「読書=いいこと」というイメージは誰しももっていると思いますが、具体的にはどんな効果があるのでしょう? 読書が脳にもたらしてくれる効果、読書の効果を実感するコツなどを、研究データをもとに解説します。
読書の効果
まずは、読書がもたらすさまざまな効果をご紹介します。
ストレスが解消される
本を読んで心が安らいだ経験は、誰しもあるはず。読書のリラックス効果は科学的に認められているのです。
英サセックス大学は2009年、読書にはストレス解消効果があるとする研究を発表しました。心拍数や筋肉の緊張状態を計測した結果、6分読書をすることでストレスが最大68%も減少したそう。音楽を聴く、コーヒーを飲むなど、ほかのストレス解消法を上回る数値だそうです。(参考元:プレジデントオンライン|たった6分でストレスを68%も削減する…音楽鑑賞、散歩、コーヒー、ゲームよりも効果的なストレス解消法よりまとめた)
読書のストレス軽減効果は、「ビブリオセラピー(読書療法)」として実用化されています。ビブリオセラピーとは、牧師で人気エッセイストでもあったサミュエル・マッコード・クローザーズ氏が提唱した、読書による心理療法。自分の状態に適した本を読むことで、行動をよい方向に変えたり苦痛を減らしたりする効果が期待できるそうです。
ビブリオセラピーは、けしてうさんくさいものではありません。イギリスでは薬の代わりに本が処方されるシステムが認可されています。(参考元:日本読書療法学会|会長ご挨拶よりまとめた)
ストレスを抱えているなら、ゆったり過ごせる時間を確保し、本の世界に身を委ねてはいかがでしょうか。
脳が活性化する
読書には、脳を活性化させる効果もあります。
医学博士で東北大学教授の川島隆太氏によると、本の黙読により、視覚情報を処理する後頭葉や、判断・創造性などに関わる前頭前野など、脳のさまざまな部位が活性化するのだそう。音読をする場合は、音を処理する聴覚野なども活性化するということがわかっています。(参考元:学校法人産業能率大学 総合研究所|東北大学 川島隆太教授 インタビュー「読む&書く」からこそ学びは深くなるよりまとめた)
脳が活性化されると、勉強や仕事でさまざまなメリットが生じます。特に、読書で活性化する前頭前野は思考や記憶、感受性など、人間らしい高度な機能をつかさどる箇所。ですから、「最近、言葉を思い出せないことが増えた」「イライラしやすい」などの悩みを感じている方は、読書をしてみるのもひとつの手かもしれません。
想像力が磨かれる
想像力が磨かれることも読書の効果です。脳生理学者で東京大学教授の酒井邦嘉氏は、読書をすることで「言葉の意味を補う『想像力』(行間を読む力)が自然に高められる」と言います。(カギカッコ内引用元:東京大学 大学院総合文化研究科 相関基礎科学系 酒井研|科学者に聞く!読書は脳を創る)
「行間を読む」というのは、書いてある文章から、書かれていない背景まで想像することです。たとえば、川端康成『雪国』に「トンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。」という文章があります。この文章を読むと、「いったいどんな雪国だろう?」「夜の底が白いって、どんな風景だろう?」と想像しますよね。この想像が、まさに「行間を読む力」です。
想像力はビジネスにおいても当然重要な力です。誰かとやりとりしているときに、「上司はなんでこういうことを言ったのかな?」「お客さんからのメールの真意はなんだろう?」と考えるときに想像力を発揮すれば、コミュニケーションを円滑に進められます。
ボキャブラリーが増える
読書には、ボキャブラリーが増えるメリットもあります。
国語講師の吉田裕子氏によると、ボキャブラリーには「認知語彙」と「使用語彙」の2種類があります。認知語彙の量は、使用語彙の3~5倍だそうです。
- 認知語彙:文中にあれば、なんとなく意味がつかめる
- 使用語彙:自分が話したり書いたりするときに使える
(参考:吉田裕子(2017),『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』, かんき出版.よりまとめた)
誰にでも伝わる言葉しか使わないテレビなどに比べると、本では知らない言葉に出会いやすく、認知語彙を増やせます。たくさんの活字に触れ、同じ言葉に何度も出会うにつれ、認知語彙は使用語彙へと変わり、ボキャブラリーが増えていきます。
文章力が上がる
上記の「ボキャブラリーが増える」と関連して、読書には文章力を上げる効果も期待できます。コロケーションや慣用句が自分の中に蓄積されていくので、正しい文章が書けるようになります。「使用語彙」が増え、表現の幅が広がっていくという効果も得られるでしょう。
小説家のはやみねかおる氏は
読書は、文を書くための基本。
たくさん読めば読むほど、自分の中に文章が溜まってくる。
そして、それは、文を書くときの燃料になる。
と言います。(引用元:ダ・ヴィンチWeb|文章力アップの基本は「読書」! 誰よりも読書が上手になる“4つの視点”とは?/めんどくさがりなきみのための文章教室③)
語彙のストックが増え、表現の幅が広がると、仕事でも役に立ちます。企画書や日々のメールを書く際、同じ言葉や表現を繰り返して使うと単調で拙い文章に見えてしまいますが、さまざまな文章が書けるようになれば、それだけで文書のクオリティが上がりますよ。
読解力が高まる
読書は読解力も高めてくれます。読解力が必要なシーンは実は身のまわりにあふれています。
仕事で使う企画書、契約書などを読むのにも読解力は必須です。「契約書の内容を理解できなかった結果、数千万の損害が!」なんてことはめったにないとしても、読解力が低いと、先方から届いた企画書の意味がよくわからない……くらいのことは日常的に起こってしまいます。
また、文章に限らず、会話をする際にも読解力は役に立ちます。ジャーナリストの池上彰氏は、読解力があると「『回りくどい言い方をしているけれど、この人の本音は違うな』『説明が下手だけれど、要するにこういうことを言いたいんだな』などと、相手の意図をこちらで察する」ことができると述べます。(カギカッコ内引用元:+αオンライン|池上彰が語る「日本人の読解力急落」の衝撃――なぜ、読解力が必要なのか?)
読書をして読解力が高まれば、書類を誤解なく読めるようになったり、口頭でのコミュニケーションがスムーズにできるようになったりするでしょう。
知識・教養が向上する
読書の効果には、知識や教養が身につくことも挙げられます。
史上最高の投資家と名高いウォーレン・バフェット氏は、1日当たり500ページも読書していたそう。そして、読んだ本や情報について考え、消化する時間を多くとっていました。(参考元:QUARTZ|Warren Buffett has good advice for narrowing down your reading listよりまとめた)
バフェット氏のように、本の内容を理解する時間をとることは重要です。なぜなら、あらためて時間をとることで、読んでいたときに「本当かな?」「自分は違う考え方をした」と感じた部分について自分なりに考えを深めることができるからです。考えるうえで足りない情報があればご自身で調べてみてください。
知識を生かし、自分の中で運用することで、しっかりと教養として身についていきます。ですから読書をする際は、ただ読むだけでなく、読んだあとに自分なりに噛み砕いて思考することが大切です。
教養はネットワークのようにどんどん広がっていきます。ワインに関する本を読めば、歴史や産地、産地の言語、経済、宗教、芸術……と知りたいことが芋づる式に出てくるはず。知的好奇心を満たしていくうちに知識は増えていき、自分の血肉となります。
視野が広がる
読書には、視野を広げる効果もあります。
読書とは「著者との対話」です。著者の思考の過程をたどることにより、自分以外の視点で考えられるようになります。本を多く読んだ人は、多くの視点をもっているのです。
新しい企画やアイデアを出すときには、ひとつの視点に凝り固まっていては良質なアウトプットはできません。さまざまな角度から検討するため、読書によって培われた広い視野が不可欠なのです。
視野が広い人間になるには、とにかく学びのアンテナを広げることが大切。周囲のあらゆることに関心をもち、ジャンルを偏らせることなくさまざまな種類の本を手に取りましょう。
いままでビジネス書を多く読んできたなら、小説や理系の本も読んでみてください。書店で目についた本を「ジャケット買い」してみるのもいいでしょう。広く触手を伸ばすよう心がければ、あなたの視野は驚くほど広がりますよ。
仕事のヒントをもらえる
読書からは、仕事に活きる知恵を得る効果もあります。問題にぶつかったり悩みを抱えたりしているときは、読書を通して先人の知恵を学びましょう。
営業成績が伸びず悩んでいる場合、ゼロから自分で考えるより、ビジネス本でノウハウを学んだほうが早いはず。読書には、長い時間をかけて積み上げる教養の側面もありますが、目の前の問題を手っ取り早く解くための参考書という一面もあるのです。
マイナビが2021年に実施した調査によると、年収が高い人ほど読書に時間をかける傾向があったとのこと。1か月に3冊以上本を読む人は、
- 年収100万円未満:11.2%
- 年収300〜500万円:13.7%
- 年収1,500万円以上:30.8%
だったそうです。(参考元:マイナビキャリアリサーチLab|「読書量が多いと年収は高い」は本当か~過去調査との2時点比較で見る傾向~よりまとめた)
ビジネスで成功をつかむには、日頃から本で先人の知恵を吸収することが大切だということが示唆される結果ではないでしょうか。本を読んだら「なるほど」と感心するだけでなく、学んだノウハウの実践を試してみてください。トライアンドエラーを繰り返すうちに、仕事の実力が上がっていくはずです。
英語が学習できる
英語で書かれている本を読むのは、英語学習に最適です。英語が得意でなくとも、最低限の文法さえ知っていれば、児童文学のように平易な英語で書かれた本を楽しめますよ。
洋書の英文は、問題集や参考書とは違った「生」の言葉。ネイティブの語彙・表現に触れられ、実践的な英語学習に最適です。
たとえば、“wishy-washy”(優柔不断)という言葉を知っていますか? 「受験英語」では出会わなくても、ネイティブが日常的に使っている単語はたくさんありますよ。
洋書を読むと、単語の意味を文脈で判断できます。知らない単語が多く出てきても、前後の文脈やあらすじから意味を推測しやすいため、いちいち辞書を引かなくても読み進めていけるのです。
英語で書かれた本を1冊でも通読すれば、資格試験などの長文問題が短く感じられたり抵抗感が弱まったりするかもしれませんね。英語などの外国語を得意にしたいなら、その言語での読書は非常に効果的な勉強法なのです。
以上、読書のもたらす効果やメリットをご紹介しました。
読書に効果的な時間帯
さて、次に、読書を行なう時間帯について見ていきましょう。朝と夜それぞれの読書の効果を解説します。
朝
朝の読書が持つメリットは、一日のはじめに精神のコンディションを整えられることです。
順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は、「朝のすごし方によってつくられた自律神経の状態は長く持続する傾向があり、その日1日のパフォーマンスを左右する」と言います。(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER|1時間早く起きるだけで心身が整い、頭も冴えわたる。自律神経のメカニズムに沿ったパフォーマンス向上法【小林弘幸『カリスマの言葉』第1回】)
つまり、朝をバタバタと過ごしてしまうと、その日はずっと落ち着きがなくなったり、集中力がなくなったりしてしまう可能性が高くなるのです。
先述したように、読書には癒しの効果があります。朝に読書することで精神的なゆとりがもたらされ、心が落ち着くので、いい一日のスタートを切ることができるのです。
朝に読むものとしては、自分の「バイブル」となっているような本がおすすめです。 バイブルとは、これまでに何度となく読み返している、自分の考えや行動の指針となっている本のこと。
バイブルを持つことは、自分の生き方や哲学を確立する意味で非常に大きな意味があります。経営コンサルタントの石原明氏によると、大きな成功を収めている人の多くは、何らかのバイブルを持っていることが多いのだそう。(参考元:石原明(2013),『トップ3%の人だけが知っている仕事のルール』, KADOKAWA(中経出版).よりまとめた)
自分のバイブルを朝に読み返し、目標や仕事に対する意識を再確認することで、フレッシュな気持ちで一日を始めることができるのです。
夜
学校や仕事が終わってからの夜の読書には、一日の疲れを癒す効果があります。
先に述べたように、6分読書をすることでストレスが軽減された研究結果が出ているということは、一日の終わりに6分でも読書することで、疲れを癒やすことが期待できるのです。
とはいえ、夜はついダラダラ過ごしてしまってなかなか読書する気になれないという方も多いでしょう。そこで使えるのが「時間簿」です。
時間簿という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、要はスケジュール表の簡易版のようなもの。夜に何をするのか、あらかじめ時間の使い方を決めておけば、迷わず行動できるからです。
以下は、社会人の場合の時間簿の例です。
- 21:00~22:00 帰宅。夕飯、入浴
- 22:00~23:00 ニュース番組を見ながらリラックス
- 23:00~23:30 読書、就寝
おおよその目安だけでもいいのでやることを決めておけば、つい寝る時間が遅くなったり、読書するつもりがテレビを見すぎてしまったりすることは少なくなるはず。
朝と夜、どちらの時間帯の読書にもそれぞれのメリットがあります。ご自身の生活スタイルや効果に合わせて読書のタイミングを変えてみてください。
読書の効果を実感するコツ
読書を効果的にするには、どのような方法で読めばいいのでしょうか? 3つの読書法を紹介します。
線やコメントを書き込む
本に書き込みをするのは、読書の効果が高まるのでおすすめです。
「本を読む」「書き込む内容を考える」「ペンを持って動かす」「文字を書く」という4つの行為は、それぞれ脳の別々の領域を使って行なわれます。そのため、書き込むことで脳の広範な分野が刺激され、内容がインプットされやすいのです。
精神科医の樺沢紫苑氏が実践している書き込み術をご紹介しましょう。用意するのは、蛍光マーカーとボールペン。蛍光マーカーは、気に入った文や発見のあった箇所に線を引くのに使います。考えや疑問が浮かんだら、ボールペンで本の余白にメモしましょう。
読み終わったら、マーキングした文のうち、最も重要だと思う3行を抜粋。本の内容のエッセンスとなる3行をつかめれば、十分に学べたといえるそうです。(参考元:樺沢紫苑(2015),『読んだら忘れない読書術』,サンマーク出版. よりまとめた)
また、哲学者の小川仁志氏は、文章に引くラインを以下の4種類に分けているそう。
- C(Citation):引用する箇所
- P(Point):趣旨の理解に重要な箇所
- K(Keyword):引用まではしないものの、使えるフレーズ
- O(Others):そのほか有益な情報
C・P・K・Oの記号をラインの脇に記入しておき、その文がどう役立つのか明確にしておくことで、必要なときに本の知識を引き出しやすくなるのです。(参考元:小川仁志(2016),『7日間で成果に変わるアウトプット読書術』,リベラル社.よりまとめた)
読書ノートをつくる
せっかく本を読むのであれば、内容をしっかり頭に入れておきたいもの。大切な部分を忘れないためにも、本を読み終えたら、読書ノートにメモしましょう。本の情報をまとめることで、本の内容が頭に残りやすくなります。
読書ノートはどのように書くのが効果的なのでしょうか? 一例として、文章の専門家で、伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓朗氏が実践している「3×3マス読書ノート法」をご紹介します。
読書の前に、3×3の9つのマスを用意します。ノートなどに手書きした簡単なものでかまいません。そして9つのマスに、「この本からどんなことを学びたいか」という目的を記入します。「松下幸之助の伝記」を読むとしたら、以下のような問いが考えられます。
- 松下幸之助が成功できた理由は何か
- どんなタイプのリーダーだったのか
- ポリシーはなんだったか
- 若い頃はどんな苦労をしてきたのか
- どんな名言を残しているか など
読書中に答えを発見したら、マスに書き込みましょう。読み終える頃には、本の内容が9つのマスに整理され、いつでも知識を取り出せる状態です。(参考元:STUDY HACKER|あなたはどちらのタイプ? 「文章が苦手」2つのタイプの原因と克服法――“文章術のプロ” 山口拓朗さんインタビュー【第2回】よりまとめた)
読む前に問いを決めておくことで、「この部分は自分の問いの答えになるかも」と、アンテナを張って読み進めることができます。目的意識があると、積極的に情報を取り込めますよ。
並列読書をする
並列読書とは、2冊以上の本を同時に読む方法です。
多くの方は、本を1冊ずつ順番に読んでいるはず。しかし、2冊以上を並行して読み進める読書法には、複数の本の知識を関連づけられるというメリットがあります。
朝日新聞編集委員の近藤康太郎氏は、「①海外文学②日本文学③社会科学か自然科学、それに④詩集の四ジャンルくらいは、偏ることなく読んでいきたい」と述べます。(カギカッコ引用元:ニューズウィーク日本版|2、3冊の同時並行読みを15分──「5つの読書術」を半年続けることで表れる変化とは?)
たとえば「芥川賞を受賞した話題の文学作品」と「心理学の入門書」を同時並行で読んだとします。すると、「心理学の入門書」で得た知識を使って小説の登場人物の気持ちを考えてみたり、「心理学の入門書」に書かれていた内容の具体例をイメージしやすくなったり、ということが起こるかもしれません。
つまり、並列読書によって知識と知識の間に関連性が生まれ、知識の相乗効果を起こせるのです。
以上、効果的な読書法を3つご紹介しました。
大人に効果的な読書ジャンル
ビジネスパーソンとして成長するには、どんなジャンルの読書が効果的なのでしょう? 4つのジャンルをご紹介します。
ビジネス書
ビジネス書を読めば、悩み・問題の解決法をいち早く見つけることができます。とはいえ、書店にはビジネス書が星の数ほど陳列されており、どれを選べばいいのか迷ってしまいます。
そこで参考にしたいのが、多くの書籍を編集してきた漆原直行氏が教える自身に合ったビジネス書の選び方です。
- 具体的に身につけたいスキルがある場合:マネジメントやマーケティングなどの実務書
- ビジネスパーソンとしての心構えを学びたい場合:日本社会を成長させてきた経営者のノンフィクション
- 自己啓発をしたい場合:古典的な名著
漆原氏は「ロングセラーというのは、それだけ多くの人が評価してきた証しですし、内容の普遍性や信頼性が高い」と言います。
(参考・カギカッコ内引用元:朝日新聞デジタルマガジン&|“意識高い”読書に落とし穴? 「ビジネス書」を読んでもデキる人になれないワケ)
世の中にあまたある本から何を選ぶべきかわからなくなったら、まずは定番のものを読んでみてください。ビジネスパーソンとしてのヒントを得られるはずです。
自己啓発本
自己啓発本は、読者を鼓舞し、意識を高めることを目的とした本です。成功を得るためのマインドセットやノウハウなどが書かれています。
自己啓発本を読むメリットは、モチベーションを高められることです。ほとんどの自己啓発本は、なんらかの成功を収めた人によって書かれています。成功までの道のりや著者の信念、激励の言葉などに触れることで「自分も頑張らなきゃ!」という気持ちを高められるのです。
反対に、成功者の失敗談を読めることも自己啓発本のメリット。「勝ちに不思議の勝ちあれど、負けに不思議の負けはなし」という言葉があるとおり、失敗には必ず法則があります。失敗談から学ぶことで、こうすれば失敗しにくいという貴重な学びが得られるのです。
失敗談を知ることで、成功者も初めからうまくいっていたわけではないこともわかり、励みになるはず。エジソンはひとつの発明品を完成させるまでに無数の失敗を重ねました。本田技研工業創業者の本田宗一郎氏も、経営難の危機に直面しながら、日本を代表する会社をつくり上げていきました。成功の裏には、必ずそれ以上の失敗経験が潜んでいるのです。
小説
物語を読んでいるとき、脳は現実の出来事に対するように働いていることをご存じですか?
ミシガン州立大学教授のナタリー・フィリップス氏によると、集中して物語を読んでいるとき、読者の脳は以下のように働くそうです。
It was as though readers were physically placing themselves within the story as they analyzed it.
まるで読者が物語の中に身を置き、その物語を分析しているかのようだった。
(引用元:npr|A Lively Mind: Your Brain On Jane Austen ※和訳は編集部が施した)
物語文に気軽にアクセスできる小説は、現実で起こりうる出来事をシミュレーションするのに役立つと言えるでしょう。
ドラマ『半沢直樹』の原作として知られる、池井戸潤『オレたちバブル入行組』(2004年、文藝春秋.)では、一介の銀行員が腐敗した組織に反旗を翻すさまが描かれます。フィクションとはいえ、上司から理不尽なことを押しつけられたり、会社が間違った方向へ進んでしまったりするのは、現実でも起こりうること。小説を読むことで出来事を擬似的に体験して、「自分ならどうするかな?」とシミュレーションできます。
小説は共感力を育むのにも役立ちます。小説を読むのは、他人の視点に立って物事を眺めること。多くの小説に触れれば、それだけ多くの人に共感できる心が育まれるのです。
人と協力して作業したり、後輩や部下を指導したり、取引先と交渉したりなど、相手が何を望んでいるか、どう感じているかを察する能力が必要な場面は多々あります。共感力は、どんなときにも必要な能力なのです。
歴史書・自伝
歴史書や自伝などのノンフィクションは、先人の偉大な知恵を学ぶのに役立ちます。
徳川家康の伝記を読めば、なぜ250年以上も続く江戸幕府をつくり上げられたのか、戦国時代の混乱期にはどう立ち振る舞っていたのかなど、先人の生涯や思考を追体験しながら学べます。歴史書や自伝には、激動の時代を勝ち上がってきた偉人たちの生の体験や知恵が記されているのです。
もちろん歴史書に描かれる状況は現代と異なる部分も多くありますが、仕事や会社の話に置き換えられる普遍性もあります。戦国武将の人間ドラマは処世術に、カエサルの『ガリア戦記』、孫子の『兵法』などはビジネス戦略の参考になるでしょう。
歴史に興味がない人は敬遠しがちなジャンルですが、ときには偉人たちの声に耳を傾けてはいかがでしょうか。
以上、自己成長の効果がある、読書におすすめのジャンルを解説しました。
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読書がもたらすメリットや、効果的な読書法を解説しました。普段はあまり読書しない方も、本記事をきっかけに本を手に取ってみてはいかがでしょうか。
プレジデントオンライン|たった6分でストレスを68%も削減する…音楽鑑賞、散歩、コーヒー、ゲームよりも効果的なストレス解消法
日本読書療法学会|会長ご挨拶
学校法人産業能率大学 総合研究所|東北大学 川島隆太教授 インタビュー「読む&書く」からこそ学びは深くなる
東京大学 大学院総合文化研究科 相関基礎科学系 酒井研|科学者に聞く!読書は脳を創る
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STUDY HACKER|1時間早く起きるだけで心身が整い、頭も冴えわたる。自律神経のメカニズムに沿ったパフォーマンス向上法【小林弘幸『カリスマの言葉』第1回】
石原明(2013),『トップ3%の人だけが知っている仕事のルール』, KADOKAWA(中経出版).
樺沢紫苑(2015),『読んだら忘れない読書術』,サンマーク出版.
小川仁志(2016),『7日間で成果に変わるアウトプット読書術』,リベラル社.
STUDY HACKER|あなたはどちらのタイプ? 「文章が苦手」2つのタイプの原因と克服法――“文章術のプロ” 山口拓朗さんインタビュー【第2回】
ニューズウィーク日本版|2、3冊の同時並行読みを15分──「5つの読書術」を半年続けることで表れる変化とは?
朝日新聞デジタルマガジン&|“意識高い”読書に落とし穴? 「ビジネス書」を読んでもデキる人になれないワケ
npr|A Lively Mind: Your Brain On Jane Austen
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。