「勉強ってやっぱり浅いと無意味ですか?」数千人超の “学ぶ社会人” を知る、学びのプロに聞いてみた

浅い学びにも意味はあるのか。学びのプロの答え01

仕事で何か新しい分野について知る必要があるとき、みなさんはどのように勉強しているでしょうか。

「専門書を1冊買って、じっくり読み込む」という方もいれば、「Webで検索して軽く記事を読むだけで、わかったつもりになってしまっているかも……」「本当は時間をかけて深く学びたいのに、業務に追われて続けられない」という方も多いのでは。

「浅い学びにも意義はあるのか?」「より意義のある学びを実現する方法って?」という疑問に、学びのプロに答えてほしい! 

そこで、ビジネスナレッジの定額制動画学習サービス「GLOBIS学び放題」の事業責任者、そしてグロービス経営大学院の教員として、数千人を超える「学ぶ社会人」と接した経験をもつ鳥潟幸志(とりがた・こうじ)氏に詳しく語っていただきました。

浅くても深くても、無意味な勉強はない

社会人の学びの実態について、興味深いデータを紹介しましょう。

パーソル総合研究所がアジア太平洋地域の社会人を対象に実施した「APAC就業実態・成長意識調査(2019年)」によると、日本では社会人の46.3%、約半数もの人が社外学習や自己啓発を行なっていないとのこと。21.5%のオーストラリアや、12.3%の韓国、6.3%の中国などと比較すると、「学んでいない人」の割合が非常に高くなっています。つまり、すでに学んでいる、学ぼうとしているだけでも充分意味があると言えるでしょう。

もちろん「浅い学びだから価値がない」ということもありません

たとえば「明日の会議のプレゼンが不安だ」という場合、プレゼンのコツをまとめた動画や記事でたった10分でも翌日のイメージをもってみるだけで、プレゼンに臨む気持ちやその出来は大きく変わってくるはずです。

また、エンジニアが「この先の仕事の幅を広げたい」とマーケティングの入門知識を浅く広く学んでみた場合なども、将来的に役立つ可能性があります。大切なのは、たとえ浅くてもそれが自分の目的に沿っているかどうかです

浅い学びにも意味はあるのか。学びのプロの答え02

学びがうまくいかない……その原因3つ

みなさんのなかには、「深く学びたい、継続的に学びたいのに続かない」という悩みを抱える方もいるでしょう。それには大きく分けて3つの原因が考えられます。

1. 目的が曖昧だから

学びを通して何を得たいのか・どうなりたいかを明確にすることが大切です。「上司に言われたから……」など、外から与えられた目的で始めた学びは長続きしません

「論理的思考を身につけて、提案力を高める」といった具体的な目標を立て、そこに向けて何をどう学べばよいのかを考えてみましょう

2. 学びたい分野の全体像をつかむ前に、専門的な知識を学ぼうとしているから

自身にとって新しい分野を学ぶ際は、まず基本的な知識の吸収からスタートすることをおすすめします。

たとえばファイナンスについて知りたいときに、いきなりバリュエーション(投資の価値や事業の経済性を評価すること)を学んでも、ほとんどの用語が理解できないでしょう。GLOBIS学び放題の受講者のデータによると、まず初級の動画で基本的な知識を学んでから中級、実践知へと進む人の方が、継続的に学べることがわかっています。

また、内容の難易度だけでなく身近さによっても理解の度合いは変わります。GLOBIS学び放題の動画では、理論を学ぶ前の導入に具体的な事例を取り入れるなどしていますが、みなさんが何か学ばれる際も、内容を身近な事柄に置き替えてみると理解がいっそう進むかもしれません。

3. 自分に適していないインプット方法をとっているから

インプット方法については、ハーバード大学教育学大学院教授のハワード・ガードナー氏が提唱する、8つの知能分類が参考になります。人は言語的知能、論理・数学的知能、視覚・空間的知能、運動感覚的知能、音楽的知能、対人的知能、内省的知能、博物学的知能を使って生活しているという考え方です。

これらの知能は人によって得意・不得意があり、自分に一番合ったアプローチを活用することで、学習効率が上がるのです。

浅い学びにも意味はあるのか。学びのプロの答え03
(画像:GLOBIS学び放題「Learn How to Learn ~自分にあった学習法を見つけるための4つのステップ~」より)

自分に適したインプット方法を見極めるには、複数のパターンを実際に試してみることをおすすめします。たとえば、ひとつテーマを決めて、書籍・オーディオブック・動画・図解が豊富な資料など、複数のインプット方法を試してみる。そのうえで、自分が一番スムーズに理解が進み、今後も続けやすいと感じた方法を見極めるという方法です。

言語的知能が優れているなら読書、視覚・空間的知能ならイラストや図、運動感覚的知能なら動画、音楽的知能なら音声、内省的知能なら振り返りをする、といったインプットが適しています。

GLOBIS学び放題では、図解やアニメーションを多用したり、テストによって振り返りを促したりすることで、さまざまな知能分野をできるだけカバーし、より多くの人が学び続けられるような工夫をしていますよ。

「わかっていても続かない」から「学び続けられる」自分に変わる!……継続するためのテクニックとは?

「そうはいっても勉強って大変だし続かない」と思った方もいるかもしれませんね。どうすれば学びを楽しんだり、深く継続的に学んだりできるのか、ふたつのコツをお伝えしましょう。

1. 効果を実感する

ひとつは、効果を実感すること。ここでは、今日からすぐできる方法をご紹介します。

  1. まず明日の仕事のスケジュールを確認して、何か不安のあるトピックを書き出します。お客様への提案、社内プレゼン、上長への予算交渉など、内容はなんでもかまいません。
  2. そして、その解決に役立ちそうな動画を見たり本を読んだりして、翌日の仕事でどのように活かすかを考え、実践してみるのです。
  3. 翌日に実行したら、それを振り返って「次はどのように改善すべきか」を考えてみます。

組織行動学者のデービッド・コルブ氏が提唱した、この「経験学習モデル」  というサイクルを回すと、学びの効果を実感しやすくなります。特に、「明日の仕事」といった身近で短期間に取り組めるテーマを使うと、すぐに効果を実感できるうえ、何度も繰り返しやすいので、学ぶことそのものが楽しく感じられるようになります。

浅い学びにも意味はあるのか。学びのプロの答え04
(画像:同上)

2. 思いきったチャレンジをしてみる

ふたつめは、思いきったチャレンジをしてみること。

難しいプロジェクトに立候補してみる、いままでできなかったことをやってみるなど、あえて背伸びしなければいけない状況に身を置くことを「ストレッチ」というのですが、要するに学ばざるを得ない状況をつくることが有効です。

営業から企画へのキャリアチェンジに挑む、という例で考えてみましょう。

まずは、自分に欠けている知識や経験は何かを書き出してみます。そして、その不足を補うためにいまできることは何かを考え、いまの会社でできることがあればやってみるほか、副業などで経験を積むのもいいでしょう。経験だけでは身につかない知識やスキルを吸収することも必要になりますね。

キャリアチェンジのような大きな変化を目指す場合、3年や5年というように締切を決めることも大切です。「1日何時間を学びに割り当てるべきか」を明確にすれば、目標に向けて継続的に、深く学べますよ。

浅い学びにも意味はあるのか。学びのプロの答え05

人生100年時代における「学びとの付き合い方」とは

人生100年時代と言われ、「リスキリング」など、社会人も学び続けることが求められる現代、みなさんには、次の4つを意識していただきたいと思います。

1. 自分を他人と比較しない

SNSで誰かが「起業しました」「新しいポジションに就きました」といった投稿しているのを見ると、モヤモヤしませんか? もちろん、それが刺激になる可能性もありますが、それで焦って学習を始めても、なかなか長続きしません。結局は「自分のための学び」であることが大事なんです。

2.「目標」「目的」とあまり大きく考えすぎない

最初に言ったように「浅い学び」にも意義はあります。「ちょっとした課題を解決したい」くらいのスタンスでも、学びによって確実に変化は起こります。

3. 無理をしない

1日3分という短時間の学びでも、365日続ければ18時間以上になります。また、長いキャリアの過程では、仕事に全集中する期間があってもOK。1年くらい学ぶことを休んでもいいと思います。

4. 自分なりに「学びを継続するコツ」を探してみる

散歩の時間をインプットに充てるなど日々のタスクにうまく組み込むのもいいですし、アプリを活用するのもいいでしょう。私は「Studyplus」というアプリを使って自らの目標を可視化しているのですが、ほかのユーザーから「いいね」されることがよい刺激にもなっています。

学生時代の詰め込み型教育の経験から、「学びってつらい」と思い込んでしまう人も多いようですが、学ぶことで毎日が、そして人生が変わっていきます。視野が広がって行動が変わったり、組織や社会に貢献できたり、仕事が以前よりできるようになったり、収入アップにつながったり……。学びは人生が楽しくなる、最高のエンターテイメントです。まずは気軽に、楽しみながら始めてみましょう。

(記事協力:株式会社グロービス)

(関連動画:GLOBIS 学び放題)
Learn How to Learn ~自分にあった学習法を見つけるための4つのステップ~
学びが浅い・詳細に興味が持てない人は「ストレッチ」で学ぶ動機を作ろう/みんなの相談室Premium

(参考)
パーソル総合研究所|APAC就業実態・成長意識調査(2019年)

【プロフィール】
鳥潟幸志(とりがた・こうじ)
埼玉大学教育学部卒業
グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了
学位:MBA
サイバーエージェントでインターネットマーケティングのコンサルタントとして、金融・旅行・サービス業のネットマーケティングを支援。その後、デジタル・PR会社のビルコム株式会社を共同創業。取締役COOとして、新規事業開発、海外支社マネジメント、営業、人事、オペレーション等、経営全般に10年間携わる。グロービスに参画後は小売・グローバルチームに所属し、コンサルタントとして国内外での研修設計支援を行なう。 現在は、社内のEdtech推進部門にて『GLOBIS学び放題』の事業リーダーを務める。グロービス経営大学院や企業研修において思考系、ベンチャー系等のプログラムの講師や、大手企業での新規事業立案を目的にしたコンサルティングセッションを講師としてファシリテーションを行なう。

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