資格の勉強でぶつかる壁と言えば「勉強めんどくさい問題」。仕事のため、キャリアのためと義務感だけで資格を目指している場合、やる気が出ないのも無理はありません。
「勉強めんどくさい問題」に対し、この記事ではふたつのアプローチで解決法を提案します。
- 勉強へのやる気を高める
- やる気がなくても勉強できる工夫をする
「資格をとりたいけど、勉強がめんどくさい……」と悩んでいるなら、これから紹介する8つの解決策を試してみてください。
- 「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法1:好奇心を刺激する
- 「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法2:本の前書きを読む
- 「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法3:内発的動機&外発的動機を書き出す
- 「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法4:葛藤を分析する
- 「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法5:通俗本を読む
- 「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法6:アンカリング
- 「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法7:お気に召すまま勉強法
- 「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法8:アプリケーションを活用する
「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法1:好奇心を刺激する
「資格の勉強がめんどくさい」という心理を乗り越えるには、勉強そのものを楽しめるようになるのが何よりです。そのためには、勉強内容に「謎」を見つけ、好奇心を刺激しましょう。
行動経済学者のジョージ・ローウェンスタイン氏は、好奇心を「知識や理解におけるスキマを認識することで生じる認知的欠乏感」と表現しています。
「食べると安心するケーキってなーんだ?」となぞなぞを出されれば、答えが気になるのが人情です。“ホットケーキ” という答えを知ったところで一文の得にもならないのに、なぜでしょう?
それは「知識や理解におけるスキマ」……すなわち「謎」によって好奇心が刺激されているからです。「謎」を見つけさえすれば、資格の勉強にも興味をもてるようになるでしょう。
「謎」を見つける方法のひとつは、学習テーマに “5W1H” をつけること。会計学の「財務諸表」、いわゆる決算書を勉強するなら、このようになります。
- 財務諸表には何を書くんだろう?
- なぜ財務諸表をつくるんだろう?
- 財務諸表はどうやって書くんだろう?
- 財務諸表は誰がつくるんだろう?
- 財務諸表はどこに提出するんだろう?
- 財務諸表はいつまでに提出するんだろう?
疑問詞をつけることで「謎」が生まれるため、「答えを知りたい!」という好奇心がかき立てられるはず。資格の勉強を「めんどくさい」と感じるときは、まず「謎」を見つけてみましょう。
「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法2:本の前書きを読む
資格の勉強に興味をもてず「めんどくさい」と感じるなら、参考書や入門書の「前書き」「はじめに」だけを読んでみましょう。
勉強法に関する著書を多数もつ粂原圭太郎氏も、この方法を実践しています。購入してもらえるよう、本の前書きには、読者を最も惹きつけることが書かれているはずだからです。
ある統計学の入門書の前書きには、このように書かれています。
「なぜか、今年は競合よりもケータイの売上が悪い。どうすればいい?」
そんな課題があったとしましょう。あなたなら、どんなアプローチで、この課題の答えを出しますか?(中略)
そんなときこそ、統計学の出番です。
(引用元:柏木吉基(2012),『明日からつかえるシンプル統計学~身近な事例でするする身につく最低限の知識とコツ』, 技術評論社. 太字による強調は編集部が施した)
統計学の魅力や使い道をイメージでき、興味が湧いてきませんか? 資格の勉強を「めんどくさい」と感じるときは、テキストや入門書の前書きを読み、意欲を高めてはいかがでしょうか。
「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法3:内発的動機&外発的動機を書き出す
資格の勉強を「めんどくさい」と感じるのは、「なぜ資格をとりたいのか」という目的意識が曖昧だからかもしれません。
資格取得の動機をはっきりさせてみましょう。「なんのために勉強するのか」という動機が明確になれば、意欲が高まるかもしれません。
昭和女子大学心理学科教授の田中奈緒子氏は、動機についてこう説明しています。
心理学者エドワード・L. デシはモチベーション理論において、2種類の動機づけがあるとしました。一つは、ある特定の活動それ自体から引き出される動機づけである「内発的動機づけ」です。もう一つは、罰や報酬のような外的な要因を予想することで、ある特定の活動へと誘導する「外発的動機づけ」です。
(引用元:昭和女子大学 入試サイト|やる気の出し方 【青年版】―心理学科 田中奈緒子 太字による強調は編集部が施した)
また、心理学者の伊藤隆一氏らによる『現代の心理学』は、内発的動機を「行動すること自体が緊張を解消するような動機」と説明。総合すると、以下のような動機が考えられます。
◆内発的動機の例
- 勉強自体が楽しい
- 能力が磨かれ、充実感がある
- 勉強をサボる後ろめたさを感じたくない
- 自分にガッカリしたくない
◆外発的動機の例
- 資格をとってキャリアアップしたい
- 資格手当が欲しい
- 上司に叱られたくない
- 試験に落ちて同僚に笑われたくない
あなたも、このように動機を書き出してみましょう。図のように「内発的/外発的」「いいこと/嫌なこと」という軸を用意すると書きやすいはず。
内発的動機が浮かばないなら、外発的動機だけでも書いてみてください。
前出の田中氏によると、内発的動機づけ/外発的動機づけは明確に区別しづらく、相乗効果がありうるそう。外発的動機から勉強するうち、充実感や達成感が生まれ、内発的動機が強まるかもしれません。
「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法4:葛藤を分析する
「資格の勉強がめんどくさい」のは、心理学で言う「葛藤」です。
前出の『現代の心理学』によると、葛藤とは「複数の動機・誘因が両立せずに存在する欲求不満状況」。誘引には、○○したいという「正の誘因」と、○○したくないという「負の誘因」があります。
「勉強しなきゃいけないけどめんどくさい」という葛藤は、「勉強したい」という正の誘引に対し、別の要因がぶつかって生まれるのです。葛藤のパターンは次の3つ。
- 接近ー接近:正の誘因×正の誘因
(例)資格の勉強をしたいが、ゲームもしたい - 接近ー回避:正の誘因×負の誘因
(例)資格の勉強をしたいが、机に向かうのは疲れる - 回避ー回避:負の誘因×負の誘因
(例)資格試験に落ちたくないが、机に向かうのは疲れる
このように自分の葛藤を分析し、勉強を邪魔する誘因を明らかにしましょう。「机に向かうのが疲れる」という誘因に気づけたら、「勉強机ではなくリビングのテーブルでやる」「快適な椅子を買う」といった方法で「めんどくささ」を解消できるかもしれません。
「どうやったら誘因を排除できるんだろう?」と悩んだら、こちらの記事を参考にしてみてください。
>>習慣を変える方法14選! 悪習慣→良習慣にシフトするには?
「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法5:通俗本を読む
資格の勉強を「めんどくさい」と感じるのは、テキストが難しすぎるからかもしれません。そんなときは、その資格に関わる「通俗本」を読んでみましょう。
この方法を提唱するのは、働きながら独学で司法試験や米国公認会計士試験に合格した、弁護士の佐藤孝幸氏です。勉強分野の全体像をつかめるだけでなく、関心を高める効果も期待できます。
佐藤氏の言う「通俗本」とは、「3時間で読める」「1週間でわかる」のような入門書。「マンガで読む○○」も含まれそうですね。
会計に関する資格なら、このような本がいいでしょう。
読むときのポイントを、佐藤氏はこう挙げています。
- マーキングや書き込みはせず、ざっと目を通す
- 多様な意見に触れるため、3~4冊読む
- 後回しにせず、1週間で読みきる
難しいテキストから始めて「めんどくさい……」と意欲を失ってしまうくらいなら、読みやすい本から資格の勉強を始めましょう。
「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法6:アンカリング
「めんどくさい」という気持ちに負けず資格の勉強をしたいなら、「アンカリング」というテクニックを使いましょう。
株式会社アンカリング・イノベーション代表取締役でメンタルコーチの大平信孝氏によると、アンカリングは「条件づけ」を意味する心理学用語。時間や場所をきっかけ(アンカー)にし、特定の行動を引き出すことです。
- 月曜の朝だ(時間)→ゴミを出さなきゃ(行動)
- 家に着いた(場所)→とりあえずテレビをつけよう(行動)
- 歯を磨き終えた(行動)→顔を洗おう(行動)
このように、私たちはアンカリングに従って生活しています。同じように、特定の時間や場所を「勉強」とリンクさせれば、勉強を習慣化できるはずです。
◆アンカリングで勉強を習慣化する例
「朝食ができたから→ノートを見直そう」「トイレに入ったから→単語アプリを見よう」と、いつもの習慣が勉強のアンカーになっています。
アンカリングした習慣が定着するまでは、少し時間がかかるかもしれません。しかし、一度身につけば「○○したら→資格の勉強」が当たり前になり、「めんどくさい」という感情が起きにくいはずです。
「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法7:お気に召すまま勉強法
「めんどくさい」と感じずにできる、楽な資格勉強法を知りたい! そんなあなたにおすすめしたいのが、心療内科医で勉強法に詳しい吉田たかよし氏が提唱する「お気に召すまま勉強法」です。
テキストを前から順に読んでいくのではなく、興味を惹かれる箇所から読んでみます。
◆お気に召すまま勉強法
- テキストをパラパラめくり、ひととおり眺める
- なんとなく興味を惹かれる箇所、おもしろそうな箇所を見つける
- その箇所から読み始める
- わからない用語があれば索引で調べる
吉田氏は、学生時代の民法の勉強で「お気に召すまま勉強法」を実践したそう。民法の条文から学ぶのではなく、判例から読んでいったのです。
おかげで民法を身近に感じられ、最終的に民法全体を攻略できたそうですよ。
「そんなめちゃくちゃな学び方で大丈夫?」と思うかもしれませんが、安心してください。吉田氏は、「お気に召すまま勉強法」を「人間の認識能力の仕組みに最も合致した方法」と表現しています。
あなたは野球のルールをどうやって覚えましたか?
ルールブックを1ページめから順番に読んだ、という人はいないでしょう。観戦を楽しむうちに基本のルールを覚え、さまざまな事例に出会ううちに頭のなかでルールが体系化されていったはずです。
勉強についても同じこと。知識がひとつ身につけば、そこから関心が広がったり、高度な内容を理解できるようになったりし、広く深い知識が身についていくのです。
資格の勉強を「めんどくさい」と思うなら、最初から「全体」を理解しようとするより、少しでも興味を惹かれる「部分」から攻めてみては?
「資格の勉強がめんどくさい……」への対処法8:アプリケーションを活用する
TOEICのような英語関連の資格・検定に向け勉強しているものの、「めんどくさい」という気持ちを捨てきれないなら、株式会社スタディーハッカーの「ENGLISH COMPANY MOBILE」を使ってみては?
「ENGLISH COMPANY MOBILE」は、英語パーソナルジム大手「ENGLISH COMPANY」のトレーニングを再現したアプリケーションです。第二言語習得研究に基づき、「英語力を時短で伸ばす」のコンセプトで開発されました。
読む力・聞く力・話す力をブラッシュアップするため、次のようなトレーニング・特典を利用できます。
◆「ENGLISH COMPANY MOBILE」のトレーニング&特典
- 英単語学習
「英語→日本語」「日本語→英語」で英単語を記憶&テスト。音声つき - チャンクリーディング
英文を意味ごとのまとまりでとらえながら読む - シャドーイング
音声を1~2語遅れで追いかけつつ発音。自分の発音をプロにフィードバックしてもらえるプランも - 映像コンテンツ
ベストセラー英文法書『英文法の鬼100則』著者の時吉秀弥氏による映像講座が見放題。ネイティブ感覚で英語を使いこなすコツを学べる - 「Nikkei Asia」購読権
アジアで活躍するビジネスパーソンの必読メディア「Nikkei Asia」で最新の英文記事に触れられる
「ENGLISH COMPANY MOBILE」を使えば、テキストでの独学より効率的に英語が上達するはず。他社の英語学習アプリとの違いを知りたい方には、こちらの記事がおすすめです。
>>ENGLISH COMPANY MOBILEとシャドテンはどっちがおすすめ?違いを比較|サクキミ英語
英語系の資格を目指している方、英語の勉強が「めんどくさい……」と行き詰まっている方は、ぜひ「ENGLISH COMPANY MOBILE」を使ってみてください。
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「資格の勉強がめんどくさい……」と悩んだときは、この記事を参考に、モチベーションの出し方や習慣づけの仕方、勉強法を見直してみましょう。
(参考)
Loewenstein, George (1994), "The psychology of curiosity: A review and reinterpretation," Psychological Bulletin, Vol. 116, No. 1, pp.75–98.
パトリック・ファーガン 著, 上原裕美子 訳(2017),『♯HOOKED 消費者心理学者が解き明かす「つい、買ってしまった。」の裏にあるマーケティングの技術』, TAC出版.
プレジデントオンライン|京大首席が実践する興味ない分野の勉強法
柏木吉基(2012),『明日からつかえるシンプル統計学~身近な事例でするする身につく最低限の知識とコツ』, 技術評論社.
昭和女子大学 入試サイト|やる気の出し方 【青年版】―心理学科 田中奈緒子
伊藤隆一・千田茂博・渡辺昭彦(2003),『現代の心理学』, 金子書房.
佐藤孝幸(2008),『できる人の資格勉強法』, 中経出版.
東洋経済オンライン|三日坊主は卒業!「簡単に」行動を習慣化する方法
吉田たかよし(2005),『不可能を可能にする 最強の勉強法―究極の鉄則編』, PHP研究所.
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。