“あの口癖” があなたの幸福度を下げてる可能性。幸福学者が教える「いい言葉」と「ダメな言葉」

前野隆司さんインタビュー「幸せを遠ざけている口癖」01

「幸せになるには、言葉の扱いに要注意!」。そう語るのは、「幸福学」の第一人者である慶應義塾大学大学院教授の前野隆司(まえの・たかし)先生です。

特に注意をしなければならないのは、悪口や愚痴など「ネガティブな言葉」。意外なところでは、ビジネスパーソンが日常的に使っている「お疲れさま」という言葉にも注意してほしいと、前野先生は言います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

前野隆司さんインタビュー「幸せを遠ざけている口癖」02

「理想の自分」をイメージすれば言動が変わる

多くの人がポジティブ思考を推奨する昨今ですが、私もこれには全面的に賛同します。というのも、ネガティブ思考は幸せを遠ざけてしまうからです。

ネガティブ思考の人は、何かにチャレンジするにも、「自信がない」「無理だろう」というふうに、言葉もネガティブなものになりがち。その言葉が自分の耳から脳に届き、「自信がない」「無理だろう」と自分に言い聞かせているようなものですから、チャレンジとその先にある成功や幸せを自ら遠ざけ、「理想の自分」から離れてしまっているのです。

そうではなく、理想の自分をイメージしましょう。イメージできた時点で、その理想の自分はすでに脳の中にいます。脳は理想の自分の姿をしっかり認識しているわけですから、そのあとの言動は、理想の自分に向かって現在の自分を近づけていくようなものになります

もちろん、理想の自分になるには時間がかかります。それでも、日々少しずつ理想の自分に向かって進んでいくのですから、時間経過とともに大きな変化を自分にもたらし、それこそ幸せになることができます。

前野隆司さんインタビュー「幸せを遠ざけている口癖」03

悪口大会には参戦せず、その状況を客観視する

また、悪口や愚痴にも注意が必要です。ネガティブな言葉を自分の脳に刷り込んでネガティブ思考に陥るのはもちろんのこと、悪口というのは回り回って本人の耳に入り、人間関係を悪くすることにもなるからです。そのような状況では、幸せを感じることはできません。

とは言っても、言いたい悪口や愚痴をため込むのも精神衛生上よくありませんから、適度にガス抜きする必要はあります。その吐き出し方や、あるいはまわりの誰かが悪口を言っているときの対処の仕方に注意しましょう。

もし自分で愚痴を吐き出すなら、ちょっと冗談めかして言うべき。そこでのポイントは笑顔です。しかめっ面で愚痴を言っていては、それこそネガティブな雰囲気になって、言葉もどんどんネガティブになる。でも、笑顔でなら愚痴もそれほどネガティブなものにはならないはずです。

また、職場で誰かが悪口を言い始めると、「そうだよね!」と賛同してつい盛り上がってしまいますよね? でも、それではネガティブな言葉にさらされるだけ。「自分たちの職場は嫌なことがたくさんある」というふうに、自らの脳に刷り込んでしまいます。そんな職場では仕事の効率も上がりませんし、もちろん幸せを感じることもないでしょう。

そこで、自分を客観視してほしい。悪口大会に参戦するのではなく、「こういう状況はよくないな」とその状況を俯瞰するわけです。そうすれば、「言うとおりかもしれないね。でも、そろそろ別の話をしようか」というふうに違う方向に舵を切ることができる。そうすることで、ネガティブな言葉から受ける悪影響を最低限にとどめられます。

前野隆司さんインタビュー「幸せを遠ざけている口癖」04

最近増加中の朝の「お疲れさま」に要注意

私は、言葉が持つ力に無頓着な人が多いように感じています。最近、気になるのは、「お疲れさま」という言葉です。

互いにねぎらいの気持ちを込めて、退勤時に「お疲れさまでした」と言うのは理解できます。でも、特に若い人の中には、朝でも「お疲れさまです」と言っている人がいませんか? 出勤してこれからバリバリ働こうと思っているときに、「お疲れさまです」なんて言われると、「いやいや、元気だよ!」と言いたくなります。

私は以前、2年半ほどアメリカにいたことがあるのですが、どうしても日本人はアメリカ人に比べてネガティブな言葉を多く使いがちなように思います。アメリカ人のポジティブさがはっきり表れている話を紹介しましょう。

英語で「元気ですか?」は「How are you?」です。それに「元気です」と答えるには「Fine」だとみなさんも学校の授業で学んだでしょう。でも、いまのアメリカ人たちは「Fine」とはあまり言わないのです。代わりに使うのは、「Excellent!」とか「Incredible!」という言葉。日本語にすれば、「元気です」ではなく、「超元気だぜ!」とか「最高だ!」「絶好調!」といったところでしょうか。

ただ、同じ英語を使う外国人でも、イギリス人は「Excellent」や「Incredible」はあまり使わないようです。イギリス人の国民性は、どちらかというとアメリカ人より日本人寄りなのでしょうね。イギリス人は、アメリカ人を「ハッピーなやつらだ」というふうに皮肉を込めて評します……(笑)。でも、ハッピーなのはいいことではありませんか?

ただ、いきなり日本の会社で「エクセレント!」なんて言うのは無理でしょう。だとしたら、せめて朝は「お疲れさま」ではなく、普通に「おはようございます」、昼は「こんにちは」、退勤時だけ「お疲れさまでした」にしてみませんか?

あるいは、可能であれば会社全体でルールを変えてもいい。実際、「お疲れさま」を禁止し、あいさつを「絶好調です!」に統一した会社もあるほどです。日常的に「お疲れさま」と言ったり言われたりする会社と、「絶好調です!」と言ったり言われたりする会社では、社員の仕事に対するモチベーションにも、そして幸福度にも大きな差が出てきそうですよね。

前野隆司さんインタビュー「幸せを遠ざけている口癖」05

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【プロフィール】
前野隆司(まえの・たかし)
1962年1月19日生まれ、山口県出身。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)教授。1984年、東京工業大学工学部機械工学科卒業。1986年、東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了。同年、キヤノン株式会社に入社。カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より現職。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。研究領域は、幸福学をはじめ、ヒューマンロボットインタラクション、認知心理学、脳科学、心の哲学、倫理学、地域活性化、イノベーション教育学、創造学と幅広い。主宰するヒューマンラボ(ヒューマンシステムデザイン研究室)では、「人間に関わる研究ならなんでもする」というスタンスで、さまざまな研究・教育活動を行っている。『感動のメカニズム 心を動かすWork&Lifeのつくり方』(講談社)、『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社)、『古の武術に学ぶ無意識のちから 広大な潜在能力の世界にアクセスする“フロー”への入り口』(ワニブックス)、『ニコイチ幸福学 研究者夫妻がきわめた最善のパートナーシップ学』(CCCメディアハウス)、『AIが人類を支配する日』(マキノ出版)、『「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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