デジタルの普及で私たちの生活は驚くほど便利になりましたが、どこにいても常に誰かとつながっている状況は、人々の「オン」と「オフ」の切り替えを曖昧にしてしまいました。
ビジネスパーソンのあなたは常時「オン」の状態に置かれ、知らず知らずのうちにストレスを蓄積しているのではないでしょうか。 ストレスが慢性化すれば、あなたの脳はいずれ元気をなくしてしまいます。自分のスイッチを上手に「オン」から「オフ」に切り替えるコツを、性格タイプをふまえて紹介しましょう。
なぜ休まないとダメなのか?
ビジネスパーソンに「オン」と「オフ」の切り替えが必要な第一の理由は、「脳を守るため」にほかなりません。 作業療法士の菅原洋平氏によると、スマートフォンやパソコンにテレビ、あるいは他者から情報を入れっぱなしの状態を続けていると、
といった悪循環が生じるのだそう。「人に合わせて行動すること」も「脳に情報を入れ続けている状態」にあたるそうです。
そうして、じわじわと慢性的なストレスにさらされ続けていると、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが増えて脳を傷つけ、記憶に関わる海馬などの萎縮を招くと、帝京大学医学部教授、国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第三部客員研究員の功刀浩氏は警鐘を鳴らしています。
私たちには、オフの時間・空間・場をつくること、オフの感覚を味わうことが不可欠。ただし、それは必ずしも一律ではないようです。
性格のタイプによって違う「オンオフ切り替え戦略」
認定心理士の資格をもち、マイヤーズ・ブリッグス社のソートリーダーシップ責任者を務めるジョン・ハクストン氏によれば、人々は大きく4つに分けられる「オンオフ切り替え戦略(時間と場をつくる・情報制御・他者との境界線・仕事と生活の調和)」を実践しているそうです。これは、同社が1,000人以上を対象に行なった、2018年と2019年の調査で明らかにされました。ただし、その効果は性格のタイプによって差があったのだとか。
そこでハクストン氏は、MBTI(マイヤーズ・ブリッグスタイプ指標)※<性格タイプの分析に用いる4つの側面(外向型&内向型/感覚型&直観型/思考型&感情型/判断型&知覚型)に着目し、それぞれが最も有効に先の4つの戦略を用いる方法を、以下のとおり示しました。かいつまんでお伝えしましょう。(※MBTIとは、20世紀最大の心理学者のひとりカール・グスタフ・ユングのタイプ論をもとにした、国際規格に基づく性格検査のこと)。
1.時間と場をつくる
- 人や物など外に興味関心を向ける【外向型】の人は、他者とコミュニケーションを絶やさず、活動的に行動して「オフ」時間をつくるといい。このタイプは新しいことに挑戦するのも「オフ」になる。
- 思考や感覚など内なる世界に興味関心を向ける【内向型】の人は、静かにひとりで没頭できる活動をするといい(それが仕事だとしても!?)。ただし、外とのコミュニケーションはゼロにしないこと。
2.情報を制御
- 経験と五感に基づき情報を受け止める【感覚型】の人は、いったん立ち止まり、本当に重要なことは何か考えるといい。大量に流れ込んでくるネットやテレビの情報ではなく、身近な人の言葉を聞くのもよし。
- 未来や物事の全体像を見ようとする【直観型】の人は、なんでもかんでもあらゆる可能性を検討しようとせず、情報を制御して「目の前のひとつのこと」に注意を向けるといい。
3.他者との境界線
「オン」「オフ」が曖昧にならないよう他者との境界線を引くにあたり――
- 客観的な論理に基づき意思決定する【思考型】の人は、直接的で課題志向が強く他者にドライな印象を与えがちなので、人の感情に目を向けて、“自分の言動がもたらす影響” を考慮したほうがいい。
それほどかしこまった関係ではないにしても、たとえば「すみませんが、その日は無理です。そのほかの都合のいい日を教えてください。私は〇〇あたりが空いてます」ではなく「すみませんが、その日は都合が悪いので、よろしければ再来週の○○あたりはいかがでしょう? 勝手言ってごめんなさい!」などと伝える。
- 自分の価値観や、人々への影響に基づいて意思決定を行なう【感情型】の人は、「誰かを助けること」と「自分のニーズを満たすこと」のバランスをとるよう心がける(このタイプは人のことばかり考えて「自分のオフ」を失うから)。自分のニーズにもしっかりと意識を向ける。
4.仕事と生活の調和
- 秩序立った生き方をする【判断型】の人は、仕事とプライベートを明確に分けるべく、仕事以外の時間はいつもの仕事スペース(あるいはエリア)に近づかない。いつ仕事の連絡に応じられるか他者にはっきり伝える。仕事以外の時間はデジタル機器の電源を切る。
- 柔軟で自然な生き方をする【知覚型】の人は、柔軟性のある在宅勤務などが性に合うが、制限なく仕事をしすぎないよう、仕事以外の活動にも時間を割くよう心がける。作業に費やす時間をカレンダー上に記すタイムボクシングを取り入れるといい。
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「オフ」スイッチの入れ方を、性格タイプに応じて紹介しました。上手に切り替えられれば、心身の健康を維持できて仕事のパフォーマンスも高まるはず。ぜひ参考にしてみてくださいね。
(参考)
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|自分の「スイッチ」のオン/オフを上手に切り替える方法 テクノロジーの奴隷になってはいけない
NIKKEI STYLE|ヘルスUP|うつを作る「じわじわストレス」 脳内物質に異変
NIKKEI STYLE||WOMAN SMART|脳と心が疲れたら ひとり時間に試したいリセット術
一般社団法人 日本MBTI協会|MBTIとは
Wikipedia|カール・グスタフ・ユング
ヤクルト中央研究所|健康用語の基礎知識|コルチゾール
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STUDY HACKER 編集部
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