「作業中に疲れて休憩をとったものの、全然すっきりしない……」
「集中力がいったん切れると、やる気が出なくなってしまう……」
こう悩んでいる方はいませんか?
勉強や仕事においては、どれだけ集中できているかが成果を左右します。とはいえ、同じ作業をずっと続けていれば、集中力はどうしても切れてしまうもの。生産性を高めるには、作業で疲れた脳をうまく切り替えることが大切です。
今回は、科学的に効果が証明されている「脳のリフレッシュ方法」を3つご紹介します。
人間の集中力は ”続かない”
どんな人でも、集中力を常に高く維持しておくことはできません。
東京大学薬学部教授の池谷裕二氏と株式会社ベネッセコーポレーションが共同で行なった調査によれば、「60分の学習」よりも「15分×3(計45分)の学習」のほうが、学習効率はよかったそう。調査における脳波の測定データにおいて、15分ずつの場合は毎回の学習開始時に集中力が回復していたのに対し、60分間の学習では集中力が低下し続けていたのです。
加えて、集中力は長くとも90分間しかもたないのだとか。神経医学を専門とする順天堂大学医学部教授の医師・小林弘幸氏は、「集中力の限界」について次のように述べています。
医学的にも、生理学的にも、人間の集中力の持続時間は90分間が限界だと言われています。大学の講義が90分間で区切られているのは、そうした合理的な理由からです。にもかかわらず、休憩もとらずに仕事を続けていれば、当然、時間の経過とともにパフォーマンスはダダ下がりです。
(引用元:livedoor NEWS|人間の集中力は90分が限界 長時間労働でも疲れないための休憩術 ※太字は筆者が施した)
自分ではどんなに集中したくても、集中力の低下を避けることは難しいのですね。
集中力をどのように取り戻すべきか?
では、私たちはどうすれば集中力を回復させられるのでしょうか。
【方法1】30分以下の仮眠
アメリカ宇宙航空局NASAによる研究で、26分の仮眠をとったパイロットは、仮眠をとらなかったパイロットより注意力が56%上昇し、仕事をこなすのに必要な集中力が34%上昇することが明らかになりました。これは「仮眠」が、夜の睡眠で得られる認知機能の回復と同レベルの効果を得られることを示しています。
一方で、カナダのブロック大学神経科学部教授であるキンバリー・コート氏は、26分よりも長い睡眠時間だとより深い眠りにつくため、脳が活動停止状態になってしまうと指摘しています。リフレッシュの程度を超えてしまい、かえって頭が働かなくなってしまうのだそう。
休憩の際は、睡眠周期のなかでも最も効果的にリフレッシュ可能な「10〜25分程度の仮眠」を取り入れてみてください。そうすれば、集中力を保ったまま作業を始めることができますよ。
【方法2】42℃のお湯でシャワー
脳が疲れていると感じたときや気分を切り替えたいときには、「シャワーを浴びる」のもおすすめです。
横浜大学医学部教授の中村健氏らは2018年に、お湯の温度が42℃のシャワーと35℃のシャワーをそれぞれ20分間浴びた結果を比較する研究を行ないました。すると、より温かい42℃のシャワーを浴びたときのほうが、神経細胞の働きを高めるタンパク質「脳由来神経栄養因子(BDNF)」のレベルが上昇したそう。つまり、神経細胞を維持・増加・成長させ、学習や記憶を促進することで集中力を取り戻せるとわかったのです。
あわせて、前出の小林弘幸氏は、シャワーを浴びると肌に刺激が生じて交感神経が活発化されるため、「目覚め効果」がもたらされてスッキリできると伝えています。作業がはかどらなくなったら、休憩時間に温かいシャワーを浴びることが特効薬になりそうですね。
【方法3】マインドフルネス(瞑想)
マインドフルネスとは、頭のなかから余計な考えを取り払うため、呼吸に専念し意識を現在に集中させることです。
2015年に小学生を対象に行なわれた研究では、「マインドフルネスの時間を取り入れた生徒は、認知能力が高まり、算数の成績が向上した」という結果が出ています。また、カリフォルニア大学の研究者が行なった研究でも、マインドフルネスを実践することで記憶力や言語能力、集中力が上がることが判明。
これは、新しい物事に脳がフォーカスを当てたことによるものです。頭のなかの雑念を一度リセットすることで、取り組むべきことに集中できるようになるのですね。
座ったまま手軽にリフレッシュできるマインドフルネスのステップは、次のとおり。
- 足を組み、視線を下げ姿勢を伸ばして座る
- 最大21回、自分の呼吸を数える
- 思考を抑えつけるのではなく、心が自然と休むようにする
疲れたとき、集中力を取り戻すためにぜひ試してみてください。
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どんなに疲れていても頑張らないといけない場面があるかもしれません。そのときは、効果的な休憩を挟み、十分にリフレッシュしてから臨みましょう。
(参考)
朝日新聞デジタル|勉強時間は短い方が好成績?
livedoor NEWS|人間の集中力は90分が限界 長時間労働でも疲れないための休憩術
All About|自律神経バランスを整える入浴方法
BUSINESS INSIDER|Here's what NASA says is the perfect length for a power nap
MEDICAL NEWS TODAY|What are the benefits of cold and hot showers?
Taylor&FrancisOnline|Head-out immersion in hot water increases serum BDNF in healthy males
APA PsycNet|Enhancing cognitive and social–emotional development through a simple-to-administer mindfulness-based school program for elementary school children: A randomized controlled trial.
PSYBLOG|Mindfulness: 6 Steps to Better Memory, Verbal Reasoning and Improved Concentration
【ライタープロフィール】
YOTA
大学では法律学を専攻。塾講師として、中学~大学受験の6科目以上の指導経験をもつ。成功者の勉強法、効率的な学び方、モチベーション維持への関心が強い。広い執筆・リサーチ経験で得た豊富な知識を生かし、効率を追求しながら法律家を目指して日々勉強中。