ポジティブもネガティブも言語化する。自己肯定感を高めるための3つの「紙に書く習慣」

工藤紀子さんインタビュー「自己肯定感を高める『書く習慣』」01

より良い人生を歩むために重要なキーワードとして、どんどん注目度が増している「自己肯定感」。特に子ども教育の場では、自己肯定感を高めるためのさまざまな方法が取り上げられます。

でも、じつは大人になってからでも自己肯定感を高められるのだそう。そう語るのは、「自己肯定力スペシャリスト」の工藤紀子(くどう・のりこ)さん。大人の自己肯定感を高めるために工藤さんがおすすめするのは、3つの「紙に書く」習慣でした。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

自分をポジティブにとらえる10の質問

自己肯定感を高めるには、まず何よりも長所や短所、自分に足りない部分や過去の失敗なども含めた等身大の自分を客観視することが大切です(『この5つのステップで、大人でも「絶対的自己肯定感」を高められるワケ。』参照)。そうするために、「自分の過去を紙に書き出す」ということを私は推奨しています。というのも、頭で考えているだけでは、どうしてもネガティブな部分にばかり目が向きがちだからです。

嫌な記憶はふとしたときによみがえるものですが、いい記憶はそうではないですよね? でも、過去についていざ書き出そうとすると、普段は思い出さないいい記憶もよみがえり、「けっこういいこともあったな」と思えて、それが自分を認める糧になっていくのです。また、嫌な記憶に対しても、ネガティブな感情をそれほど抱くことなく、「あれ? 思ったよりたいしたことなかったな」と客観的に見つめることができるというメリットもある。

このとき、より自分をポジティブにとらえていくためにも、次の質問を自分に対して投げかけて、その答えを書き出してみてください。漠然と過去を振り返るよりも多くのいい記憶を取り戻すためのヒントとなってくれるはずです。

工藤紀子さんインタビュー「自己肯定感を高める『書く習慣』」03

自分で自分にささやいている言葉「セルフトーク」を書き出す

また、日常的にできることとしては、「セルフトーク」を書き出すこともおすすめです。セルフトークとは、「内的対話」と訳されます。ひとり言や、声には出さないけれども心の中で自分に向けてささやいている言葉のことです。

このセルフトークには、ポジティブな内容のプラスのものと、ネガティブな内容のマイナスのものがあります。そして、じつはほとんどの人は意識していないと、「また失敗しちゃった……」「なんで自分はこんなに駄目なんだろう……」といった、マイナスのセルフトークばかりしてしまう傾向にあるのです。

そして、自分自身を形作っていくうえで、このセルフトークの影響は本当に大きい。いわば自己暗示のようなものです。それなのに、マイナスのセルフトークばかりをしていたらどうでしょうか? 自分で自分にダメ出しを繰り返すのですから、自己肯定感が高まるはずもありません

そこで、まずは普段から自分がどんなセルフトークをしているのかを書き出すのです。無意識のままではマイナスのセルフトークをしがちですから、書き出した内容も最初はマイナスのものばかりになるでしょう。でも、その事実を知ることによって「こんなにマイナスの言葉ばかりを自分に向けてささやいていたのか」と認識できる。そうして、「もっとプラスのセルフトークをしなければ」と考えられるようになるわけです。

工藤紀子さんインタビュー「自己肯定感を高める『書く習慣』」03

頭の中の「モヤモヤ」を書き出し、本当の自分の思いを知る

それから、最後におすすめするのが、頭の中の「モヤモヤ」を書き出すこと。社会人として生きていれば、人間関係の悩みなどのモヤモヤを抱えてしまうこともあるものです。そんなとき、ただ待っているだけでモヤモヤが消えてくれることもあるでしょうけれど、それには時間が必要です。であるなら、意図的に吐き出してすっきりしてしまえばいい。頭の中のモヤモヤを書き出して言語化し、消化してしまうというわけです。

このときに意識してほしいのは、「モヤモヤの奥にある本当の自分の思い」に気づこうとすること。モヤモヤがあるときは、「相手にこうしてほしかった」といった相手に対する思いに目を向けがちです。でも、「自分はどうしたかったのか」と自分に目を向けることが、自分をより肯定的にとらえるうえでとても大切なのです。

ここまで、「書き出す」という行為によって自己肯定感を高める3つの方法を紹介してきました。ただ、勘違いしてほしくないのは、これらをやったからといって、自己肯定感がすぐに高まるわけではないこと。自己肯定感が低い人には、そうさせている思考などさまざまな習慣があります。それらをなくし、自己肯定感を高める新たな習慣をつくるには、どうしても時間がかかるもの。焦らずじっくりと取り組んでほしいと思います。

工藤紀子さんインタビュー「自己肯定感を高める『書く習慣』」04

【工藤紀子さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「自己肯定感が低い人」6つの行動の癖。自分の長所に注目するには “強い意識づけ” が必要だ
この5つのステップで、大人でも「絶対的自己肯定感」を高められるワケ。

職場の人間関係は自己肯定感が9割

職場の人間関係は自己肯定感が9割

  • 作者:工藤紀子
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【プロフィール】
工藤紀子(くどう・のりこ)
1962年生まれ、埼玉県出身。自己肯定力スペシャリスト。JISEエグゼクティブトレーナー。一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会代表理事。ヴィーナス・クリエイト代表。子育て中に「自己肯定感」の大切さを知り、自らも自己肯定感を高めたことで、自らの人生を好転させる。「心の仕組み」の理解と「セルフエスティーム向上」についての研究を続け、自己肯定感を高める独自メソッドを確立。2005年、ヴィーナス・クリエイトを立ち上げ、「女性の幸せが社会の幸せを創造する」という理念のもと年100回以上のセミナーを開催し、延べ2万人を指導。2013年には一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会を設立。誰もが本来の力と自信を取り戻し、幸福度の高い社会を実現することを目的に、セミナーや企業研修、講演会を通じて自己肯定感を高める機会の提供、自己肯定感を広く普及できる人材の育成に注力している。2019年、中学校道徳教科書(学研)に「自己肯定感」について執筆。「子どもも大人も自分らしくハッピーに!」をキャッチフレーズに、自己肯定感で職場や社会を元気にする「ラブ・マイセルフプロジェクト100万人プロジェクト」に取り組んでいる。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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