30項目から探る「自分の価値観」が最高の成果につながる。“なんとなく” では仕事はデキない

野上麻理さん「自分の価値観を認識するためのワーク」01

「エネルギー」を増やして管理することで最大限のパフォーマンスを発揮できる——。著書『ピークパフォーマンス』(WAVE出版)を通じてそう語るのは、グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社代表取締役社長である野上麻理(のがみ・まり)さんです。

野上さんは、「エネルギーは、『身体』『感情』『思考』『精神』という4つに分けられ、なかでもほかの3つのエネルギーの使いどころを統制する『精神エネルギー』こそが最重要だと言います(『時間ばかり管理しても限界がある。真のパフォーマンス発揮には「4つのエネルギー」管理が不可欠だ』参照)。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「ただなんとなく」仕事をしていては、パフォーマンスは上がらない

「精神エネルギー」と言うと、どこかとらえどころのないスピリチュアルなものだと思う人もいるかもしれません。でも、私が言う「精神エネルギー」とは、簡単に言うと価値観のことです。

みなさんは、なんのために仕事をしていますか? 自分の価値観に照らし合わせて、仕事をする目的をはっきりもてているかどうかで、そのパフォーマンスは大きく変わってきます。「ただなんとなく」で仕事をしている人のパフォーマンスは上がらないのです。

「火事場の馬鹿力」が、わかりやすい例です。親にとってなにより大切な子どもが火事の現場に残されていたとしたら、親は普段では考えられないような力を発揮できます。それと同じことが、仕事に対しても言えるのです。

「これは上司に言われたことだから」というだけの理由で仕事に臨むのか、たとえ指示された仕事であっても自分の価値観に照らし合わせて「これは自分にとって必要なことだ」と主体的に意味を見いだしたうえで仕事に臨むのか。その違いが、両者のパフォーマンスの差を生むのです。

また、「人生100年時代」と言われるいま、70歳や75歳まで働き続けることが求められます。その長い時間のあいだには多くの転機が訪れるでしょう。そのときに転職をするのか、転職するならどんな会社を選ぶのか、あるいは引退してまったく別のことを始めるのか……。

その判断にも明確な価値観が必要ですし、それこそのちに「あのとき、こう判断してよかった!」と思えるようなよりよい人生の選択をするためにも、自分の価値観をしっかり認識しておくことが大切なのです。

野上麻理さん「自分の価値観を認識するためのワーク」02

 

自分の価値観を認識するためのワーク

ただ、自分の価値観を認識することもそう簡単ではありません。そこで、ひとつのワークを紹介します。まずは以下の30のキーワードを見てください。

野上麻理さん「自分の価値観を認識するためのワーク」03

これは、自分の価値観を探るためのヒントとなるキーワードです。まずはこのなかから自分にとって重要だと思うものを5つ選んでください。次に、選んだ5つそれぞれに、自分にとっての重要性を、1点(低い)から10点(高い)のあいだでつけてみましょう(A)。さらに、5つそれぞれに対して実際に自分が費やせている時間や努力、エネルギーを1点(まったく費やせていない)から10点(非常に費やせている)のあいだで採点してみてください(B)。以下は、「成長」「挑戦」「家族」「健康」「自由」を選んだ人の例です。

【自分の価値観を認識するワークの例】

野上麻理さん「自分の価値観を認識するためのワーク」03

そうして、AとBの点差を見てみると、本来は自分が重要だと思っているのに、実際には時間や努力、エネルギーを費やせていないものが見えてきます。逆に、本来はそこまで重要だと思っていないのに、必要以上の時間や努力、エネルギーを費やしてしまっているものも見えます。

上の例なら、本当は「家族」を最も重要だと思っているのに家族を顧みることができていないことのほか、逆に「自由」を得るために必要以上の時間や努力、エネルギーを割いていることも見えました。自由のために必要以上に費やしている時間や努力、エネルギーを家族のために使うことができれば、自分の価値観に沿った、よりよい人生を歩めるようになるということです。

野上麻理さん「自分の価値観を認識するためのワーク」05

やるべきことを明確に意識づけ、習慣にする

さらに、そうして得た気づきを強化し、「自分は本当に変わらなければならない!」と意識づけるため、「現在のストーリー」を「反転」し、「新しいストーリー」を描くこともおすすめしておきます。そうすることで、自分が変わるためにやるべきことも見えてきます。先の例で言えば、こんな具合です。

◆現在のストーリー

私にとって家族はとても大切だが、
いまは十分な時間や努力、エネルギーを割けていない

なぜならば

その家族を養うために一生懸命に働いているから

↓反転

◆新しいストーリー

私は大切な家族のために、
時間や努力、エネルギーをもっと費やすことができる

なぜならば

私にとって家族は最も重要なものであり、
また私は挑戦して成長することも重要だと思っているので、
自分が生産性を上げて成長することによって、
家族に費やす時間や努力、エネルギーを生み出すことができるからである

こうして自分がやるべきことが見えたら、次に習慣化することを意識しましょう。なぜなら、人間の行動のほとんどは日々の習慣で形成されており、習慣でないことをやるのはとても苦痛に感じるからです。やるべきことを習慣化できれば、それが他人からはハードルが高いと思えることであっても、本人としては楽に続けることができます。

習慣化のポイントはいくつもありますが、まずはなによりすぐに始めること。人間は基本的に面倒くさがる生き物であり、新しく始めるべきことを先延ばしすると延々と始めないことになるからです。毎日行なうことなら今日から、毎週月曜日に行なうことなら次の月曜日から始めましょう。

そして、最初の3カ月は意図的に頑張って繰り返すことも大切です。先に述べたように、習慣になっていないことをやることはとても苦痛だからです。だからこそ、「これを習慣にするんだ!」と強い意図をもって繰り返すことが欠かせません。

また、たとえ三日坊主に終わっても、また始めればいいという少しゆるい認識ももっておきましょう。三日坊主になってそのままやめてしまえばやるべきことが習慣になることは絶対にありえませんが、やると決めたことができない日があったとしても、そのつどまた始めればいつかは必ず習慣になります。

野上麻理さん「自分の価値観を認識するためのワーク」06

【野上麻理さん ほかのインタビュー記事はこちら】
時間ばかり管理しても限界がある。真のパフォーマンス発揮には「4つのエネルギー」管理が不可欠だ
「メール対応で働いた気になるな」P&G元CEOの言葉にハッとした人が磨くべき3つのスキル

【プロフィール】
野上麻理(のがみ・まり)
1969年1月12日生まれ、大阪府出身。グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社代表取締役社長。大阪外国語大学(現大阪大学)卒業後、P&Gジャパン株式会社に入社、マーケティングに従事。第一子出産後、SK-IIブランドマネジャー、東アジアスキンケアマーケティングディレクターに就任する。第二子出産後、37歳で部下が2,000人を超えるマックスファクタージャパン(P&Gスキンケア・化粧品事業部)のプレジデントに就任。P&Gブランドオペレーション&マーケティングヴァイスプレジデントを経てアストラゼネカ株式会社プライマリーケア取締役事業本部長に着任。執行役員マーケティング本部長として国内全製品のマーケティングを統括し、スウェーデン海外赴任。グローバルポートフォリオグループの呼吸器領域・吸入療法製品のグローバルブランドヘッドに。帰国後、アストラゼネカ株式会社の執行役員コマーシャルエクセレンス本部長、呼吸器事業本部長。その後、武田コンシューマーヘルスケア株式会社(現アリナミン製薬株式会社)取締役社長を経て現職。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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