みなさんの友人や同僚のなかには、「頭がいい」「賢い」と高い評価を受けている人もいるかと思います。そんな人は、周囲から頼りにされたり尊敬の的になったりと、何かにつけて大きな存在感を持っているものですよね。「自分もあんなふうに “頭がいい” と思われたい」と憧れを抱いている方も多いはず。
でもよく考えてみると、「頭がいい」という言葉は定義がとても曖昧です。学校であれば、たとえばテストの点数などで比較することもできます。しかし、必ずしも勉強の成績がいい人だけが「頭がいい」というわけではありませんよね。ビジネスの世界であるならばなおさらです。
では、頭がいい人の条件とは具体的にどんなものなのでしょうか。今回は、3つの項目に分けて詳しく解説していきます。
1. 頭がいい人は「質問の意図が明確」
「頭がいい人」の1つめの特徴は、質問の意図がいつも明確であることです。
たとえば、あなたは「この企画についてどう思いますか?」というような、ざっくりとした質問の仕方をしていないでしょうか。じつはこれ、相手を迷わせてしまう「頭が悪い」質問の仕方なのです。なぜならば、質問の意味としてあまりに広すぎるから。訊きたいのは企画内容の “おもしろさの話” なのか、“予算の話” なのか、“実現の可否についての話” なのか、さまざまなテーマが考えられてしまいます。
『できる人は必ず持っている 一流の気配り力』の著者、安田正氏によると、こうした意図の曖昧な訊き方をすると、相手はどう答えていいものかわからないため、うまく話を引き出せなくなる恐れがあるのだそう。ものを尋ねるときには、なるべく質問内容の範囲を狭め、相手が負担なく答えられる言葉を選ぶことが重要です。
今回の場合は、「この企画、おもしろいと感じましたか?」「予算は足りそうでしょうか?」「実現までに、どんな問題が考えられますか?」というようなものが、正しい質問の仕方になります。
【悪い質問】
×「この企画についてどう思いますか?」(質問内容が広すぎて答えにくい)
【いい質問】
○「この企画、おもしろいと感じましたか?」(おもしろかった/おもしろくなかったの2択で答えられる
○「予算は足りそうでしょうか?」(足りる/足りないの2択で答えられる)
○「実現までに、どんな問題が考えられますか?」(○○という問題がある、と答えられる)
このように、質問をテーマごとに小分けにし、かつ相手が答えやすい訊き方をすることで、議論をスムーズに進めることができます。
『5分で売れる! 営業ノウハウ 凡人営業の壁を破る「濃い時間」活用術』などの著者、西野浩輝氏によると、質問の仕方のコツを学ぶうえで参考にできるのは、フリーアナウンサーの古舘伊知郎氏の質問術なのだそうです。古舘氏の質問の仕方はズバッと簡潔で、しかもスムーズに次の話題へとつながっていくため、教材にするにはぴったりだと、西野氏はいいます。
古舘氏以外でも、プロのインタビュアーや記者は、ただ受動的に話を聞くのではなく、必要な情報を相手から効率よく引き出す技術に長けています。ニュース番組をチェックして、インタビュアーがどんな角度で質問をしているか、どんな言葉を選んでいるか、注意深く見る習慣をつけることで、鋭く明確な質問をするコツが身につきますよ。
2. 頭がいい人は「一言でまとめられる」
また、複雑な物事を一言でいい表せることも、頭がいい人の特徴です。
もしあなたが「“教養” という言葉について説明してください」といわれたら、一言でスパッと答えられるでしょうか? 多くの人は、「教養というのは、歴史や哲学、文学など、さまざまな分野の知識のことで、単なる “知識” とはどう違うかというと……」というふうに、なかなか説明がまとまりきらないはず。一言でまとめるのは、物事の本質をとらえ、かつ、それを簡潔な言葉に凝縮するための語彙力が必要であるため、じつはとても高度な技術なのです。
『新・独学術――外資系コンサルの世界で磨き抜いた合理的方法』の著者・侍留啓介氏がお手本として紹介しているのが、ジャーナリストの池上彰氏による「教養」の定義です。池上氏は、「教養とは、自分について知ること」と、じつに簡潔な言葉で表現しています(池上彰著『おとなの教養』)。
たしかに、歴史や哲学などについて学ぶのは、突き詰めれば、自分が暮らしている世界はどんなものなのか、また自分とはどのような存在なのかを知るためといえますから、まさに言い得て妙な定義です。このように、難しいことや複雑なことを「○○とは、××である」というようにスパっと言い表されたら、この人の話はわかりやすいな、と感心してしまいますよね。
一言で表現する力を磨くには、『大人の文章術』などの著者で国語講師の吉田裕子氏が紹介する要約トレーニングが活用できます。このトレーニングは、ひとまとまりの文章を「話題」「結論」の2項目に要約するというシンプルなものです。「話題」は「この文章は何について述べているのか」、「結論」は「結局どのようなことがいいたいのか」をそれぞれ指します。
そして、要約の教材として吉田氏が推奨するのは新聞です。特に社説は、ひとつの記事のなかで必ずひとつの主張を述べているため、要約の練習にはぴったりなのだそう。また、社説以外の記事を要約する場合は、冒頭にリード文がついている記事を選べば、自分の要約と照らし合わせることで “答え合わせ” をすることができます。
例として、以下の記事を要約してみます。
安倍晋三首相は7日午前、エスパー米国防長官と首相官邸で会談した。エスパー氏は米国との対立が深刻化する中国について、「軍事的行動や、計算した上での略奪的な経済的行動が、われわれが守ろうとしている国際的なルールを脅かしている」と批判した。
首相は「日米同盟をさらに強化し、『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向けて協力を続けたい」と述べた。北朝鮮が繰り返す短距離ミサイル発射についても、日米両国で連携して対処する必要性を確認したとみられる。
エスパー氏は「日本が(北朝鮮による)拉致問題を解決することをわれわれは支持している」とも述べ、引き続き拉致問題で協力する意向を示した。
エスパー氏は会談に先立ち、米国が中東・ホルムズ海峡での航行の安全確保に向け、同盟国などに参加を呼びかけている「有志連合」構想について、同行記者団に「日本が真剣に検討すべきことだ」と述べた。安倍首相との会談で参加を直接求めた可能性もある。
エスパー氏はこの後、岩屋毅防衛相と防衛省で会談し、両氏は宇宙やサイバー空間など新たな領域での協力も確認する方針だ。
(引用元:THE SANKEI NEWS|米国防長官、首相に「中国の略奪的な経済的行動は脅威」 同行記者団には有志連合を「日本は真剣に検討すべき」)
【要約例】
話題:米エスパー国防長官が来日し、首相官邸で安倍総理と会談した。
結論:会談では、主に以下の2点について話し合われたとみられる。「1.日米が連携し、中国や北朝鮮の軍事行動に対処していくこと」「2.ホルムズ海峡の有志連合に、日本が参加するかどうか」。
新聞記事を簡潔に要約する練習をすることで、複雑な物事の本質をとらえ、シンプルな言葉で言い換える力を養うことができるのです。
3. 頭がいい人は「『なぜ?』と問い続ける」
3つめの特徴は、常に「なぜ?」という疑問をもち、物事の原因を深く問うことです。
『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』の著者・木部智之氏は、ある事象の原因を考えるときに使えるフレームワーク(思考の型)として、「なぜ?」と5回問いかけるという方法を紹介しています。「なぜ?」と繰り返し問い、本質的な原因を深掘りすることは、問題を根本的に解決するためには不可欠のことなのだそうです。
たとえば、「なかなか思うようにお金が貯まらない」という問題について、このフレームワークを使ってみましょう。
【問題「お金が貯まらない」】
なぜ?→「外食が多いから」
なぜ?→「自炊をするのが面倒だから」
なぜ?→「仕事から帰った後は疲れているから」
なぜ?→「毎日残業続きだから」
なぜ?→「残業しなければ仕事が終わらないから」
この例では、お金が貯まらないという問題を深掘りしていくと、「残業しなければ仕事が終わらない」という原因に行き当たることがわかりました。したがって、「残業しなくても済むよう業務を効率化する」「週に一度くらいは早めに仕事を切り上げて帰る」などの対策によって、外食に使うお金を減らすことができるのではないかと対策を考えることができます。
また「自炊が面倒」という点を解消するには、「土日にまとめておかずを作り置きする」「レトルトや簡単レシピなど、手軽に作れるメニューを取り入れる」などの工夫も考えられるかもしれません。
いずれにせよ、「なぜ」を5回問うというこのフレームワークによって、問題の解決策を効率よく導けることがおわかりいただけたかと思います。
木部氏によると、頭がいい人たちは、こういったフレームワークを自分の中にストックしているものなのだそうです。使い慣れたフレームワークがあることで、新しい物事について考えるときにもゼロから考え始める必要がないため、速く、かつ正確に思考を進めることができるのです。
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「質問の意図が明確」「一言でまとめられる」「『なぜ?』と問い続ける」。頭がいい人に共通する、3つの特徴をご紹介しました。まわりから一目置かれる存在になれるよう、今回ご紹介した方法をぜひ実践してみてくださいね。
(参考)
東洋経済オンライン|「この人は頭がいい」と思わせる超簡単なコツ
All About|明日からできる「質問力」の鍛え方
ダイヤモンド・オンライン|仕事ができる人の口癖は「そもそも」と「○○」
東洋経済オンライン|読み書きを鍛えるのに「要約」が最強なワケ
THE SANKEI NEWS|米国防長官、首相に「中国の略奪的な経済的行動は脅威」 同行記者団には有志連合を「日本は真剣に検討すべき」
東洋経済オンライン|思考のスピードが速い人は「型」で考えている
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。