なぜか成長できない人は「学びのサイクル」を回せてない。“インプットして満足” は危険すぎる

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仕事が「デキる人」と「デキない人」。その明暗は、“日頃から効果的に学び続けているかどうか” で分かれてきます。

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「仕事がデキない人」は学びが欠けている

勉強しているはずなのに仕事で思ったように成果を上げられない……。頑張っているつもりなのに同期との差が開いてしまった気がする……。「仕事がデキない人」になってしまうのはなぜなのでしょうか。

たとえば、本をよく読んでいるのに業務を行なう場面では活かされていないなど、インプットしただけで満足しているということが挙げられるかもしれません。インプットの時間を確保できているのはすばらしいですが、せっかく知識として身につけたことを実践できなければ、ただの宝の持ち腐れだと言えるでしょう。

また、他者からのフィードバックに目をつむっていることにも原因があるかもしれません。グロービス経営大学院教員の荒木博行氏によれば、「自分がつくったアウトプットは完璧だ」と考える人は、余計なプライドが邪魔して客観的な意見を受け入れられないのだそう。自分では完璧だと思えても、異なる視野をもつほかの人から見れば、改善できる点が何かしらあるはず。改善点を放置していると、結果として成長の機会を逃してしまうのです。

著書『マネジメント』で有名な経営学者のP.F.ドラッカー氏は、「知識労働者たるものは、仕事のなかに、継続学習のプロセスを組み込んでおかなければならない」と指摘します。仕事がデキない人に必要なのは、「学びのサイクル」をきちんと意識して回すことなのです。

学びのサイクル02

成長には「学びのサイクル」が必要だ

グロービス経営大学院経営研究科研究科長の田久保善彦氏によれば、「学びのサイクル」とは「時代の変化スピードにあわせて、日常生活そのものを学び続けるサイクルにすること」を指すのだそう。具体的には、以下の5つのステップに分かれています。

  1. キャリアを考える、そして何を学ぶのかを決める・見定める
    理想のキャリアに関連がある・有効に機能すると考えられる分野を選択する段階。
  2. インプットする
    さまざまなメディアから学びを得たり、これまでの経験から学びを効果的に抽出したりする段階。
  3. 次のために振り返る
    振り返りを通じて、インプットしたことを定着させていく段階。
  4. アウトプットする
    インプットしたことを成果につなげるプロセスにおいて、得た学びを定着させていく段階。
  5. フィードバックを受ける
    他人からのフィードバックを新たな学びへつなげていく段階。

学びのサイクル03

「学びのサイクル」を効率よく回していく方法

それでは、「学びのサイクル」の各ステップをうまく実践するための具体的な方法をご紹介しましょう。一連のステップを中長期的に実践すれば、仕事の成果がキャリアへ着実に現れてくるに違いありません。

1. キャリアを考える、そして何を学ぶのかを決める・見定める

田久保氏は、積極的なキャリア構築を図ることについて次のように述べています。

早い段階で自分のキャリアの方向性を考え、戦略的かつ自発的に行動することによって、効率的に自分が歩みたいキャリアに近づくことができる確率が高くなります。

(引用元:グロービス経営大学院(2014), 『グロービス流 ビジネス勉強力』, 東洋経済新報社.)

キャリアで成果を出していくためには、「理想の自分」と「いまの自分」とのギャップを探り、何が足りていないか判断する作業が必要です。まず、理想の自分を知るために「5年後、自分は職場でどのような役割をこなしていたいか?」「10年後、自分はどのような人に囲まれていたいか?」といった質問を自分に投げかけてみてください。もし回答するのが難しければ、半年後や1年後のことでもかまいません。

ある程度想像できたら、次はいまの自分と比較してみましょう。たとえば、「5年後、英語を駆使して海外でバリバリ仕事をしていたい」という理想から、「いまの自分は、日常レベルの英文読解や英会話ならこなせるが、ビジネスで問題なく通用するレベルの英語運用能力はない」と分析できるかもしれませんね。

そして最後に、その足りない能力をどのくらいの期間で身につけるか計画を立てます。理想の自分をもし5年後に設定していたら、1年ごとに区切るなどして考えてみてください。そうすれば、「学びのサイクル」をより積極的に実行しようと思えるはずです。

2. インプットする

最初のステップで、「学びのサイクル」を実行するための準備を進めることができました。しかし、そもそもインプットがなければ、学びを得ることはできません。目標が決まったら、次はそれに関連した本を手に入れてみましょう。あるいは本以外にも、新聞や雑誌、インターネット、映画など、必要な情報をインプットできる媒体はたくさんあります。どの媒体でも、インプットの際に共通するのは「全体像を把握できるものから始める」ことです。

自分のなかに基盤が確立されていないものを学ぶとき、いきなり応用から入ってもまったく理解できません。たとえば、ビジネスでよく使用される英単語や英文法を理解できていないのに英字新聞の読み方を学んでも、効果はほとんど得られないでしょう。何を学ぶにしても、自分の能力を過信せず、概念や言葉の定義がきちんと整理されているような教科書的な内容から着手するようにしてみてください。

3. 次のために振り返る

インプットが終わっても、ただ情報をもっているだけでは、うまくアウトプットできるようにはなりません。きちんと定着させるためには、インプットした内容やこれまでのアウトプット経験を振り返る必要があります。

グロービス経営大学院経営研究科副研究科長の村尾佳子氏によれば、振り返りの目的は大きく2つに分かれるそう。

・事象(業績やプロジェクトなど)そのものについて振り返り、その事象について自身やチーム、自社に知見をためる
・内省し、自分自身について深く理解する

(引用元:グロービス経営大学院(2014), 『グロービス流 ビジネス勉強力』, 東洋経済新報社.)

目的が前者の場合、「正しい現状把握」「課題点や成功要因の認識」「今後取り組むべきことの明確化」のプロセスが必要になります。たとえば、「英語のプレゼンで失敗し評価が下がってしまった」場合について考えてみましょう。3つのプロセスをふまえると、「準備段階では必要な構成を英語で考えるのが難しく、本番で論理的に説明できなかった。今後は英単語や英文法だけでなく論理構成の学習にも注力する必要がある」のような振り返りができるはず。

一方、後者の場合、目に見える「行動」だけでなく、目に見えない「知識」「能力」「価値観」といった視点からの振り返りが必要です。先ほどのプレゼンの例で言えば、「伝えたいことを英語で的確に説明できる知識や能力がない」「人前で話すのを苦痛だと思いがち」といった点が挙げられるかもしれません。これらの振り返りを適宜行なうことで、自分の状態をコントロールし、インプットとアウトプットの精度をさらに高められるようになりますよ。

4. アウトプットする

直前のステップでアウトプットの方向性が見えてきたら、仕事の場面でも実際にアウトプットをしてみましょう。アウトプットをしなければ、せっかくインプットしたこともすぐに忘れてしまうからです。

最初は、インプットした内容に自分なりの解釈をつけ加えるだけでもアウトプットになります。文章に限らず、図や絵なども加えたメモとして残しておくとよいでしょう。あるいは、備忘録的にSNSで発信してもかまいません。たとえば、「ロジカル・シンキングでは、問いに対する答えと根拠がセットになっている必要があると学んだ。自分は根拠の部分が弱くなりがちなため、『なぜそうだと言えるのか?』という質問を常に投げかけるようにしたい」など、簡単にでも記録をつけてみてはいかがでしょうか。

また、インプットした内容を職場で同僚に説明する方法も有効です。キャリア・ポートレートコンサルティング代表の村山昇氏によれば、「教える」行為には、「曖昧な部分を再認識・再学習する」「事前に整理・体系化する」「答えだけでなく考え方・プロセスも示す」「相手がきちんと理解できる伝え方・言葉を模索する」といった作業が含まれるそう。自分では理解できたと思っていても、他人に伝えるとなるとうまく言語化できないことが多々ありますよね。誰かに教えることで、自分の理解をより深められるようになるのです。

5. フィードバックを受ける

インプットとアウトプットを繰り返すだけでは、立てた目標へ本当に近づけているのか自信がもてないこともあるかもしれません。そこで必要な最後のステップが、「他者からの客観的なフィードバックを受けること」です。

先ほどもご紹介した「教える」場面で、自分の教え方は相手から見てどうだったか感想や意見を尋ねてみるのもひとつの方法でしょう。たとえば、「100点中何点?」と尋ねて「60点」と回答が返ってきたら、「残りの40点を埋めるには何が必要か?」と具体的な部分について質問してみましょう。そうすれば、「理由の説明が少しあやふやだったから、内容を再確認して確実に説明できるよう練習してはどうか」など、自分でも気づかなかったポイントを指摘してもらえるかもしれませんよ。

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仕事がデキる人は、「学びのサイクル」を普段からごく自然に回しています。気づかないうちに「仕事がデキない人」になってしまわぬよう、みなさんも継続的に学びを進めてみてください。

監修:グロービス経営大学院

(参考)
グロービス経営大学院(2014), 『グロービス流 ビジネス勉強力』, 東洋経済新報社.
GLOBIS知見録|ビジネスパーソンが知っておきたい「学びのサイクル」
GLOBIS CAREER NOTE|インプットだけで満足していない?陥りがちな「学びの罠」3つ
GLOBIS知見録|学びを加速させる、さまざまなアウトプットの方法
GLOBIS知見録|知る、わかる、できる、教える(能力開発の4つのステップ)

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