机が汚いことの大きすぎる代償。年間150時間も奪われ、自制心も低下する。

机が汚いことの大きすぎる代償1

「大事なメモをなくしてしまった……」
「書類の山から必要な書類を取り出すのに一苦労した……」
そんな経験はありませんか。探し物が多いと、肝心な作業時間が減少してしまいます。

今回は、「散らかった机を、欲しいものをすぐに取り出せる状態にする」ことを目標に、デスク周りを整理する方法をご紹介しますね。

探し物で年間150時間も失っている

IT機器やオフィス用品を販売している大塚商会が行なった調査によると、ビジネスパーソンは勤務中の探し物におよそ年間150時間も費やしているそうです。

1年間の労働日数を250日とすると、1日あたり36分もの時間になります。一見すると、毎日36分も探し物をしていないと思う人もいるかもしれませんね。しかし「あれ、ホッチキスはどこにしまったかな」「修正ペン、この間買ったはずなのに見つからないな」といった、ちょっとした探し物の時間が積もりに積もると、結構な時間のロスになります。

しかも、探し物によって失われる時間は、これだけではありません。集中して作業をしているときに探し物を始めると、気が逸れてしまいますよね。場合によっては、集中力がプツンと切れてしまうこともあるはず。リーダーシップ・コーチのシャンタル・バーンズ氏によると、一度切れてしまった集中力が再び元に戻るには、およそ25分かかると言います。

こう考えてみると、探し物ばかりの環境がいかに作業効率を下げているかがわかりますね。

机が汚いことの大きすぎる代償2

散らかった環境では自分をコントロールできなくなる

探し物をするような散らかった環境は、自分をコントロールする力にも悪影響を及ぼします。ニューサウスウェールズ大学のレニー・ヴァルタニアン氏らは、散らかった環境と自分をコントロールする力の関係を調べるために、次の実験を行ないました。

101名の女子学生の被験者を、整頓された静かな場所と散らかった騒がしい場所に分け、それぞれに次の3つの質問からランダムに1つを答えてもらいました。

(A)これまでで、特に自分自身を制御「できていない」と感じた瞬間はいつか
(B)これまでで、特に自分自身を制御「できている」と感じた瞬間はいつか
(C)最後に受けた授業は何か(実験内容とは関係ない質問)

次に、ヴァルタニアン氏は、被験者に「これらの食べ物の味を評価してほしい。食べ物は、大量にあるから好きなだけ食べてかまわない」とクッキーや野菜の試食を頼み、被験者が食べた量をあとで計測しました。

その結果、散らかった環境に置かれた状態で(A)の質問をされた被験者は、ほかの条件の被験者と比べ多くの食べ物を食べたそうです。この傾向は、クッキーなどの甘い物で特に顕著に現れました。

甘い物を食べすぎないためには、自分をコントロールすることが必要ですよね。しかし、散らかった環境という集中できない状況下に置かれた被験者たちは、自分をコントロールする力が削がれてしまったのです。その結果、欲するがままに、甘い物をたくさん食べてしまったのでしょう。

机が汚いことの大きすぎる代償3

きれいな状態を作るためには、物を減らして置き場所を決める

ここまでで、散らかった環境は、時間的にも精神的にもよくない影響を及ぼすことがわかりました。そこでここからは、散らかった机をきれいにするための方法を2つご紹介します。

1. 物の量を収納の7割に減らす

片づけアドバイザーの石阪京子氏によると、人が管理できる物の量は、収納のサイズの7割程度なのだそうです。

これは、収納いっぱいに物を入れてしまうと、物が増えたときに対応できなくなったり、出した物を片づけるのに手間取ったりしてしまうから。つまり、ただ引き出しに物を詰め込むだけでは片づいたとは言えず、まずは物を減らす必要があるのです。

石阪氏は、物を捨てる基準について次のように述べています。

いつか使おうと思っているモノと、本当に使うモノを分けてみてください。あとは誰かからもらったモノと、私が本当に好きなモノ前者は捨てて、後者だけとっておきましょう

(引用元:PRESIDENT Online|二度と散らからない"デスクの片づけ方"7 ※太字は筆者が施した)

贈り物でもらった置き物や「いつか使いたい」と思っている文房具など、あなたの机を無駄に占拠している物は、思いきって捨ててみましょう。贈り物を処分するのは心苦しいかもしれませんが、それをプレゼントした人は、そのせいであなたの机が散らかることは望んでいないはずです。

みなさんも、お気に入りのペンばかり使ったり、お気に入りのメモ帳ばかり使ったりしていませんか。もしかすると、それ以外、使っていないということもあるはず。そうしたものを捨てていくことで、空間がよりスッキリするのです。

2. 物の場所を決める

必要な物だけ残したら、次はそれらの収納場所を決めていく作業です。事務用品メーカーのキングジムは、机の引き出しごとに役割を決めて使うことを提案しています。

たとえば、使用頻度の高い文房具は一番上の引き出し、CD-ROMや参考書などの少し大きめの道具は中段の引き出し、カタログやマニュアルなどのときどき参照する大きい物は一番の引き出しにしまう、といった具合です。

さらに、文房具の機能や書類の用途別(参照用や保管用など)に引き出し内で分類すると、さらに取り出しやすくなりますね。たとえば、最も重要度の高いものは赤いファイルに、重要度が低いものは青いファイルに入れて区別するのも、ひとつの方法です。

机が汚いことの大きすぎる代償4

きれいな状態を維持するためには「とりあえずスペース」を活用する

『必要なものがスグに! とり出せる整理術!』の著者でイラストレーターの池田暁子氏は、きれいな状態を保つために「とりあえずスペース」を作ることを推奨しています。

1日中使うから片づける必要のない書類や、新しく買って片付ける場所が決まっていない文房具などもありますが、それらをただ放置していると、そこから少しずつ机が散らかってしまいます。そこで、それらを適当なプラスチックケースや引き出しの一部などの「とりあえずスペース」に置くと決めることで、無造作に物が置かれることを防ぐのです。

「とりあえずスペース」を決めることは、逆に言えば、それ以外の場所に適当に物を置かないようにするということ。このスペースを有効活用するためにも、定期的に中身を空っぽにするようにしてください。特に、散らかりやすい書類は、自分が決めたルールに従って、きちんと所定のファイルに戻しましょう。1日の終わりや、毎週金曜日の昼休みというように、定期的に空にする習慣をつけることで、きれいな状態を保つことができます。

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探し物にかける時間をすべて作業に回せれば、作業効率をぐっと伸ばせます。ぜひ一度、ご自身の机の周りを見直してみてくださいね。

(参考)
リクナビNEXTジャーナル|“年間150時間”も、ビジネスパーソンは●●●に費やしていた…――残業をしないチームの仕事術
ダイヤモンド・オンライン|ビジネスパーソンは平均3分に1回、仕事を邪魔されている
PRESIDENT Online|二度と散らからない"デスクの片づけ方"7
Harvard Business Review|デスクが散らかっていると集中力も生産性も低下する
Lenny R. Vartanian, Kristin M. Kernan, Brian Wansink(2016),“Clutter, Chaos, and Overconsumption: The Role of Mind-Set in Stressful and Chaotic Food Environments”, Environment and Behavior, Vol.49, No.2, pp.215-223
キングジム|キングジムが教えるすぐに始められるデスク周りの整理術 引き出し編
池田暁子(2008),『必要なものがスグに! とり出せる整理術!』, メディアファクトリー.

【ライタープロフィール】
梅野凌矢
東京大学工学部所属。鹿児島県立鶴丸高等学校出身。大学では人間の認知システムを中心に勉強中。大学の吹奏楽団体に所属していて、担当はホルン。趣味は音楽ゲーム、読書など。Perfumeがとても好き。

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