どんなに勉強しても一向に成果が出ないと嘆くあなたは、もしかして間違った勉強法を取り入れているかもしれません。いますぐやめるべき、完全アウトな勉強法を5つ紹介しましょう。
アウトな勉強法1:「時が来るまで動かない」
精神科医の樺沢紫苑氏によれば、やる気が出るまでジッと待つのはダメな勉強法なのだとか。「ひとつだけ問題を解く」「1ページだけ教科書を読む」など、少しでも脳を働かせることで “意欲に関わる脳の側坐核” が刺激されるからです。やる気を出すために側坐核を刺激したいなら、とにかく作業を始めるよう同氏はアドバイスしています。
また、樺沢氏によると、側坐核は手足を動かす運動でも刺激されるのだそう。じつは、2015年10月2日付の米科学誌『Science』電子版に掲載されたこんな研究があります。脳の側坐核の働きを抑制されたニホンザルは、運動野(運動に関わる脳領域)の活動が低下して、器用に手を動かせなくなったのだとか。
逆に、手を使って器用にエサを食べている際の脳活動を調べてみると、運動野と側坐核が活発に働いていたとのこと。意欲が湧かず、教科書も問題集も見る気がしないなら、手指を動かして周囲を片づけてみるといいかも。
アウトな勉強法2:「余裕がないから休まない」
東京大学薬学部教授の池谷裕二氏が、株式会社ベネッセコーポレーション協力のもと、中学1年生を対象に行なった英単語学習の実験では次の結果が出たそうです。
- 最初は「1時間を通して勉強する60分学習」グループの点数が高かった
- 翌日は「休憩を挟んで勉強する15分×3(計45分)学習」グループが逆転
- 1週間後のテストも「15分×3(計45分)学習」グループのほうが好成績
この結果は、長い時間ずっと続けて勉強するよりも、こまめに休憩を挟み、短時間で集中する “積み上げ型学習” のほうが、長期的には有効であることを示唆しています。切羽詰まった余裕がない状態であっても、結局は休んでおくほうが短時間で効率よく結果を出せるわけです。
ただし、時間サイクルは作業内容によって調整したほうがいいとのこと。前出の樺沢氏は単純な暗記なら15分、文章を書くなどの作業は45分か90分おきに休憩を挟むようすすめています。
アウトな勉強法3:「複数の問題集を各1回だけ」
教育デザインラボ代表理事、教育評論家の石田勝紀氏は、効果が “ない” 勉強法のひとつとして「問題集を1回しかやらないこと」を挙げています。問題集の1回転めは「できる問題・できない問題」を仕分ける段階なので、記憶に定着しないとのこと。 また、1冊の問題集を繰り返すほうが効果的なので、いろんな問題集をたくさんこなそうとするのはNGなのだそう。
ちなみに前出の樺沢氏によれば、勉強したことをしっかりと覚えたいなら復習を5回やるといいそうです。ただし、やるのはその5回まで。
ワシントン大学教授のヘンリー・ロディガー氏とパデュー大学教授のジェフリー・カーピキ氏が行なった実験(2008年『Science』発表)では、5回以上やっても記憶の定着率はあまり変わらないと示されたそうです。
アウトな勉強法4:「詰め込むだけでテストしない」
復習は大切ですが、詰め込み型の復習だけでは意味がありません。思い出すプロセスが重要であるからです。それにはテストの反復が最適です。
前出のヘンリー・ロディガー氏とジェフリー・カーピキ氏が行なった2006年(Psychological Science)と2008年(Science)発表の研究では、繰り返しの学習よりも、思い出すプロセスを重ねる「繰り返しテスト」のほうが、長期記憶に定着しやすいと示されました。
専門的知識においても、想起を繰り返すテストの反復学習が有効だとわかっています。日本薬科大学教授の多根井重晴氏と、追手門学院大学教授の豊田弘司氏らが、薬学部の大学生を対象に「テストの反復が専門的知識の学習に役立つかどうか」調べたところ、やはり正答率が高くなったとのこと。
学習したことがない初めての問題を解く事前テストにも、長期記憶の保持を促進する効果(プレテスト効果という)があるそうです。解答が間違っていてもいいのだとか。
ちなみに2015年発表の研究「事前テストにおける誤答と記憶定着」では、プレテスト効果による記憶促進が学習者のワーキングメモリ容量の大きさなどによって異なるかどうか調べたところ、学習者の特性とは関係なく生じる効果であることがわかったそうです。とにかくテストするべしですね。
アウトな勉強法5:「全体像をつかまず勉強」
いきなり事前テストはいいけれど、いきなり端っこから覚えていこうとするのは間違いのようです。前出の石田氏によると、覚える前に全体像を把握して構造化することが大切なのだとか。具体的に言うと「教科書を読んで、ノートにまとめる」ことです。
通信講座のフォーサイトが運営する「おすすめ資格情報」においても、まったく新しい分野を勉強するときの効率がいいやり方として「最初に簡単な全体像をつかんでから、細部を理解していく」と説明されています。 全体像をつかまないまま、いきなり難しいことに取り組んでも勉強効果が薄く、時間の無駄になるからです。
同サイトによれば、初めての分野の全体像をつかむ際に効果的なのは十代向けの薄い一般書なのだとか。どんな人でも「知らないことはイチから学ぶ」、これが重要とのこと。
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絶対やめるべき、完全アウトな勉強法を5つ紹介しました。ぜひともお気をつけくださいませ……!
(参考)
多根井重晴・豊田弘司(2019),「大学生における反復学習に関する実践的研究」, 次世代教員養成センター研究紀要, 5号, pp.19-25.
田中紗枝子・宮谷真人(2015),「事前テストにおける誤答と記憶定着」, 学習システム研究, 1号, pp.4-15.
SAGE Journals|Test-Enhanced Learning: Taking Memory Tests Improves Long-Term Retention
新R25|すぐ復習するのはNG!? 8つの「ダメな勉強法」とその解決策をベストセラー医師が解説!
日本経済新聞 電子版|リハビリ効果、やる気次第 生理研など サル実験で脳の部位確認
フォーサイト・おすすめ資格情報|勉強はまず全体像を掴んでから細部へ進む
東洋経済オンライン|「1日10時間勉強してもダメな子」の本質的理由
Science|The Critical Importance of Retrieval for Learning
朝日新聞デジタル|勉強時間は短い方が好成績?
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