“勉強の大敵” ストレスを解消する「勉強前・勉強中・勉強後」の最強ルーティン

堀田秀吾先生インタビュー「勉強前・中・後の最強ルーティン」01

日々の仕事に追われながら勉強を続けることはそう簡単ではありません。それこそ仕事でたくさんのストレスをためてしまっていては、勉強にも身が入らないと思います。では、どのようにしてストレスに対処していけばいいのでしょうか。

『図解ストレス解消大全 科学的に不安・イライラを消すテクニック100個集めました』(SBクリエイティブ)が話題となっている明治大学教授の堀田秀吾(ほった・しゅうご)先生に、勉強と相性のよいストレス解消法を教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

勉強前に軽い運動をしたら、「とにかくやる!」

ストレスがたまっている状態で勉強をするとなると、やはり勉強を始める瞬間が大きなハードルとなります。仕事による肉体的な疲労に加えてストレスまでたまっていては、「よし、勉強をするぞ!」とはなかなか思えないですよね。

そこで、まずは勉強を始めるタイミングでやるべきことをお伝えしましょう。ちょっと身もふたもない言い方になるかもしれませんが、とにかくやり始めるのです。

いわゆる、「やる気スイッチ」として知られる脳の側坐核という部分がもつ特性を活かすことがその理由です。側坐核は、行動が起こってから、「やる気物質」とも呼ばれる「ドーパミン」という神経伝達物質の分泌を促し始めます。「やる気になって、行動する」のではなく、「行動するから、やる気になる」というわけです。

みなさんにもこんな経験はありませんか? 面倒だと思いつつも掃除を始めてみたら、「ここもきれいにしたい」「この汚れも気になる」と夢中になっていたというようなことです。

作家の村上春樹さんも、書くことが思い浮かばなくてもとにかく毎日決まった時間に机の前に座るそうです。そうしていったん書き始めるとなんだかんだと書けてしまう。こういった現象は、まさにやる気スイッチの特性によるものです。

また、勉強を始める前に「運動をする」こともいいでしょう。1分間の心拍数が120を超える程度の軽い運動を10分間行なうくらいでかまいません。少し勢いをつけて階段を昇り降りする昇降運動をする程度の運動ですね。脳は糖分と酸素によって働いていますから、運動をすることで血行を促進し、脳に酸素をどんどん供給してあげるのです。そうすることで、脳が活発に働き始めます。

堀田秀吾先生インタビュー「勉強前・中・後の最強ルーティン」02

「古畑任三郎」のまねをすれば、イライラが軽減する?

では、いざ勉強を始めたあとはどうでしょうか。おそらく、思うように勉強がはかどらないことにイライラするなどして、集中力が削がれるということが起きるはずです。

そういうときは、ヨガをするのがいいと思います。ヨガには先にお伝えした運動と同じような血行促進効果も期待できるのですが、大きいのは「瞑想」としての効果です。もちろん、慣れるまでにはある程度のトレーニングが必要ですが、ヨガを日々のルーティンに組み込むことができれば、「ヨガをすれば瞑想効果により集中力、注意力、持続力を取り戻す」というふうに身体が覚えてくれます。

もっと簡単な方法なら、かわいいものの写真を見るというものもあります。これは、大阪大学の入戸野宏先生による研究で検証されたものです。たとえば、かわいい子どもやペットの写真を見る。かわいいのですから、もちろんじっと見入ることになります。それは紛れもなく集中しているということですよね。そうして取り戻した集中力が、その後の勉強をする際にも持続するという仕組みです。

また、それと似た仕組みでイライラに対処するおもしろい方法が、ひたいを指でタップするというものです。若い世代には知らない人もいるかもしれませんが、むかしのドラマの古畑任三郎がなにかを考えるときのしぐさです。

できれば、「触れるか触れないか」という微妙な具合でひたいを指でトントンとタップしてみましょう。すると、その行為に集中することになり、イライラだとか不要な食欲といった身体の奥底から湧いてくる感情を抑制することができます。これは、いい意味で「気をそらす」ことを応用したものです

余計な感情に集中力を奪われずにじっくり考えるときには、古畑任三郎だけでなく多くの人が自然にひたいやあごなど顔の一部に指で触れています。その科学的根拠は知らずとも、私たちはむかしからそのようにして余計な感情を抑制する手段を使ってきたのかもしれません。それを意図的にやるというだけのことです。

堀田秀吾先生インタビュー「勉強前・中・後の最強ルーティン」03

ネガティブな出来事をどうとらえるかが重要

最後は勉強後です。まじめな人のなかには、「今日はテキストを○ページ進めるつもりだったのにできなかった……」といったネガティブなことが起これば、「やっぱり私は駄目な人間だ……」と自分を責めるような人もいるかもしれません。でも、そもそもの話になりますが、ネガティブな出来事はそんなに悪いものでしょうか?

スペインのポンペウ・ファブラ大学が37,000人を対象に行なった調査があります。その結果、楽しことや嬉しいことなどポジティブなことはもちろん、つらいことや悲しいことなどネガティブなことも含めてたくさんの経験をしている人のほうが、ポジティブなことばかりが続いているような人よりも幸福度が高いことがわかりました。

いいことも悪いことも含めて人生なのです。どれだけハッピーな状況にある人も、過去につらいことや悲しいことを一切経験していなければ、自分がいまどれだけハッピーなのかを測る尺度をもっていないということになります。それでは、いまの幸せを感じることも難しい。先の調査結果にもうなずけます。

ですから、やるべきことができなかったようなネガティブな出来事をどうとらえるかということが重要になります。できるときもあれば、できないときもある」「いろいろあっていいじゃないか」——そんなふうに、できなかったという事実を気楽に受け止めてほしいと思います。

堀田秀吾先生インタビュー「勉強前・中・後の最強ルーティン」04

【堀田秀吾先生 ほかのインタビュー記事はこちら】
「ストレスたまる……でも頑張る」は超危険。8つの変化をもたらす最良のストレス解消習慣
なぜかいつも「決められない」人がしている決定的過ち。デキる人ほど “これ” をやらない

【プロフィール】
堀田秀吾(ほった・しゅうご)
1968年6月15日生まれ、熊本県出身。言語学者。明治大学教授。1991年、東洋大学文学部英米文学科卒業。1999年、シカゴ大学言語学部博士課程修了(Ph.D.in Linguistics、言語学博士)。2000年、立命館大学法学部助教授。2005年、ヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程修了。2008年、同博士課程単位取得退学。2008年、明治大学法学部准教授。2010年より現職。企業の顧問や芸能事務所の監修、ワイドショーのレギュラー・コメンテーターなども務める。『絶対忘れない勉強法』(アスコム)、『最先端研究で導きだされた 「考えすぎない」人の考え方』(サンクチュアリ出版)、『科学的に証明された 心が強くなるストレッチ』(アスコム)、『いじめのことばから子どもの心を守るレッスン』(河出書房新社)、『科学的に自分を変える39の方法』(クロスメディア・パブリッシング)、『このことわざ、科学的に立証されているんです』(主婦と生活社)、『もしも崖っぷちアイドルが心理学を学んだら』(アスコム)、『言葉通りすぎる男 深読みしすぎる女』(大和書房)、『科学的に人間関係をよくする方法』(KADOKAWA)、『科学的に元気になる方法集めました』(文響社)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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