「いつも夜型の生活をしているから、朝の時間を生産的に過ごせていない」
「朝の時間を効率的に使いたいのに、起きてもしばらくぼーっとしてしまう」
朝型の生活に憧れがあるけれど、なかなか実践できないと悩んでいる人はいませんか?
朝の時間を有効に使えると、実際いいことがたくさんあります。今回は、朝型のメリットを享受するために、夜型の人でも朝に活動的でいられるコツをご紹介します。
夜型が朝に活動しづらいのは「遺伝子」が原因
イギリスのエクセター大学で睡眠を専門とするサミュエル・ジョーンズ氏らが2019年に行なった研究によれば、人が「朝型人間」か「夜型人間」のどちらに分類されるかは、「時計遺伝子」の数によって決まっているそう。
「時計遺伝子」とは、体内時計をコントロールする役割をもつ遺伝子のこと。この遺伝子は、私たちが眠くなる時間に大きな影響を与えています。351個ある時計遺伝子のうち、より多くをもち、さらにそれが網膜に集中している人ほど、入眠が早く朝型になりやすいのだとか。
遺伝子によってコントロールされていると考えると、夜型の人が朝型に生活習慣を変えることは、なかなか容易ではないように思えるかもしれません。しかし、朝に活動的になれない具体的な理由に着目すれば、対処法はきっと見つかるはずです。
厚生労働省が示すところでは、朝に活動的になれない理由は主に「メラトニン」にあるそう。メラトニンは体内時計の調節機能をもつホルモンであり、日中の分泌は少なく、夜間には分泌量が数十倍に増加します。
体内のリズムは、メラトニンの分泌量が日夜で異なることにより形成されます。夜型の人の場合、朝になってもメラトニンが分泌され続けることから、睡眠モードが続き活動的になりづらいのです。
朝に活動的でいられると「仕事がはかどる」
実際、朝に活動的でいられると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
エバーハルト・カール大学テュービンゲンの生物学者であるクリストフ・ランドラー氏の研究によれば、朝型の人には「長期的な目標に向かって時間を費やしている」のような積極性があったそう。また、そうした特徴から、「朝型の傾向」と、仕事の高い業績・キャリアの昇進そして高収入といった「仕事におけるアドバンテージ」とのあいだに相関関係が見られたのだとか。朝早く起きると1日の準備をする時間を十分確保できるため、キャリアの成功につながりやすいと考察されています。
さらに、スタンフォード大学睡眠医学センターの神経内科医である河合真氏も、日本の会社において、朝型の人のほうが仕事で成果を残しやすいと述べています。朝型の生活をしていると早い始業時間にも適応できるため、夜型の人よりも仕事が苦になりづらい傾向にあるのだそう。結果として、朝型の人はよいパフォーマンスが出せるのです。
夜型の人が朝型の生活スタイルへ無理に適応させる必要はありません。とはいえ、朝に活動的でいられるとこうしたメリットがあることは、心に留めておいてもよいかもしれません。
朝型に近づきたいなら「体内時計」に注目
では、夜型の生活をしていたり早起きに不安があったりする人でも朝に活動的でいるためには、どのような対策をとればよいのでしょうか。「朝型に近づくためのコツ」を3つご紹介します。
【コツ1】「太陽の光」でメラトニンを抑制し、体内時計を整える
前出の河合氏は、朝型・夜型の遺伝的傾向を変えることは困難であるとしながらも、朝型の生活に慣れるには「太陽の光」が効果的だと言います。
人間の脳には体内時計が組み込まれており、体温やホルモンに関連する身体のリズムはその体内時計を基準として変動するそう。そして、朝に浴びる「太陽の光」には、メラトニンの分泌量を抑え、体内時計を早めて身体を活発化させる効果があるのだとか。
また、早稲田大学先端生命医科学センター長の柴田重信氏によれば、この体内時計は24時間ではなく24時間15分と少し長めの周期になっているため、体内時計を毎日リセットする必要があるそう。朝に太陽の光を浴びると脳の視床下部にある視交叉上核という部分が反応し、1日の始まりとして体内時計の活動を刺激することができるのです。
【コツ2】「絶食期間」を設け、朝食時にインスリンを分泌させる
前出の柴田氏によれば、朝食をとる時間に気をつけると、体内時計がうまくリセットされるそう。
朝食をとると血糖値が上がり、膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンは、時計遺伝子にシグナルを送ることで体内時計をリセットしてくれるホルモン。柴田氏は、インスリンのこの効果をうまく引き出すためには、夜から朝にかけての絶食時間を10時間以上設けることが重要だと言います。
たとえば、夜の20時に夕食を食べた場合、次の日の朝6時くらいまでは何も食べないようにしましょう。そうすると、朝食をとった際にインスリンが働きやすくなり、体内時計をより効率的にリセットできて活動的になれるのです。
【コツ3】「眠るタイミング」を早め、メラトニンの分泌を調整する
前出の生物学者ランドラー氏によれば、「朝に活動的でいること」と「睡眠時間」には関係がないそう。むしろ、真に重要であるのは「眠るタイミング」なのだとか。
メラトニンは体内時計をコントロールしており、起床から14〜16時間後に分泌し始めるそう。通常ならば、起床してから14〜16時間後に身体が「活動停止モード」へと向かいます。そのため、就寝のタイミングとしては、起床から14〜16時間後がベストだと言えるでしょう。
たとえば、朝の7時に起きた場合、夜の21時、遅くとも23時には寝る準備をするのが理想です。生活習慣をメラトニンの分泌リズムと合致させると、体内のリズムが整い、朝起きてすぐ活動的になれるのです。
***
遺伝的な要素を変えることはなかなか難しいかもしれません。とはいえ、朝型の生活に合わせていくことは可能です。自分の身体との調整を図りつつ、朝の時間を有効活用していきましょう。
(参考)
Nature|Genome-wide association analyses of chronotype in 697,828 individuals provides insights into circadian rhythms
WIRED|「夜型」の人が努力しても、決して「朝型」になれない:研究結果
e-ヘルスネット|メラトニン
Harvard Business Review|Defend Your Research: The Early Bird Really Does Get the Worm
BBC WORKLIFE|Why you shouldn’t try to be a morning person
日経doors|「朝型」「夜型」は遺伝 「朝活」には向き不向きがある
HAYASHIBARA| 第5回 体内時計を正しく動かして、24時間の健康リズムを
武田薬品工業株式会社|体内時計と睡眠のしくみ|体内時計を調節するホルモン、メラトニン
Inc|7 Reasons Productive People Go to Bed Early
【ライタープロフィール】
YOTA
大学では法律学を専攻。塾講師として、中学~大学受験の6科目以上の指導経験をもつ。成功者の勉強法、効率的な学び方、モチベーション維持への関心が強い。広い執筆・リサーチ経験で得た豊富な知識を生かし、効率を追求しながら法律家を目指して日々勉強中。