「自分会議」実施マニュアル。思考力を鍛え、意見を言える人間になろう!

自分会議とは1

成功した「一流人」の多くは、仕事や日常生活から離れ、静かに自分自身と向き合って思考に集中する――いわゆる「自分会議」の習慣を持っていることをご存じですか?

たとえば、マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏の「Think Week(考える週)」。ゲイツ氏が年に2回、日常の業務から完全に離れ、静かな別荘で1週間ほど自分と向き合い、仕事や人生に関わる重要な決断をする時間を確保していることは、よく知られています。

今回は、未来について重要な判断を下したり、優れたアイデアを生んだりしなければならないのに、考えがまとまらない……とお悩みのビジネスパーソンや学生の皆さんに、自分の考えをスッキリ整理できて、アウトプットにも有効な「自分会議」の方法をご紹介します。自分の部屋で、10分もあればできる簡単なやり方もあるので、ぜひ試してみてください。

自分会議とは

自分会議とは、『1日10分であらゆる問題がスッキリする「ひとり会議」の教科書』(サンクチュアリ出版、2010年)の著者・山﨑拓巳氏によると、テーマに沿って自分自身へと積極的に質問を投げかける場のこと。また、『1日10分「じぶん会議」のすすめ』(WAVE出版、2017年)の著者・鈴木進介氏は、「自分と向き合うことで思考を整理し、新たな決断をすること」だと定義しています。

自分会議は、己との対話を通して自分の考えを整理し、やることをはっきりさせるために行なうものであり、単に物思いにふけることではないのですね。自分会議で考えをまとめる習慣があれば、ふいに「君の考えを聞かせてほしい」「何か良いアイデアはないか?」と求められても、自分の考えを慌てずに伝えられそうです。

自分会議とは、自問自答を通して自己実現や目標達成を図る、セルフ・コーチングにも通じる時間といえます。

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自分会議のメリット

自分会議のメリットを3つ、ご紹介します。

1. 考えを整理できる

自分会議には、なんとなく頭の中にある考えを、すっきり整理できるメリットがあります。たとえば勉強を始めるのがつらくて困っている」という問題点をテーマに自分会議をしてみると、流れは次のとおり。

Q1. 勉強を始めるのがつらいのはなぜ?
A1. やる気が出ないから。

Q2. どうしたらやる気が出る?
A2. 好きな音楽を聴いたら、その気になるかも。

Q3. では、勉強前に好きな音楽を聴いてみる?
A3. 試しにやってみよう。

上記のように、自分会議には、質問と回答を繰り返し、具体的な行動に落とし込めるところまで考えを整理できるメリットがあるのです。

2. 判断力・アウトプット力を高められる

自分会議には、判断力とアウトプットのスキルを高められるというメリットもあります。ベストセラー『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版、2018年)の著者で精神科医の樺沢紫苑氏は、自分の考えを明確にし、周囲に流されることなく意思決定ができるようになるための手段として、「ディベート思考」を提案しています。

自分会議の際、課題に対して賛成意見と反対意見の両方を紙に書き出してみると、考えを客観視できます。それぞれの意見の根拠を掘り下げ、双方の立場で議論することで、どちらの意見がより自分の考えに近いのか、判断がつきますよ。

自分会議で、自分の考え方の「軸」を明確にしておけば、ふいに意見を求められたとき、自信を持って答えることができます。

3. 良いアイデアが浮かぶ

自分会議には、思いつきや考えを書き出していくことで、良いアイデアがひらめきやすくなるメリットもあります。

ベストセラー『メモの魔力 The Magic of Memos』(幻冬舎、2018年)の著者・前田裕二氏は、新しいアイデアや付加価値を生み出すため、メモを書きながら思考を深めるのだそうです。樺沢氏も、思いつくことを次々に手書きし、書き出した要素同士を関連づけながら考えを深めることで、アイデアが泉のように湧いてくると語っています。

自分会議において、普段から感じていることやふと頭に浮かんだことを言語化し、それぞれ結びつけながら思考を深めていくことで、アイデアをどんどん出せるようになるのですね。

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自分会議のコツ

自分会議を実践する際のコツをまとめました。

1. 自分会議用の時間と場所を決める

自分会議をするのに大切なのは、誰にも邪魔されず、じっくり腰を据えて自分の考えに没頭できる時間と場所を確保すること。毎週末・月1回・毎日10分など、自分会議をする時間と場所をスケジュール帳に書き込んでおきましょう。

平日なら通勤・通学の電車や昼休み、休日にはカフェのモーニングタイムなど、無理なく実行できそうな時間と場所を設定してください。

2. アナログとデジタルを使い分ける

樺沢氏によると、手を使って文字を書くことは、神経のネットワークである「RAS(脳幹網様体賦活系(のうかんもうようたいふかつけい)」を刺激するため、対象物への集中が強まり、脳が積極的に情報を収集しはじめるのだとか。自分会議では考えを紙に書き出すわけですが、手指を動かすこと自体に脳を活性化させる効果があるのです。

しかし、紙に書き出す(アナログ)ことにメリットがある一方、PCやスマートフォンに打ち込む(デジタル)ことにも、別のメリットが。樺沢氏は次のように語っています。

抽象的なアイデアを自由に発想する作業にアナログは向いていて、そのアイデアを具体化していく作業にデジタルは向いています。

(引用元:樺沢紫苑(2018),『学びを結果に変えるアウトプット大全』,サンクチュアリ出版.)

アナログには、脳を活性化させてアイデアがひらめきやすくなる利点があります。たとえば、前述の前田氏は、メモを手書きすることで脳を活性化させ、斬新なアイデアを次々と生み出しビジネスに活かした成功者として知られています。

一方、デジタルには、情報を整理・シェアしやすく、修正や検索も容易という利点がありますよね。アナログとデジタルの主な長所&短所をまとめると、以下のとおりです。

【アナログ】

  • 長所:手を動かすことで脳が活性化アイデアがひらめきやすい
  • 短所:修正に時間がかかる、持ち運びに不便

【デジタル】

  • 長所:アイデアをまとめやすい修正と検索が素早くできる持ち運びに便利
  • 短所:脳が活性化しにくい、アイデアがひらめきにくい

自分会議では、手書きでアイデアを一通り出したら、PCに入力して詳細を詰め、データを保存するなど、それぞれの特性を活かしてアナログとデジタルを使い分けてはいかがでしょう?

3. 使いやすいツールを用意する

自分会議では、思い浮かんだことが消えてしまう前にひたすらアウトプットしていく必要があるので、自分の思考速度に合わせてスムーズに使えるツールを選びましょう。

前田氏および樺沢氏は、以下のツールを愛用しているそうです。

SHOWROOM株式会社代表取締役社長・前田裕二氏

精神科医・樺沢紫苑氏

上記を参考にしつつ、皆さんも自分に合ったツールを探してみてくださいね。

4. 自分会議の目的を決める

何のために自分会議をするのか、あらかじめ目的を定めておくことも大切です。問題を解決したいのか、アイデアを生み出したいのか、意見をまとめ上げたいのか、情報収集したいのか。テーマが定まったら、以下の例のように、予定としてスケジュール帳などに書き込んでおきましょう

  • 自分会議(新商品用のアイデア出し)
  • 自分会議(情報収集)

5. 自分会議の質問例

自分会議では、できるだけ客観的な立場から、自分に対してさまざまな質問を投げかけます。でも、自分ひとりでは、どうしても質問の幅が狭くなりがち。質問によって自分の中から答えを引き出す「セルフ・コーチング」の手法を参考に、効果的な質問の例をご紹介します。

京都造形芸術大学教授の本間正人氏および株式会社AIコンサルティング・ジャパン代表取締役の松瀬理保氏によると、有効なのは「未来志向の行動につながる建設的な質問」です。「原因のリスト」という質問手法を使ってみましょう。「原因のリスト」とは、「自分には無理なのか?」などと「人」を主題にして自分自身を問い詰めるのではなく、「TOEICのスコアが上がらない原因をリストアップしてみよう!」のように、事態・目標・原因といった「事柄」に焦点を当てた質問です。

さらに、本間氏・松瀬氏が推奨する「一般的に役立つ前向きな質問」を参考にし、「TOEICの成績がなかなか上がらない」というテーマで自分会議を行なうとき、以下のような質問が考えられます。

  • 何ができる?
    →次の試験までにできることを3つ挙げてみよう!
  • 何が使える?
    →専門塾など、利用できる施設・サービスはないかな?
  • どうしたい?
    →もう一度チャレンジする? 別の資格を目指す?
  • どうなればいい?
    →次の試験で800点以上?
  • どこから手をつける?
    →点数が伸ばせそうな分野はどこ?
  • いつやる?
    →いつ勉強できる?
  • どんなふうにやる?
    →苦手を伸ばす? 得意を伸ばす?
  • ほかには?
    →勉強に利用できる隙間時間はあるかな?

ご紹介した質問例を、自分会議で活用してみてください。

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自分会議の例1:ノートを使って問題解決

「早起きできない」という問題を解決するため、ノートを使った自分会議の例をご紹介します。

『仕事が速い人は図で考える』(KADOKAWA、2016年)の著者・奥村隆一氏は、根本的な原因を探って問題を解決するには、ノートに書き出すのが有効だと語っています。奥村氏の「ノート思考整理術」は以下のとおり。

用意するもの

  • ノート(A4またはB5)

やり方

  1. 問題の現状や原因などを、箇条書きで紙に書き出す(5分)
  2. 関連する要素を矢印で結び、類似の要素は省く。ヌケモレがあれば追記する(2分)
  3. 2をベースに、キーワードと矢印を用い、シンプルな「フロー図」をまとめる。最後に解決策を書く(3分)

「早起きできない」をテーマに、考えをノートに書き出した図。「睡眠不足」「就寝時刻が遅い」「残業で帰宅時間が遅い」「寝付きが悪い」「夕食が午後10時を過ぎている」「寝る前にスマホを見ている」という要素をまとめた結果、解決策として「夜の仕事は午後7時半まで。出勤時間を2時間早めて、朝残業に切り替える」「スマホは就寝1時間前までに。寝る前は紙の本で読書をする」「起床時刻を決め、朝起きたらずぐ、部屋の中を明るくして脳を覚醒させる」「午前0時前には就寝する」を挙げた。

奥村氏のノート整理術では、合計10分で完了できるよう、各ステップに制限時間が設けられていますが、自分会議用の時間に余裕があれば、考える時間を伸ばしてじっくりと思考を深めることもできますよ。

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自分会議の例2:カードを使ってアイデア創出

樺沢氏の『学びを結果に変えるアウトプット大全』を参考に、自分会議でアイデアを生み出すのに使えるカード術をまとめてみました。

用意するもの

  • 125×75㎜の「情報カード」100枚

やり方

  1. 目標を決め、思いついたことを書き出す
    (例)『アウトプット大全』という本を出すため、内容を充実させたい。
  2. 「アウトプット」という言葉から思いつくことを、カード1枚につき1つずつ書き込む。とりあえず30個
  3. カードに書いた内容から連想したことを、別のカードに書き出す
    何でもいいので、思いついたことをとにかくたくさん書く。質より量を優先。
  4. 頭が空っぽになるまでカードを埋めていく
  5. カードをカテゴリーごとに分類する
    (例)『アウトプット大全』の場合、「話す」「書く」「行動する」に分類。
  6. 分類したカードを、スマートフォンなどで写真に撮る
  7. うまく分類できないときは、別のカテゴリーを考え直して再び分類する
  8. 全体がうまくまとまったと思えるまで繰り返す
  9. 分類した結果を、ノートやPCにまとめる

樺沢氏が『学びを結果に変えるアウトプット大全』を執筆した際、実際にアイデア出しのため使っていたというカードの配置例をご紹介します。

「アウトプットとは?」というテーマを「話す」「書く」「行動する」の3つのカテゴリーに分けた。「話す」カテゴリーには「伝える」「あいさつする」「質問する」「雑談する」を、「書く」には「メモ」「手で書く」「ノート」「To Doリスト」を、「行動する」には「チャレンジ」「始める」「教える」を分類。

(画像は『学びを結果に変えるアウトプット大全』を参考に著者が作成)

自分会議に使えるアイデア創出方法をもっと知りたい方は、「ゲーム感覚で楽しめる「三角メモ」が秀逸。アイデアが次々に湧いてくる!」もチェックしてみてください。

***
自分会議でセルフ・コーチングをすれば、難しい問題に対して自信をもって判断を下し、浮かんだアイデアをもれなくアウトプットできるようになりますよ。皆さんも、仕事や勉強のパフォーマンス向上のため、自分会議を習慣化してみてはいかがでしょう?

(参考)
山﨑拓巳(2010),『1日10分であらゆる問題がスッキリする「ひとり会議」の教科書』, サンクチュアリ出版.
鈴木進介(2017),『1日10分「じぶん会議」のすすめ』, WAVE出版.
前田裕二(2018),『メモの魔力 The Magic of Memos』, 幻冬舎.
樺沢紫苑(2018),『学びを結果に変えるアウトプット大全』, サンクチュアリ出版.
本間正人, 松瀬理保(2006),『セルフ・コーチング入門(第2版)』, 日本経済新聞出版社.
「10分で“図”にまとめる! ノート思考整理術」, 日経ビジネスアソシエ, 2017年4月号, pp.43-47.
EL BORDE|【前田裕二】日常すべてがビジネスアイデアに変わる戦略的メモ術
TSUTAYA|「ひとり会議」の教科書―山﨑拓巳インタビュー
STUDY HACKER|自分と向き合い、思索にふける。ビル・ゲイツの毎年の習慣『Think Week』
STUDY HACKER|「考える力」をつける8つの方法

【ライタープロフィール】
上川万葉
法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。

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    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
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