ToDoリストをつくっても、やると決めた仕事や勉強が終わらず、翌日にもち越してばかり……。そんな先延ばし癖は、ToDoリストのつくり方を変えるだけで簡単に直すことができるかもしれません。
近ごろ仕事の先延ばしを頻発している筆者の実践もまじえつつ、具体的な方法をご紹介しましょう。
【1】集中力のギアが上がるToDoリスト
「期日が遠いから」と先延ばしを続け、結局ギリギリになって仕事に追われてしまう。そんな癖がついている人には、精神科医の樺沢紫苑氏が提唱する「集中力のギアが上がるToDoリスト」がおすすめです。
これは、通常意識されるタスクの「緊急度」と「重要度」に加えて、「集中力が必要かどうか」を考え合わせたToDoリストのこと。
たとえば、「明日中に倉庫整理」「5日後に記事を提出」というふたつの仕事が同じ重要度で並んでいると、期日の近い(緊急度の高い)前者を優先しがちですよね。しかし樺沢氏は、このケースなら期日が遠くても集中力を要する後者の作業を優先すべきだと言います。でなければ、集中力が必要な仕事がいつまでも先延ばしになってしまうとのこと。
作成のポイントは次のとおりです。
- 下の画像のようなフォーマットの各欄に、集中力が必要な順にタスクを書く
- 集中力のいる作業ほど「AM」に書く。脳は午前中がもっとも高い集中力を発揮できるため。
- パソコンで入力する。毎日やる作業を書き出す手間を省くため。
(画像引用元:STUDY HACKER|脳科学から生まれた「集中力のギアが上がるToDoリスト」で、先延ばし癖が直った話)
<各欄の解説>
- AM/PM/毎日:午前中/午後/毎日行なうタスク
- スキマ:10分以内に終わるタスク
- 遊び:プライベートでしたいこと
- その他:緊急度も重要度も低いタスク
- ★=高い集中力を要するタスク、◎=緊急度や重要度がきわめて高いタスク
このように「集中力を発揮しやすい時間帯に集中力の必要なタスクを割り当て、上から順に片づける」というルールを定めると、大変な作業でも効率よくこなせるようになります。期日が先だからと先延ばししてしまう癖も改善されていきますよ。
こちらの記事『脳科学から生まれた「集中力のギアが上がるToDoリスト」で、先延ばし癖が直った話』では、ライターの実践報告も交えたより詳しい解説がありますので、あわせて参考にしてみてください。
【2】タスクのゴールをとことん具体的にしたToDoリスト
まじめに取り組んでいるのに、その日の仕事が終わらないことが多い。そんな方は、ToDoリストに書くタスクの「ゴール」をとことん明確にしてみましょう。
たとえば、「今日中に資料を完成させる」というタスクは一見わかりやすいようでいて、なにをもって「完成」とするかが曖昧。そこで「今日の15時までに上司に資料を提出し、17時までにOKをもらう」という具合に書いてみるのです。
行動習慣コンサルタントの冨山真由氏いわく、タスクの目的や締め切りを「第三者が見てもわかるレベル」にまで具体化すると、集中力と作業効率が上がるとのこと。そのほかのポイントは以下の3つです。
- 始業前の5〜10分でその日のToDoリストをつくる
→短時間で一気に作成することで、集中した状態で始業できる! - 思いつく限り書き出す
→雑念(仕事中に別の仕事を思い出す)がなくなる! - タスクを仕分ける
→無意識に「自分のやりやすい業務」から始めてしまうことを防げる!
タスクを明確にしたToDoリストをつくってみた
筆者自身も「まじめにやっても終わらない」ことがよくあるので、このToDoリストをつくってみました。
まず【始業前】に作成したものが、下の画像の左側(作成時間は12分)。「○=今日中に必ずやること」「×=必ずしも今日中でなくていいこと」の意味です。実践してみると、本当に仕事中の雑念がなくなり、いつもより作業効率がアップ。作成時間は10分を少しオーバーしましたが、頭の準備体操にもなり、エンジン全開で仕事を開始できました。
加えて、今回は筆者なりの工夫として、【終業後】の5分ほどで翌日の自分への引継ぎメモも作成(下の画像の右側)。朝つくったリストに、完了を表す横線やメモを入れるかたちで、作業内容を振り返ってみました。
終わらなかった作業もありましたが、「先延ばしにした」というより「所要時間が把握できた」という印象です。振り返りによって翌日のリスト作成がしやすくなると感じましたので、ぜひ実践してみてください!
【3】バーナーリスト
頼まれた仕事を断れない。こなしたいことが多すぎる。あまりにも項目の多いToDoリストを見ては気が滅入り、先延ばしをしてしまう……。そんな人には、元Google社員のジェイク・ナップ氏とジョン・ゼラツキー氏が発案した「バーナーリスト」がおすすめです。
「バーナー」とは台所にある「コンロ」のこと。1枚の紙を、以下のようなふたつのバーナーがあるキッチンに見立てて、やるべきことをリスト化します。
<各スペースの役割>
- 手前のバーナー:最重要タスクとその進行に必要な作業
- 奥のバーナー:2番目に重要なタスク
- カウンター:最重要タスクについての追加事項(余白)
- シンク:バーナーに書いた以外のタスク
バーナーリストの目的は、タスクの量を制限し、ToDoの増えすぎを防ぐことにあります。言うなれば、「バーナーリストに入りきる仕事量=自分が処理できる仕事量」。数日ごとにリストを入れ替えることで、自分のキャパシティに合わせた仕事の進行が可能になります。
バーナーリストをつくってみた
じつは、筆者自身が一番悩んでいる先延ばしの原因こそ「やることが多すぎて気が滅入る」こと。まさにバーナーリストが解決に導いてくれるのではと感じ、実践してみました! B5サイズのノートと色ペン(赤・緑・青)を用意し、さっそく挑戦。
【1回目】はりきりすぎて大失敗……(下画像左側)
「3日間でやれる」と想定した量のタスクを書き込んだのですが、まったくうまくいきませんでした。線で消してあるものが、実際にやりきれた仕事……悲惨なありさまです。
失敗の理由は、労力のかかる作業ばかり書いてしまったこと。せっかく優先順位を決めたのに「少しでも簡単なものからやろう」という思考になり、結局大切な「記事の脱稿」が先延ばしになるという結果に…。
【2回目】徹底的にわりきってリストを作成→大成功!(同右側)
1回目で失敗してしまったリストを更新するかたちで、再作成。反省をふまえ、奥のバーナーとシンクのタスクは思いきってふたつずつに絞り込みました。すると、すべてのタスクに完了の横線が入り、見事先延ばしせずやり遂げられたどころか、想定より1日早い「2日間」で終わらせることができました!
筆者が失敗から気づいたことは、書ける量が限られているとはいえ、紙いっぱいに書くのは禁物だということ。徹底的にわりきって、必要最低限のタスクだけを書くのがポイントです。筆者は「3日」を想定しましたが、抱えているタスクが多い人ほど「2日」「1日」と期間を短くすると、とことん絞り込めるのでよいかもしれません。
また、「自分のキャパシティを大きく見積もりすぎていた」ことに気づけたのも大きな収穫でした。バーナーリストの作成を通し、自分ができる仕事の量と向き合えたのです。仕事の効率化だけでなく「キャパシティの自己分析」に効果大だと思います。仕事を抱え込みすぎてしまう人、最近オーバーワーク気味だと感じる人に、ぜひ一度試してみてほしいです!
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今回紹介した方法のうち、自分に合いそうなものがひとつでもあれば、試してみてくださいね。先延ばし癖の克服に、ぜひ役立てていただけたらと思います。
(参考)
樺沢紫苑(2017),『絶対にミスをしない人の脳の習慣』, SBクリエイティブ.
STUDY HACKER|脳科学から生まれた「集中力のギアが上がるToDoリスト」で、先延ばし癖が直った話
冨山真由著, 石田淳監修(2015),『めんどくさがる自分を動かす技術』, 永岡書店.
ジェイク・ナップ著, ジョン・ゼラツキー著, 櫻井祐子訳(2019),『時間術大全――人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』, ダイヤモンド社.
【ライタープロフィール】
月島修平
大学では芸術分野での表現研究を専攻。演劇・映画・身体表現関連の読書経験が豊富。幅広い分野における数多くのリサーチ・執筆実績をもち、なかでも勉強・仕事に役立つノート術や、紙1枚を利用した記録術、アイデア発想法などを自ら実践して報告する記事を得意としている。