相手の心をずる賢く支配する厄介者「マニピュレーター」に、あなた自身がなっているかもしれない

マニピュレーター的な6つの行動を治す方法01

職場でもプライベートでも、他者の心をコントロールして利益を得ている “厄介者” がいます。アメリカの心理学者ジョージ・サイモン氏は、そういった特徴を持つ人を「マニピュレーター」と定義しました。

しかし、他人事ではありません。もしかしたら私たちも、彼らのような行動を深い意図なしにやってしまっているかも……。今回は、マニピュレーター的な行動を6つ指摘しつつ、それぞれの改善策を紹介します

うわべは優しいけれど……「マニピュレーター」とは?

自分の望みを果たすために、攻撃意図を隠しながら相手を操って支配していく――そういった人物を「マニピュレーター(潜在的攻撃性パーソナリティ)」と呼びます。 マニピュレーターに該当しうるのは、なにも地位の高い人や特殊な人には限りません。ふだん接している職場の上司や同僚、家族や友人など、私たちの身近に存在している可能性だってあるのです。

いつもは親切に接してくれるのに、ときどき辛辣なことを言ってくる……
自分の出世のためならば、陰でこっそり仲間を蹴落とすことなんて厭わない……
こういう人、みなさんの周りにもいるのではないでしょうか。

彼らが厄介なのは、うわべは優しい顔をしているため、害のある人物かどうかを見抜くのか困難なところ。表向きは親切な態度をとる心理について、メンタリストのDaiGo氏は「『相手の利用価値』を見定めて『相手の弱み』をつかむ」狙いがあると述べます。

たしかに、初めから攻撃的な言動をとるより、親切な面を見せておいたほうが、ターゲットに近寄りやすいため、自分の目的(出世や評価)を果たしやすいですよね。このように戦略的に近寄り、時には優しく時には理不尽な態度を示し、相手を混乱させながら、マニピュレーターは心を意のままに操っていくのです。

マニピュレーター的な6つの行動を治す方法02

しかし、ここで注意点があります。なんとサイモン氏は、著書『他人を支配したがる人たち』の中で、「時と次第によっては、我々もマニピュレーターと同じような行為に及ぶことがある」と指摘しているのです。つまり、相手を操作しようとする意図がなくとも、怒りを感じたり不都合な出来事が起きたときなどに、私たちは彼らの戦略と同様のことをしてしまっている可能性があるということ。

サイモン氏が指摘する「マニピュレーターの特徴」と照らし合わせながら、改善策を探っていきましょう。

1. 物事を都合よく解釈する(わいしょう化・合理化)

マニピュレーターは、自分の起こした不適切な行動や態度を「取るに足りないもの」だとし、物事を自分の都合のいいように “わいしょう化” する場合があります。

たとえば、報告漏れがあったときに「ちょっと説明不足だっただけ」「たいしたことのないミス」というふうに小さく解釈し、まるで相手がささいなことで気にしているかのように見せるのです。

でも、自分の非を素直に認めずにいると、「言い訳をしている」「責任感がない」と相手にとらえられ、評価が下がってしまうのは明白ですよね。自分に責任の発端があるのならば素直に非を認め、さらには「今後、報告漏れがないかきちんと確認します」と対策を提示すると、誠意が伝わって印象も変わってくることでしょう。

マニピュレーター的な6つの行動を治す方法03

2. 嘘をつく

「重要な言葉を伝えずに嘘をつく」「事実を捻じ曲げて嘘をつく」という手法は、マニピュレーターがやる戦略のひとつ。たとえば、上司が同僚のAさんを「積極性は物足りないが、業務の正確さには信頼を置ける」と評価したとき。マニピュレーターはAさんに対し、「上司が『意欲が全然足りないと言っていたよ』」などと肝心の部分を隠したまま伝えて混乱させようとします。

心当たりがある人は、米コンサルティング会社「ナバレント」共同創設者兼マネージングパートナーであるロン・カルッチ氏が提案する3つのステップが、改善に役立つでしょう。

  1. 嘘をついた理由を振り返る
  2. 信頼を損なうことのダメージを予想する
  3. 自分の誠実さを伝える方法を考える

先の例で言えば、Aさんに嘘をついた理由は「嫉妬心」があったからかもしれません。そして、嘘をつくことにより、Aさんを混乱に陥れるだけでなく、周囲から「不誠実な人」とレッテルを貼られるデメリットも考えられます。振り返ってみると、嘘をつくよりも素直に相手を尊重する姿勢を示すほうが、周囲の信頼を失うこともないと気づくでしょう。

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3. 否認・わからないふりをする

マニピュレーターは、自分の行動に問題があったとしても、その事実を認めようとしません。さらには、わからないふりをして疑問を投げかけ、相手の認識のほうが誤っていると見せかけようとします

たとえば、部下に間違えた作業方法を教えてしまったとき、「そんなことを言った覚えはない」「記憶違いじゃないの?」と、わざととぼけるなど……。みなさんも、そんな経験をした覚えはありませんか。

自分の問題を否定していても、成長は期待できませんよね。失敗や問題点は素直に受け入れ、「それをどう変えていくか」に意識を集中させましょう。ポイントは、反省が過度な自責に変わらないように、振り返りを短時間で切り上げること。過ちを素直に認める姿勢は、周囲に誠実な印象を与え、あなたを前進させる糧になるのです。

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4. 怒りによる操作

マニピュレーターは時に、意図的に怒りを表明することがあります。怒りを示すことで相手に畏怖心を抱かせ、自分に従うよう操作するのが狙いです。みなさんにも、相手をコントロールするつもりはなくとも、思った通りに行動してくれない部下やチームに対して、強く怒って従わせようとした経験はないでしょうか。

そこで、怒りたくなっても「6秒間だけ我慢する」ことを心がけましょう。日本アンガーマネジメント協会の安藤俊介氏いわく、感情が発生してから理性が働くまでの時間が6秒なのだとか。

もちろん、6秒待てば怒りが完全に消えるわけではありませんが……6秒という時間を置けば、感情任せではなく、理性的で冷静な行動がとりやすくなりますよ。

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5. 罪悪感・羞恥心を抱かせる

マニピュレーターは、皮肉や当てこすりなどをすることで、相手に自身の能力や価値観について疑問を持たせようとします。そうして相手の不安感情をゆさぶり、罪悪感や羞恥心を抱かせるのです。たとえば、仕事のささいなミスに対して「君のせいでどれだけ迷惑を被っていると思う?」と投げかけ、相手に「悪いのは自分だ」と思い込ませるなど。

このように、主語を “あなた” に置く「YOUメッセージ」は、相手を責める意味合いが強くなってしまうことがあります。そこで、主語を “わたし(I)” に置き換えて伝えるようにしましょう

先の例で言えば、「君のせいで」ではなく、「もう少し注意を払ってくれると私はとても助かる」と言い換えることにより、相手を非難するニュアンスは薄れ、こちら側の心情が相手に伝わりやすくなります。

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6. 被害者を装う

マニピュレーターは意図的に、自分は「人に傷つけられた不運な人間」であると被害者を装い、良心ある人々の同情心を利用しようとします。上司から業務上の指摘を受けたとき、「上司に嫌われている……」「ショックで仕事に集中できない……」などと周囲にもらし、誰かからの優しい言葉を期待する……なんてことをした覚えはありませんか。

心理カウンセラーの浅尾寿和氏は、被害者意識の多くは「加害者意識」を隠すものだと述べます。つまり、「上司に嫌われている」と感じるのは、自分の心の底に「上司に迷惑をかけている」という罪悪感があるということ。

浅尾氏は、被害者意識を手放すポイントとして、「加害者意識」を見つめ直すことを挙げています。先の例で言うならば、「上司に対してどういう自分でいたかったのか?」「どう評価されたかったのか?」と自問してみましょう。おのずと、被害者意識の底にある自分の本音に気づくはずです。

***
ご自身を振り返って「思い当たる」と感じた人は、意識をして少しずつ行動を変えてみましょう。良好な人間関係を築くことは、あなたに幸せをもたらしてくれるはずです。

(参考)
ジョージ サイモン 著, 秋山勝 翻訳(2014),『他人を支配したがる人たち』, 草思社.
Mentalist DaiGo Official Blog|関わるとやばい人の共通点
日経スタイル|「素直」「すぐ」「真摯」に 仕事でミス、どう謝る
ハーバード・ビジネス・レビュー|嘘を重ねて自滅する悪循環を防ぐ3つのステップ
ニューズウィーク|成長するには「失敗」に必要以上の注意を向けないこと
STUDY HACKER|怒りの感情と上手に付き合う! 欧米トップ経営者の常識「アンガーマネジメント」入門
東洋経済オンライン|相手を心底不快にさせる3つのダメな話し方
心理学講座|被害者意識と加害者意識 〜「誰かのせい」と「自分が悪い」の関係性〜

【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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