脳のために週1回は “ノー残業デー” をつくるべき。脳科学者がすすめる「最高の夜の過ごし方」

脳のためのノー残業デーのすすめ01

ジョブマーケットを調査する「OpenWork」によると、ビジネスパーソンの月の平均残業時間はおよそ47時間とのこと。また、41.2%の人が1日に1~2時間の残業をしているそうです。

働き盛りのビジネスパーソンにとって、「毎日残業ゼロ」は難しいことかもしれません。人手が不足していて、こなしてもこなしても仕事が降ってくる……。周りの人が残っていて自分だけ帰りづらい……。私たちはつい残業してしまいます。

しかし、ある脳科学者は、パフォーマンスを上げるためにも、週に1日は絶対に残業しない “ノー残業デー” をつくったほうがよいとすすめています。その理由とおすすめの過ごし方を説明しましょう。

残業ばかりだと脳が酷使されすぎる

毎日残業し続けていると心身が疲弊することは、みなさんにも大いに経験があるはず。そして当然、脳も悪影響を受けています。そこで、医学博士の加藤俊徳氏がすすめているのが、その状況を解消し脳を強化する方法として「週1回のノー残業デー」を設けること。

加藤氏は、残業を許す状況が続くと、ダラダラと働くのが癖になると指摘します。そして、思考の切り替えが難しくなり、脳の同じ部分が酷使されるようになってしまうのだそう。

たとえば、今週中に作成すべきレポートがある場合。週末まで時間があるからダラダラやっても間に合うだろうという意識だと、アウトプットの役割を担う左脳が、優柔不断な一面を持つ右脳に負けてしまうと、加藤氏は指摘します。一方で、今日は残業しないと決めて「今日の定時までになんとかレポートを終わらせよう」と明確な時間設定をすると、足を引っ張っていた右脳が左脳のアウトプットを助ける役回りに変わり、文章がスラスラ出てくるようになるのだとか。

学生時代の宿題を思い返しても、締め切り間近のほうが頭が働いたという経験をしたことがある人は多いはず。タイムリミットの設定は、脳をバランスよく働かせることに役立つのです。「定時がタイムリミット」というノー残業デーを設けることそのものが脳トレになる――では、定時退社後はどんな過ごし方をするのが理想的なのでしょうか?

脳のためのノー残業デーのすすめ02

1. ウォーキングで海馬を活性化→記憶力が高まる!

ノー残業デーの過ごし方で最も手軽に脳を活性化させられるのが「ウォーキング」です。脳神経学者の澤田誠氏によると、ウォーキングには記憶の形成や引き出しに重要な役割を担う「海馬」を活性化させる効果があるとのこと。ジムのランニングマシンを使ってもかまいませんが、風景が変わり続ける外のウォーキングのほうがより効果的なのだそう。

「昨日に比べると今日は寒いな」、「暑い割に快適だ。湿度が低くなっているのかな」といったことを感じるだけでも、記憶力の維持に有効に働きます。

(引用元:澤田誠(2013),『なぜ名前だけがでてこないのか―脳科学者が教える本当に正しい記憶力の鍛え方』, 誠文堂新光社.)

米ピッツバーグ大学の報告によると、週3日40分間のウォーキングを1年間続けた結果、海馬の体積が2%増えたとのこと。ウォーキングにかける時間は、1日40分を目安にするといいでしょう。

たとえば、いつもは電車で帰るところを歩いたり、最寄り駅から少し遠回りして家に帰るなどすれば、それだけで時間を確保できそうですね。まずは、ノー残業デーの日に40分のウォーキング時間を確保し、休日などもうまく使いながら、最終的にはウォーキングの頻度を上げていきましょう。

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2. 目を積極的に動かしながら風景を楽しむ→脳の注意力が高まる!

仕事でパソコンのモニターを凝視しがちな人は要注意。ノー残業デーにこそ、視線を解放してあげるべきです。

脳神経外科医の築山節氏によれば、パソコンのモニターのような小さな画面を長時間見続けると脳に悪影響が及ぼされ、注意力が低下してしまうのだそう。ビジネスシーンで注意力が低下すると、たとえば次のような問題が現れます。

  • 話しかけられてもパッと反応できない
  • 機転の利いた返しができない
  • 周囲の変化に疎くなる

思い当たる人は、ぜひ目を動かしましょう。目と脳は連動しているため、目を積極的に動かしてあげると、脳は情報をキャッチするために活性化するとのこと。

特におすすめなのが、空に浮かぶ雲や飛行機といった “遠くの景色” に注目したのち、観葉植物の葉脈や蛇口から落ちる水滴など “思いっきり小さな世界” に注目すること。このようにダイナミックに目を動かすことで、脳はより活性化するのです。

たとえば、仕事からの帰り道に公園に立ち寄り、ベンチに座りながら周囲の景色を楽しんでみるのはどうでしょう。仕事のストレスからも解放されてほっと一息、いい気分転換にもなるはずです。

脳のためのノー残業デーのすすめ04

3. つくったことがない料理に挑戦してみる→脳の基礎体力が高まる!

「すぐに『面倒くさい』」と感じる」
「楽なほうに流される」
こういった傾向がある人は脳の基礎体力が足りていないと、前出の築山氏はいいます。

脳の基礎体力とは、すなわち前頭葉の強さのこと。前頭葉は、脳に蓄積された情報を駆使して、どのように行動するかを決める脳の司令塔です。この司令塔が弱いと、脳は欲求に負けてしまうのだとか。

築山氏によれば、効率的に前頭葉を鍛えるには、料理をはじめとした家事が効くとのこと。たとえば料理には、どの材料を使うかという「選択」、段取りの優先順位を決める「判断」など、前頭葉の司令に欠かせない機能がフルに使われる効果があるのです。

とはいえ、作り慣れたメニューでは、脳はそれほど刺激されないのだそう。そこで、週に1回は、つくったことのない料理をつくることをすすめています。

仕事では、誰かが命令してくれたり、全体の流れに乗って動いていれば終わっていくこともありますが、家事は自主的に動かないと終わりません。その、自分で考えて行動するときに、前頭葉の指令を出す力が鍛えられます。

(引用元:築山節((2006),『脳が冴える15の習慣: 記憶・集中・思考力を高める』, 生活人新書.)

前頭葉を鍛え、自分を律せられるようになれば、ビジネスシーンでのパフォーマンスが上がることはいうまでもありません。また前頭葉が強くなると、集中力の向上も期待できます。ノー残業デーには、自宅で新しい料理にチャレンジしてみるのもよさそうですね。

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【番外編】美容院を新規開拓→扁桃体が刺激され、安定した感情と思考が得られる!

脳の扁桃体は、感情を形成するのに欠かせない部位です。その一方で、十分に鍛えられていないと感情の起伏が激しくなり、トラブルを起こしやすくなるという一面も持っています。

そんな扁桃体に効くのが「新しい体験」です。そこで、前出の加藤氏がすすめているのが、美容院を新規開拓すること。新しい美容院へ行くと、数多くの刺激的な体験が待っていますよね。行ったことがない場所に行ける、新たな美容師と出会う、自分の見た目が変化する……など。

扁桃体を鍛えて感情が安定すると、思考も安定すると加藤氏はいいます。メンタルやパフォーマンスが安定している人が職場での信頼を勝ち取ることは、すでにあなたも実感しているはず。毎週美容師へ行くのは難しいと思いますが、時々はこうした刺激も与えてみてくださいね。

イメージチェンジがうまくいけば、周囲に新鮮な印象を与えられますし、それによって自分の気持ちにも新たな変化が生まれます。ですから、チャレンジしてみる価値は十分あるでしょう。

(引用元:加藤俊徳(2010),『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』, あさ出版.)

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ぜひ、週に1回にはノー残業デーを取り入れ、楽しみながら脳を鍛えていってください!

(参考)
働きがい研究所|約6万8000件の社員クチコミから分析した‘残業時間’に関するレポート
加藤俊徳(2010),『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』, あさ出版.
澤田誠(2013),『なぜ名前だけがでてこないのか―脳科学者が教える本当に正しい記憶力の鍛え方』, 誠文堂新光社.
AFPBB News|適度な運動で海馬の容積が増加、米研究
築山節((2006),『脳が冴える15の習慣: 記憶・集中・思考力を高める』, 生活人新書.

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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