行動もマインドももっとよくなる。成長ポイントが確実に見つかる「リフレクションノート」

筆者のリフレクションノート

自分のなかで引きずる失敗の記憶や、解決していないこと、気になることがたくさんあって、ずっと頭がモヤモヤしている。なんとかならないだろうか……。

――それならリフレクションがおすすめです。自身の経験から学ぶことができ、頭もスッキリしますよ。自己成長にもつながるはずです。筆者の実践を交えて説明しましょう。

失敗も成功もフラットに振り返る

グロービス経営大学院教員・村尾佳子氏や、日本最大のHR(ヒューマンリソース)ネットワーク「日本の人事部」などの説明によると、人材育成の分野におけるリフレクション(reflection)とは、日々の活動からいったん離れて、自分の経験を客観的に振り返ることなのだそう。

反省の場合は失敗や誤りに焦点を当てますが、リフレクションの場合は失敗も成功もすべてフラットに振り返るそうです。そうして過去の出来事の真意を探り⇒自分の在り方を見つめ直し⇒そこから気づきを得て⇒今後の行動に活かしていくのだとか。

リフレクションのイメージ。心のなかで経験を振り返るビジネスパーソン

リフレクションのメリット

前出の村尾氏によると、リフレクションは企業にとっても個人にとっても大きなメリットがあるそうです。

起こった事実や真意を丁寧に振り返ろうとするからでしょうか、企業においては社員ひとりひとりの自律性が高まり、責任をもって業務改善に取り組むようになるとのこと。それに準じてチーム全体の力が底上げされるので、組織としての生産性も向上するそうです。

また、自分で自分の経験を振り返ることから客観性も身につくので、冷静にチーム全体を見渡せる、リーダー人材の育成にもつながると言います。

個人においては習慣的なリフレクションにより、自分自身への理解と客観的な視点が身につくそうです。すると自己感情や行動に対するコントロール意識が強まるので、社会人としての自律性が高まるのだとか。その結果、精神的な部分に変化が生まれ、自己成長へとつながるそうです。

リフレクションで大きく成長した女性、ビジネスパーソン

社会人基礎力の発揮にはリフレクションが必要

経済産業省も、リフレクションが  “自らキャリアを切りひらいていく” うえで、必要な作業だと明示しています。

その経緯を説明すると、まず2006年に経済産業省は、多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎力として「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」といった3つの能力で構成された、社会人基礎力を提唱しました。

しかし、これからは人生100年時代ならではの切り口・視点が必要だとし、2017年の時点で新たに「人生100年時代の社会人基礎力(長い人生での継続的な活躍に求められる力)」を定義したのです。

新定義で挙げられた能力は旧定義と変わりませんが、「3つの能力を発揮するにあたり、リフレクションを行ないながら “どう活躍するか、何を学ぶか、どのように学ぶか” バランスを図ることが必要」とされている部分が大きく違います。

「人生100年時代の社会人基礎力」のイメージを図解したもの

(※上の図は経済産業省の「人生100年時代の社会人基礎力」説明資料内の説明や図を参考に筆者が作成したもの)

リフレクションの3ステップと実践

今後はますますリフレクションが必要になるとわかりました。ここからは、前出の村尾氏が示す「リフレクションの具体的なプロセス」について説明します。まずは同氏が挙げた、リフレクションの効果を上げるためのポイントをお伝えしておきましょう。

  • 客観的になる(感情でブレないように、事実を淡々と振り返る)
  • 習慣化する(大小かかわらず、あらゆる出来事を毎日振り返るのが理想的)
  • 未来志向になる(自己成長が最大の目的なので、今後どうすべきかも考える)

そして、リフレクションは次の3ステップから成るとのこと。筆者が実践した画像を添えて説明します。

1.「起きたこと」を振り返る

まずは淡々と事実ベースで、(いい・悪いすべて含め)起きたことを細かく分解し、フラットに振り返ります。習慣化がポイントとのことなので、筆者の場合は専用のノートをつくって書いていくことにしました。

起きたことを淡々と振り返ったもの。実際には頭のなかの問題を振り返っている

だいぶモヤモヤしていたのか、仕事(記事の執筆)について書き始めると、どんどん筆が進みます。そうして書くうち――揺るぎない主張ができあがるまで詰めることを「執筆に必要な工程」だと感じている自分と、「作業時間の増大は問題だ」と感じている自分が混在していることや、仕事への納得感と実際の状況への戸惑いが原因でモヤモヤしていることなどがわかってきました。

2.「状況」を振り返る

次に、1で書いたことに関わる人々の役割・行動・反応・感情の動き・動機などを、丁寧に振り返っていきます。

周囲の状況について振り返ったもの。結果として、自分の深層心理に踏み込んでいる

自分が仕事で関わる人々の状況を振り返っていたはずなのに、ほとんどが自分自身の深層心理に迫るものになってしまいました。

模範的な展開ではないかもしれませんが、仕事において「自分は無能なお荷物ではないのか」といった不安がモヤモヤの正体だとわかり、なおかつ自分のなかに「冷静な部分」もあるとわかったので、収穫は十分です。

3.「自分自身」を振り返る

(前のステップで少しフライングしていますが)最後は自分自身の行動や状態について振り返る段階に入ります。

たとえば、その出来事での自分の行動は適切なものだったのか、周囲の期待に沿うものだったのか、そうした場での理想と現実のギャップを埋めるには、どう行動すればよかったかなどを振り返るのです。

自分の行動やマインドをよりよくしていくことが目的なので、自分がコントロールできることに注力するといいそうです。

最後に、自分自身について振り返ったもの

この段階になると、「自分にできることは何か?」⇒「バイアス(偏った思い込み)をなくす」といった具合に、思っていたより前向きな思考が文面に表れてきました。「〇〇ではないか?」などと考えていることこそが、仕事の妨げになると感じたからです。

加えて左下に書かれている言葉どおりの「何にモヤモヤしていたんだっけ?」といった感覚も、ムクムクと湧いてきました。

察するに、ひとつの出来事や特定の状況について振り返り、掘り下げていくうち、問題が細分化されて小さく無害なものになっていくのではないでしょうか。それと同時にモヤモヤも消えていくわけです。

リフレクションノートの見開き

また、“接待で大失敗” といった、特定の出来事も振り返ってみたところ(下の画像)、「受け身のまま(被害者意識で)何もしないでいるより、意識をプラスにもっていくべきだった」と考え直すことができました。つまり――

比較的わかりやすい内容リフレクション例

「失敗したのはタクシーの接客が悪く、店の準備不足に加え、味も落ちていたせいだ」と考えているだけだった自分に、「意識をプラスにもっていったほうが、その場で何かできたはずだよ」と、自分でコントロール可能な改善点を、自分自身が教えてくれたわけです。

少し試した程度の実践ではありますが、リフレクションノートをやってみたら、不快なモヤモヤが細かくなって無害化し、自分で自分に改善すべき点を指摘することも、その指摘を受け取ることもできました。みなさまも、ぜひお試しくださいね。

***
今回はリフレクションの有効性とやり方の説明と、実践報告をいたしました。最初から「毎日やろう!」と意気込まなくても、まずは「1回だけやってみようかな」という感覚で始めてみるのもいいかもしれません。結構気前よく、自分自身が教えてくれるはずです!

(参考)
グロービスキャリアノート|リフレクション(内省)とは?人材育成で注目される理由と実践方法
STUDY HACKER|気づきを言語化「リフレクションノート」がすごい。学びが大きく加速する!
経済産業省のWEBサイト(METI/経済産業省)|社会人基礎力
日本の人事部|リフレクションとは

【ライタープロフィール】
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