【地頭がよくなるノート術】AppleやGoogleを育てたスタンフォード大が教える「手書き」メソッド

柏野尊徳さん「ストーリー・ボード」01

よく「地頭がいい」という言い方をしますが、「地頭のよさ」とはいったいどんなことを指すのでしょうか。イノベーションとマネジメントに関する専門教育を提供するアイリーニ・マネジメント・スクールの代表・柏野尊徳(かしの・たかのり)さんは、「地頭がいい」とは、「発想力」「論理的思考力」「共感力」が優れていることだと語ります。そして、その力を伸ばしていくのが、柏野さんが提唱するスタンフォード式超ノート術。その詳細を伺いました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

「地頭がいい」=「発想力・論理的思考力・共感力が優れている」こと

私は、発想力」「論理的思考力」「共感力」が優れている人こそ「地頭がいい」人だと見ています。

「発想力」とは、スピーディーに大量のアイデアをどんどん生み出す力のこと。場合によってはひとつのすばらしいものを考え出すことも大事ですが、かつてより格段にスピードが求められるいまは、異なる視点からのアイデアをぽんぽんといくつも生み出せることがより重要となっています。

そのように生まれたアイデアを精査するために働くのが「論理的思考力」です。その力の意味するところは、物事をうまく分析・整理して優先順位をつける力のことです。発想力が高い人なら、企画会議に向けていくつも企画を思いつくことができるでしょう。でも、そのすべてを実行すればいいというものではありません。

「いますぐにやるならプランAがいい」「1年後にやるならプランBがいい」「大企業相手ならプランCだけど、うちのお客さまは中小企業が多いからプランDがいい」など、置かれた状況によってそれぞれのアイデアをきちんと評価できることが大切です。

そうして決まったプランを実現するために必要とされるのが「共感力」。いわゆるコミュニケーション能力と考えてもらっていいでしょう。これは、相手の立場や考え、感じていることをきちんと理解したうえでのコミュニケーションにより共感を得て、周囲を巻き込む力です。

柏野尊徳さん「ストーリー・ボード」02

シリコンバレー地域を育てたスタンフォード大で培われたノート術

なかでも、3つめに挙げた共感力が特に大切だと私は考えます。極端な話をすれば、どんなにアイデアをたくさん生み出すことができて、論理的に物事を整理して優先順位をつけられたとしても、まったく実行することができなければ、それまでの作業にはなんの意味もありません。

そして、多くの人と関わりながら進める必要があるビジネスの場で、プランの実現に向かって力強く突き進むには、当然ながら周囲の力や助けを得る必要があります。そう考えると、「実行力=共感力」と言ってもいいでしょう。

特にいまは価値観の多様化が進んでいる時代です。自分とは異なる価値観やバックボーンをもっている人、異なる立場の人、異なる経験を積んできた人と一緒に仕事を進めることが求められています。

もちろん、立場が上の人なら、自分の権限を生かして命令によって周囲を動かすということができるかもしれません。でも、それでは大きな成果を生むことにはつながりにくいものです。「俺はこんなことをやるからついてこい!」というスタンスではなく、周囲の人の共感を得て、彼ら彼女ら自身に「一緒にやりたい!」と思わせることが大きな成果につながるのです。

そして、私にとって共感力の重要性を教えてくれたのがスタンフォード大でした。スタンフォード大は、AppleやGoogle、Facebookといった企業が集まるシリコンバレー地域を育てた教育研究機関です。「共感力」に加えて「発想力」と「論理的思考力」を伸ばす入り口となる、スタンフォード大での「紙とペン」を使った手書きのワークを整理してまとめたものが、私が提唱する「スタンフォード式超ノート術」です。

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ビジネスパーソンに必須の共感力を伸ばす「ストーリー・ボード」

残念ながらスペースの都合もあってここでそれらすべてを詳しく紹介することはできませんが、特にビジネスパーソンにとって重要だと考える共感力の向上につながるノート術を解説しておきます。

この一例は、プレゼンのプランニングに有効なノート術です。プレゼンでは、聴衆がどんな人たちでどんな状況に置かれており、どんなことに困っているのかを感じるといった共感する力が欠かせません。そのうえで、問題解決のためのアイデアと、その結果としてどんなに違う日常が手に入るか、ということを提案する必要があります。

それらのステップを自然に進められ、共感力を高めてくれるのがストーリー・ボードです。映画のストーリーをつくるような感覚で、先に挙げたステップを踏んでいくわけです。そうすることで、プレゼンをよりよくすることはもちろん、共感力を向上させることにつながります

【人を巻き込み魅了する「ストーリー・ボード」の一例】

柏野尊徳さん「ストーリー・ボード」04

これは、コーヒーが好きな人がぶつかりがちな問題を解決するためのアイデアのプレゼンを考える例。

  1. アイデアを提案する相手の人物像
  2. 彼ら彼女らがぶつかっている問題
  3. その解決のために提案する解決策
  4. それにより変化する日常を、「共感」をもちながら一連のストーリーとしてイメージする

柏野尊徳さん「ストーリー・ボード」05

【柏野尊徳さん ほかのインタビュー記事はこちら】
スタンフォード式手書きノートの2大特徴は「質より量」「雑で汚い」。その納得の理由とは
“デキる人” の理性・感性の働かせ方。「右脳と左脳」ともに鍛えて初めて仕事はうまくいく

【プロフィール】
柏野尊徳(かしの・たかのり)
1984年6月25日生まれ、岡山県出身。慶應義塾大学総合政策学部へ入学し、1年目に学内学会で優秀論文賞を受賞。在学3年目にスタンフォード大学に留学し、デザイン思考を学ぶ。帰国後に飛び級、授業料全額免除の特待生として慶應修士課程を修了。岡山大学大学院では非常勤講師を3年務める。現在ケンブリッジ大学でイノベーション・エコシステムを研究、博士号取得予定。在学中に設立した「アイリーニ・マネジメント・スクール」はマイクロソフトやパナソニックなどの組織変革を支援し、世界40カ国発行『Startup Guide』で日本を代表する教育機関に認定される。スタンフォード大学講師との共同講座開催、教材ダウンロード16万部、セミナー累計参加者数5000名。エンジェル投資家、長崎大学FFGアントレプレナーシップセンター外部アドバイザー(プロボノ)。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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