「資格をとろうと決意したのに、勉強が思うように進まない……」
「勉強の必要性を感じているのに、行動がともなわない……」
意欲が充分あっても、実際は勉強できていない——このようなはがゆい思いをしていませんか?
今回の記事では、「やる気はある」のに「勉強できない」人の問題点を4つご紹介しましょう。ぜひ、勉強の改善に役立ててくださいね。
反対に「やる気がない」人は、「【社会人向け】勉強のやる気が出ないときの原因5つ×対処法8選」をお読みください。
問題点1. 勉強法を “知る” だけで満足している
あなたはこれに当てはまっていませんか? たしかに、勉強法を模索するのは大切なこと。しかし、勉強法の情報収集だけで満足しているなら、その行為は残念ながらムダになってしまいます。
教育YouTuberの葉一氏は、勉強法を知っただけで「勉強できるようになった」と錯覚している人が多いと指摘。本来であれば、勉強法を試し、何度もトライ・アンド・エラーを繰り返しながら自分のものにする――そんな能動的な姿勢が必要だと同氏は言います。
独立研究者の山口周氏も、さまざまな勉強法を渡り歩くことを疑問視するひとり。「学んだ武器(勉強法)は使ってこそ価値がある」と述べています。
たとえば、記憶術を調べるのは、効率的に学習内容を吸収したいからであるはず。「○○記憶術がいいらしい!」という情報を得るだけでは、その目的は達成できません。重要なのは、実際に○○記憶術を勉強に取り入れ、効率よく覚えられるかを確かめること。こうして使いこなせるようになって初めて、勉強法の価値が発揮されるのです。
つまり、「学んだ武器を自分のものにする=自分に合った勉強法を確立する」ことが、遠回りをせず、効率的に勉強の成果を挙げる秘訣と言えるでしょう。
東大首席卒で数々の難関試験をクリアした経験をもつ、信州大学特任教授の山口真由氏いわく、“勉強ができる人” とは「自分にとって最適な方法を知っていて、それに従って進んでいける人」。実際、自身は幼少期から本が好きで「読む」のが得意だったことから、同じ本を繰り返し読む「7回読み勉強法」を編み出し、成功を重ねてきたそうです。
聴覚を使う、図で解釈する、関連づけて覚える……など、自分に合った勉強法は人それぞれ。あなたが最も楽に継続できる勉強法はどれでしょうか。それを探し出し、自分の勉強法として信じて継続すれば、成果にもつながりますよ。
問題点2. “努力そのもの” を楽しんでいる
このように悩んでいるとしたら、「努力そのものを楽しむ」というワナに陥っている可能性も。
頑張ることそのものが楽しくなるのは、本末転倒だ——こう指摘するのは、脳科学者の中野信子氏です。そもそも、勉強の目的は “わからないことをわかるようにする” こと。にもかかわらず、「1日4時間も勉強できた」「問題集を3冊解いた」と「努力した量」に目を向けて満足してしまうようでは、勉強の目的を果たせていません。実際、中野氏は受験生時代に、努力そのものが楽しくなった人の成績が落ちてしまうケースを多く見てきたとのこと。
中野氏は、「目的があるなら、最短距離で能力を上げる戦略を実行すべき」だと述べます。たしかに、「これだけ頑張った」という自負はモチベーションを支えてくれるものです。しかし、そこに安住して “わからないことを理解する” という本来の目的を忘れてはいけませんし、努力を楽しむだけでは目的を達成できないということも、同時に知っておくべきなのです。
では、“わからないことをわかるようにする” ために必要な勉強とは、いったいどのようなものなのでしょう。『東大式節約勉強法』の著者で現役東大生の布施川天馬氏によれば、「どこがわからないのか?」と自問して、わからないところを言語化する習慣があれば、本当に必要な勉強を見極められるのだそう。
たとえば、英語のリーディング課題でつまずいたのなら、わからなかった単語や文法事項などを紙に書き出してみるという具合。自分が本当に勉強すべき箇所がわかれば、「努力を楽しむワナ」に陥ることなく、最短距離で能力を上げられるでしょう。
問題点3. “時間が足りない” と思っている
社会人にとって「忙しさ」は勉強の大きな障害でしょう。『マイナビ転職』の調査(2020年)によると、社会人が「学び直し」をできない最大の理由は「時間がない/忙しいから(52.6%)」だったそうです。
ですが、時間は本当にないのでしょうか? 探してみれば、何かを待つ時間や移動中など “特に何もしていない” 時間があるはず。もしかすると、時間がないと感じるのは「スキマ時間」を無駄にしているからかもしれません。
イントランスHRMソリューションズ代表取締役の竹村孝宏氏は、スキマ時間に何をするのか、事前に決めることが重要だと述べます。時間の長さに応じてやるべきことを決めると、ふとしたスキマ時間を有効に使えるのだそう。
(例)
- 5分の空き時間→単語や用語の暗記
- 10分の空き時間→前日解いた問題の復習
- 15分の空き時間→参考書を読む
もしもあなたが「やる気があったところで、時間がなければ勉強なんかできない」と思っていたのなら、さっそく「スキマ時間用の勉強リスト」を作成してみましょう。まとまった時間はなくても、ちょっとした時間にすぐ勉強に取りかかれるようになりますよ。
問題点4. やる気はあっても “行動できていない”
なぜか思うように行動できず、悩んではいないでしょうか? 勉強を継続するには、意欲だけではなく仕組みが大切です。
メンタルコーチの大平信孝氏によれば、一気に物事をやり遂げようとするのは脳の仕組み上難しいとのこと。脳には現状維持を好む性質があり、新習慣を始めようとすると、脳は防衛本能を働かせて「いまの状態を守ろう」とするため、挫折してしまうのだそうです。
それまで勉強習慣がなかった人が、いきなり複数の教材に取り組もうとする——といったように、なかば根性を頼りに行動しても、脳はそれを受け入れてくれないのですね。
しかし一方で、脳には「大きな変化は受け入れないが、小さな変化は受け入れる」という性質もあるとのこと(可塑性と呼ぶ)。これをふまえると、小さなアクションから始めれば、変化を嫌う脳でも対応できるのだと言います。
そこで大平氏が提案するのが「10秒アクション」。「最初の10秒はどんなことをしようかな?」と考えて具体的に決め、実行するというものです。たとえば、机を整理する、教科書を開く、タイマーをセットする……などのように、勉強を始める小さなきっかけとなるものを決め、それをとりあえず実行してみるのです。
この10秒アクションのいいところは、ハードルがとにかく低いため、迷わず勉強行動を開始できること。また、行動を起こすと脳の側坐核が刺激され、意欲が高まるほか、快感をもたらすドーパミンが分泌されるのだとか。10秒アクションで行動し始めれば、どんどん勉強が前に進むというわけです。
なぜか勉強を始められない……というときでも、初めの行動だけ具体的に決めて、とりあえずそれをやってみてください。勉強開始のきっかけさえつかめば、その先もスムーズに勉強できるはずですよ。
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4つの問題点のうち、当てはまるものはあったでしょうか。やる気があるなら、あとは最善の行動を選ぶだけ。今回の記事を参考に、あなたの勉強がもっとはかどることを願っています。
(参考)
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ダイヤモンド・オンライン|【山口周×『独学大全』】残念な「勉強法ホッパー」と「独学を武器にできる人」の決定的な差
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【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。