「学生の頃は優秀だと認められたのに、仕事では評価されない……」
「仕事ではそれなりにいい評価をもらえているけど、勉強が苦手でスキルアップできない……」
上記のようなジレンマを抱える人もいるのではないでしょうか。
「勉強と仕事は別物だ」と考えるかもしれませんが、じつは、勉強ができる人と仕事ができる人には、共通点があります。その特徴を意識して身につければ、勉強と仕事どちらの能力を上げるのにも役立つ可能性大。
今回の記事では、勉強ができる人と仕事ができる人の3個の共通点について解説します。1つでも取り入れて、“勉強も仕事もできる人” に近づいてみましょう。
仕事ができる人については、「圧倒的に仕事ができる人の特徴14選。仕事ができる人はこれが得意!」をお読みください。
勉強できる人と仕事ができる人の共通点1:謙虚である
仕事でも勉強でも優秀――このような人になるには、成長につながる大事な資質を備えたいもの。それは “謙虚である” ということです。
『東大読書』などの著書がある現役東大生の西岡壱誠氏は、「『謙虚さ』を欠いていると『自分の悪いところ』を受け入れられ」ないと述べます。(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|「性格が悪い子」は成績も伸びない根本理由)
成績を伸ばすには、「品詞問題でつまずく傾向があるから覚え直そう」「間違える問題をリスト化しよう」など、「自分の悪いところ」を冷静に振り返り、改善する必要があります。勉強ができる人は、そのようにして謙虚に事実と向き合っているのです。
そんな謙虚さは、GoogleやAmazonをはじめ企業でも注目されている資質です。
たとえば、Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏は、採用条件に「謙虚であるか」を重視しているのだそう。なぜなら、ベゾス氏が求める優秀な人材とは、「解決済みの問題でも見直し、自分の考えを修正できる」人だから。(Inc.|This Is the Number 1 Sign of High Intelligence, According to Jeff Bezosより翻訳)
Zホールディングス株式会社でリーダー育成を担う伊藤羊一氏も、「伸びる起業家の条件」のひとつに「謙虚さ」を挙げています。
だって、どんなにすごい人でも、自分一人の力だったら直線的に伸びるしかありませんよね。でも、チームの力や他の人からのアドバイスを素直に取り入れることで、加速度的に伸ばせます。
(引用元:創業手帳|ヤフーの教育者 ・伊藤羊一氏に聞く。 伸びる起業家に共通する3つの条件)
他者の意見に耳を傾けることは、チームと協力し合うためだけに必要なのではありません。自分とは異なる考えも吸収できる謙虚な人こそが、視野を広げ、成長することができるのです。
とはいえ、“謙虚である” かどうかは性格の問題だから、身につけるのは難しいのでは? そう思った人は、謙虚でいるために「メタ認知」を意識してみてください。
人材開発等を手がける株式会社セルム・エグゼクティブコンサルタントの高橋豊氏によれば、メタ認知とは「自分自身を俯瞰して、客観的に観察する」こと。日々の「省察・内省・反省」「振り返り」の習慣によって、メタ認知力は上がっていくそうです。(ダイヤモンド・オンライン|「仕事ができる人」の特徴“メタ認知力”とは? より)
勉強や仕事がうまくいかなかったときは、
- 「感情的になっていないだろうか?」
- 「改善できるポイントがあるのではないか?」
など、冷静に振り返る習慣をもってみてはいかがでしょう。第三者の視点で自分を眺めれば、こだわりから離れ、謙虚な気持ちで改善策に目を向けられるようになるはずです。
勉強できる人と仕事ができる人の共通点2:「なぜ?」を掘り下げる
勉強と仕事のどちらにおいても、能力の高い人には、こんな思考グセがあるようです。それは、“なぜ?” と考えるというもの。
勉強において「なぜ?」の問いかけが重要な場面のひとつは、失敗を分析するときです。計算を誤った、正しい選択肢を選べなかった、などの間違いについて、前出の西岡氏は「間違ったのなら、なんらかの理由があるはず」と言います。(引用元:東洋経済オンライン|「性格が悪い子」は成績も伸びない根本理由)
同氏いわく、東大生は「何がそのミスの要因になってしまったのか」と考えるのだそう。(引用元:東洋経済オンライン|東大生がミス撲滅へ「言い訳を大事にする」深い訳)
- 「計算ミスを繰り返すのは、書き出した数字を正しいと思い込む癖があるからだ」
- 「後半にミスが多いのは焦りのせいかも」
——このように、「なぜ?」と掘り下げて、ミスの原因を説明できるようにするのです。「今回はたまたま運が悪かっただけ」と思考を止めることはせず、「どうして間違えたのだろう?」と、分析して次に活かすからこそ、成績を上げていけるわけです。
仕事に置き換えても、同様のことが言えます。つまり、仕事でミスをしたとき、そのミスを放置せずに「どうしてミスしたのだろう?」と考え、再発防止に努めることが、ミスの少なさにつながるということ。
仕事で「なぜ?」を問う方法としては、トヨタ自動車の「なぜなぜ分析」がよく知られていますね。「5回の『なぜ?』を繰り返すことによって、本質的な問題解決につながる」というメソッドです。(引用元:日経ビジネス|会計でも、トヨタ式「なぜなぜ分析」を5回繰り返す)
この「なぜ?」の分析は、失敗したときや、問題を抱えたときにだけすればいいものではありません。グロービス経営大学院教授・嶋田毅氏いわく「成功したときも『なぜ』は必要」。(引用元:東洋経済オンライン|仕事も勉強も共通「伸びる人、伸びない人」5つの差)
たとえば、A社のプロモーション活動が海外進出に貢献したとしましょう。A社の大きな成功要因を「なぜ?」と掘り下げていくと――
- なぜ、プロモーション活動が成功した?
→配信した動画が、大きな反響を呼んだから - なぜ、動画配信の評判がよかった?
→商品の製造工程をドキュメンタリー式で作成したから - なぜ、製造工程を見せたら成功した?
→品質が高いことを物語として伝えることで、顧客の共感を得られたから
このように深掘りすると、「自社もストーリー性が高いものをつくったらどうだろう?」と成功例から横展開できますね。仕事の能力が高い人ほど、「なぜ?」と問い続け、ほかの例から分析するわけです。
この習慣をもつだけで、あなたの勉強・仕事の生産性が変わってきますよ。
勉強できる人と仕事ができる人の共通点3:つなげて考える癖がある
思考の深さや応用力は、勉強・ビジネス双方において重要なもの。これらの力が高い人には、“物事をつなげて考える” 癖があるようです。
前出の西岡氏は、東大が入学者に求めるものについて、東京大学のアドミッション・ポリシー(入学者の受け入れ方針を示したもの)に触れながら説明しています。そのポリシーに記載された、入学試験の基本方針のひとつがこちらです。
第三に、知識を詰めこむことよりも、持っている知識を関連づけて解を導く能力の高さを重視します。
(引用元:東京大学|アドミッション・ポリシー ※太字による強調は編集部にて施した)
実際、東大の入試では「すごく単純な知識をうまく使えば解ける問題」が多いと西岡氏。(引用元:東洋経済オンライン|東大が入試にぶっ込む「頭のよさを測る」問題)
もっている情報を問題とつなげ、発想する――そんな柔軟な思考が、勉強のできる人には備わっていると見ていいでしょう。
では、ビジネスにおいて “関連づけて考える” 力は、どのような場面で活かされるのでしょうか。
『超速で成果を出す アジャイル仕事術』の著者で、株式会社経営共創基盤・共同経営者の坂田幸樹氏が、こんなエピソードを紹介しています。
大学卒業後コンサルティング会社に入社して間もない頃、先輩コンサルタントが新しいプロジェクトでも臨機応変に対応するのを見て驚いたという坂田氏。ある先輩コンサルタントの言葉から、なぜ対応力が高いのかに気づいたのだとか。
経験豊富なその先輩コンサルタントにとっては、未知の業界であっても抽象化すれば他の業界と類似点があり、過去のコンサルティング経験が大いに参考になるということです。
(引用元:ダイヤモンド・オンライン|通勤というスキマ時間を活用して、アナロジー思考を鍛える方法 ※太字による強調は編集部にて施した)
坂田氏によると、このように「遠くから借りてきた事例を、自身の直面する事例に当てはめること」を「アナロジー思考」と呼ぶそう(引用元:同上)。
『アナロジー思考』の著者、ビジネスコンサルタントの細谷功氏は、アナロジー思考を簡潔に「高度なパクリ」と表現しています。(引用元:ITmediaエグゼクティブ|「アナロジー思考」――新しいアイデアは「遠くから借りてくる」?)
単なる表面的な “まね” ではなく、たとえば「徳川家康の処世術から部下のマネジメントについて考える」など、遠くの分野からヒントを得て考えることを指すのです。
デザイン思考の第一人者、多摩美術大学特任准教授の佐宗邦威氏は、「『今考えていることで、何か似たものないかなあ?』という問いを考える」ことが、アナロジー思考を実践するうえで有効だと言います。さらには、「雑誌やPinterestなどの写真ボードサービスを眺める」ことや、「お題を決めてそれを探して街歩きをして、写真を撮る」こともおすすめだとか。(引用元:NIKKEI STYLE|まったく違うものに共通点 発想飛ばすアナロジーの力)
いつも通る道の風景、写真や絵画などから、
- 「自社の商品と関連するものはなんだろう?」
- 「興味のある業界と似ているものは?」
と類似点を探す習慣をつけてみませんか。関連づける癖がつけば、以前より思考の幅が広がっていくはずですよ。
***
勉強と仕事の双方に通じる力を知れば、成長速度が上がるはずです。今回の記事を参考に、勉強も仕事もできる本当に優秀な人を目指してくださいね。
(参考)
東洋経済オンライン|「性格が悪い子」は成績も伸びない根本理由
東洋経済オンライン|本当?ドラゴン桜「性格悪い奴は東大落ちる」根拠
創業手帳|ヤフーの教育者 ・伊藤羊一氏に聞く。 伸びる起業家に共通する3つの条件
Inc.|This Is the Number 1 Sign of High Intelligence, According to Jeff Bezos
ダイヤモンド・オンライン|「仕事ができる人」の特徴“メタ認知力”とは?
東洋経済オンライン|東大生がミス撲滅へ「言い訳を大事にする」深い訳
日経ビジネス電子版|会計でも、トヨタ式「なぜなぜ分析」を5回繰り返す
東洋経済オンライン|仕事も勉強も共通「伸びる人、伸びない人」5つの差
東洋経済オンライン|東大が入試にぶっ込む「頭のよさを測る」問題
東京大学|アドミッション・ポリシー
LIFE INSIDER|「ロックスター」は採用しない ── グーグルのディレクターが求める人材とは
ダイヤモンド・オンライン|通勤というスキマ時間を活用して、アナロジー思考を鍛える方法
ITmedia エグゼクティブ|「アナロジー思考」――新しいアイデアは「遠くから借りてくる」?
NIKKEI STYLE|まったく違うものに共通点 発想飛ばすアナロジーの力
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。