脳科学者が教える、思うがままに「やる気」を出す方法。「快楽中枢」と「恐怖中枢」を活用せよ!

生塩研一先生インタビュー「思うがままにやる気を出す方法」01

たとえ好きなことを仕事にできている人でも、時にはどうしても「やる気」が湧かない面倒な作業に取り組まなければならないこともあるものです。「やる気スイッチ」という言葉もありますが、脳科学の分野においてやる気とはどんなものだと見られているのでしょうか。

脳科学者の生塩研一(おしお・けんいち)先生は、「やる気を出すためには、脳の『快楽中枢』と『恐怖中枢』に注目すべき」だと言います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/塚原孝顕

生命維持のための重要なふたつのシステム

「快楽中枢」と「恐怖中枢」は、いずれも自分の生命を維持するために生存戦略として備わっている脳領域です。

人間だけでなく動物の行動原理は、快楽を求めるためか、危険を回避するためかのふたつに分けられます。空腹時になにかを食べると快楽を感じるというように、快楽を求めて行動することで生命やその種が維持されるのです。快楽を感じるとき、「報酬系」と呼ばれる脳領域が活性化します。この報酬系を、快楽中枢と呼ぶのです。

一方、「扁桃体」と呼ばれる脳領域などが恐怖中枢です。もし山でクマに襲われたら、命の危険を感じますよね? このときに活性化し、逃げるという行動をさせることで生命の維持につなげているものが恐怖中枢なのです。

もし恐怖中枢になんらかの障害が起きると、本来なら怖がるべき対象に恐怖を感じなくなります。サルは本能的にヘビを怖がるので、本来ならたとえゴム製のおもちゃのヘビだとしても、目の前に放り投げられると飛び跳ねて逃げ出します。しかし、恐怖中枢に障害が起きたサルだと、逃げないだけでなく、つかんでおもちゃのヘビをかじり始めたという研究報告もあります。

生塩研一先生インタビュー「思うがままにやる気を出す方法」02

やる気は、勝手に湧いてくるものではない

そして、この快楽中枢と恐怖中枢は、生命維持だけでなく「やる気」ともつながりがあることもわかっています。

みなさんの好きなことはどんなことですか? 自分が快楽を感じる好きなことであれば、やる気があるかどうかなど考えるまでもなく取り組めますよね。一方で、恐怖も行動のためのモチベーションとなります。「期限までに書類を提出しないとまずいことになる……」と考えて仕事に対してやる気が出てくるといった経験は、多くの社会人にあるでしょう。

「そもそもやる気なんてものはない」とする見方もあるようですが、脳科学においてはやる気に関する脳領域が見つかっています。「大脳基底核」といわれる部分などがそうですが、そういった脳領域が「やる気中枢」と呼ばれています。やる気中枢は、なにかの課題に頑張って取り組んでいるようなときに活性化していて、もしそのやる気中枢を壊してしまうと、課題にだらだらと取り組むようになります。

脳内の情報処理の流れを見ると、やる気中枢は「前頭前野」という部分からの情報を受ける位置にあります。前頭前野とは、「脳の司令部」とも呼ばれていて、目的や目標をイメージする、思考するといった人間として重要で高度な活動をつかさどる部分です。

つまり、やる気というものは勝手に湧いてくるものではなく、やるべきことを前頭前野でイメージしたうえで出てくるものなのです。ですから、勉強や仕事などをすることの意義やメリットを明確にイメージすると、やる気が湧いてきて取り組みやすくなります。

生塩研一先生インタビュー「思うがままにやる気を出す方法」03

恐怖中枢については取り扱いに要注意

ただ、前頭前野は、残念ながら「飽きっぽい」という性質ももっています。そこで、快楽中枢と恐怖中枢の出番です。私たちの行動原理の根幹にある快楽中枢と恐怖中枢をやる気中枢にリンクさせることで活性化し、さまざまなことにやる気を出して取り組めるようになります。

たとえば、「自分にご褒美をあげる」のは、快楽中枢とやる気中枢をリンクさせる代表的な方法です。なかなかやる気が出ない仕事でも、「これが終わったら大好きなケーキを食べよう」「ビールを飲もう」と思うだけで、頑張れるものです。

また、「小さいゴールに分割する」のも典型的な方法です。目標ややるべき仕事が大きなものであればあるほど、その過程に「小さいゴール」をいくつも設定しましょう。そうすることで、「ここまでできた!」という小さい達成感を何度も得ることになり、それが快楽となってやる気を維持することができます。

一方の恐怖中枢とやる気中枢をリンクさせる方法としては、先の書類作成のケースにも言えますが、「締め切り効果を活用する」という方法が最も典型的なものでしょう。子どもの頃の夏休みの宿題ではありませんが、締め切り間近になると不思議とやる気が出てくるものです。

この恐怖中枢の働きを活かして、誰かが設定した締め切りではなく、「この仕事は絶対にいつまでに終える!」と自分で決めた締め切りを厳守するよう心がけてみましょう。自ら恐怖中枢を刺激することとなり、本来の締め切りより前倒しで仕事を進められるようになります。

ただ、恐怖中枢の扱いについては注意も必要です。「締め切りを守らないとまずいことになる……」というふうに恐怖中枢ばかりを刺激していると、それだけ多くのストレスを感じてしまうからです。

ストレスは、脳の働きを妨げる大きな要因です。意識的に対応できる脳の情報処理リソースは有限なので、心配事やストレスが気になって意識に上ってくると、取り組むべきことに割けるリソースが少なくなってしまい、結果的に処理が遅くなるのです。そういう意味では、普段から心配事やストレスは棚上げせずにできる限り解消していくことも大切です。

生塩研一先生インタビュー「思うがままにやる気を出す方法」04

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【プロフィール】
生塩研一(おしお・けんいち)
1969年生まれ、広島県出身。博士(理学)。広島大学大学院博士課程修了後、慶應義塾大学理工学部助手を経て、現在、近畿大学医学部講師。実験動物を使って認知機能の脳内メカニズムを解明する実験的研究に従事。脳科学に関する情報をメルマガやブログ、Twitterなどで発信。一般向けのセミナーや企業研修といった活動も精力的に行っている。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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