デキる人は自分の “思考のクセ” に気づいている! 柔軟な思考が身につく「クリティカル・シンキング」2つの基本

クリティカルシンキングの基本01

自分の直感で仕事を進めると、たいてい失敗してしまう。同じような仕事の経験が以前にもあるはずなのに、なぜかうまくいかない。そんなことが何度も続くと、仕事への自信をなくしてしまいそうになりますよね。

ただ直感を磨いたり経験を積んだりしているだけでは、仕事がデキる人には決してなれません。今回は、仕事のデキない人が自分の「思考のクセ」に気づくべき2つの理由と、成果を出していくための「クリティカル・シンキング」という考え方についてお伝えします。

自分の「思考のクセ」に気づくべき理由

自分の「思考のクセ」を理解していないと、どうして仕事がうまくいかないのでしょうか。2つの理由について考えてみましょう。

【理由1】主張に客観性がない

仕事がうまくいかない理由の1つは、「客観的な思考ができておらず、直感だけで進めている」ことです。

たとえば、「今回はプランAが最適だと思います」と会議で提案したとしましょう。しかし、自分の直感だけをもとにしていると、「なぜそうだと思ったの?」と尋ねられても、「なんとなく行けそうな気がするから」としか答えられません。これでは、上司や取引先を納得させることなんてできないですよね。何を根拠にプランAが優れていると考えたのか、プランAを実行することでどれほどの効果が期待できるのか、といった納得感ある情報を彼らは求めているからです。

また、仮にそのプランが結果的にうまくいったとしても、それは偶然でしかありません。環境や周囲の状況が変わっても安定的に成果を出せるのかと問われれば、難しいと答えざるをえないでしょう。

【理由2】視野が狭い

仕事がうまくいかないもう1つの理由は、「自分の経験が絶対で、視野が狭くなっている」という点です。

グロービス経営大学院教員であり「クリティカル・シンキング」の科目を担当する岩越祥晃氏によれば、時間に追われがちなビジネスの現場では無意識のうちに、これまでの経験に依存して “考えたつもり” になっていることが多いのだそう。自分が直面する状況は日々変化しているにもかかわらず、「今までずっとそうしてきたから」「以前は自分の考えでうまくいったから」といった理由だけで仕事を進めてしまいがちな人はいませんか。

たとえば、業績が悪化し続けているにもかかわらず、これまでと同じ業務体制を継続しようとしている、など。本来であれば、「人的資源をより効率的に活用するため、可能な業務はできるだけ自動化する」のように、代替案も含め、突き詰めて最適解を吟味する必要があるはず。それをせず、経験頼りの状態を続けていては……それが通用しないと気づいた頃には、もう手遅れになっている可能性だってあるのです。

クリティカルシンキングの基本02

「クリティカル・シンキング」を身につけるには?

「クリティカル・シンキング」は「批判的思考」とも呼ばれており、集めた情報を吟味し、より正確に理解したうえで最適な選択をすることを指します。この考え方を身につければ、自分の直感や経験に基づく思考のクセに依存しない、客観的な意思決定をすることができるようになるでしょう。

また、クリティカル・シンキングは、アメリカなど6か国の政府、大学、産業界が協力し研究を行なっている国際団体ATC21sが提唱する「21世紀型スキル」の1つとしても定められています。今日では、高度に情報化された国際社会で活躍する人材が求められており、クリティカル・シンキングは、どんな知識や技術をどのように活かしていくか、適切に判断する際にとても有用なのです。

では、仕事で自分の「思考のクセ」から脱出するには、どうすればよいのでしょうか。「クリティカル・シンキング」の具体的なやり方をご紹介しましょう。

【方法1】「根拠」を問う

アイデアを思いついたら、「なぜ?」「本当にそう?」と、まず自分へ問いかけるようにしましょう。そのアイデアは、客観的な考察に基づいているとは限らないからです。

たとえば、「次の取引先へは、このアプローチで営業をかけるのがベスト」と考えたとき、根拠のない自信だけで進めようとしてはいませんか。「なぜこのアプローチが有効だと言えるのか」と自分に問いかけて裏付けを取るようにすれば、営業がうまくいく確率はそれまでよりもずっと高まるでしょう。

自分の考えを確固とした根拠で支えるためには、さまざまな分野の知識を、多面的な視点からとらえる必要があります。「複数の人から話を聞いて裏付けを取った」「信頼できる文献や書籍から情報を得た」など、できるだけ主観ではない内容を根拠とするようにしてください。そうすれば、仮に誰かから理由を聞かれたとしても、論理的で説得力のある回答ができるようになりますよ。

クリティカルシンキングの基本03

【方法2】「イシュー」を見つける

イシューとは、「本質的な問い」のことです。自分の思考のクセにとらわれて、本当に考えるべき問いを間違えていると、最適な答えにたどり着くことはできません。

たとえば、「自社サービスの顧客数をどのように増やすべきか」について考えていたとします。しかし、もっと本質的な問いは「自社サービスの利益をどのように出していくか」というものかもしれません。このように、ゼロベースで考え、顧客数の増加がカギとわかって初めて、新規顧客の獲得方法について議論すべきでしょう。イシューから考え始めないと、たとえば「新規顧客数をいくら増やしたところで、リピート率が悪いから利益が出づらい」といった問題点に気づけない恐れもあります。

イシューを見つけるには、「問いの背景・前提を確認する作業」「問いを分解する作業」がそれぞれ必要です。

まず、「問いの背景・前提を確認する作業」では、どんな経緯でその問いが出てきたか、またどのような問題意識を持ってその問いを出したかについて考えます。

先ほど挙げた「自社サービスの顧客数を増やすにはどうすればよいか」という問いで考えてみましょう。その問いの背景には、自社サービスの顧客数が減少しているため何らかの改善方法が求められているのかもしれません。あるいは、最近出てきた競合他社との競争に勝つための戦略が求められている可能性もあるでしょう。問いの背景・前提が異なれば、必要な答えもきっと変わってくるはずです。

次に、「問いを分解する作業」では、抽象的な問いを、より具体的ないくつかの小さな問いへと分解します。先述した「自社サービスの顧客数を増やすにはどうすればよいか」という問いは、以下のように、もっと小さく分解することが可能です。

「顧客数をどの程度増やそうとしているか」
「いつまでに顧客数を増やそうとしているか」
「どんな顧客をターゲットにしようとしているか」

問いを分解することで、それぞれの優先順位をつけやすくなります。そうすれば、何が本当に重要なのかがわかり、経験則ではない適切な答えを導くことができるようになりますよ。

***
仕事のパフォーマンスをいつでも高い状態で発揮できるよう、みなさんもぜひ「クリティカル・シンキング」を身につけて実践してみてください。

監修:グロービス経営大学院

(参考)
グロービス経営大学院(2014), 『グロービス流 ビジネス基礎力』, 東洋経済新報社
GLOBIS知見録|クリティカル・シンキングの3つの基本姿勢: テクニック以前に必要なこと
グロービス経営大学院|GLOBIS 知見録PICK UP|なぜ「思考の型」を学ぶ必要があるの?ロジカルシンキングの基本<DAY1>
Assessment & Teaching of 21st Century Skills
グロービス経営大学院|GLOBIS 知見録PICK UP|「問い」に対する「答え」はどう考える?(1)ロジカルシンキングの基本を学ぶ<DAY8>

【ライタープロフィール】
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