「仕事が多すぎて頭が回る……」
「もっと勉強する時間が欲しい……」
「家族との時間がなさすぎる……」
そんな悩みを抱えながら毎日を過ごしている方も多いのではないでしょうか。タスク管理やタイムマネジメントの手法を学び、実践してみたものの、長続きしなかった……という人もいるはず。
「時間がない」と感じがちな人は、普段から “自分に厳しすぎる” 考え方をしてしまっている可能性があります。仕事を効率よく終わらせ、自分の時間もしっかり確保するためには、じつは “自分に甘く” 時間管理をすることがポイントになってくるのです。
今回は、私たちが無意識のうちに陥りがちな「時間を圧迫する考え方・行動」4つを明らかにしたうえで、その対処法を詳しく解説します。
【NG1】「本当に大切なこと」を大切にする意識が薄い
なぜ自分の時間を確保できないのか。コミュニケーション・アナリストの上野陽子氏は、インターネット上でも有名なある説話を紹介し、その理由を説明します。
大学の講義で、哲学の先生が大きなビンを用意した。そして、石ころをビンの口まで入れられるだけ入れてみる。
「ビンはいっぱいか?」と学生たちに聞くと「はい、いっぱいです」と答える。先生はビンを持ち上げると、今度は砂利を入れ始める。砂利は、石ころのスキマに入り込んで、みるみるうちにビンのスキマを埋めていく。
(引用元:プレジデントオンライン|解明! 忙しくて、「いつも時間がない」理由)
しかし、これでスキマが完全に埋まったわけではありません。このあと先生はさらに「細かい砂」を入れ、最後には「ビール」をビンの中に注ぎ込むのです。
先生は「石ころ」を、家族や子ども、健康、友だち、あるいは自分が本気で情熱を傾けたいものに例えます。一方、あとから流し入れた砂やビールは、人生において取るに足らない雑多な用事に例えます。はじめから砂やビールでビンをいっぱいにしてしまっては、大きな石ころは入れられませんよね。私たちは、自分の人生において「本当に大切なこと」を後回しにしないよう意識しなければならないのです。
何もせずゆっくりと過ごす日、家族と過ごす時間、1杯のコーヒーを飲む時間。人によって何が大切かはさまざまですが、どんなことであっても、自分にとって本当に大切なのでしたら、それは行なうべきです。自分にとっての「石ころ」を把握するためにも、仕事とプライベートを区別せず、やりたいこと・やるべきことを書き出してみてください。
【NG2】優先順位の正しいつけ方を知らない
飛んできたボールすべてを見境なく打ち返し続けるのも問題です。優先順位をつける習慣を大切にしましょう。その際は、スティーブン・R・コヴィー氏の著書『7つの習慣』で紹介された「時間管理のマトリックス」が役立ちます。
(画像は筆者にて作成)
このマトリックスは「緊急度」と「重要度」で4つの領域に分けられます。やりたいこと・やるべきこととして書き出したものを、それぞれの領域に当てはめてみていってください。
この中で「緊急でない×重要」の第二領域に当てはまったものが、あなたが本当に優先すべき「やりたいこと」です。2週間後に控える大きな商談のための資料作成、半年後の資格試験のための勉強など、緊急でないとつい後回しにしてしまいがち。だからこそ、第二領域をできるだけ意識するようにしましょう。そのための時間を確保するためにも、第三領域と第四領域のうちで捨てられそうなものをどんどん捨てていきましょう。
そうして残ったものでスケジュールを組んでいきます。最初は書きながら丁寧に行ない、慣れてきたら、生活の中で起こるさまざまなことを「時間管理のマトリックス」の応じて振り分けられるよう習慣づけましょう。
【NG3】「時間を無駄にしてはならない」と考えている
スケジュールを組むときに大切なのは、作業時間の見積もりです。予定通りに終わらなかった仕事は時間を圧迫しますし、仕事へのモチベーションも低下させるからです。
このときに多い失敗は、常に100%のパフォーマンスを維持できると考えてしまうこと。しかし実際のところ、不測の事態が起こらない作業のほうが少ないといっても過言ではありません。
ファンクショナル・アプローチ研究所代表取締役社長の横田尚哉氏が、100時間の仕事に対してQRA(クオンティティブ・リスク・アセスメント=定量的リスク分析)と呼ばれる手法を用い、2,000回のシミュレーションを行なった結果によれば、2,000回のうち約8割は131~164時間かかるという結果になりました。この結果を参考にすると、作業時間はおおむね1.4倍で見積もっておくと、余裕を持って作業を行なうことができるでしょう。
そして、やる気に満ちあふれているからといって、「やるべきこと」だけで1日のスケジュール帳を埋めてしまうことも厳禁です。イギリスの保険サービスグループ「Direct Line Insurance」が行なった調査によれば、幸福を実感するためには、1日のうちに自由時間が6時間59分必要との結果が出ています。継続性を考えるならば、やはり適切な余暇は大切なのですね。
同時に多くの仕事を抱えるビジネスパーソンにとって、1日で仕事が終わらないのは当たり前のこと。未来の自分に作業を割り振るつもりでスケジュールを組み、自由時間もきちんと設けるのが、一流のビジネスパーソンになる第一歩です。
【NG4】集中力は永遠に続くものだと思っている
さて、組んだスケジュールをもとに仕事に取りかかるわけですが、作業を効率よくするために、長時間集中し続けるのが良いことだと考えていませんか。しかし、人間に長時間の集中を求めることは、そもそも無理な要求なのかもしれませんよ。
マイクロソフトのカナダの研究チームが、約2,000人の参加者を対象に行なった調査によれば、2000年は12秒だったヒトの集中力の持続時間が、2013年には8秒まで短くなっていたとのこと。これは極端な結果かもしれませんが、いずれにせよ、どれだけ努力したとしても集中力を持続させ続けることには限界があるのです。適度な休憩を挟むようにしましょう。
また、集中していないことが効果的な場合もあります。ハーバード大学とトロント大学が、ハーバード大学の学部生100人を対象に行なった研究によると、注意力散漫な状態のほうが、脳内で多彩な思考を行なっていることがわかりました(ただし、ただ単純に注意力散漫であればいいというわけではなく、何かを見つけ出そうという意思を持っておくことが大切とのこと)。
集中しないことが良いパフォーマンスを生むこともあるのです。どうしても集中できないときには、企画作成などクリエイティビティが求められる作業に切り替えるのも良いかもしれませんね。
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自分を追い詰めすぎることがプレッシャーとなり、仕事へのモチベーションや効率が下がっては本末転倒です。適度に自分に甘く無理せず作業を進めることで、仕事も私生活も充実した毎日を送りましょう!
(参考)
プレジデントオンライン|解明! 忙しくて、「いつも時間がない」理由
ダイヤモンド・オンライン|忙しいのに仕事ができる人、できない人の時間管理術
プレジデントオンライン|時間の見積もりをどうするか? -「仕事が忙しい!」の9割は思い込みだった【2】
HUFFPOST|The Official Amount Of Free Time You Need To Be Happy
ダイヤモンド・オンライン|現代人の集中力持続は金魚以下!IT進化で激減
Carson SH et al (2003), "Carson SH eDecreased latent inhibition is associated with increased creative achievement in high-functioning individuals." , J Pers Soc Psychol, Sep;85(3) :pp.499-506.
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STUDY HACKER 編集部
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