どんなに素晴らしい感性をもっていても、人に伝えられなければ物づくりはうまくいきません。自分の考えを言語化することが大切です。
今回は、言語化がクリエイティブを強化する理由を説明しましょう。「感性には自信があるけれど、言語化はちょっと苦手……」という方には、言語化能力を鍛えるコツもお伝えします。
言語化でデザインをロジカルに
映像・アートディレクターでデザイン会社「LIGHT THE WAY」代表の西澤岳彦氏は、感覚的な部分も、しっかりと言語化してクライアントに提案するのだとか。そうすることでクライアントはデザインをロジカルにとらえることができ、主観的な感性のバラツキに惑わされることがなくなるからです。
少し大げさに言えばと前置きしつつ、「クリエイティブのすべてに理由がある」と西澤氏は言います。なぜこのカラーなのか、なぜこうした構成なのかをひとつひとつ説明することで、クライアントが制作者と近い目線になれるとのこと。
優秀なデザイナーほど言語化できる
また、『面白い!のつくり方』(CCCメディアハウス)の著者でアートディレクター兼デザイナーの岩下智氏は、表現はコミュニケーションそのものだと述べます。たとえばアートでもデザインでも、それらを見る人々が向こう側に必ず存在するからです。
表現がコミュニケーションだというのであれば、自分の範疇だけで完結せず、どうしたら人に伝わるか工夫しなければなりません。そこで必要となるのが言語化なのだそうです。優秀なデザイナーほど自分の考えをうまく言語化できるのだとか。
岩下氏いわく、感覚的で抽象的な説明だけでは、どんなにいいデザインでも相手にその魅力をうまく伝えられないとのこと。すべてにおいて「理由のないデザインはない」と岩下氏は言います。これは前出の西澤氏の言葉と同じですね。
クリエイションの現場では、感性のみならず言語化が非常に大切なのです。
言語化能力を鍛えるコツ
では、どのようにして言語化能力を鍛えればいいのでしょう? 文部科学省・言語力育成協力者会議の配付資料(資料3 言語力の育成に関して予めいただいた意見及び第1回会議における主な意見)には、こう書かれています。
体験は、やりっぱなしと言われることが多いが、体験を言語化して経験化することが重要である。
(引用元:文部科学省|資料3 言語力の育成に関して予めいただいた意見及び第1回会議における主な意見(概要))
辞書には「体験が個別的・主観的」であるのに対し「経験は一般的・客観的」とあります。つまり、体験を客観的な視点で人が理解できるよう言語化できれば、言語力が育つということ。
ならば以下のように、自分の体験をどんどんアウトプットしていくことで言語化能力が鍛えられるはずです。
- 映画を観て(体験を)レビューを書く(経験化)
- 本を読んで(体験を)書評を書く(経験化)
- 日々の出来事(体験を)をブログに書く(経験化)
- ちょっとした出来事(体験を)をSNSに書く(経験化)
- 学んだこと(インプット/体験)を人に説明する(経験化)
ただし、こうした活動を積極的に行うためには、限られた時間のなかでアウトプットを増やしていく必要があります。ちょっとした思考法も紹介しましょう。
アウトプットを増やす思考法
EL BORDE(野村證券株式会社運営のWEBマガジン)は、テクノロジーがつくり上げた情報過多な社会に翻弄されるビジネスパーソンに向け、アウトプットを増やすために読んでおきたい一冊として、『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』(早川書房)を紹介しています。
同書はジョージタウン大学コンピューターサイエンス学部准教授のカル・ニューポート氏が著したニューヨーク・タイムズ・ベストセラーで、デジタル・ミニマリズムという概念を提唱しています。
デジタル・ミニマリズムの定義は、自分にプラスになることを基準にテクノロジーを厳選し、ほかはあっさり切り捨てるというもの。デジタル・ミニマリストになるステップは、「仕事や生活に必須ではないテクノロジーを決める⇒それを1カ月ほど休止して、オフライン世界の価値を再発見⇒そのあと改めて厳選したテクノロジーを再導入」とのことです。
じつは、今回のテーマで重要なのはそうした工程うんぬんよりも、デジタル・ミニマリストになることで、必然的にインプット時間が減り、アウトプット時間が増えるという単純な理論です(※アウトプットのためのデジタル活用はアウトプットとする)。
1日は24時間しかありません。
自分の感性を人に伝えたいなら言語化能力を鍛えましょう。言語化能力を鍛えたいならアウトプットを増やしましょう。アウトプットを増やしたいならインプットを減らしバランスをとりましょう。そのためには、デジタル・ミニマリストになることが役立つはずです。
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言語化がクリエイティブを強化する理由と、言語化能力を鍛えるコツ、アウトプットを増やす思考法を紹介しました。言語化能力を鍛えて、どんどん素晴らしいアイデアを世に出してくださいね。
(参考)
BAUS|表現を言語化することがクリエイティブを強くする。 映像を起点に仕事を広げるLIGHT THE WAYの制作プロセスとは?
EL BORDE(野村證券株式会社)|アウトプットを増やす思考法―「デジタル・ミニマリズム」が可処分時間を倍増する
文部科学省|資料3 言語力の育成に関して予めいただいた意見及び第1回会議における主な意見(概要)
コトバンク|体験とは
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STUDY HACKER 編集部
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