「本当に頭のいい人になりたい」
「賢くて、デキるビジネスパーソンになりたい」
思うように評価してもらえなかったり、人間関係で悩んだり……と、ビジネスパーソンにはさまざまな苦労が日々あることでしょう。優秀な同僚や成功している人を見て、「自分もデキる人になりたい」と思うかもしれません。
そんなみなさんに、今回は「本当に頭のいい人が日常の習慣として “やらない” こと」をご紹介します。小さな積み重ねが私たちをつくるわけですから、日々「やらないほうがいいこと」は知っておくべきですよね。
仕事だけでなく人生全体を豊かにするためにも、ぜひ参考にしてみてください。
1. 本当に頭のいい人は、友人をたくさんつくろうとしない
なんとなく「友人は多いほうがいい」「人気者になりたい」と考えているのであれば、改めたほうがいいかもしれません。頭のいい人は、友人をつくる際に慎重なのに加え、友人と過ごす時間を増やしすぎないように気をつけているようです。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授のサトシ・カナザワ氏とシンガポールマネジメント大学教授のノーマン・リー氏が学会誌British Journal of Psychologoyにて発表した研究が、それを証明しています。
研究はイギリスとシンガポールの2カ所で実施。合計1.5万人の18~28歳の被験者に、アンケートとIQを測るテストを受けさせたところ、IQが高い人ほど「友人と交流する時間が増えるにつれ幸福度が下がる」ということがわかったそう。
また、IQの高い人ほど「友人をつくるのに時間がかかる」ということも判明。頭のいい人のほうが、物事を多面的に見る能力が高く、人と関わる際の複雑な文脈をよく理解し、相手と関わることで未来に起きうるリスクなども考慮していたのだとか。
人脈は広いほうがいいようなイメージもありますが、実際には、頭のいい人たちは付き合う相手を厳選しているようです。
その反面、頭のいい人たちはそうでない人たちと比べ、一度仲良くなると付き合いが長くなる傾向があるそう。
アメリカの起業家・講演家で、『7 Strategies for Wealth & Happiness(邦題:ジム・ローンの億万長者製造法)』がベストセラーとなったジム・ローン氏の「You are the average of the five people you spend the most time with(あなたは、最も一緒に過ごす時間の長い5人の友人の平均になる)」という言葉はとても有名。頭のいい人たちは、付き合う友人が、自分の人間形成に大きく関係していることをよく理解しているのでしょう。
「友人を減らすべきだ」とまでは言いませんが、「友人は多ければ多いほどいい」と考えたり、学校や職場が偶然同じだった人と惰性で一緒に過ごし続けたりするのではなく、「付き合う人たちによって自分の人生が変わるのだ」という意識をもつといいかもしれませんね。「こういう人になりたい」と思える人と友人関係を築けば、その人の考え方・行動・発言からよい影響を受けることができるでしょう。
2. 本当に頭のいい人は、うまくいかなくてもすぐに諦めない
頭のいい人は、うまくいかないことがあってもすぐには諦めません。頭のいい人とそうでない人とでは、うまくいかないことがあったときの脳の反応が違うということが、ミシガン大学の研究からわかっています。
研究では被験者に、間違えやすいテストを受けさせました。「MMMMM」「NNMNN」のように、並んだ5文字の中央の文字を述べることを繰り返す簡単なテストですが、文字が違ったり同じだったりするため間違えやすいというもの。
テストの際には、脳波を測る機械を被験者の頭にかぶせました。その際見られたのが、脳のふたつの反応。ひとつめは「何かが違うぞ」という気づきの反応、そしてその直後にふたつめの「間違えたから正さなければ」という反省の反応が、約1/4秒の間に起きていました。
最初はみな間違えやすいのですが、後半にかけて間違いが減っていく人たちと、間違い続ける人たちがいたそうです。脳波の違いを見てみると、間違いが減っていくグループは、ふたつめの「間違えたから正さなければ」という反応が大きく出ていたのだとか。研究に携わったジェイソン・モウサー氏は、間違えたときに脳の反応が大きい人は、そこから注意力が上がり、次から間違えなくなると説明しています。
モウサー氏は、頭の良さを左右するのは「自分が賢くなれると信じているかどうか」だと言います。間違いから学ぼうとする人はどんどん変化していくのに対して、勉強が難しかったりテストで失敗したりして諦めてしまうタイプは、そこに留まってしまうのです。
また知性について、「固定されたものだと思う人と、柔軟で鍛えることのできるものだと信じる人とでは、大きな差がある」とモウサー氏。頭の良し悪しにはマインドセットが関係しているとも言えますね。
仕事や勉強をしていて、うまくいかないとすぐに諦めたくなる人は要注意です。そんなときこそ「学ぶチャンスだ」「いまはできなくても、自分は変わることができる」ととらえましょう。
3. 本当に頭のいい人は「自分は正しい」と思い込まない
頭のいい人は、考えが柔軟で共感力があり、他者の視点から物事を見ることができます。そのため「自分は正しい」という思い込みをもつことがなく、人の話を聞き、間違えたときは素直に認めます。
テキサス工科大学の研究によると、頭のいい人のほうが他者の気持ちを考える能力が高く、特に見返りがなかったとしても誰かのために行動したいと考える傾向があるそうです。
他者への共感力には、EQ(Emotional Intelligence Quotient:心の知能指数)が影響しています。EQとは、感情を理解し管理する能力のこと。人に共感する能力は、仕事でもプライベートでもいい人間関係を築くうえで大切な要素であり、まさにビジネスパーソンが身につけるべきものです。
自分の意見を曲げるのは「負け」だと考えたり、相手の立場から物事を考えられなかったりといったことが、EQが低い人には見られます。「自分はそんな人間ではないから大丈夫だ」と思った人ほど要注意。特に「頭の良さ」「共感力」などの目に見えない能力は、自認することが難しく、能力の低い人ほど自分の能力を過信する傾向があります(ダニング・クルーガー効果)。自分の能力をメタ認知できず、自分のレベルを正しく査定できないのです。
そこで、自分に共感力があるかどうかを確認するために、信頼できる身近な人たちに聞いてみるといいでしょう。耳の痛い回答がくるかもしれませんが、メタ認知ができずに痛々しい言動をし続けてしまうことのほうが怖いですよね。
そのうえで、EQを成長させるために「フィクション小説を読む」ことを取り入れてみてください。リンカーン大学のマティス・バル教授の研究で、フィクション小説に陶酔すると共感力が上がるという結果が出ています。フィクション小説を読んだ被験者の「共感力」と「物語にどれくらい陶酔していたか」を測ったところ、物語に陶酔していた人は共感力が上がり、あまり陶酔していなかった人は共感力が上がらなかったのだとか。
研究によると、1週間続けて読むことで効果が出てくるそう。フィクション小説を読むことは「時間の無駄」「趣味でしかない」と思う人もいるかもしれませんが、じつはとても役立つ能力が身につく習慣なのです。
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今回は頭のいい人たちが日常的にやらないことをご紹介しました。無意識に行なっている行動が、じつは未来を大きく左右するかもしれません。当てはまっているものがないか、ぜひ確認してみてくださいね。
【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。
The Independent|Why smart people are better off with fewer friends
PubMed|Country roads, take me home… to my friends: How intelligence, population density, and friendship affect modern happiness
ビジネス心理学|ジム・ローンとは
Ellevate|You Are the Average of the Five People You Spend Time With
Darren Hardy (2012), The Compound Effect, New York City, Vanguard Press.
Wiley Online Library|Charitable giving and cognitive ability
Association for Psychological Science|How Your Brain Reacts To Mistakes Depends On Your Mindset
PLOS ONE|How Does Fiction Reading Influence Empathy? An Experimental Investigation on the Role of Emotional Transportation
Michael Page|The Importance of Emotional Intelligence in the Work Place
Wikipedia|Dunning–Kruger effect
Verywell Mind|The Dunning-Kruger Effect