「勉強を始めた頃と比べ、モチベーションが落ちている……」
「いままでいいペースで勉強していたけど、前ほど頭に入らなくなってしまった……」
もし、あなたがこのように感じているなら注意が必要です。頑張りすぎて意欲を失う “勉強の燃え尽き” 状態に陥っているのかもしれませんよ。
今回の記事では、燃え尽きても再度勉強意欲を上向かせるための3個の秘訣をお伝えします。
「成果が出ない」せいで燃え尽きたなら、達成したことを可視化すればいい
勉強を始めた頃は手ごたえを感じていたのに、急に結果が出なくなった……。
このようにスランプに直面して意欲を失っているあなたに、つらい時期を乗り越えるヒントをお伝えしましょう。
心療内科医で本郷赤門前クリニック院長の吉田たかよし氏によれば、そのスランプは何かを習得する際に、必ず通る停滞期。「プラトー期(高原期)」と呼ばれ、この時期に脳内では、次々とネットワークが構築されるそうです。
脳がこの重要な作業に集中しているあいだに、伸びないからといくら勉強量を増やして頑張っても、成果は出ないとのこと。しかしプラトー期を抜け出せば、右肩上がりに成績が伸びる「スパート」の時期に突入すると吉田氏は言います。
そんなスランプ中の対応としてよくないのが、過度に焦ってしまうことです。吉田氏は、焦りや不安が増幅すると、感情をつかさどる扁桃体が刺激され、暴走してしまうと指摘。それが、意欲の中枢である側坐核に悪影響をもたらしてやる気を失わせ、燃え尽き症候群の原因にもなりえると述べています。
焦って勉強法を変えたり、勉強時間を増やしたり……と試行錯誤するのではなく、「スランプは成長の証」と冷静に受け止めることが大切だと、吉田氏は言います。「いまは頭のなかで知識が整理されている時期なんだ」ととらえ、新たな勉強法に手を伸ばして負荷をかけるのは避けましょう。
とはいえ、停滞期をやり過ごすだけでもストレスを感じるものですよね。独学で東大・ハーバード大に合格した “学びのイノベーター” 本山勝寛氏は、停滞期を乗り越えるポイントとして、「成長具合を確認して実感する」ことを挙げています。
たとえば、「1年後の行政書士の試験に合格する!」と思っているだけだと、なかなか手ごたえを感じられないもの。そこで「今日は参考書を2ページ進めた」「今週は過去問を20問解いた」のように、1日・1週間・1か月という短い期間で達成できたことを可視化すれば、「目標達成への軌道に乗れている!」という実感が得られるようになるのだそう。
成果が出ず意欲が湧かないときは、振り返りの時間を設けてみましょう。着実に積み上げている感触が得られれば、自分を追い詰めることなく、停滞期を冷静に乗り越えられるはずですよ。
「勉強にのめり込みすぎた」せいで燃え尽きたなら、休憩法を変えてみればいい
一時期は熱心に勉強していたのに、急にそれができなくなってしまった……。
もし、あなたがそう悩んでいるのだとしたら、原因は “のめり込みすぎた” ことにある可能性も。
メンタルケア・コンサルタントの大美賀直子氏は、燃え尽き症候群になりやすい人ほど、仕事や勉強などひとつのことに集中してしまうと指摘します。たとえばあなたは、勉強に打ち込むあまり、休憩や気晴らしの時間を犠牲にしてはいないでしょうか。
熱心に励む姿は賞賛に値しますが、休息を入れない勉強は継続が難しいもの。なぜなら、ずっと作業に打ち込むと、その後の疲労回復が困難になるからです。
コンスタンツ大学とポートランド州立大学の心理研究によると、高い緊張感のある状態で充分な休息をとらずに1日を終えると、そのあとの疲労回復が難しくなるのだそう。言い換えれば、こまめに休憩を挟み、余暇の時間をもてば、疲れてもリフレッシュしやすくなるということ。疲労回復のためにも、燃え尽きてしまわないためにも、適度な息抜きが重要なのですね。
とはいえ、その “適度さ” がつかめない人もいるはず。そこで、精神科医の樺沢紫苑氏が目安として挙げる「15・45・90分」の法則を紹介しましょう。
樺沢氏によると、集中力の高さによって、集中できる時間の長さは異なるそうです。
- 15分→高い集中力を保てる時間
- 45分→子どもが集中力を保てる時間
- 90分→大人が集中できる限界
以上を参考にして、勉強の休憩法をアレンジしてみてはいかがでしょう。
たとえば、15分ごとに机から離れ小休憩。45分経過したら気晴らしに外を散歩。それをまた繰り返して、90分まで来たらいったん勉強を区切る……という具合です。
こまめな休息で疲労を除きながら勉強するのが、モチベーションを継続させる秘訣ですよ。
「目標が大きすぎ」て燃え尽きたなら、目標をとことん具体化すればいい
税理士のほか多くの資格をもち、資格勉強の指導経験もある石川和男氏は、資格取得 “だけ” に意識を向けると、燃え尽きにつながりかねないと指摘します。資格取得という目標に到達した時点で満足し、その後の行動に移らなくなる――そんなことが起きてしまうのだとか。
本来なら、資格取得のための勉強は、仕事や新たなキャリア形成に必要なもののはず。それなのに「資格をとる」ことしか考えていないと、それを達成したあとの行動を描けず、意欲が低下してしまうというのです。
また、脳の働きという観点でも、掲げる目標が大きすぎることは燃え尽きの要因となります。脳生理学者の有田秀穂氏は、実現の難しい高望みをすると、失敗や挫折の経験が多くなるため、それが勉強意欲の低下につながると指摘しています。
その背景として有田氏が挙げるのが、脳内の快楽物質「ドーパミン」がうまく働かなくなること。ドーパミンには、ストレス中枢の活性化を抑え、過剰なストレスを感じにくくする働きがあります。
しかし、目標が高すぎると、願っても叶わないことが増え、ドーパミン神経の暴走を招く危険性があるそう。そうなると、不正行為をしてでも夢を叶えようという極端な行動に出てしまう場合もあるのだとか。
では、目標をどのように見直せば、燃え尽きずにすむのでしょう?
脳神経外科医の菅原道仁氏は、目標には「主体性」と「具体性」が大事だと述べます。
- 英語を学び直したい
→将来、海外の人と楽しく仕事したい(主体性)
→1か月で基本的な文法と単語を勉強し直す。朝と夜の15分ずつで勉強する(具体性) - 税理士の資格をとりたい
→計算能力を活かし、税に関して困っている人の役に立ちたい(主体性)
→今年中に簿記1級を取得する。問題集を1日6ページ進める(具体性)
このように、主体性と具体性を明確にすれば、どのように達成するのか、達成後どうしたいのかというイメージがつかめて、燃え尽きを防げるのです。
菅原氏によれば、ワクワクするイメージを描くだけで、ドーパミンが放出されるとのこと。勉強のストレスとうまく付き合いながら勉強に打ち込むには、具体的な夢を描くことが秘訣なのですね。
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勉強で燃え尽きたのは、それほど頑張っていた証拠。今回の記事を参考に、また勉強の意欲を取り戻してくださいね。
(参考)
All About|プラトー期からの脱出法…ダイエットや勉強の停滞期に
大学受験パスナビ|[その不調&伸び悩み、脳のトラブルかも]脳のセルフケアでスランプを乗り越える!
All About|頑張りすぎた……頑張る人が抱える「バーンアウト」のリスク
Creative Cloud|A Science-Backed Guide to Taking Truly Restful Breaks
Pub Med|Exhaustion and lack of psychological detachment from work during off-job time: moderator effects of time pressure and leisure experiences
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【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。