ハングリー精神の意味&鍛える方法を手っ取り早く解説してみた

ハングリー精神の意味1

ハングリー精神とは、自分の現状に満足せず、高い目標を掲げて努力を続けたいと強く願う気持ちを意味します。「向上心」と言い換えることもできるでしょう。あなたは、ハングリー精神が強いほうでしょうか、それとも弱いほうでしょうか?

ひと昔前と比べると、ハングリーな気持ちを口にする人は少なくなった印象があります。ギラギラと成功や豊かさを求めて頑張るのが全てではなく、個人個人で違った幸せがあってもいい、という考え方は一般的になりましたよね。

とはいえ、あなたが将来的に「大きな成功を手にしたい」「何かを成し遂げたい」という思いを自分のなかに秘めているならば、やはりハングリー精神の有無は結果を大きく左右するでしょう。今回は、ハングリー精神のメリットや、ハングリー精神がないことで生じるデメリット、ハングリー精神を鍛える方法を解説します。

ハングリー精神の意味

ハングリー精神は、小学館の『精選版 日本国語大辞典』において「上のレベルを求める強い気持」とされています。精神的な空腹感(ハングリー)を解消するために、人いち倍努力をして物事を成し遂げようとする熱い気持ちが、ハングリー精神と呼ばれるのです。

苦しい境遇からハングリー精神で出世した偉人といえば、千円札(2020年現在)の肖像画でもおなじみの医師・野口英世氏が挙げられます。野口氏は、福島県の貧しい農家に生まれ、幼い頃にはやけどで左手が使えなくなるというハンディキャップも背負いました。

しかし、野口氏は、ハンデをバネに変え、学問で身を立てようと決意。「ナポレオンは1日3時間しか眠らなかった」という言葉を引き合いに、自身も3時間睡眠を実践して猛勉強しました。医師免許取得のために上京したときは、「志を得ざれば、再び此地を踏まず(目標を遂げるまでは、故郷に帰らない)」という言葉を残しています。

努力の甲斐あって、野口氏は20歳という若さで医師免許を取得。その後、黄熱病の研究をはじめ、今日まで語り継がれるような華々しい活躍をしました。まさに、ハングリー精神によって歴史に名を残した偉人の好例といえるでしょう。

ハングリー精神の意味2

ハングリー精神をもつメリット

ハングリー精神をもつことで、私たちは「さらなる高みへ上り詰めたい」という意欲を抱き、成長するための行動を起こせるようになります。目標に向かって努力を継続できているビジネスパーソンは、誰でも少なからず、このハングリー精神をもっているはずです。

パナソニックの名誉会長・松下正治氏は、ハングリー精神を「自分に欠けている面を克服していく絶えざる向上心」という意味に解釈しているのだそう。つまり、「自分にはこれが足りない」「自分はまだまだだ」という飢えや、「ライバルに打ち勝ちたい」という競争意欲が、進歩をもたらすのです。

優秀な同僚や憧れの上司と自分を比較し、「自分はダメだ……」とへこんでしまうことは、誰にでもあるでしょう。そこで落胆して終わってしまうのか、それとも「このままで終わりたくない」「絶対にあの人を追い越すんだ」とハングリー精神に転化できるかが、明暗を分けるのです。

ハングリー精神の意味3

ハングリー精神がないデメリット

反対に、ハングリー精神がないと、成長するための意欲も行動も生まれず、いつまでも現状から向上できない、ということになってしまいます。「お腹がすいた」と思わなければ、食糧を探しにいく意欲が湧かないのと同じです。

使い古された例ですが、「ウサギとカメ」の寓話(ぐうわ)は、ハングリー精神の大切さを的確に物語っています。「自分は足が速い」とおごった気持ちをもったウサギは、さらに速く走ろうとしないどころか、油断して昼寝までしてしまいます。一方、「自分は足が遅い」と自覚しているカメは、少しでもウサギに追いつこうと、休むことなく地道に努力を継続。その結果、ウサギはカメに敗北してしまいました。

仕事がうまくいっているときほど、いつのまにかハングリー精神を忘れ、努力を怠ってしまうもの。「昼寝をするウサギ」のように現状に甘んじていると、数年後に同僚と大きな差がついてしまったり、後輩に追い抜かされてしまったりすることになりかねません。

もし、自分の中にハングリー精神がなくなったと感じている場合は、自分に足りない要素を見つけ、さらに上を目指して挑戦しつづけることが大切だと、松下氏は説いています。

ハングリー精神の意味4

ハングリー精神に関する名言

ハングリー精神を奮い立たせたい方のために、各ジャンルから3人の偉人たちの名言をご紹介しましょう。

「ハングリーであれ、愚かであれ」

ハングリーであれ、愚かであれ。(Stay hungry, stay foolish.)

1つ目の名言は、Apple社の創業者、スティーブ・ジョブズ氏の座右の銘。ひととき在学していた米リード大学における、2005年の卒業式スピーチで紹介された言葉です。

私たちは、本当にやりたいことがあっても、周囲からの視線を恐れてガマンしてしまうことがあります。「失敗したら恥ずかしい」「周りから変な人だと思われてしまう」などの不安にとらわれ、好きなことや成し遂げたいことを、胸の内に隠して諦めてしまうのです。

しかし、ジョブズ氏は「思うままに行動しない理由はない」と語ります。なぜなら、人生はいつか終わってしまう、時間の限られたものだからです。いずれ訪れる死を意識し「人生は一度きり」と考えれば、恥や外聞を気にして自分の気持ちを押し殺すなんて、とてももったいないことのように感じられてきませんか。

「自分は、どうしてもこれがやりたいんだ」というハングリーな情熱と、周囲の目を気にせず思いを押し通す、いい意味での “愚かさ” こそが、充実した人生を送るために必要な要素なのです。スピーチ当時、ジョブズ氏は、すい臓がんを克服した直後だったそうですから、いっそう強い説得力が感じられます。

「成功は多くの人をダメにした」

成功は多くの人をダメにした。(Success has ruined many a Man.)

2つ目の名言は、政治家・科学者のベンジャミン・フランクリン氏によるもの。フランクリン氏は「アメリカ建国の父」と称され、100ドル紙幣に肖像が描かれています。出版業・政治・物理学・気象学などさまざまな分野で成功した、まさに偉人です。

そんなフランクリン氏が残した言葉が、「成功は多くの人をダメにした」。「ウサギとカメ」のように、うまくいっているときは、ハングリー精神を忘れ、努力を怠ってしまいやすいもの。せっかく頑張って成功を手にしても、そこで気を緩めては、全てが台なしに転じてしまう恐れがあるのです。

何かを成し遂げたあとほど、新たな「ハングリー」を見つけ、気を引き締めるように心がけましょう。

「批判してくる人は無視し、ハングリーでありつづける」

自分自身を信じる。ルールを破る。失敗を恐れない。批判してくる人は無視する。ハングリーでありつづける。(Trust yourself. Break some rules. Don't be afraid to fail. Ignore the naysayers. And stay hungry.)

3つ目の名言は、“シュワちゃん” の愛称でおなじみのハリウッド俳優、アーノルド・シュワルツェネッガー氏による言葉です。

シュワルツェネッガー氏は、10代から熱心に身体を鍛えはじめ、20歳でボディビル世界チャンピオンの座を獲得。その後、故郷のオーストリアから渡米して俳優を志し、「ターミネーター」をはじめ多くの主演作で知られる一流俳優になりました。2003年には、カリフォルニア州知事にも選出されています。まさに、自身の努力と行動力で成功を手にした、大スターといえるでしょう。

「自分自身を信じる。ルールを破る。失敗を恐れない。批判してくる人は無視する。ハングリーでありつづける」という言葉は、2010年に米エモリ―大学における卒業式のスピーチで、自身の成功を支えた信念として語られたもの。他人に何と言われようと自分のやりたいことを貫け、という、熱い思いを感じますね。ボディビルダー・俳優・政治家など、ハングリー精神を武器に多分野で活躍しているシュワルツェネッガー氏だからこそ、説得力がある言葉です。

シュワルツェネッガー氏は、「ハングリー」という言葉を好んでおり、ハングリー精神の大切さを語った言葉をほかにも数多く残しています。

ハングリー精神の意味5

ハングリー精神を鍛える方法

ハングリー精神をもちたいけれど、あまり成長意欲が湧かなくて困っている……。そんな方に向け、イメージトレーニング指導の第一人者・西田文郎氏が紹介する “強欲になる” ための方法をご紹介しましょう。

なりたい自分を繰り返しイメージする

ハングリー精神を養う1つ目の方法は、「なりたい理想の自分」を繰り返しイメージすること。

西田氏によると、人間の脳は、現実とイメージを区別できません。自分の「あるべき姿」を毎日のようにイメージすることで、自己イメージが高められていくのだそうです。

「仕事ができるようになりたい」と思っている方は、「仕事ができる自分」のイメージを明確に描き、頭のなかで毎日、何度も描くクセをつけましょう。西田氏によれば、イメージをよりリアルにするには、自分の周りにいる人を “心の師匠” として仰ぐとよいのだそう。漠然とした「仕事ができる人」をイメージするよりも、「仕事をバリバリこなしてかっこいいA部長」のほうが、映像として思い浮かべやすいはずです。

高い自己イメージをもつと、失敗や敗北を味わったときに「悔しさ」を強く感じます。たとえば、「自分は仕事を完璧にこなせる」というセルフイメージをもっている人は、ちょっとしたミスをしただけでも、あるべきセルフイメージとの落差が生まれるので、「このままではいけない」というハングリー精神が生まれることになるのです。

反対に、「自分は失敗して当たり前」と思っている人は、仕事がうまくいかなくても「やっぱり」と感じて終わり。「なにくそ」というハングリー精神にはつながりません。

つまり、ハングリー精神(悔しさ)は、セルフイメージの高さに比例して強くなっていくものなのです。「どうにも自分にはハングリー精神がないな」と感じている方は、そもそも自己イメージが低くなってしまっていないか、チェックしてみましょう。

物事の優先順位を明確にする

ハングリー精神を鍛える2つ目の方法は、欲しいものや大切なものの優先順位を、自分のなかで明確にすること。

「スキルアップのために勉強をしたい」と思っているのに、いざ時間ができると、たまったテレビ番組の録画を見たり、遊びに出かけたくなったりして、努力が継続できない……。そんな悩みをもっている方は少なくないはずです。

なぜ、勉強したいという気持ちがくじけ、ついつい遊んでしまうのでしょう。「勉強」と「遊び」のどちらが大事なのか、自分のなかで順位づけができていないのではないでしょうか。遊びをガマンしてでも勉強に励みたいのか、勉強よりも遊びの時間が大事なのか、決めかねているのです。

もちろん、「遊びをガマンして勉強をする」ことだけが正しいという意味ではありません。趣味の時間や、休日にゆっくりする時間を大切にしたい、という価値観も、とてもすばらしいものです。

しかし、あなたが何か目標をもっており、その目標を何が何でも成し遂げたい、と考えているならば、やはり「遊びの時間を捨てて努力に専念するんだ」という意志を、自分のなかではっきりさせておく必要があります。「やっぱり趣味の時間を捨てたくないな」と思ってしまう場合、そもそも、その目標を追うことが正しいのか、目標設定の仕方が間違っていないか、見直してみる必要があるでしょう。

「なりたい自分をイメージする」と「物事の優先順位を決める」。ハングリー精神を養うため、以上2つの方法を、ぜひ試してみてください。

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ハングリー精神は、成功をつかむためには欠かせないメンタリティ。なかなか努力が継続できない方や、思うようにやる気が湧いてこない方は、本記事の内容をぜひ活用してみましょう。

(参考)
コトバンク|ハングリー精神
会津若松市|野口英世の生涯・年表
logmi Biz|「ハングリーであれ。愚か者であれ」スティーブ・ジョブズ伝説の卒業式スピーチ全文
Ralph Keyes (2006), The Quote Verifier, New York, St. Martin's Griffin.
logmi Biz|「失敗を恐れず、反対者たちは無視するべき」シュワルツネッガーが語る、ハングリーに生きる道
西田文郎(2006),『ツキを超える成功力 あなたが今よりもっと稼げて、もっと大きくなれる理由』, 現代書林.

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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