばかりで、冷静に問題解決できないからです。
「あの操作が今日のミスにつながった」のような感じで事実関係を洗いざらい書き出し、すべきことや優先順位などを客観的に検討する――これが、冷静に考えるコツなのです。
2.「〇〇できるようになるにはどうすればよいか?」と考える
後田氏いわく、「〇〇できない」とネガティブになったら、「〇〇できるようになるにはどうすればよいか?」と自問するとよいとのこと。成功者たちは、こうやってネガティブ思考をうまく “利用” しているのだそう。
「結果を出すにはどうすればいいか?」「効率を上げるにはどうすればいいか?」と自分に問いかけるだけで、冷静な思考へと切り替えられるはずです。
3. 「できたこと」にフォーカスする
たとえ失敗したときでも、「できたこと・わかったこと」を探す――これも、成功者流・ネガティブ思考のコントロール法。
後田氏いわく、失敗の裏には必ず “改善点への気づき” が存在するとのこと。たとえば、商談が決裂しても「相手は違うものを求めていることがわかった」ととらえれば、次につなげることができます。
ネガティブ思考のせいで冷静さを失いがちな人には、上記の方法がきっと参考になるはずです。
冷静さを失わないための予防法
最後に、冷静さを失わないための予防法もお伝えします。
カッとしないためには……許容範囲を広げる
安藤氏いわく、「〜すべき」というこだわりが強い人ほど、怒りが生まれやすいそう。強すぎるこだわりを緩めるには、「条件つきで許容できる」範囲を少しずつ広げていくといいとのこと。
たとえば、あなたが「連絡はまめにとりたい」と考えていて、連絡の遅い人にイライラしやすいとしましょう。その場合、以下のように許容範囲を3つに分けます。
問題なく許容できる:返信がその日のうちに来る
条件つきで許容できる:返信が3日以内に来る
許容できない:返信がいつまでも来ない
このうち「条件つきで許容できる」範囲を、「返信が5日以内に来る」「催促すれば、返信が1週間以内に来る」のように少しずつ広げていけば、怒りが湧きにくくなるのです。
頭がパンクしないためには……ゆとりのある計画を立てる
川島氏によれば、人は時間がないときほど混乱しやすいことが、心理学の研究でわかっているとのこと。以下の点を押さえてゆとりのある計画を立てると、冷静さを保てるそうです。
- 納期よりも早く作業が終わるように予定を組む
- 時間ギリギリで行動しない。理想は「15分前行動」
- いざというとき誰に何を任せるか、考えておく
最初から充分な時間を確保しておくと、パンク状態を防げますよ。
ネガティブにならないためには……「主人公ならどうするか?」と考える
後田氏は、「バイタリティあふれる成功者たちの習慣」のひとつに、「逆境は主人公の特権」という考え方を挙げています。
映画の主人公が逆境をはねのけて大成功を収めるように、逆境は主人公にしか味わえないもの。だからこそ、仕事で難題にぶつかったときは「映画の主人公だったらどうするか?」と考えれば、困難を前向きに乗り越えられるそうですよ。
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以上、冷静に考えられなくなったときの対処法と、冷静さを失わないための予防法をご紹介しました。これでもう、仕事で何があっても、あなたはいつでも冷静さを保てるはずです。
【ライタープロフィール】
梁木 みのり
大学では小説創作を学び、第55回文藝賞で最終候補となった経験もある。創作の分野のみでは学べない「わかりやすい」「読みやすい」文章の書き方を、STUDY HACKERでの執筆を通じて習得。文章術に関する記事を得意とし、多く手がけている。
(参考)
Like U|アンガーマネジメントとは?「6秒ルール」などの意味や、診断方法を解説
日経Gooday|脳科学から「怒り」のメカニズムに迫る! カチンと来ても6秒待つと怒りが鎮まるワケ
Direct Communication|冷静沈着になる方法
敬和学園大学機関リポジトリ|深呼吸の健康心理学的考察
リクナビNEXTジャーナル|ネガティブ思考はこう断ち切る!成功者に学ぶネガティブ思考の切り替え方とは?
リクナビNEXTジャーナル|今からでもマネしたい!バイタリティあふれる人に共通する「4つの習慣」とは?