“デキる人” の理性・感性の働かせ方。「右脳と左脳」ともに鍛えて初めて仕事はうまくいく

柏野尊徳さん「左脳・右脳をフル活用する方法」01

ビジネスパーソンには発想力や創造性が求められるため、それらをつかさどる「右脳」を鍛えることが大切だとよく言われます。しかし、当然「左脳」にも大切な働きがあり、「右脳・左脳をバランスよく使う」ことこそが重要だと語るのは、イノベーションとマネジメントに関する専門教育を提供するアイリーニ・マネジメント・スクールの代表・柏野尊徳(かしの・たかのり)さん

左脳・右脳をバランスよく使うことが大切な理由、そして、左脳と右脳それぞれを鍛える方法も教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

左脳で全体像を把握し、右脳で決断する

ビジネスパーソンに限らず、よりよい決断をするためには「左脳」「右脳」の両方をバランスよく使うことが大切です。実際にはそこまで単純に分割できませんが、あえて左脳・右脳の役割を分けると、「理性」をつかさどるのが左脳であり、「感性」をつかさどるのが右脳です。

具体的に言えば、感性によって私たちは日々の行動を決めています。たとえば、レストランでどんなメニューがあるのかを理解するために働くのは理性です。でも、それらのメニューのなかから食べるものを決めることは理性にはできません。それを決めるには、「今日はどうしてもこれを食べたい!」「これを食べたほうがいい」など、気持ちや感情といった主観的な感性が絶対に必要なのです。

もし感性がなければ、どうなるでしょうか? 決断を下すことができないのですから、物事を先送りすることになってしまいます。ここに感性の重要性があります。

一方、理性の重要性は客観的に外部の情報を把握することにあります。レストランの例で言えば、もし理性が欠けていればどんなメニューがあるのかをきちんと理解することができません。理性がなくその場の感情だけで「これを食べたい!」と衝動的に決めてしまうと、もっとお得なメニューだとか大好物といった、本当に食べるべきメニューを見落としてしまうことにもなりかねません。

感性に基づく主観的な価値判断も重要ですし、理性による客観的な状況の把握も大事なのです。

柏野尊徳さん「左脳・右脳をフル活用する方法」02

左脳・右脳をバランスよく使って、「トレードオフ」を処理する

もちろん、これら左脳と右脳の働きはビジネスシーンにおいても欠かせません。全体像を把握したうえでベストだと思われる決断をするということは、言い方を変えると「トレードオフ」をきちんと処理するということ。トレードオフとは、「目的達成に向けて一方を立てれば他方がまずくなるという、ふたつの物事のあり方」を指します。

仕事においては、「このプランには長期的なメリットはあるけれど、短期的な利益は犠牲になる」とか、もっと日常的には「いまこの仕事をしていたら、あの仕事はできない」「上司の指示はこうだけど、自分自身はこうしたい」といったトレードオフの状況は頻繁に訪れます。

トレードオフとは、いわば「ひとつの選択肢を選ぶと、残りの可能性はすべて犠牲になる」という状況です。いまお伝えしたように、仕事においてそういった状況は頻繁に訪れ、避けることはできません。ですから、その状況をきちんと理性によって把握し、感性によってどちらを選択するかを決断することが求められます。

客観的にいまの状況を把握できていて、そのうえで「自分はこれをやるんだ!」と意思決定できる芯がある人は、残りの可能性が犠牲になったとしても、「そのことよりこっちが大事だ!」と、選んだ選択肢の実行に邁進できます。あるいは、犠牲になるものに対しても、いい意味で諦めることができるでしょう。

でも、全体像を把握できず、強い気持ちや信念をもって「これをやるんだ!」と決められてもいなかったとしたらどうでしょう? なんとなく決めたほうの仕事をしながらも、「本当にこれをやっていていいのかな……」と不安に襲われるのがオチです。そんなふうに迷いながら進める仕事で大きな成果を挙げるのは難しいと思います。

柏野尊徳さん「左脳・右脳をフル活用する方法」03

右脳を鍛える「10倍と10分の1思考」

では、どうすれば左脳と右脳をバランスよく使い、トレードオフをきちんと処理できるようになるのでしょう。私からは、右脳(感性)を鍛える「10倍と10分の1思考」と、左脳(理性)を鍛える「○△?!マトリクス」というフレームワークをおすすめします。

10倍と10分の1思考は、ある視点を10倍にしたり10分の1にしたりと、意図的に転換して新しいアイデアを手にする方法です。

たとえば、1日に10人のお客さまに対応するサービス業に携わる人がいるとします。そこで、10人の10倍、100人のお客さまに対応しなければならないとしたらどうするかと考える。そうすると、現状では完全に見落としていた無駄に気づき、よりスピーディーに対応するためのアイデアを思いつくこともできるでしょう。

あるいは、30日後が納期の仕事があるとして、その10分の1である3日後が納期だったとしたらどうするかと考えてみる。すると、最低限どこまでやっておけばいいかと考えることになります。そうして、やるべき仕事の本質を見抜くことにもなるのです。

これはいわば、思考の枠組みを意図的に外す方法です。自分なりの視点で新しいアイデアを膨らませる練習となり、発想力も豊かになります。主観的な感性を豊かにしていく、つまり右脳を鍛えるうえで有効な方法です。

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左脳を鍛える「○△?!マトリクス」

○△?!マトリクスは、「○△?!」の4つの記号でアイデアや行動について理性的に分類する方法であり、左脳を鍛えると同時に、次にやるべきアクションを考えるために有効となるものです。周囲の意見を4つの視点で整理することで、何が重要なポイントなのかをすばやく整理できるため、個人での利用に限らず特定のテーマについてチームのメンバーやお客さまと話をするときなどにも役立ちます。

柏野尊徳さん「左脳・右脳をフル活用する方法」05

ふたつの線を引いてノートやホワイトボードを4分割したら、左上に「○」、右上に「△」、左下に「?」、右下に「!」と書き込んでください。それぞれの記号には次のような意味があります。

  • ○:機能した/しそうな点、よい点
  • △:うまくいかなかった/いかなそうな点、改善点
  • ?:詳細が不明な点、疑問点、よくわからない点
  • !:目の前のメモを見ながら思い浮かんだ新しいアイデア

たとえば、自分の仕事の取り組み方について考えるとします。左上の「○」の領域には、「いますでにうまくいっていると思えること」や「自分が得意だと思える仕事」「周囲から評価された仕事」などを書き込みます。「△」は逆に苦手だったり失敗したりしたこと、改善したいと思っていることを書き込んでください。

続いて、「?」の領域には、「○」「△」のことについて書きながら疑問に思ったことや自分に対する問いかけを書きます。「前の部署の仕事のほうが自分に向いていたかも」「チームのルールをこう改善したほうがお客さまは喜ぶのでは?」といったことです。これらに対する答えを書く必要はありません。もし思い浮かんだとしてもメモする程度でOK。

最後が「!」。ここには先の「○」「△」「?」を見ながら思いついた「やってみたらいいと思ったこと」を書きます。現時点での実現性はいったん無視してかまいません。「自分に合った仕事に変えてもらえるように上司に相談する」「次の会議でルールの改善について提案しよう」といったことです。

書き込む内容に正解はありません。自分やチームの過去の行動やその結果を分析しながら、よりよい未来の行動を検討します。客観的な理性を働かせて、左脳を鍛えることができますよ。

柏野尊徳さん「左脳・右脳をフル活用する方法」06

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【プロフィール】
柏野尊徳(かしの・たかのり)
1984年6月25日生まれ、岡山県出身。慶應義塾大学総合政策学部へ入学し、1年目に学内学会で優秀論文賞を受賞。在学3年目にスタンフォード大学に留学し、デザイン思考を学ぶ。帰国後に飛び級、授業料全額免除の特待生として慶應修士課程を修了。岡山大学大学院では非常勤講師を3年務める。現在ケンブリッジ大学でイノベーション・エコシステムを研究、博士号取得予定。在学中に設立した「アイリーニ・マネジメント・スクール」はマイクロソフトやパナソニックなどの組織変革を支援し、世界40カ国発行『Startup Guide』で日本を代表する教育機関に認定される。スタンフォード大学講師との共同講座開催、教材ダウンロード16万部、セミナー累計参加者数5000名。エンジェル投資家、長崎大学FFGアントレプレナーシップセンター外部アドバイザー(プロボノ)。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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