Googleの社員は、なぜ社内の雑談を重視するのか? Google出身の経営者に聞いてみた

社内で雑談しているビジネスパーソンたち

ビジネス書では「雑談力」といった言葉もよく見られますが、その効果はどんなところに表れるのでしょうか。

お話を聞いたのは、モルガン・スタンレーやGoogleを経て経営コンサルタントとして活躍するピョートル・フェリクス・グジバチさんGoogleでは社員どうしの雑談を重視しているといいます。その理由について聞いてみました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

【プロフィール】
ピョートル・フェリクス・グジバチ
ポーランド出身。連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。プロノイア・グループ株式会社代表取締役、株式会社TimeLeap取締役、株式会社GA Technologies社外取締役。モルガン・スタンレーを経て、Googleで人材開発・組織改革・リーダーシップマネジメントに従事。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。『世界の一流は「雑談」で何を話しているのか』(クロスメディア・パブリッシング)、『心理的安全性 最強の教科書』(東洋経済新報社)、『世界最高のコーチ』(朝日新聞出版)、『CREATE WORK』(SBクリエイティブ)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

多様性を前提とするGoogleと、画一性を前提とする日本の企業

かつて僕が勤めていたGoogleには、成果と人間関係を重視するという文化があります。なぜなら、人間関係がよくなければチームワークが生まれませんし、強いチームワークがなければいい成果というアウトプットも生まれないからです。

そのため、Googleの社員たちはとにかくメンバーのことを知るための雑談をたくさんします。メンバーどうしが「この人はこういう思考をもっている」「こういうことを大事にしている」といったことをわかっているほど、いい人間関係を築けていい成果を生み出しやすくなるためです。

ただ、Googleにそういう文化があるのは、日本とは異なる社会的背景があることも一因です。アメリカは言わずと知れた多民族国家です。信仰する宗教も人種も多種多様な人たちが同じチームで働くわけですから、そのなかでいい人間関係を築こうと思えば、自然とお互いのことを知ろうとして雑談がたくさん生まれるのです。つまり、多様性を前提としているわけですね。

一方、基本的には単一民族国家である日本はそうではありません。いまでこそ日本の企業にも外国人が徐々に増えていますが、やはり従業員の大半が日本人である企業が多いのが実情でしょう。つまり、Googleとは対照的に画一性が前提となっているのです。

そうすると、「言わなくてもお互いのことは理解できている」という文化が生まれます。もちろん、このいわゆる「ハイコンテクスト文化」にはいい面もあります。同じ価値観や言語、文化的背景を共有しているからこそ、強いチームワークが生まれることことも考えられます。

でも、お互いの違いを認識し、「こういう考えもあるのか!」といった気づきを得るなかで宝物とも言える大きな成果が生まれてくることも多いのです。

Googleが雑談を重視していることについて語るピョートル・フェリクス・グジバチさん

人材の流動性が高まるなか、「違いを認識する対話」が重要になる

特に若い人の場合、それぞれの「違い・異なる部分」を認識するための対話というものが今後はますます重要になってくるように思います。少子化で新卒採用が減り、人手不足が大きな問題となっている日本のビジネスシーンでは、多くの会社が必死になって中途採用を行なっています。若い人なら、よりよいキャリアを形成していくために転職を考えている人もたくさんいるでしょう。

ところが、ここで日本のハイコンテクスト文化が問題となるのです。以心伝心で「言わなくてもわかるだろう」と多くの人が考えているため、「言われないとわからないこと」を軽視しているのです。

同期がそろって入社して新卒研修を受け、何年間か一緒に働くうちに、「うちの会社の働き方が社会の常識だ」と考えるようになります。でもそれは、社会の常識でもなんでもなく、その会社の常識に過ぎません。

その偏った常識だけをもって転職したとしたらどうなるでしょう? たとえば、どんな行動が評価につながるのかといった基準も会社によって違うものです。就業規則はあっても何十年も前につくられたもので誰もまともに読んだこともない。それぞれの会社の常識に従い、暗黙の了解のもとで働いています。

そこにまったく違う常識をもった人が転職して入社しました。自分の常識に従って評価されようと努力しても、その努力の方向が転職先では評価につながらないものだったとしたら残念ですよね。違いを認識するための対話が不足しているがために、正当な評価を得られないということにもなりかねません

違いを認識するための対話の重要性を語るピョートル・フェリクス・グジバチさん

違いを認識し、認め、活かすなかで大きな成果が生まれる

ですから、とにかくお互いの違いを認識するための対話をしていくことを考えてほしいのです。転職先での悲劇に見舞われることを避けることはもちろん、先にお伝えしたように、違いを認識することから大きな成果が生まれることだってあります。

日本は、多くの人が同じ価値観や言語、文化的背景を共有しているハイコンテクスト文化の国です。でも、もちろんそのなかにも違いはありますよね? たとえば、年代はわかりやすい違いです。

就職氷河期に苦労しながら就活をした40代の人と、世代人口が少なくコロナ前の売り手市場だったときに就活をした20代の人では、仕事に対する考え方や得意なこと、仕事に求めることなども大きく違っているはずです。

僕の感覚からすると、40代の人たちにはリスク管理が上手な人が多いように思います。やはり、就活も含め、年齢的にも苦労した経験があるからでしょう。でも、売り手市場のときに内定をたくさんもらった20代の人は、リスク管理が苦手で楽観主義の人が多い印象です。

こういった違いをお互いに認識し、そして仕事に活かすのです。プロジェクトを成功に導くには、もちろんリスク管理は重要です。でも、一定程度の楽観主義もなければ思いきったチャレンジができないという側面もあります。お互いの違いを認識し、認め、そして活かしていけるようになるため、普段からメンバーどうしで対話をしていくことを心がけてほしいと思います。

社内での雑談を大事にすべきだと解説してくれたピョートル・フェリクス・グジバチさん

【ピョートル・フェリクス・グジバチさん ほかのインタビュー記事はこちら】
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