「休んでも休んでも、なぜか疲れがとれない」
「新しい1日を迎えるのがなんとなく憂うつ……」
そんな方は、心の疲れがたまってしまっているのかもしれません。今回は、誰でもすぐに始められる、朝と夜の心のケア習慣をご紹介します。
【朝の最高習慣1】3分間の感謝
目覚ましの音が響くなか、「今日も仕事だ、疲れるな」「満員電車に乗りたくないな」……なんて憂うつな気分になることはありませんか? そして、嫌な目覚めをした日には、仕事がうまくいかなかったり失敗したりして、もっと気分が落ち込んだ——そんな経験もあることでしょう。
それはどうやら、単なる気持ちの問題ではないようです。ペンシルバニア大学の研究者らが、目覚めどきに「ストレスを予測する」だけで、ワーキングメモリ(作業記憶)が低下することを明らかにしました。ワーキングメモリとは、短時間で情報を処理する脳の機能。会話、計算、読み書きといった、仕事を遂行するうえで基盤となる能力です。
つまり、朝に「今日はこんな嫌なことがありそう」と考えるだけで、脳がダメージをうけ、仕事でミスしやすくなるということ。逆に言うと、朝の憂うつな気分を意図的に変えれば、1日のストレスを減らせるというわけです。寝起きの一瞬が、1日のパフォーマンスを左右するのですね。
“世界一のコーチ” と称されるアンソニー・ロビンズ氏も、朝の気分が大切であると述べるひとり。実際彼は、毎朝3〜4分間「3つの感謝」を行なっているそうです。身近な幸せを3つ考え、それに対して感謝をささげる――こうして「感謝」で心を満たすと、「恐れ」や「心配」のような負の感情を感じなくなるのだと言います。
アンソニー・ロビンズ氏は、この儀式を「幸せのために道路をつくるようなこと」と表現しています。朝にポジティブな感情をもてば、その日1日のマインドセットが幸せなものに変わるということでしょう。
明日から、「たった数分の感謝」で1日をスタートさせてみませんか?
【朝の最高習慣2】スヌーズをかけない
アラームが鳴ったのに、二度も三度もスヌーズボタンを押してしまう……そんな目覚め方をしている人は要注意。二度寝は、脳の疲労回復を妨げてしまうのです。
睡眠研究が専門の堀大輔氏によると、「二度寝をするかどうか迷うこと」で脳が疲弊し、思考力や認知能力が低下するそう。
また、テレビ司会者でモチベーショナルスピーカー、著述家のメル・ロビンズ氏は、二度寝を習慣化すると「先延ばし癖」がついてしまうと言います。ベッドから起き上がることは、その日最初の「決断」であり、多くの人はスヌーズをかけることで先延ばし癖を強化しているとのこと。
そして、シェフィールド大学教授の心理学者Fuschia Sirois氏によれば、先延ばしをする人は、強いストレスを感じる傾向があるそう。
つまり、二度寝をすると、脳が疲れ、先延ばし行動をしやすくなり、さらにストレスを感じる……という負のループが生まれてしまうということ。すなわち、心を疲れさせないためには、少しつらくても「二度寝せず起きる」ことが大切なのです。
二度寝は無意識にやってしまうものですが、脳を休め、すぐに行動できる心をつくるためにも、改善していきましょう。
【朝の最高習慣3】ウォーキングをする
朝は気分が落ち込みがち……という方に、憂うつな気分を意図的に変える方法をもうひとつご提案しましょう。それは15分間のウォーキング。精神科医の樺沢紫苑氏が、朝の散歩は「心のための最強の健康法」だと断言しています。
樺沢氏によると、朝日を浴びながら1歩1歩規則的にリズムを刻むことで、「セロトニン」の分泌が活性化するそう。セロトニンは幸せホルモンの一種で、気分をよくしたり意欲を高めたりする働きをもつ物質です。
また、臨床心理士のジェイド・ウー氏の研究では、毎日ウォーキングをした人は、敵意や怒りが減少し、気分の落ち込みが改善されたと明らかになったそう。
樺沢氏は、起床から1時間以内、なるべく10時までにウォーキングを行なうことを推奨しています。セロトニンを活性化させるには、メンタルが弱っている人で30分、健康な人であれば15分歩くといいそうです。
朝の散歩で気持ちを整えて、よい1日のスタートを切れるといいですよね。
【夜の最高習慣1】瞑想する
ここまで最高の朝習慣をご紹介してきましたが、完全にリフレッシュしてすてきな朝を迎えるには、夜の過ごし方も当然重要です。
マインドフルネス認知療法を手がけるアメリカ精神医学会会員の久賀谷亮氏は、瞑想によって、プラス思考をもてたり不安を改善したりできると言います。瞑想をすると、ストレスホルモンの「コルチゾール」が減少し、代わりに幸せホルモンの「オキシトシン」が分泌されるのだとか。
さらに、ぼんやりしたときに脳内で活発になる「DMN(デフォルトモードネットワーク)」が瞑想により鎮まり、本当の意味で脳を休ませることができるそうです。
久賀谷氏は、次のような瞑想法を推奨しています。
- リラックスして目を閉じる
- 呼吸に注意を向ける
- 何かの考えが浮かんだら「自分はいま○○について考えている」と気づく
- 気づいた考えには注意を向けないようにしながら、意識を呼吸に戻す
この繰り返しで、自然と頭が空っぽになっていくそう。1日5~10分の短時間でも、毎日続ければ効果を期待できるそうですよ。
そんな瞑想には、睡眠を改善する効果もあると久賀谷氏。瞑想をしてDMNを鎮めると、深い睡眠に入れるとのことです。寝つきが悪い方は、夜寝る前の瞑想を習慣づけてみてはいかがでしょうか。
【夜の最高習慣2】湯船に入る
日本成人病予防協会によると、入浴をすると副交感神経が優位になり、程よい浮力の中で心が穏やかになるそうです。ここで言う入浴とは、シャワー浴ではなく「湯船に入る」こと。
さらに、入浴の習慣は、次項に述べる「睡眠」の質向上にもつながります。
睡眠改善指導を行なう “眠りとお風呂の専門家” 小林麻利子氏は、湯船に入ると眠りにつきやすくなると言います。特に、「40度のお湯に首まで浸かる全身浴」を15分間行なうことで、深い睡眠状態であるノンレム睡眠が増えるのだとか。
なお、手足などの末端が温かいと眠りにつきやすくなるので、入浴後は手足を冷やさないことが大切。そのためには、お風呂のあと1時間以内にベッドに入るのがよいと小林氏は述べます。
もしどうしてもお湯に浸かる時間がとれない場合は、足湯でもスムーズに入眠できるそうですよ。
【夜の最高習慣3】よく眠る
せっかく朝や夜にいい習慣を取り入れても、睡眠不足を解消しなければ、十分なメンタルケアはできません。前出の樺沢氏によると、慢性的な不眠を抱えている人は、じつはうつ病の発症率が40倍も上がるそうなのです。
樺沢氏いわく、睡眠不足とは1日6時間以下の睡眠が続いている状態。なんと、睡眠不足により、気分や感情を含む脳のほとんどの機能が低下し、本来の3~5割減程度の能力しかもてなくなるのだそう。
そこで樺沢氏が理想とするのは、1日7時間以上の睡眠をとること。これが難しい場合も、いまより1時間でも睡眠を増やすことで、脳機能は大幅に改善されると言います。睡眠不足感からくるストレスも解消されることでしょう。
もし寝つけないことが多いなら、先述の入浴に加えて、以下も試してみてください。快眠セラピストの三橋美穂氏がすすめる方法です。
- 寝る前に難しい本を読む
- 目の奥とあごの力を意識的にゆるめる
- 保冷剤をタオルで包み、頭を冷やす
また、先述した朝のウォーキングにより分泌されるセロトニンは、睡眠物質のメラトニンの材料となります。たっぷりのセロトニンが睡眠の質を向上させてくれますよ。
夜は心身をリラックスさせ、良質な睡眠をとって、最高の朝を迎えましょう。
***
毎日のタスクに集中していると、セルフケアがおろそかになりがち。疲れをためすぎないように、心身のリフレッシュに最適な朝と夜の時間を大切に使いましょう!
(参考)
Jinshil Hyun, Martin J Sliwinski and Joshua M Smyth (2019), “Waking Up on the Wrong Side of the Bed: The Effects of Stress Anticipation on Working Memory in Daily Life,” The Journals of Gerontology: Series B, Volume 74, Issue 1, pp. 38-46.
記憶の学校|仕事や学習の能力を高めるワーキングメモリとは?
YouTube|Morning Rituals of Successful People [Tony Robbins, Arnold ,Dwayne Johnson, Robin Sharma & More ]
介護ポストセブン|”二度寝”が引き起こす4つのリスク 太りやすい、うつ、認知症も【医師解説】
Brut.| How to finally stop procrastinating
PRESIDENT Online|最強のモーニングルーティンは「1日30分の朝散歩」である
Quick and Dirty Tips|5 Psychological Benefits of Walking
新R25|医学博士が語る「瞑想」の驚くべき効果。オススメのやり方や時間についても教えてもらった
現代ビジネス|脳の疲れを解消!動きながらでも出来る「ムーブメント瞑想」とは
特定非営利活動法人 日本成人病予防協会|入浴 ~ストレス解消法~
PLUS THERMOS|15分の完全浴がオススメ! 不眠を改善するお風呂の入り方
ダイヤモンド・オンライン|「死んでも睡眠は削るな!」コロナ禍に精神科医が断言するワケ
type|快眠セラピストが教える「驚くほど眠りの質が良くなる」睡眠メソッド100
【ライタープロフィール】
平野ももこ
大学ではフランス文学を専攻し、物語のなかの人の心を中心に研究。出版社を経営していた祖母の影響もあり、純文学、心理学、ビジネス書など幅広く読む大の読書家である。現在は、メンタルケアやカウンセリングを勉強中。バレットジャーナルの実践を通じ、生活改善に成功し続けている。