「失敗しても評価が高い人」が失敗したときにしている大切なこと

飯野謙次さんインタビュー「失敗しても評価が高い人がしていること」01

ビジネスでもプライベートでも、わざわざ失敗したいという人はいないでしょう。でも、失敗は起きてしまうもの。なるべく失敗のない人生を歩んでいくにはどうすればいいのでしょうか

著書『ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?』(日経BP)が注目を集める、NPO失敗学会副会長の飯野謙次(いいの・けんじ)先生にアドバイスをしてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

108の事故事例をベースにできあがった「失敗学」

「失敗学」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? じつは、この言葉ができたのはほんの少し前で、2000年のことです。その年、私が副会長を務めるNPO失敗学会の会長であり、福島原発事故における政府の事故調査・検証委員会の委員長も務められた畑村洋太郎先生が出された著書『失敗学のすすめ』(講談社)が非常に高い評価を得て、失敗学は広まりました。

失敗学のベースとなったのは、1996年に畑村先生が出された著書『続々・実際の設計 失敗に学ぶ』(日刊工業新聞社)です。この本では、工業界における108件の事故を取り上げ、それぞれの事故原因を分析しています。その狙いは、事故原因や予防策を共有することで、同じ事故を繰り返さないようにすることでした。

そもそも、この分析が必要だったことの背景には、日本人のあまりよくない国民性があります。

海外では、事故や不祥事が起きれば正直に報告するという考え方が浸透しています。でも、かつての日本の企業は、どちらかというと隠蔽しようとする傾向が強かった。ですから、日本では畑村先生の考え方が新しかったのです。

いまでは、日本でもようやく、事故や不祥事を隠蔽する風潮も徐々になくなりつつあるように思います。

そして、失敗から学び、次なる失敗を防ごうという失敗学は、より多方面に広まりつつあります。主に工学系の人が集まって誕生した失敗学会ですが、事故、すなわち失敗が起きるのは、工業界に限ったことではありませんよね。畑村先生の考え方に賛同し失敗学の有用性に気づいた人たちが、医療界や教育界、金融界など、さまざまな分野からさらに失敗学会に集まりました。いま私たちは、企業や社会の発展に寄与するために、失敗についての講演活動を続けています。

飯野謙次さんインタビュー「失敗しても評価が高い人がしていること」02

失敗する人の典型は、「人の痛みがわからない」人

さて、みなさんにまずお伝えしたいのは、絶対に失敗しないということはあり得ないということです。どんなに注意をしていても、失敗は起きます。でも、そこから何かを学び、同じ失敗を繰り返さないことが大切。失敗をしたら、まずは「痛い思い」をすることが大事になります。というのも、その痛い思いによって、どうすれば同じ失敗を繰り返さないようにできるかと考えるからです。

そういう点では、人としての感受性を磨いておくことが大事にもなるでしょう。ひとことで失敗と言ってもいろいろなケースがありますが、失敗をしてしまう人の典型は、人の痛みがわからない人です。失敗をしても痛い思いを感じない、誰かを傷つけるような失敗をしても何も感じないようであれば、改善策を考えようとは思わないからです。

しかし、すでに大人になっているみなさんなら、性格を変えるのはそう簡単ではないでしょう。もし、みなさんの感受性に問題があっても、できることはそう多くないかもしれません。誰か目上の人に諭してもらうチャンスを待つ。あるいは、ざっくばらんに話せるという意味で、家族や本当に仲のいい友人に、「もし、私の性格に問題があるように感じたら、遠慮せずに言ってほしい」と伝えてもいいと思います。

飯野謙次さんインタビュー「失敗しても評価が高い人がしていること」03

他人の失敗の事例も自分のなかに蓄積していく

それから、失敗をしたときには、痛い思いをすることの一方で、「自分が悪い」と思わないことも大切です。失敗が起きたのは、「失敗しない仕組みができていなかっただけ」のこと。そう考えることで冷静に対処できるようになります。失敗は失敗と認めながらも、自分が悪いとは思わないようにしましょう。

では、どうすれば失敗せず、成功する仕組みをつくれるのでしょうか。これについては、ケース・バイ・ケースとしか言いようがありません。ただ、どんなケースであっても、成功する仕組みをつくるには創造性が必要とされることは確かです

ですから、日頃から創造性を身につけるための行動をしておくことが重要となります。そういった類いの本を読んでもいいですし、アートに触れる機会を増やしてもいいでしょう。イメージしやすいことかもしれませんが、創造性とアートには強い関連性があるからです。

また、日頃からできることでいえば、自分だけではなく他人の失敗からも学ぼうとすることが大切です。まわりの誰かが失敗をした。そのとき、他人事ではなく自分事として見て、自分ならどうするか、どうすればその人と同じ失敗をしないで済むかと常に考える。そういう癖をつけて、失敗とその予防策の事例を自分のなかに蓄積していく。そういう人が、最終的には失敗をしない人になっていくのです。

とは言っても、こういう私だって大きな失敗をしています。予定が立て込んでいて、ダブルブッキングをしたり大切な約束を忘れたり……。そこで、同じ失敗を繰り返さないため、わたしは2004年頃にカレンダーアプリをつくりました。約束の前になれば、設定した時刻にリマインダーが届く仕組みです。いまでいえば、まさにGoogleカレンダーのようなものです。ところが、私のアプリは自分用に個人的につくったもの。いま思えば、あのときに販売しておけばよかったですね(笑)。

飯野謙次さんインタビュー「失敗しても評価が高い人がしていること」04

【飯野謙次さん ほかのインタビュー記事はこちら】
もう同じ過ちを繰り返さない! 原因分析が捗る「失敗まんだら」ってどんなもの?
なぜかミスが多い人は “この4つ” に原因がある。

【プロフィール】
飯野謙次(いいの・けんじ)
1959年12月9日生まれ、大阪府出身。NPO失敗学会副会長。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了後、General Electric原子力発電部門へ入社。その後、スタンフォード大学で機械工学・情報工学博士号を取得し、Ricoh Corp.へ入社。2000年、SYDROSELP設立し、ゼネラルパートナーに就任。2002年、NPO失敗学会副会長となる。企業や社会の発展に寄与するために、マネジメント面も踏まえながら失敗についての講演活動を続けている。『思考停止する職場 同じ過ちを繰り返す原因、すべてを解決するしかけ』(大和書房)、『仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?』(文響社)、『設計の科学 創造設計思考法 失敗知識のウェブ脳モデル』(養賢堂)、『設計の科学 チームづくりの数学 ユング分析心理学とプラトニック変換』(養賢堂)、『「失敗をゼロにする」のウソ』(ソフトバンククリエイティブ)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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