東大の起業支援担当者が解説「考えがふわっとしている人に足りてないのは『解像度』だ」その正体とは?

馬田隆明先生インタビュー「考えがふわっとしている人に足りない『解像度』とは何か」01

上司や取引先から「なんだか説明が『ふわっと』してるよね」「もうちょっと具体的に話してほしい」といった指摘を受けることが多い人はいませんか?

そういう人は、「『解像度』が足りていないのかもしれない」と語るのは、東京大学で現役生や卒業生、研究者のスタートアップを支援している馬田隆明(うまだ・たかあき)先生。はたして、馬田先生が言う「解像度」とはどういうものなのでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「解像度」を構成する4つの視点

近年、ビジネスシーンで「解像度」という言葉がよく使われるようになってきました。ただ、多くの人が「こんな感じだろう」といったイメージだけで使っているようで、それこそ「解像度という言葉に対する解像度が低い」といった状況にあるようにも感じます。

では、解像度とはいったいどういうものでしょうか? 私は、解像度は「深さ」「広さ」「構造」「時間」という4つの視点で整理すると、見通しがよくなると考えています。

「深さ」の視点とは、「原因や方法を細かく具体的に掘り下げる」ことです。「広さ」の視点とは、「考慮する原因やアプローチの多様性を確保する」こと。そして、「構造」の視点とは、「『深さ』や『広さ』の視点で見えてきた要素を意味のあるかたちで分けて、要素間の関係性やそれぞれの相対的な重要性を把握する」こと。最後の「時間」の視点とは、「時間による変化や因果関係、物事のプロセスや流れをとらえる」ことを意味します。

馬田隆明先生インタビュー「考えがふわっとしている人に足りない『解像度』とは何か」02

4つの視点をもてれば、状況に応じた最適な解決策を考えられる

ちょっとわかりにくかったかもしれませんので、「健康になりたい」と考える人にアドバイスをする場面を例に考えてみましょう。「健康になりたい」という願望はまさに「ふわっと」したものですよね。食事制限や運動などいろいろな選択肢が思い浮かびますが、このままでは的確なアドバイスをすることなどできません。

そこで相手に詳しく話を聞いてみると、その人の言う「健康になりたい」とは「筋肉をつけたい」というものであり、なかでも「上腕二頭筋を鍛えたい」のだとわかりました。

そのとき、筋肉に対する知識が深く、「上腕二頭筋がどこのどういう筋肉で、どんな特徴をもつのか」がわかっていれば、必要なトレーニングを具体的に提案しやすくなるでしょう。これが、「深さ」の視点をもつということです。

さらに、筋肉に関する知識の他に食事や休息についての知識もあれば、ただ筋トレを提案するだけではない幅広いアドバイスをすることができます。これが、「広さ」の視点をもつということです。

また、相手が筋トレの初心者の場合なら、細かくトレーニングメニューを用意するよりも、「とにかくまずはこのトレーニングだけをやってみよう」ということのほうがいいケースもあります。このように、さまざまな選択肢を構造的に認識したうえで、状況や課題に応じた効果的な選択をすることで、よい結果が得られるでしょう。これが、「構造」の視点をもつということです。

それから、筋肉がまだついていない時期、徐々に筋肉がついてきた時期にはそれぞれどんなトレーニングがいいのかといった、時間的な変化やプロセスを考慮することも大切です。これが、「時間」の視点をもつということです。

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特に磨くべきは、「深さ」の視点

これら4つの視点のなかでも、みなさんには「深さ」の視点を磨くことをおすすめします。というのも、私からすると、この「深さ」の視点が足りない人が多いと感じるからです。

「自社製品の売上がなかなか伸びない」という課題の解決策を考えるとき、たとえば「マーケティングをする」といったように、考えた打ち手が浅いところで止まってしまっているようなケースが多いということです。

「マーケティングをする」のなら、さらに分解して深めていく。その結果、「広告を打つ」のであれば、どの媒体にするのか。「ウェブ広告を打つ」のなら、どんな広告にするのか。「バナー広告を打つ」のなら、どんなバナー広告にするのか。そのように「深さ」の視点をもたなければ、「マーケティングをする」という、それこそ「ふわっと」した打ち手しか考えられず、なかなか成果もついてこないことになってしまいます。

その「深さ」の視点をもつには、「『Why(なぜ)』と『How(どのように)』を用いて7段階以上問う」ことをおすすめします。基本的には、本質的な「課題」を突き詰めるのなら「Why」、課題に対する「解決策」を考えるのなら「How」を用います。先のマーケティングの具体的内容を考える例は、まさに「How」を用いた方法です。

「Why」を用いるケースであれば、たとえば「飲食店の売上が伸びない」という課題があるのなら、その理由は「顧客単価が低い」からで、その理由は「ドリンクが想定より売れていない」からで、さらにその理由は「3杯目以降のドリンクの注文が少ない」からで、その理由は「ドリンクメニューが少ない」から……といった具合に、何度も「Why(なぜ)」と問うていくのです。そうすることで「深さ」の視点をもつことができ、本質的な課題にたどり着くことができるようになるでしょう。

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【馬田隆明先生 ほかのインタビュー記事はこちら】
「解像度が高い人」かどうかがわかる “4つのチェックリスト”
「なぜ」は〇回繰り返す 。「解像度が高い人」になるための4つの日常習慣

【プロフィール】
馬田隆明(うまだ・たかあき)
東京大学FoundXディレクター。University of Toronto卒業後、日本マイクロソフトを経て、2016年から東京大学。東京大学では本郷テックガレージの立ち上げと運営を行い、2019年からFoundXディレクターとしてスタートアップの支援とアントレプレナーシップ教育に従事する。スタートアップ向けのスライド、ブログなどで情報提供を行っている。著書に『未来を実装する』(英治出版)、『成功する起業家は居場所を選ぶ』(日経BP)、『逆説のスタートアップ思考』(中央公論新社)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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