なぜかミスが多い人は “この4つ” に原因がある。

飯野謙次さんインタビュー「ミスが多い人は学習不足」01

人がミスや失敗をする原因は本当にさまざまですが、「学習不足」もそのひとつだと言うのは、著書『ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?』(日経BP)が注目を集める、NPO失敗学会副会長の飯野謙次(いいの・けんじ)先生です。

では、どうすれば学習不足を克服できるのでしょうか。飯野先生は「学習不足を4つに分けて考えることが大切」だと語ります。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「学習不足」は4つの種類に分けられる

個人のミスや失敗の原因のひとつに、「学習不足」がありますこれをさらに細分化すると、「学習機会欠如」「学習内容忘却」「応用力不足」「学習意欲欠如」の4つに分けて考えることができます。それぞれについて解説していきましょう。

まずは学習機会欠如。その名のとおり、学習機会を逸してしまうことです。これについては、私自身の体験を例として挙げてみます。

それは、まだ私が小学生だった頃のこと。当時、おたふく風邪にかかった私は、1、2週間ほど学校を休みました。そのあいだの理科の授業内容は、「月の満ち欠け」についてのものでした。ですから、長いあいだ、私はその内容を知らないままだったのです。

でも、その後の受験などにも、「○時頃、西の空に浮かぶ月の形はどれか?」といったふうに、月の満ち欠けの問題は出題されます。私は授業を受けていませんから、月の満ち欠けの仕組みを知らないまま、あらゆる状況での月の形を覚えないといけないのかと思っていたのです(苦笑)。

こういうことは、社会人にも起こり得ます。たとえば、会社の朝礼で上司が大切な伝達事項を伝えているときに、取引先から緊急の連絡があり、その対応に追われて聞きそびれてしまったというようなことです。その克服法となると、素直に人に聞くということしかないでしょう。この例の場合なら、遠慮せずに同僚に「なにか大切な伝達事項はなかった?」と聞けばいいわけです。

飯野謙次さんインタビュー「ミスが多い人は学習不足」02

応用力不足の人間は、得意分野の勉強だけを繰り返している

次の「学習内容忘却」は、以前に勉強した内容を忘れてしまうということ。私は理系の人間ですので、学生時代に学んだ数学の方程式もまだ覚えていますが、きれいさっぱり忘れてしまっている人も多いはずです。もし、必要なことを忘れてしまったことによってミスや失敗が起きてしまったのなら、億劫がらずにあらためて勉強し直す必要があります

それから、3つ目の「応用力不足」について解説しましょう。応用力が欠けている人には、ひとつの特徴があります。それは、「自分の得意分野の勉強だけを繰り返してしまう」ということ。社会人であれば、自分の専門分野について勉強することはたしかに大切ですし、必須事項でしょう。でも、ほかの分野については何も勉強していないという人はいませんか?

算数の能力を例に挙げましょう。子どもの頃に、計算問題を次々に問いていくドリルは得意だったのに、文章題は苦手だったという人もいるはずです。これは、国語力が不足していることに起因します。よく言われる話かもしれませんが、物事を考えるにも言葉で考えるわけですから、学ぶ分野を問わず、学習能力のベースには国語力があると言えます。算数や理科の授業内容を正しく理解するにも、算数の文章題の内容を把握するにも、国語力が必須なのです。

こう言う私も、高校生の頃までは国語が本当に苦手でした。でも、本だけは読み続けていた。そうして、大学を卒業する頃になってようやく人並みの国語力を手に入れられたのではないかと思います。いまでは自分の著書も出すくらいですから、私にも応用力が身についたといえるかもしれませんね。

いずれにせよ、Aというジャンルで仕事をしている人にも、まったく異なるBというジャンルの知識や考え方が生きるということもよくあります。自分の得意分野の力を伸ばすことだけではなく、できるだけ幅広い分野の勉強をすることを意識してください

飯野謙次さんインタビュー「ミスが多い人は学習不足」03

「学習不足」を防ぐためにもっとも重要な強い好奇心

そして最後が「学習意欲欠如」。学習に対する意欲が欠けていて、勉強できていないということです。

子どもの頃には、運に左右される面もあります。たとえば、それまではあまり興味がなかった教科も、担当の先生の授業がおもしろくて好きになったという経験がある人も多いでしょう。逆に、授業がおもしろくなくて、その教科に対する学習意欲がなくなったという人もいるはずです。

社会人のみなさんなら、勉強しないといけないことがあるのにあまり意欲が湧かないということもあるかもしれません。そういうときは、勉強すべき内容にまつわるもの、その周囲にあるもののなかで、自分が興味を持てることの勉強から始めるのがいいでしょう

でも、このことについては、このメディアの読者のみなさんなら心配する必要はないかもしれませんね。そもそも、何かを学びたくて、私の記事も読んでくれているわけですから。

とにかく、もっとも大切なのは好奇心を持ち続けること。4つに分けて解説してきた「学習不足」ですが、そのいずれについても、強い好奇心さえ持っていれば克服できるものです

常にアンテナを張って、いろいろなところに出かけてみる。「合わないな」と思っている人とも話をしてみる。もちろん、得られるものがなくて失敗に終わることもあるはずですが、そんなことからだって学びは広がっていくのです。

飯野謙次さんインタビュー「ミスが多い人は学習不足」04

【飯野謙次さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「失敗しても評価が高い人」が失敗したときにしている大切なこと
もう同じ過ちを繰り返さない! 原因分析が捗る「失敗まんだら」ってどんなもの?

【プロフィール】
飯野謙次(いいの・けんじ)
1959年12月9日生まれ、大阪府出身。NPO失敗学会副会長。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了後、General Electric原子力発電部門へ入社。その後、スタンフォード大学で機械工学・情報工学博士号を取得し、Ricoh Corp.へ入社。2000年、SYDROSELP設立し、ゼネラルパートナーに就任。2002年、NPO失敗学会副会長となる。企業や社会の発展に寄与するために、マネジメント面も踏まえながら失敗についての講演活動を続けている。『思考停止する職場 同じ過ちを繰り返す原因、すべてを解決するしかけ』(大和書房)、『仕事が速いのにミスしない人は、何をしているのか?』(文響社)、『設計の科学 創造設計思考法 失敗知識のウェブ脳モデル』(養賢堂)、『設計の科学 チームづくりの数学 ユング分析心理学とプラトニック変換』(養賢堂)、『「失敗をゼロにする」のウソ』(ソフトバンククリエイティブ)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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