大谷翔平選手の「マンダラート」を分析したら、仕事に活かせる “3つの教え” が見えてきた。

大谷翔平のマンダラートを分析したら、仕事に活かせる「3つの教え」が見えてきた01

大谷翔平選手といえば、メジャーリーグで “投打二刀流” として大活躍し続けているスタープレーヤー。その大谷選手が、9×9マスの「マンダラート」というシートを使って野球選手としての目標設定をしていた——というのは有名なエピソードです。

そこで本記事では、大谷選手が高校1年生のときに書いたマンダラートを分析し、ビジネスパーソンにも活かせる「3つの教え」を抽出。

  • ビジネスパーソンとしてさらにステップアップしたい
  • 成功するためのヒントが欲しい
  • 努力のモチベーションが欲しい

そんな方はぜひ本記事を一読し、大谷選手の思考から学びを得ましょう。

大谷翔平選手のマンダラートとは?

以下の画像は、大谷選手が高校1年生のときに作成したマンダラートを模したもの。ニュースの特集などで目にしたことがある方もいるかもしれませんね。

大谷翔平のマンダラートを分析したら、仕事に活かせる「3つの教え」が見えてきた。02

(画像は「スポニチアネックス|大谷 花巻東流“夢実現シート” 高1冬は「ドラ1 8球団」」を参考に、筆者が作成した)

マンダラートの作成手順は次のとおり。

  1. まず中央に叶えたい目標を書く
  2. そのために必要な手段を8つ、周囲のマスに書き出す
  3. そのための手段をさらに具体化し、残りのマスに書き出す

この作業を経ることで、「漠然とした目標」を「具体的な行動」レベルに落とし込むことができます。

大谷選手のマンダラートを見ると「ドラ1、8球団(ドラフト1位指名を8球団以上から得る)」という目標のために何が必要なのか、じつに明確なビジョンが描かれていることがわかりますね。

次章からは、上画像の赤丸で示した3か所に着目し、社会人の私たちにも活かせる「3つの教え」について考えていきます。

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教え1. 読書習慣をもとう

まず注目したいのは、マンダラートの下段中央に記された「本を読む」という文言です。

大谷選手は読書家としても知られており、野球に関する技術本はもちろん、自己啓発本、古典文学など、幅広いジャンルの本に日頃から親しんでいるとのこと。

【大谷翔平選手の愛読書】

  • 中垣征一郎『野球における体力トレーニングの基礎理論』
  • 黒田博樹『クオリティピッチング』
  • 中村天風『運命を拓く』
  • スペンサー・ジョン『チーズはどこへ消えた?』
  • 西沢泰生『壁を越えられないときに教えてくれる一流の人のすごい考え方』
  • 宮本武蔵『五輪書』

そして、本の内容をしっかり咀嚼できるようになるまで、同じ本を2回、3回と繰り返し読むことも少なくないそうです。たとえば『野球における体力トレーニングの基礎理論』という本を何度も読み返し、実際のトレーニングのなかで疑問に思ったことと照らし合わせながら試行錯誤を重ねているのだと言います。

また2013年、プロ入り後初のキャンプには『壁を越えられないときに教えてくれる一流の人のすごい考え方』(西沢泰生著)という自己啓発書を持ち込んだとか。こうしたエピソードからは、読書をモチベーション管理の手段としても活用していることがうかがえます。

読書で知恵を養うことは、野球選手に限らず、どんな職業の人にとっても大切。元外交官で作家の佐藤優氏は、読書によって以下の効能を得られると述べています。

  • 教養(=想定外の出来事に適切に対処する力)が身につく
  • 言語能力が磨かれ、自分の気持ちを表現・整理する力がつく
  • 自分の思考や思想をかたちづくれる

私たちも日頃からさまざまな良書に親しみ、知性や人格を磨く習慣をもちましょう。

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教え2. 愛される「ギバー」になろう

マンダラートの下段左側には「人間性」という項目があります。その周囲のマスに「思いやり」「礼儀」「感謝」などが記されていることから、大谷選手の考える「人間性」には、「周囲の人に気配りや施しができる優しさ」という条件が含まれていると推察できます。

実際に大谷選手は、球場のゴミを拾うといった利他的な行動や、敵チームの選手にも話かける気さくさでも有名です。そんな優しい人柄も、大谷選手の人気の一因。大谷選手の人間性、言い換えれば “愛され力” は、私たちも大いに見習うべきものでしょう。

また実益の面でも、周囲の人へ気配りや施しをすることにはメリットがあります。

組織心理学者のアダム・グラント氏によれば、さまざまな業種の企業を対象に行なった調査の結果、セールスにおいて最も高い成績を収めやすいのは、他者に積極的に施しをするタイプの人(=ギバー)であると判明したとのこと。営業担当者のみならず、エンジニアや医学生の成績などについても、同様の研究結果が出たそうです。

これは「情けは人のためならず」のことわざ通り、他者に施しをする人は自分が困ったときにも助けてもらいやすくなり、めぐりめぐって得をすることが多いためであると考えられます。

一見、他者に何も与えず一方的に利益を得るだけの人(=テイカー)のほうが得をしそうなものですが、グラント氏によると、テイカーは他者の利益を奪う一方であるために嫌われやすく、最終的にはギバーに敗北する可能性が高いのだそう。

ただ注意しておくべきは、行きすぎた自己犠牲をともなうほどのギバーになると、かえって不利益をこうむる恐れがあるということ。グラント氏が行なった同調査では、セールスの成績が最も低い傾向にあるのもまた、ギバーに属する人たちだったそうです。

たとえば、同僚の仕事を手伝いすぎたり、顧客に尽力しすぎたりすれば、自分のために割く時間がなくなり、仕事の生産性が下がるのは当然のこと。そんな “悪い意味でのギバー” にならないためには、

  • 「人への親切に使う時間は5分間まで」など、施しの限界値を決めておく
  • 一方的に与えるだけでなく、自分も積極的に人を頼る

などの対策をすべきであると、グラント氏は提唱しています。

過剰なギバーにはならないよう注意しながら、ほどよく他者に尽くすよう心がけることによって、私たちも成功に近づけるでしょう。

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教え3. 一喜一憂せず、常に冷静であろう

マンダラートの中段左側、「メンタル」のエリアを見ると「一喜一憂しない」「波をつくらない」「頭は冷静に心は熱く」など、精神状態を安定的に保つための心がまえが書かれています。その宣言通り、大谷選手と言えばどんなときも粛々とやるべきことをやり、冷静沈着に試合に臨んでいるイメージがありますよね。

大谷選手のメンタルの強さを表すデータのひとつが、「リザーブ・パワー」。これは「ランナーが進塁するごとに(ピンチが増すごとに)、ストレートの平均球速がどれくらい上がるか」を表す指標で、2021年の大谷選手の値は「0.794」とメジャートップクラス。「ピンチになるほど強くなる」というメンタルの強靭さが見てとれます。

職種にかかわらず、仕事において安定した結果を出し続けるためには、どんなときにも動じない強いメンタルを身につけることが非常に大切でしょう。

心理カウンセラーの中島輝氏も、物事に一喜一憂しすぎることは、さまざまな弊害につながりうると指摘しています。一喜一憂の「憂」に傾くと、不安やストレスを感じ、自己否定的なマインドになりやすくなるそう。「喜」も行きすぎれば、自己愛の肥大化をもたらし、人からの批判を受け入れられなくなる恐れがあるとのことです。

では “一喜一憂ぐせ” がある人は、どうすればそのくせを直し、心をフラットな状態に保てるのでしょう。中島氏が推奨するひとつの方法は、「いまの感情を紙に書き出す」というものです。

「いま自分は嬉しくて、調子に乗りやすい状態になっているな」「いまは仕事のミスを引きずって、深く落ち込んでいるな」——こんな具合に気持ちを書き出していくと、文字というかたちで自分の心を客観視できるとともに、次にすべきことを冷静に考えられるようになるのだそう。

たとえば、

  • 心が大きく動いているときは、必ず紙に書き出す
  • 毎日必ず日記を書き、自分の心を見つめる時間をつくる

といった「書く習慣」を身につけてはいかがでしょう。

そうすれば、目の前の成功や失敗に踊らされず、いつも安定した心もちで仕事に取り組めるはず。メンタルがもろい、ブレやすいと自覚している方はぜひ試してみてください。

***
以上「3つの教え」を念頭に置きながら、大谷選手のような目的意識や信念をもって仕事に臨みましょう。

(参考)
スポニチアネックス|大谷 花巻東流“夢実現シート” 高1冬は「ドラ1 8球団」
日刊スポーツ|大谷独特の読書法から見える生き方/インタビュー2
現代ビジネス|あの大谷翔平も心酔する、中村天風とは何者か
マネー現代|大谷翔平「無理だと思わないことが一番大事」…名言と愛読書に学ぶ「壁を越える」生き方
ブルボン小林(2021),『あの人が好きって言うから… 有名人の愛読書50冊読んでみた』, 中央公論新社.
大谷翔平(2017),『不可能を可能にする 大谷翔平120の思考』, ぴあ.
佐藤優(2019),『人をつくる読書術』, 青春出版社.
週刊女性PRIME|大谷翔平が初キャンプに唯一持ち込んだ「無名の会社員が書いた本」
ダイヤモンド・オンライン|佐藤優が実践する「血肉となる」本の読み方
J-CASTニュース|大谷翔平、球宴でも実践した「ゴミ拾い」 「全ての野球人へのお手本」ファン感動
THE ANSWER|大谷翔平、痛がる相手に咄嗟の気遣い 優しい「Oh Sorry」に米興味「振る舞いも一流」【今季の二刀流】
TED|アダム・グラント:「与える人」と「奪う人」—あなたはどっち?
Full-Count|大谷翔平、ピンチで増す球速はメジャートップ級 活躍の裏にあった“変貌”ぶり
PRESIDENT WOMAN|へこんだ時、平常心に戻れるすごい小ワザ2つ
マネー現代|第一人者が明かす! 自己肯定感を高めるコツは「書く」ことだった

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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