書類が整理されていないと、仕事に集中できない可能性があります。脳のメモ帳と呼ばれるワーキングメモリの負担を増やす要因になるからです。
集中力を高めたいなら、ワーキングメモリを無駄遣いしない整理術を始めましょう。整理・時短ワザのプロフェッショナルに学びます。
集中に欠かせない脳のワーキングメモリ
広島大学の「児童・生徒のワーキングメモリと学習支援」によれば、ワーキングメモリとは、短い時間に情報を保持・処理する能力のこと。会話・読み書き・計算等に欠かせない脳の機能です。たったいま行なっている作業に必要な情報を扱うので、脳のメモ帳とも呼ばれています。
精神科医・医学博士の最上悠氏によれば、ワーキングメモリの容量が大きい(空きがあって余裕がある)ほど、目の前のタスクに集中できるのだとか。どの情報を重視すべきか選別する能力と、ワーキングメモリに密接なつながりがあるからです。
しかし、ワーキングメモリの容量には限りがあります。早稲田大学リサーチイノベーションセンター教授の枝川義邦氏いわく、あまりにも情報量が多かったり複雑だったりすると機能が著しく低下し、集中力が損なわれて作業効率が落ちてしまうとのこと。
そうならないように、少しでもワーキングメモリの負担を軽くするべく、書類や資料を整理しましょう。
1. アナログ整理術:【4つの分類】
まずは、アナログ書類の整理からです。ペーパーレス化が大きく叫ばれている昨今ですが、ビジネス情報サイトのBiz Clipが調査(2020年3月)したところ、申請書類や請求・見積書、会議資料やプレゼン資料など、まだまだビジネスシーンでは紙の書類が根強く残っているようです。
もしも、そんなアナログ書類が片づかないなら、新規の予約がとれないほど人気だと評判の、「家族の片づけコンサルタント」seaさんが提唱する書類整理術がおすすめです。書類を4つに分類して整理するのだとか。
(※「ダイヤモンド・オンライン|仕事ができる人の書類整理術、4つに分類するだけで超すっきり! | タスカジ最強家政婦seaさんの人生が楽しくなる整理収納術」で紹介されているseaさんの図解をもとに再現)
それぞれの要点を説明しましょう。
■ 循環させる書類(全体業務・期限あり)
ポジショニングマップ右上の「循環」させる書類とは、たとえば回覧資料、記入が必要な書類、判断や指示を求められている書類、連絡待ちの書類などです。
次の担当者に渡すまで保管する動きが速い書類なので、2~3段ある平置きトレイを使った「投げ込み管理」がおすすめとのこと。
【例】
- 1段目:新規(未確認)
- 2段目:未対応(内容は確認している)
- 3段目:対応済
■ 一時保管する書類(個人業務・期限あり)
右下の「一時保管」する書類とは、たとえば進行中・作成途中の資料や書類、個人用のメモなどです。必要なタイミングですぐに出したいものなので、書類ケースを使った「立てる管理」がおすすめとのこと。
このタイプの書類は、次の業務にさし支えないよう関連業務が終わった時点で、一括処分する思いきりが大事なのだとか。
■ 目を通したら処分する書類(個人業務・期限なし)
左下の「処分」する書類とは、たとえば会議のレジュメや通達、各種サービスのチラシや商品カタログ、自分の仕事に関連した情報記事の切り抜きなどです。
「いつか使うかも?」「捨てちゃうと、あとで困るかも」などと目的がハッキリしないまま保管していても、日の目を見ないまま忘れられる可能性が高いとのこと。 同じ資料が社内用として保管されていたり、ネットで簡単に検索できたりするものならば、目を通したあと処分しましょう。
■ 共有化する書類(全体業務・期限なし)
左上の「共有化」する書類とは、前項の書類に目を通した結果、処分せずに残すと決めたものです。
同じ部署の人に確認し、必要であれば他者も閲覧できるよう、みなで使う共有棚に移動したり、データ化してクラウドに保存したりなど、共有化するといいとのこと。
4分類のいずれかで判断し、保管したり探したりできるなら、ワーキングメモリをグンと節約できるはず。
2. デジタル整理術:【MECEと家系図の法則】
次はデジタルです。700にも及ぶパソコン時短ワザを集めてマニュアル化しているという、クロネコキューブ代表取締役の岡田充弘氏によれば、デジタル書類の整理は次の「MECE(ミーシー)」と「家系図の法則」で行うといいそうです。
- 「MECE」:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略。ロジック・ツリーなどのフレームワークを使い、ダブリ・モレがないように要素を洗い出す。それにより、論理構造の理解、課題の発見ができる。コンサルティング業界でよく使用されるテクニック。
- 「家系図の法則」:“同じフォルダ内を同じ切り口にする原則” にのっとって、整理・構造化する方法。MECEの思考法でフォルダを整理する際に役立つ。
(※「PRESIDENT WOMAN Online| PC上の探し物をなくす"フォルダ整理術4つ" 」で紹介されている岡田充弘氏の整理術を参考に作成)
ポイントは、フォルダ内を同レベルにそろえ、時系列や重要度がすぐわかるよう並べること。また、ファイル名は一定の規則性でつけておくと、ダブリ・モレ、保管間違いなどに気づけるそうです。
【ファイル名の例1】:日付情報(2020年の場合)+カテゴリ+固有名詞
- 200305_見積書_須田D八課様
- 200310_見積書_須田D八課様
- 200325_見積書_須田D八課様
【ファイル名の例2】:項番号(※)+カテゴリ+固有名詞+日付情報+バージョンNo.
- 1.見積書_須田D八課様_200322
- 1.見積書_須田D八課様_200322_2
- 2.注文書_須田D八課様_200405
- 3.請求書_須田D八課様_200425
(※カテゴリに沿った項番号を頭につけておくと、カテゴリごとの整列が容易になる)
こうすることで、保管データの構造を直感的に理解しやすくなるとのこと。考えて保存したり探したりしなくていいぶん、ワーキングメモリに負荷がかかりませんね。ぜひお試しください。
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2つの整理術で、脳のメモ帳を節約しちゃいましょう!
(参考)
ダイヤモンド・オンライン|タスカジ最強家政婦seaさんの人生が楽しくなる整理収納術|仕事ができる人の書類整理術、4つに分類するだけで超すっきり!
プレジデント・ウーマン|PC上の探し物をなくす"フォルダ整理術4つ"
プレジデントオンライン|時間の浪費をゼロにしたい…最新科学が解明した「脳を100%活用する方法」とは マルチタスクが脳を消耗させる理由
STUDY HACKER|論理的な文章の書き方まとめ【例文アリ】
Biz Clip|紙を使う仕事はどれくらい?文書管理実態調査
児童・生徒のワーキングメモリと学習支援(広島大学)|「ワーキングメモリ」とは
最上悠(2018),『日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる「感情日記」のつけ方 』, CCCメディアハウス.
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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