読書が脳にもたらす効果とは? 本を読むメリット11選

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「読書=いいこと」というイメージは誰しももっていると思いますが、具体的にはどんな効果があるのでしょう? 読書が脳にもたらしてくれる効果、読書の効果を実感するコツなどを、研究データをもとに解説します。

読書の効果

まずは、読書がもたらすさまざまな効果をご紹介します。

ストレスが解消される

本を読んで心が安らいだ経験は、誰しもあるはず。読書のリラックス効果は科学的に認められているのです。

英サセックス大学は2009年、読書にはストレス解消効果があるとする研究を発表しました。心拍数や筋肉の緊張状態を計測した結果、ストレスが68%も減少したそう。音楽やコーヒーなど、ほかのストレス解消法を上回る数値だそうです。

読書のストレス軽減効果は、「ビブリオセラピー(読書療法)」として実用化されています。ビブリオセラピーとは、牧師で人気エッセイストでもあったサミュエル・マッコード・クローザーズ氏が提唱した、読書による心理療法。自分の状態に適した本を読むことで、行動をよい方向に変えたり苦痛を減らしたりする効果が期待できるそうです。

ビブリオセラピーは、けしてうさんくさいものではありません。英国では2013年に、薬の代わりに本が処方されるシステムが認可されています。

ストレスを抱えているなら、ゆったり過ごせる時間を確保し、本の世界に身を委ねてはいかがでしょうか。

創造力が磨かれる

創造力が磨かれることも、読書の効果です。脳生理学者の酒井邦嘉氏によると、読書をするとき脳は特別な使い方をされるため、創造力が鍛えられるのだそう。

川端康成『雪国』で「トンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。」という文章を読んだら、「いったいどんな雪国だろう?」「夜の底が白いって、どんな風景だろう?」と想像しますよね。文字情報から想像を膨らませたり考えたりすることは、創造力の鍛錬になるのです。

創造力は、新しい企画を提案したり問題の解決方法をひねり出したりなど、仕事・学習・日常のあらゆる場面で必要な能力。創造力がないと、与えられた情報や指示以上のもの生み出せない「マニュアル人間」になる恐れがあります。

アイデアを出したり自分の頭で考えたりすることが苦手なら、読書習慣を身につけ、創造力を磨いてはいかがでしょうか。

脳が活性化する

読書には、脳を活性化する効果もあります。

医学博士の川島隆太教授によると、本の黙読により、視覚情報を処理する「後頭葉」や思考・創造性に関わる「前頭前野」など、脳のさまざまな部位が活性化するのだそう。川島教授が2003年に発表した資料によると、音読にも脳を活性化させ、学習効果を2~3割向上させることが期待できるそうです。

音読では「発声する」「自分の声を聞く」というプロセスが加わるため、黙読より複雑な情報処理が必要になり、脳をまんべんなく刺激できると考えられています。そして音読の速度が速ければ速いほど、脳はいっそう激しく活性化するそうです。

脳が活性化されると、勉強だけでなく仕事でもさまざまなメリットが生じます。音読で活性化する「前頭葉」は感受性や自制心をつかさどるため、コミュニケーション能力の向上が期待できるでしょう。相手の思いを感じ取ったり自分の考えを的確に伝えたりできるため、良好な人間関係を保てます。

仕事や日常のヒントをもらえる

読書からは、仕事や日常に活かせる知恵を得ることもできます。問題に突き当たったり悩みを抱えたりしているときは、読書をとおして先人の知恵を学びましょう。

営業成績が伸びず悩んでいる場合、ゼロから自分で考えるより、ビジネス本でノウハウを学んだほうが早いはず。読書には、長い時間をかけて積み上げる “教養” の側面もありますが、目の前の問題を手っ取り早く解くための “参考書” という一面もあるのです。

ビジネス総合誌『プレジデント』(2016年7月号)は、年収が高い人ほど読書に時間をかける傾向があるという調査結果を報告しています。1,000人のビジネスパーソンを対象にしたアンケートによると、「1ヵ月に3冊以上本を読む」という項目にYesと答えた人は、年収500万円台では22.2%、年収2,000万円以上では46.2%との結果でした。

ビジネスで成功をつかむには、日頃から本で先人の知恵を吸収することが大切だと示唆されています。本を読んだら「へえ、なるほど」と感心するだけでなく、学んだノウハウを実践できるよう、使えそうな知識をメモしておきましょう。

視野が広がる

読書には、視野を広げる効果もあります。

読書とは「著者との対話」です。著者の思考の過程をたどることにより、自分以外の視点で考えられるようになります。本を多く読んだ人は、多くの視点をもっているのです。

ベストセラー『最強の働き方』(東洋経済新報社、2016年)の著者、ムーギー・キム氏によると、広い視野をもつことで周囲とは違うユニークな価値を提供できるようになるそう。新しい企画やアイデアを出すときには、ひとつの視点に凝り固まっていては良質なアウトプットができません。さまざまな角度から検討するため、読書によって培われた広い視野が不可欠なのです。

視野が広い人間になるには、とにかく学びのアンテナを広げることが大切。周囲のあらゆることに関心をもち、ジャンルを偏らせることなくさまざまな種類の本を手に取りましょう。

ビジネス書しか読んでこなかったなら、小説や理系の本も読んでください。ベストセラー本や人気の本しか読まないなら、本屋で目についた本を「ジャケット買い」しましょう。広く食指を伸ばすよう心がければ、あなたの視野は驚くほど広がりますよ。

教養が磨かれる

読書の効果には、教養が磨かれることも挙げられます。

『思考の整理学』(筑摩書房、1986年)の著者・外山滋比古氏は、教養を身につけるための読書法として「乱読」をすすめています。興味が少しでも湧いた本をとにかく手に取り、ジャンルの垣根を超えた幅広い知識を得るのです。外山氏によると、乱読のコツは以下のとおり。

  • ほんの軽い好奇心につられたら読む
  • やみくもに、手当たり次第に買ってくる
  • 失敗を恐れない
  • 読み捨ててOK

教養はネットワークのようにどんどん広がっていきます。ワインに関する本を読めば、歴史や産地、産地の言語、経済、宗教、芸術……と知りたいことが芋づる式に出てくるはず。生まれた好奇心を押さえつけることなく、興味の向くままに読みあさることが、深い教養につながります。

人材育成コンサルタントの能町光香氏によると、一流のリーダーは「教養は人としての器を大きくし、人間力を磨いてくれる」と知っているそう。仕事に直接関わらない知識を身につける時間も大切にするそうです。

仕事に必要な本やビジネス本ばかり読んでいるなら、別のジャンルにもチャレンジしましょう。

読解力が高まる

読書は読解力を高めてくれます。読解力はこれからの時代、ますます重要になるスキルです。

読解力はAIの習得が困難なため、読解力の高い人はAIに仕事を奪われないだろうと考えられています。読解力のない人がやっているような仕事は、やがてAIに代替されるだろうということです。

AIは驚異的なスピードで進化しいます。完全な自動運転車が実用化・普及したら、タクシードライバーという仕事は消えてしまうかもしれません。同様の危機はどんな仕事にも当てはまりかねないのです。

「読書なんて効果ないのでは?」と思っているなら、自分の市場価値を守るという意味で、普段から本に親しみましょう。

知識が増える

読書には、思考の材料となる「知識」が得られる効果もあります。

史上最高の投資家と名高いウォーレン・バフェット氏は、1日当たり500ページも読書していたそう。多くの事実や情報を集めることが投資家にとって何より重要だと考えていたため、著者の意見は読まず、書かれている事実をもとに自分の頭で思考するという、少し変わった読書法を採用していたそう。

「正しい思考」には「正しい情報」が欠かせません。正しい天気予報には、気圧の配置、気温、湿度、風向きといった情報が必要ですよね。

良質で正しい情報は、「正しく考える」のに不可欠なのです。問題に直面し、判断・解決しなければならない場面が訪れたとき、日頃から読書でインプットしておいた知識が強い味方になるはず。

ボキャブラリーが増える

読書には、ボキャブラリーが増えるメリットもあります。

豊かな語彙は、仕事や勉強に欠かせません。明治大学文学部教授・齋藤孝氏は、ボキャブラリーの量によって生涯年収が左右される可能性さえあると指摘しています。

国語講師の吉田裕子氏によると、ボキャブラリーには「認知語彙」と「使用語彙」の2種類があります。認知語彙の量は、使用語彙の3~5倍だそうです。

認知語彙:文中にあれば、なんとなく意味がつかめる
使用語彙:自分が話したり書いたりするときに使える

本を読み新しい言葉に出会うことで、認知語彙を増やせます。誰でもわかる簡単な言葉しか使わないテレビなどに比べると、本では知らない言葉に出会いやすく、認知語彙を増やせます。たくさんの活字に触れ、同じ言葉に何度も出会うにつれ、認知語彙は使用語彙へと変わるのです。

メタ認知能力が高まる

読書には、メタ認知能力を高める効果もあります。

メタ認知能力とは、自身の状態を客観的に把握する能力。メタ認知能力が高いと、ネガティブな感情が湧いても冷静に自分を分析し、対処できます。

あなたがSNSで「ブランド物のバッグを自慢している人」の投稿を見つけ、腹を立てたとしましょう。メタ認知能力が高ければ、「このいら立ちは嫉妬心によるものだな。自分には手の届かない高級品だから、買える人をうらやんでいるんだ」と分析し気持ちを落ち着かせることができます。

負の感情の発生原因を特定できれば、「こんなくだらないことで腹を立てているのか」と自覚したり、ネガティブな感情を和らげる方法を考えたりできますよね。メタ認知能力があることで、感情的になりすぎず客観的な判断を下せるのです。

メタ認知能力を高めるのに有効なのが読書です。特に小説には、登場人物の心理や出来事が第三者的な視点で描かれているため、客観的に物事を把握する能力を鍛えられます。

英語が学習できる

英語で書かれている本を読むのは、英語学習に最適です。英語が得意でなくとも、最低限の文法さえ知っていれば、児童文学のように平易な英語で書かれた本を楽しめますよ。

洋書の英文は、問題集や参考書とは違った「生」の言葉。ネイティブの語彙・表現に触れられ、実践的な英語学習に最適です。

たとえば、“wishy-washy”(優柔不断)という言葉を知っていますか? 「受験英語」では出会わなくても、ネイティブが日常的に使っている単語はたくさんありますよ。

洋書を読むと、単語の意味を文脈で判断できます。知らない単語が多く出てきても、前後の文脈やあらすじから意味を推測しやすいため、いちいち辞書を引かなくても読み進めていけるのです。

英語で書かれた本を1冊でも通読すれば、資格試験などの長文問題が短く感じられたり抵抗感が弱まったりするかもしれませんね。英語などの外国語を得意にしたいなら、その言語での読書は非常に効果的な勉強法なのです。

以上、読書のもたらす効果やメリットをご紹介しました。

読書が脳にもたらす効果2

大人に効果的な読書ジャンル

学生やビジネスパーソンとして成長するには、どんなジャンルの読書が効果的なのでしょう? 4つのジャンルをご紹介します。

ビジネス書

ビジネス書を読めば、悩み・問題の解決法をいち早く見つけることができます。

私たちが抱える問題や悩みのほとんどは、人類最初のものではありません。「営業ノルマが達成できない」「上司との付き合い方がわからない」などは、誰もがぶつかってきた問題ですよね。ゼロから自分で考えるより、ビジネス書に書かれた方法を採用するほうが、手っ取り早く解決できます。

日本最大の美容室チェーンを展開する株式会社アースホールディングス取締役・山下誠司氏は、店長に抜擢されたときの経験を紹介しています。入店後たった2ヵ月で店長となった山下氏は、ほかのスタッフとの距離感や店長としての振る舞い方に悩んだそう。

そんなとき見つけた本に書かれていた「職位が違っても人はみな平等。だからどんな人にも敬語を使うべき」というアドバイスを、そのまま実践してみたそう。年齢やキャリアにかかわらず、スタッフ全員に敬語を使うことにしたのです。すると、徐々にスタッフとの関係や店の雰囲気が好転していったのだとか。

山下氏が本の力に頼っていなかったら、スタッフとの関係が築けないまま、状況は悪化していたかもしれません。素直に本の力を借りることは立派な手段なのです。

自己啓発本

自己啓発本は、読者を鼓舞し、意識を高めることを目的とした本です。成功を得るためのマインドセットやノウハウなどが書かれています。

自己啓発本を読むメリットは、モチベーションを高められることです。ほとんどの自己啓発本は、なんらかの成功を収めた人によって書かれています。成功までの道のりや著者の信念、激励の言葉などに触れることで「自分も頑張らなきゃ!」という気持ちを高められるのです。

反対に、成功者の失敗談を読めることも自己啓発本のメリット。「勝ちに不思議の勝ちあれど、負けに不思議の負けはなし」という言葉があるとおり、失敗には必ず法則があります。失敗談から学ぶことで「こうすれば失敗しにくい」という貴重な学びが得られるのです。

失敗談を知ることで、成功者も初めからうまくいっていたわけではないこともわかり、励みになるはず。エジソンはひとつの発明品を完成させるまでに無数の失敗を重ねました。東北楽天イーグルスなどの野球監督を務めた野村克也氏は、平成の31年間に最も多く勝った監督であると同時に、最多敗の記録保持者でもあります。成功の裏には、必ずそれ以上の失敗経験が潜んでいるのです。

小説

マーケティングの第一人者・ルディー和子氏によると、小説を読んでいるときの脳は現実の出来事に対するときとほぼ同じ働き方をしているそう。脳は、小説で読んだ出来事と現実での経験を、ほとんど区別せず処理しているのです。小説は、現実で起こりうる出来事をシミュレーションするのに役立つと言えるでしょう。

ドラマ『半沢直樹』の原作として知られる、池井戸潤『オレたちバブル入行組』(文藝春秋、2004年)では、一介の銀行員が腐敗した組織に反旗を翻すさまが描かれます。フィクションとはいえ、上司から理不尽なことを押しつけられたり、会社が間違った方向へ進んでしまったりするのは、現実でも起こりうること。小説を読むことで出来事を擬似的に体験でき、「自分ならどうするかな?」とシミュレーションできます。

小説は共感力を育むのにも役立ちます。小説を読むのは、他人の視点に立って物事を眺めること。多くの小説に触れれば、それだけ多くの人に共感できる心が育まれるのです。

人と協力して作業したり、後輩や部下を指導したり、取引先と交渉したりなど、相手が何を望んでいるか、どう感じているかを察する能力が必要な場面は多々あります。共感力は、何をするにも必要な能力なのです。

歴史書・自伝

歴史書や自伝などのノンフィクションは、先人の偉大な知恵を学ぶのに役立ちます。

徳川家康の伝記を読めば、なぜ200年以上も続く江戸幕府をつくり上げられたのか、戦国時代の混乱期にはどう立ち振る舞っていたのかなど、先人の生涯や思考を追体験しながら学べます。歴史書や自伝には、激動の時代を勝ち上がってきた偉人たちの生の体験や知恵が記されているのです。

もちろん歴史書に描かれる状況は現代とかけ離れていますが、仕事や会社の話に置き換えられる普遍性もあります。戦国武将の人間ドラマは処世術に、カエサルの『ガリア戦記』、孫氏の『兵法』などはビジネス戦略の参考になるでしょう。

歴史に興味がない人は敬遠しがちなジャンルですが、ときには偉人たちの声に耳を傾けてはいかがでしょうか。

以上、自己成長の効果がある、読書におすすめのジャンルを解説しました。

読書が脳にもたらす効果3

読書の効果を実感するコツ

読書を効果的にするには、どのような方法で読めばいいのでしょうか? 4つの読書法を紹介します。

線やコメントを書き込む

本に書き込みをすると、脳が活性化され、読書の効果が高まります。

「本の内容を理解する」「書き込む内容を考える」「ペンを持って動かす」「文字を書く」という4つの行為は、それぞれ脳の別々の領域を使って行なわれます。そのため、書き込むことで脳の広範な分野が刺激され、内容がインプットされやすいのです。

精神科医の樺沢紫苑氏が実践している書き込み術をご紹介しましょう。用意するのは、蛍光マーカーとボールペン。蛍光マーカーは、気に入った文や発見のあった箇所に線を引くのに使います。考えや疑問が浮かんだら、ボールペンで本の余白にメモしましょう。

読み終わったら、マーキングした文のうち、最も重要だと思う3行を抜粋。本の内容のエッセンスとなる3行をつかめれば、十分に学べたと言えるそうです。

哲学者の小川仁志氏は、文章に引くラインを以下の4種類に分けているそう。

C(Citation):引用する箇所
P(Point):趣旨の理解に重要な箇所
K(Keyword):引用まではしないものの、使えるフレーズ
O(Others):そのほか有益な情報

C・P・K・Oの記号をラインの脇に記入しておき、その文がどう役立つのか明確にしておくことで、必要なときに本の知識を引き出しやすくなるのです。

同じ本を繰り返し読む

弁護士の山口真由氏は、同じ本を7回繰り返して読む「7回読み読書法」を推奨。7回とも熟読するわけではなく、何度か「拾い読み」したのちに、精読します。

1~3回 (サーチライト読み):見出しを拾い読みしながら全体像をつかむ
4~5回 (平読み):キーワードを意識しながら普通のスピードで読む
6~7回 (要約読み):頭で要約しながら読む

繰り返し触れた情報ほど記憶に残りやすいことが研究によって判明しているため、7回読み読書法は科学的な合理性があると言えそうです。隅から隅まで吸収したい本があるなら、ぜひ7回読み読書法を試してはいかがでしょうか。

読書ノートをつくる

本を読み終えたら、必ず読書ノートをつくりましょう。読んだ本の情報をまとめることで、本の内容が頭に残りやすくなります。

読書ノートはどのように書くのが効果的なのでしょうか? 一例として、株式会社アップリンクス取締役の山口拓朗氏が実践している「3×3マス読書ノート法」をご紹介します。

読書の前に、3×3の9つのマスを用意します。ノートなどに手書きした簡単なものでかまいません。そして9つのマスに、「この本からどんなことを学びたいか」という目的を記入します。「松下幸之助の伝記」を読むとしたら、以下のような問いが考えられます。

  • 松下幸之助が成功できた理由は何か
  • どんなタイプのリーダーだったのか
  • ポリシーはなんだったか
  • 若い頃はどんな苦労をしてきたのか
  • どんな名言を残しているか など

問いを決めておくことで、読書に目的意識が生まれ、積極的に情報を取り込めます。読書中に答えを発見したら、マスに書き込みましょう。読み終える頃には、本の内容が9つのマスに整理され、いつでも知識を取り出せる状態です。

並列読書をする

並列読書とは、2冊以上の本を同時に読む方法です。

多くの方は、本を1冊ずつ順番に読んでいるはず。しかし、2冊以上を並行して読み進める読書法には、1冊ずつ読む方法にはないメリットがあるのです。

1つめのメリットは、読書の集中力が持続しやすくなること。 自律神経研究の第一人者・小林弘幸氏によると、人間の集中力が続く限界は45分程度なのだそう。同じ本を2時間、3時間と続けて読んでいると、だんだん集中力が落ち、惰性で読み続けた経験がありませんか?

そこで、並列読書を試してみましょう。45分経って集中力が落ちてきたら別の本を読み、さらに45分読んだらもとの本に戻る、というルールにすれば、新鮮な気持ちで読書を続けられます。

複数の本の知識を関連づけられることも、並列読書のメリットです。「松下幸之助の伝記」と「心理学の入門書」を同時並行で読んだとします。すると、「心理学の入門書」で得た知識を使って松下幸之助の成功した理由を分析できたり、「松下幸之助の伝記」に書かれていたエピソードをもとに心理学の概念をスムーズに理解できたり、ということが起こるかもしれません。

つまり、並行読書によって本と本との関連性に気づきやすくなり、知識の相乗効果を起こせるのです。

以上、効果的な読書法を4つご紹介しました。

読書が脳にもたらす効果4

読書に効果的な時間帯

最後に、朝と夜それぞれの時間帯における読書の効果を解説します。

朝の読書が持つメリットは、一日のはじめに精神のコンディションを整えられることです。

順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏によると、朝に形成された自律神経のコンディションは、長時間持続する傾向があるのだそう。つまり、朝をバタバタと過ごしてしまうと、その日はずっと落ち着きがなくなったり、集中力がなくなったりしてしまう可能性が高くなるのです。

先述したように、読書には癒しの効果があります。朝に読書することで精神的なゆとりがもたらされ、心が落ち着くので、良い一日のスタートを切ることができるのです。

朝に読むものとしては、自分の「バイブル」となっているような本がおすすめです。 バイブルとは、これまでに何度となく読み返している、自分の考えや行動の指針となっている本のこと。

バイブルを持つことは、自分の生き方や哲学を確立する意味で非常に大きな意味があります。経営コンサルタントの石原明氏によると、大きな成功を収めている人の多くは、何らかのバイブルを持っていることが多いのだそう。

自分のバイブルを朝に読み返し、目標や仕事に対する意識を再確認することで、フレッシュな気持ちで一日を始めることができるのです。

学校や仕事が終わってからの夜の読書には、一日の疲れを癒す効果があります。

精神科医の樺沢紫苑氏によると、読書には、たかぶった神経を落ち着かせリラックス状態を作り出す効果があるのだそうです。そして、読書のリラックス効果はたった6分ほどで現れるのだそう。つまり、一日の終わりに6分でも読書することで、疲れを癒やし、睡眠の質を高めることが期待できるのです。

とはいえ、夜はついダラダラ過ごしてしまってなかなか読書する気になれないという方も多いでしょう。そこで使えるのが「時間簿」を作ることです。

時間簿という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、要はスケジュール表の簡易版のようなもの。なるべく日曜の夜に作成します。平日の夜には何をするのか、あらかじめ時間の使い方を決めておけば、迷わず行動できるからです。

以下は、社会人の場合の時間簿の例です。

21:00~22:00 帰宅。夕飯、入浴
22:00~23:00 ニュース番組を見ながらリラックス
23:00~23:30 読書、就寝

おおよその目安だけでもいいのでやることを決めておけば、つい寝る時間が遅くなったり、読書するつもりがテレビを見すぎてしまったりすることは少なくなるはず。

朝と夜、どちらの時間帯の読書にもそれぞれのメリットがあります。効果に応じて読書のタイミングを変えてみてください。

***
読書がもたらすメリットや、効果的な読書法を解説しました。普段はあまり読書しない方も、本記事をきっかけに本を手に取ってみてはいかがでしょうか。

(参考)
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【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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