「読解力」の欠如はビジネスパーソンにとって致命的。“この3つ” で読み解く力を鍛えよう

読解力の鍛え方01

インターネットによる情報収集が当たり前になっているいま、若いビジネスパーソンの「読解力低下」が問題視されています。あなたは、日々のニュースを確認するときや新型コロナウイルスに関する制度について調べたいとき、次のような行動をとっていませんか?

「SNSの短い文章で内容を理解したつもりでいる」
「わかりやすくまとめた動画に頼ってしまう」

これらが癖になっている人は、読解力が低下している可能性があります。じつは、読解力の欠如はビジネスパーソンとして致命的。その理由と改善策を説明しましょう。

仕事のほとんどは「読み取り」にかかっている

多摩大学名誉教授で『「頭がいい」の正体は読解力』の著者である樋口裕一氏によると、読解力とは「文章を読み取り、理解する力」。樋口氏は、この力を「人間社会で生き抜くために不可欠な力」だと断言しています。なぜなら、すべての現象を読み取る力の基本になるのが、文章を読み取る力だからです。

たとえば会話中、話の内容を正しく理解するのはもちろんのこと、相手の表情やしぐさなどから気持ちを読み取り、場の雰囲気を感じ取るのも、すべて読解力のなせるわざなのだそう。そして当然ながら、何事も読み取らないことには理解することもできません

読み取る力は、日常会話のみならずビジネスにおいても重要なスキルです。樋口氏いわく、仕事中に意見交換をするときに加えて、キャリアアップのために自身の現状を把握するときにも、読み取る力は大事になるとのこと。

たとえば、自社商品のキャンペーンに関するプレゼンを控えている場合。読解力がある人なら、「予算面がネックになると思われるかもしれない、資料でしっかりカバーしよう」「ここは提案の肝だし、商品のイメージにも合致している。強調して話そう」と、自分がとるべき行動を見いだすことができます。このことから読解力は、自分が望む将来を手に入れるためにも必要な能力だと言えるのです。

樋口氏は仕事のほとんどはこうした読み取りにかかっていると述べています。読解力がいかに重要なスキルであるかがわかりますね。読解力で読み取るのは「文章だけ」だと考えていると、周囲から差をつけられてしまうかもしれませんよ。

読解力の鍛え方02

読解力を鍛えるには、語彙力と文章力の強化が効く

樋口氏は、「読解力低下の主な原因は、読書量の決定的な不足」であり、「文章をたくさん読むことが読解力の向上に最も効果的」だと言います。しかし、冒頭でもお伝えしたように、インターネットでの情報収集が当たり前になっているいま、若い人たちはどうしても読書から遠ざかりがちです。

そこで樋口氏が言うのが、読解力を鍛えるには、まずは「語彙力」、その次に「文章力」を鍛えるとよいということ。つまり、インプット側の読解力を鍛えるには、先にアウトプット力を鍛えたほうがよいのです。

樋口氏は、言葉の意味を知り、実際に文章を書いてこそ、文章を正確に読み取れるようになると述べています。語彙力と文章力を鍛えてこそ、読解力も鍛えられるというわけなのです。

読解力の鍛え方03

では、語彙力と文章力のそれぞれの鍛え方を紹介しましょう。

語彙力を強化するには、「言い換え力」を意識しよう

樋口氏は語彙力を言い換え力と表現します。たとえば、「知らない」と「存じ上げません」では、意味は同じでも相手に与える印象が違いますよね。後者のほうが、相手から「知的な人」と思われるかもしれませんが、場合によっては「堅苦しい人」という印象を与えてしまいます。このような、時と場合に応じた言い換えができてこそ、言葉の読み取りもできるようになるのです。

語彙力を鍛える方法のひとつとして樋口氏が提案するのが、「常体」と「敬体」の言い換えです。常体は、「だ」「である」を用いる文章様式で、いわゆるタメ口に近い言葉遣い。一方の敬体は、「です」「ます」を用いた表現です。

たとえば「ベランダから見た夕日がすごくきれいだった」という文を敬体に言い換えたらどうなるでしょうか? 「ベランダから見た夕日は、たいへん美しく感じられました」などが考えられますね。このようにして、いろいろな表現を言い換えてみましょう。

読解力の鍛え方04

文章力の強化で、他人の文章もわかるようになる

文章力を強化するひとつの方法として樋口氏は、週に1本、100~600文字程度の小論文を書くことをすすめています。そのとき、次の3点を意識するとよいとのこと。

  1. 論じるテーマは何か
  2. 自分の意見はテーマについて賛成か反対か
  3. 賛成反対の理由は何か

たとえば、SNSで「忙しいなかで定時退社すること」について話題になっていた場合。それに関する小論文を100文字程度で書くとすれば、次のようなまとめ方が考えられます。

  1. テーマ:忙しいなかで定時退社することを問題視する人がいる。
  2. 賛成か反対か:しかし、私は必ずしも悪いこととは考えない。
  3. 理由:なぜなら、効率的に仕事を終えるための時間マネジメントを考えるきっかけになるからだ。退社前に、先に失礼してもよいかひとこと確認すると、周囲からも悪い印象を持たれないだろう。

上記の文章で131文字です。慣れてきたら、文頭に問題提起を書いたり、意見の根拠となる事例を盛り込んで肉づけするとよいそうですよ。

自分の文章力を鍛えれば、他人が書いた文章の構成もわかるようになるとのこと。大いに、読み取りの役に立つでしょう。

読解力の鍛え方05

100文字程度の「要約」で、読解力をさらに鍛える!

言い換えと小論文で語彙力と文章力を鍛えたら、次はいよいよ文章を読みながら読解力を鍛えていきます。新聞を読み、その内容を要約するというトレーニングにチャレンジしましょう。正しく読み取り、理解しなければ、正しく要約できません。だからこそ、要約力を鍛えれば自然と読解力を鍛えることにもなるのです。

樋口氏は、要約文は100文字程度を目安にするとよいと言います。同様に100文字要約をすすめる国語講師の吉田裕子氏は、要約の練習に適した教材として新聞、とりわけ社説を挙げています。

吉田氏いわく、次の3点に絞って要約するとよいとのこと。

  1. 話題(テーマは何か)
  2. 見どころ(面白い点はどこか)
  3. 感想(自分はどう感じたか)

今回は、新聞の代わりに、STUDY HACKERのこちらの記事『ゆでガエルの法則とは? 5年後まで生き残る3つの方法』を100文字程度で要約したところ、次のとおりになりました。

  1. 話題:現状に甘んじて迫る危機に気づけないことを「ゆでガエルの法則」といいます。
  2. 見どころ:自問自答、ひとりの時間を持つ、仕事の優先順位を見直すという3つの方法で自分を客観視すれば、この状態に陥ることを避けられると筆者は説きます。
  3. 感想:ぬるま湯に浸からぬよう、胸に留めておくべき教訓といえるでしょう。

これで全137文字です。感想を書くことが、文章をより深く理解することにつながりました。ぜひ、あなたも実践してみてください。新聞記事の要約に慣れてから、本1冊を要約するようにすると、無理なく要約の練習が進められるはずです。

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読解力は、本や資料を正しく理解するだけでなく、ビジネスシーンにおける人の心の動きや複雑な状況の変化を読み取る力としても役立ちます。ぜひ、読解力を鍛えるトレーニングを始めましょう。

(参考)
樋口裕一 (2019), 『「頭がいい」の正体は読解力』, 幻冬舎.
東洋経済オンライン|読み書きを鍛えるのに「要約」が最強なワケ

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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