「解像度が高い人」かどうかがわかる “4つのチェックリスト”

馬田隆明先生インタビュー「『解像度が高い人』かどうかがわかる “4つのチェックリスト”」01

ビジネスシーンにおいて「解像度」という言葉を見聞きすることが増えてきました。一般的に、解像度が高い状態とは「顧客の状況や課題、次に行なうべき打ち手が鮮明に細かく見えている」状態を言います。

では、みなさんの解像度は高いのでしょうか、それとも低いのでしょうか。著書『解像度を上げる』(英治出版)を上梓した馬田隆明(うまだ・たかあき)先生が、自分自身の解像度を測るためのチェック項目を挙げてくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

仕事で成果を挙げるために力を発揮する「解像度」

世のなかのあらゆる仕事は、「誰かのなんらかの課題を解決するため」に存在するものです。そのため、「課題」をきちんと把握することができなければ、成果を挙げることは難しくなります。また、もし課題をとらえることができたとしても、的確な「解決策」を講じられなければ、やはり成果を挙げることは難しいでしょう。

つまり仕事においては、本質的な「課題」を把握して、最善の「解決策」を見いだすことが肝要となります。そのために大きな力を発揮するのが、「解像度」です。私は解像度を、「深さ」「広さ」「構造」「時間」という4つの視点で整理しています。

「深さ」の視点とは「原因や方法を細かく具体的に掘り下げる」こと、「広さ」の視点とは「考慮する原因やアプローチの多様性を確保する」こと、「構造」の視点とは「『深さ』や『広さ』の視点で見えてきた要素を意味のあるかたちで分けて、要素間の関係性やそれぞれの相対的な重要性を把握する」こと、「時間」の視点とは、「時間による変化や因果関係、物事のプロセスや流れをとらえる」ことを指します(『東大の起業支援担当者が解説「考えがふわっとしている人に足りてないのは『解像度』だ」その正体とは?』参照)。

馬田隆明先生インタビュー「『解像度が高い人』かどうかがわかる “4つのチェックリスト”」02

自分の解像度を測るためのチェック項目

では、みなさんの解像度は、はたして高いと言えるものでしょうか? ここでは、先に挙げた4つの視点ごとに、みなさんの解像度をチェックしていきましょう。それぞれの視点について自問してほしいのが、こちらの4つです。

自分の「解像度」を測る「4つの質問」

  1. 【深さ】ひとつの物事に対して、どこまで詳細に説明できるか?
  2. 【広さ】他人なら言及しないような、多様な着眼点をもてているか?
  3. 【構造】MECE(ミーシー)かつユニークに物事を分けられているか?
  4. 【時間】その物事の歴史がわかっているか?

もちろん、とらえたり考えたりする課題や解決策の内容によって、チェックする内容も変わってきますから、これらはひとつの例として考えてください。

馬田隆明先生インタビュー「『解像度が高い人』かどうかがわかる “4つのチェックリスト”」03

専門分野に限らず知見を広める

まず「深さ」の視点に関しては、「ひとつの物事に対して、どこまで詳細に説明できるか?」ということがバロメーターとなります。

たとえば、あるひとりの顧客についての情報を、それこそ30分や1時間ほどのあいだ話すことができるか。性別や年齢、居住地、勤務先といったことはもちろん、どういう仕事をしていてどんな趣味をもっていて、そしてどんな困り事を抱えているのか。そういった数多くの情報をもっていれば、その顧客が抱える本質的な課題をとらえて、的確な解決策を講じることがしやすくなっているでしょう。

「広さ」の視点の場合なら、「他人なら言及しないような、多様な着眼点をもてているか?」ということがひとつのチェック項目となりえます。

ビジネスパーソンには、自分が属する専門分野についての知識を深めていこうとする人は多いものです。でも、専門分野の知識を深めていくだけでは、同じ分野に属するほかの多くの人たちのなかから突き抜けた存在には、なかなかなれません。でも、専門分野に限らず幅広い知見を得ていれば、他の人たちとは異なる視点からのアプローチで課題をとらえたり、解決策を講じたりすることもできるようになります。

馬田隆明先生インタビュー「『解像度が高い人』かどうかがわかる “4つのチェックリスト”」04

いまだけではなく過去にも目を向ける

「構造」の視点であれば、いわゆる「MECE(ミーシー)かつユニークに物事を分けられているか?」が大切です。

「MECE」とは、「Mutually(お互いに)」「Exclusive(重複せず)」「Collectively(全体に)」「Exhaustive(漏れがない)」という言葉の頭文字をとったロジカルシンキングの基本とされる概念で、日本語では主に「漏れなく、ダブりなく」と訳されます。

物事をとらえたり考えたりするときには、正確な答えを導き出すために必要な要素をきっちりと網羅しながらも、それらが重複しないようにするという考え方も欠かせません。

それでいて、ユニークな分け方になっていれば、独自の示唆を出すことができるようになるでしょう。「PEST」や「3C」などの標準的なフレームワークはMECEに近い分け方ですが、多くの人がその視点をもっており、ユニークとは言えないため、それだけでは有効な洞察を導けないことがほとんどです。ユニークな分け方をするためには、ユニークな切り口を見つける努力をしましょう。

「時間」に関して言うと、「その物事の歴史がわかっているか?」という点をチェックしてみましょう。

たとえば、ある業界にまつわる課題の解決策を考えるとします。そのとき、いまある課題にだけ目を向けるのは、解像度が高い人がやることではありません。そうではなく、これまでにその業界に関してはどのような課題があり、当時はどんな解決策を講じてきた結果、いまはどういう状況にあるのか。そういう歴史をしっかり認識できていれば、「先々にはこんな課題も出てきそうだ」といった将来予測も立ち、より的確な解決策を考えることができるようになります。

馬田隆明先生インタビュー「『解像度が高い人』かどうかがわかる “4つのチェックリスト”」05

【馬田隆明先生 ほかのインタビュー記事はこちら】
東大の起業支援担当者が解説「考えがふわっとしている人に足りてないのは『解像度』だ」その正体とは?
「なぜ」は〇回繰り返す 。「解像度が高い人」になるための4つの日常習慣

【プロフィール】
馬田隆明(うまだ・たかあき)
東京大学FoundXディレクター。University of Toronto卒業後、日本マイクロソフトを経て、2016年から東京大学。東京大学では本郷テックガレージの立ち上げと運営を行い、2019年からFoundXディレクターとしてスタートアップの支援とアントレプレナーシップ教育に従事する。スタートアップ向けのスライド、ブログなどで情報提供を行っている。著書に『未来を実装する』(英治出版)、『成功する起業家は居場所を選ぶ』(日経BP)、『逆説のスタートアップ思考』(中央公論新社)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト