人は “こう” 言われれば意欲的になる。「やる気を出して」と言うより簡単に相手を動かせる方法。

相手のやる気に頼らずに、チームで協力し合いながらスムーズに仕事を進める達ビジネスパーソン達

自分のやる気を出すことでさえ難しいのですから、他者のやる気を自由にコントロールするなどきわめて困難です。しかも、やる気はかなりの “レアもの” なのだとか。

ただ、仕事においては部下や後輩、同僚などに、なんとかやる気を出してほしいときがあるでしょう。そこで今回は、相手のやる気に頼らなくても、相手が自発的に動くようになる、3つの方法を紹介します。

「やる気」はレアな存在

やる気にまつわる、あるエピソードを紹介しましょう。メディアアーティストの市原えつこ氏は、早稲田大学の先輩でもある発酵デザイナーの小倉ヒラク氏に「やる気が出ない」という悩みを相談したところ、「やる気は出ていない状態のほうが普通」との教示を受けたそうです。その際の市原氏による解釈は次のとおり。

「やる気はそもそも24時間、常時勝手に湧き出てくるものではなくて、なかなか採掘できないレアメタルのようなもの」

(引用元:日経COMEMO|やる気はなくて当たり前? 意欲という枯渇性資源のマネジメント

つまり、やる気は出ている状態のほうが非常に珍しいということ。だからこそ小倉氏は、やる気出現時にその最大化を図るべく、マネジメントが必要だと説いているそうです。

やる気がないとき、やる気が出たときの自分をいかに最大活用できるか考えているビジネスパーソン

この小倉氏の言葉は、市原氏の目からウロコを落としただけでなく、思いがけない効果をもたらしたのだとか。その説明とともに、次項より具体的な方法の説明に入ります。

1.「やる気」への管理意識を高めてもらう

市原氏は、やる気についての悩み相談で新たな視点を得ただけでなく、その悩み自体も意外なかたちで解決していったようです。内容は次のとおり。

不思議なことに、「やる気ってそもそもなくて当たり前なのか〜」と腑に落とした状態で生活をすると、逆に枯渇していたモチベーションが復活していきました。

(引用元:同上)

小倉氏に新たな視点を与えられる前、市原氏は自分自身に対して常にやる気を出すようプレッシャーをかけ、やる気が出ないときには罪の意識を感じていたとのこと。そうした行為がむしろ、意欲を削いでいたのではないかと市原氏は分析しています。

この展開は、もっとやる気を出してほしい部下、後輩、チームメンバーなどに別のかたちでアプローチする際の、いいヒントになるかもしれません。肩の力を抜いて「やる気への管理意識」を高めてもらうよう導くのです。たとえばミーティング時に、和やかな雰囲気で導くとすれば、こんな感じでしょうか。

今日はちょっと「やる気」の話を……。じつは「やる気」って、出ているときのほうが珍しい。レアメタル並みだという人もいる。だから、やる気がひょっこり出たときに最大化できるよう、方法をみなで考え、共有してみよう。

たとえば、やる気が出たら手を挙げて、「ハイ、いま私やる気出ました」と言って注目を浴び、後に引けなくなるようにするとか、思わず笑ってしまうようなアイデアでもいいよ。

このあとは当日でも後日でも、雑談形式で楽しみながら案を出し合うのはいかがでしょう。あるいは、ひとり1案ずつ考えて共有シートにでも記入し、後日リーダーが発表してもいいかもしれません。

いずれにせよ、こうすることで部下や後輩、チームメンバーたちは、「やる気が出た自分」を客観視するようになり、自然と管理意識を高めてくれるのではないでしょうか。また、客観視できれば論理的な思考に切り替わるので、「やる気を出さなきゃ」という精神論的な罪の意識から解放され、市原氏のようないい展開になっていくかもしれません。

やる気を出さなきゃと自分を追い詰めていたビジネスパーソンが、その呪縛から解放された様子

2.「やる理由」を伝え「有能感」も与える

ビジネスコーチングを手がける株式会社PABLO代表取締役の岩崎徹也氏は、“やる気がない状態” について、こう説明します。

要するに、やる気がないように見える部下は、「やる気がない」のではなく「やる理由がない」から行動しないのです。

「これをやることによって、会社として、または個人として、どんなメリットがあるのか」

それが明確になっていない状態で「そんなことを考えずにやれ!」というのは、実は大きな間違いなのです。

たしかに、「〇〇のデータをできるかぎりたくさん集めて」などと言われ、ただ延々と、いったい何に使うのかわからないまま作業している状態で、「それしか集めてないの? もっとやる気を出して!」と言われても、なかなか難しいですよね。岩崎氏はこう断言します。

必要なのは「やる気」ではないのです。人間は「やる理由」があればやるのです。

(引用元:東洋経済オンライン|やる気ない部下を嘆く上司のほうが実はダメな訳

ならば、部下や後輩、同僚に対しても、その仕事を「やる理由」について、より建設的な表現で伝えてみてはいかがでしょう。先の例(〇〇のデータをできるかぎりたくさん集める仕事)で言えばこんな具合でしょうか。

  • 「現状を打破するために〇〇のデータをたくさん集めて分析し、できるだけ早く反映させたい。Aさんにはその収集役を担ってほしい」

  • 「取引先への説明で必要なので、〇〇のデータをできるだけ多く集めてほしい。その作業を行えばAさんの〇〇への理解も進むので、先方からの質問にも困らないと思う」

この手法は、人材育成事業を展開する株式会社FeelWorks代表取締役・青山学院大学兼任講師の前川孝雄氏が、部下のやる気について説く内容にも、うまくつながっています。

「何のためにこの仕事をやるんだっけ」ということを、対話の中で納得してもらうことが、まずスタートなんです。その上で、「あなただからこの仕事を任せるよ」っていうことで本人も納得して、「よし、自分だからやれる仕事だ」と思うと、有能感が持てて、「よし、できる」という感じになれるんです。

(引用元:ログミーBiz|理想の上司の役割は「管理職」ではなく「支援職」 部下のやる気を高めるマネジメントの極意

ちなみに有能感とは、

特定あるいは多くの分野で自分は優れた能力を発揮できという実感

(引用元:宮本眞巳(2016),「感性を磨く技法としての異和感の対自化」,日本保健医療行動科学会雑誌,31巻,2号,pp.31-39.

とのこと(文字の抜け落ちは記載のまま)。つまり、前川氏の言葉にも表れているように「自分は優れた能力を発揮できる」と確信するような感覚です。その有能感を考慮したうえで先の言葉をアレンジするならば、こんな感じになるでしょうか。

「現状を打破するために〇〇のデータをたくさん集めて分析し、できるだけ早く反映させたい。データ収集が得意なAさんには、ぜひともその収集役を担ってほしい」

「誰でもいいから、手が空いている人やってくれない?」なんて言われるより、「あなただからこそやってほしい」と言われるほうが、ずっと意欲的になれますよね。

「あなただからこそ、この仕事を任せたい」と上司に言われ嬉しそうなビジネスパーソン

3.「数分間だけ」のルーティンを与える

急ぎではないが、絶対に必要な単純作業を部下もしくは後輩に頼んだとき、サッと効率よく終わらせて次の仕事に取りかかるAさんと、ダラダラやってなかなか終わりそうにない、あるいはなかなか始めないBさんがいたとします。Aさんの心配はいりませんが、Bさんにはまず数分間だけ動いてもらうことが必要かもしれません。

精神科医の西多昌規氏によれば、

いくら頭で「やる気出すぞ」と念じていても、残念ながら効果は低いようです。むしろ、からだを動かすほうが意欲を高めるには合理的

なのだとか。近年の研究により、

「やる気」の源泉とも言える大脳基底核を活性化させるのは、脳ではなくからだの動き

だとわかってきたからです。「生理学研究所」の説明によれば、大脳基底核は線条体・淡蒼球・視床下核・黒質といった4つの神経核から構成されているとのこと。

“今日は特に汚れているところだけキレイにする” と心に決めていたのに、掃除を始めてみたら意外と気分が乗ってきて、全部ピカピカにしてしまった――なんて体験をしたり、話を聞いたりしたことはないでしょうか。西多氏によれば、

身体からの刺激が、線条体⇔淡蒼球という「やる気」の神経ループを活性化させるという結論

(引用元:幻冬舎plus|松井秀喜の座右の銘「努力できることが才能」は脳科学的にも正しかった

なのだそうです。この事象は単純作業ほど顕著に現れるとのこと。

また、「やりたくない」と感じる本能を、抑え込むことができる理性の脳が働き出すまで5~6秒かかることから、明治大学法学部教授の堀田秀吾氏は、まず5秒動くようアドバイスしています。同氏いわく、

この「5秒」を我慢して、やることに向き合い、行動を起こすと、脳のやる気のエンジンが動き出します。

とのこと。

(引用元:PRESIDENT Online|やる気は"スイッチ"ではなく"エンジン"だった…世界最先端の研究が導き出した「最初の5秒」の重要性

堀田氏はSTUDY HACKERのインタビューでも、このように伝えています(※以下「側坐核」は前出の「線条体」に含まれる/「脳科学辞典」参考)。

側坐核は、行動が起こってから、「やる気物質」とも呼ばれる「ドーパミン」という神経伝達物質の分泌を促し始めます。「やる気になって、行動する」のではなく、「行動するから、やる気になる」というわけです。

(引用元:STUDY HACKER|“勉強の大敵” ストレスを解消する「勉強前・勉強中・勉強後」の最強ルーティン

ならば次のようなルーティンを設け、相手をごく自然に導くといいかもしれません(単純な作業推奨)。

「仕事を始める前の最低でも5分間、〇〇の整理をしてください。作業を済ませたことは、必ず日報にも入れておいてください」

作業した事実を報告しなければならないし、5分であれば負担に感じる人は少ないので、そのルーティンは定着しやすいのではないでしょうか。

そのなかで、無意識のうちに始まりの5~6秒以降にやる気のエンジンがかかれば、「あっという間で気がついたら5分以上経っていた」「5分なのに結構作業が進んだ」なんて嬉しい事象が発生するかもしれません。ダラダラさんと称される人はいなくなるでしょう。

***
相手のやる気に頼らなくても、相手が自発的に動くようになる、3つの方法を紹介しました。あなたが驚くほど、相手が積極的に動いてくれるといいですね。

(参考)
PRESIDENT Online|やる気は"スイッチ"ではなく"エンジン"だった…世界最先端の研究が導き出した「最初の5秒」の重要性
ログミーBiz|理想の上司の役割は「管理職」ではなく「支援職」 部下のやる気を高めるマネジメントの極意
日経COMEMO|やる気はなくて当たり前? 意欲という枯渇性資源のマネジメント
宮本眞巳(2016),「感性を磨く技法としての異和感の対自化」,日本保健医療行動科学会雑誌,31巻,2号,pp.31-39.
STUDY HACKER|“勉強の大敵” ストレスを解消する「勉強前・勉強中・勉強後」の最強ルーティン
幻冬舎plus|松井秀喜の座右の銘「努力できることが才能」は脳科学的にも正しかった
東洋経済オンライン|やる気ない部下を嘆く上司のほうが実はダメな訳
生理学研究所|大脳基底核とは
脳科学辞典|腹側線条体

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