自尊心低めの私が「リフレーミングノート」で自分の長所を探してみました。

元気なく窓の外を眺める、自尊心が低くなっているビジネスパーソン

「自分は能力が低いから……」「本当にわたしってダメだなぁ……」などと自分を卑下したり、人と比べては「どうせわたしなんて……」「あの人は〇〇なのに、自分には何もない」などと悲観したりしてはいませんか?

自分の悪い面ばかりを気にしても、何もいいことはありません。いつもとは異なる視点から自分を眺めてみましょう。その際には「リフレーミングノート」が役立ちます。自尊心低めの筆者が、この方法で自分の長所を探してみました。

まずは、自尊心が低い人の特徴から説明します。

自尊心が低い人の特徴

一般的に「自尊心」は、自分をプラスに評価する感覚として知られています。社会心理学者のロイ・バウマイスター(Roy F. Baumeister)氏は、1998年に自尊心を “自己への肯定的評価” と定義しました。

したがって「自尊心が低い」ということは、自分をマイナスに評価する感覚を指すことになります。

ちなみに「自尊心と自尊感情」は同義語であり、「自尊感情と自己肯定感」を同義語で扱う論文などもあるので、この記事では「自尊心」「自尊感情」「自己肯定感」すべてを同義語としてとらえます。詳細は「自尊心とは? 自尊心が低い人の特徴&原因が明らかに!」をお読みください。

精神保健福祉士の川島達史さんが監修したコラムを参考にすると、自尊心が低い人の特徴は次のとおりです。

【自尊心が低い人の特徴】
  • つい他者と、自分を比べてしまう
  • 他人をうらやましく思ってしまう
  • 嫉妬の感情を抱きやすい
  • 自分にないものを必要以上に求めてしまう
  • 物事のデメリットばかりに目がいく
  • 自分の欠点ばかりをとらえてしまう
  • 他者の悪い部分に目が向いてしまう

また、2006年の研究では、次のような「完璧主義的傾向」と「自尊心の低さ」が密接に関わり合っていると示されたそうです。

  • ミスを過度に気にする傾向
  • 完全でありたい欲求

心理カウンセラーの福山裕康氏によれば、自尊心の低下で完璧主義が強化されてしまう側面が色濃くあるのだとか。自尊心が高いと、完璧主義が和らぐと示す、319名が参加した2016年の質問紙調査もあるそうです。

そして、大学生361名を対象に行なった2000年の研究では、次の比較的「ネガティブな要素」と「自尊心の低さ」が密接に関わり合っていることが示されたとのこと。

  • 恥ずかしがり
  • 不機嫌
  • 不安
  • 自分は無力だと考える

これらの特徴を見て、「なんとなく当てはまる」「まさに自分のことだ」、あるいは「こんなふうになることもある」と感じたでしょうか。何にせよ、自尊心が低いといいことはありません。少しでも引っかかりがあったなら、「リフレーミング」をおすすめします。

自尊心がドーンと低下中の男性

リフレーミングとは?

リフレーミング(reframing)とは、心理カウンセリングで使われている方法のひとつです。コミュニケーション心理学NLPの考え方では、物事を見る枠組み(フレーム)を変え、別の枠組みで見直すこと(リフレーム)を意味します。つまり「視点を変える」わけです。

リフレーミングには、「水が半分くらいまで入ったコップ」を題材にした有名な例があります。

フレームAの視点だと「半分しか入っていない」と思う
フレームBの視点だと「半分も入っている」と思う

このように視点を変えることで、物事の感じ方は大きく変わります。

箱が3つある様子を「3個もある」と解釈する人と「3個しかない」と解釈する人がいる

精神保健福祉士の川島達史さんは、自尊心の改善に役立つ自分の長所探しテクニックとして、リフレーミングを紹介しています。自分の欠点を見ているフレームを外し、別のフレームで自分の長所を見てみるわけですね。

リフレーミングについては「心理学のリフレーミングとは? 効果&練習法をわかりやすく解説!」で詳しく説明しています。

自分の長所を探せるなら、やってみる意欲もわくというもの。さっそくやり方を紹介しましょう。

リフレーミングノートとは

リフレーミングの基本的なやり方はとてもシンプルです。ただ自分の欠点や嫌なことを書き出し、そのあと、それぞれの視点を変えて書いていくだけ。

もちろん1枚の紙でもできますが、今回は生活コラムニストのももせ いづみさんが著書『「願いごと手帖」のつくり方』(PHP研究所)で紹介している「リフレーミングノート」を紹介します。

自分の長所を探すために書くノート

ノートなら気がついたときに取り出して見たり、書き足したりしやすいはず。

それに、リフレーミングは自分のみではなく、他者を対象にすることもできます。仕事をするうえで、人との関わりは必須。同僚や先輩に上司、取引先の人の嫌な部分に目が向いてしまったら、ノートにどんどん書き足していけばいいのです。

川島達史さんによると、他人のプラス面に目を向けることで、自尊心も高まることがわかっているそう。ならば効果も倍増ですね。

ももせさんが紹介する「リフレーミングノート」の手順は次のとおりです。

  1. ノートの左側に「自分の欠点や好きではない部分」を書き出す
  2. ノートの左側に「他者に感じる苦手な部分や嫌いな部分」も書き出す
  3. 書いたものを、少しのあいだ眺めてみる
  4. 書いたものの右側に「別の言葉に置き換えたもの」を書いていく

では、筆者もこの手順で挑戦してみます!

リフレーミングノートをやってみた

筆者が使ったのは、100円ショップでも買えるごく普通のA4ノートです。まずは左側に、自分の欠点や好きではない部分を、思いつくままどんどん書いていきます。

ノートに、自分の欠点や好きではないことを書いてみた。

ここで止めたらムダに落ち込みそう……、と思いきや、それほど不快感がありません(理由は後述)。

続けて、不特定多数(有名人なども含む)の他者に感じる苦手な部分や嫌いな部分も書いていきます。

他者に感じる苦手な部分や嫌いな部分を書いてみた。

書いたものをしばらくじっと眺めたら……、次はメガネをかけ直すように、これまでのネガティブな枠組みを外し、違う枠組みをセットして視点を変え、言葉にしていきます。なかなか楽しい作業ではありますが、思ったよりもよく考え込んで書かなければなりません

リフレームノートに書いた欠点や好きではない部分を、違う視点で見直し、書き出してみた。

こうして書いていったところ、次のような気持ちが生まれました。

リフレーミングノートをやってみた結果

一通り書かれたノート

じつは最初、「自分の欠点や好きではない部分」「他者に感じる苦手な部分や嫌いな部分」なんて書き出そうものなら、きっとイヤな記憶があれこれ呼び起こされ、不快感でいっぱいになるだろうと思っていました。

すると意外にも、淡々と文字にすることで俯瞰でき、言葉を考えるほど冷静になれました。これが本当に自他の欠点や嫌いな部分なのかどうなのか、もはや曖昧になってしまったほど。

長所と短所は表裏一体。それまで感じていたことは、ほんの一面に過ぎなかったのですね。

また先述のとおり、視点を変えて書き出す作業は、想像以上によく考えて行なわなければなりませんでした。そうした状況も、より客観性を高めてくれたと考えられます。

ズラリと並んでいた欠点や好きではない部分は、いつのまにか長所となって、ノートに埋め尽くされました。自尊心低めのわたしがノートを使い、長所を探してみた結果――

いったいなぜ自尊心を低くしていたのか、すっかりわからなくなってしまいました。

ぜひ、お試しください!

***
じつは諸外国に比べ、日本の青少年の自尊心が低いことが問題視されているそうです。北海道大学大学院 教育学研究院 准教授の加藤弘通さんによれば、自尊心を高めることは教育政策上の課題にもなっているのだとか。

自尊心が低いのは、あなただけではありません。気を楽にしつつ、ぜひ試してみてくださいね。

【関連記事】
自尊心とは? 自尊心が低い人の特徴&原因が明らかに!

(参考)
Direct Communication|自尊心を高める方法について精神保健福祉士が解説①
Direct Communication|自尊心が低い問題点と高めるメリット③
Direct Communication|自尊感情を高める3つの方法④
マイベストプロ東京:東京都の専門家・プロが見つかる - 朝日新聞|摂食障害の完璧主義と自尊心 :心理カウンセラー 福山裕康
加藤弘通(2019),「自尊感情の発達的推移とその関連要因の変化』, 内閣府 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(平成30年度), 第3部有識者の分析, pp. 149−164.
NLP 日本NLP協会 公式サイト|リフレーミング:NLP用語集
ももせいづみ(2017),『新版「願いごと手帖」のつくり方』, 主婦の友社.
Wikipedia|Roy Baumeister

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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