クヨクヨし続けないために。傷ついたときに “すっと心が軽くなる” 思考法

傷つきやすい女性、家のソファーで

自分はとても傷つきやすい人間だと思う。人にいろいろ気にしすぎだと言われる。こんな弱い自分はもうイヤだ。どうにかできないだろうか――などとお考えの方、ちょっと待ってください。「傷つきやすさ」イコール「弱さ」ではありません。

思考を選択すれば、弱さだと感じていた「傷つきやすさ」も「力」に変えられるはず。専門家の意見をふまえて説明します。

「傷つきやすさ」とは

順天堂大学スポーツ健康科学研究科 特任助教の山口慎史氏によると、「傷つきやすさ」は学術的に「ヴァルネラビリティ(vulnerability):脆弱性」と表現されるそうです。その定義は次のとおり。

「自己に対するダメージの受けやすさであったり,脆さや傷つく可能性のある状態」

(引用元:山口慎史・川田裕次郎・中村美幸・広沢正孝・柴田展人(2018),「大学生アスリートにおけるヴァルネラビリティが精神的健康に与える影響」, 日本健康心理学会大会発表論文集, 31巻, p.39.

近年は、生まれつき刺激に対して非常に敏感な人:HSP(Highly Sensitive Person)という概念が注目を集めていますが、その特徴にも「心が傷つきやすい」ことなどが挙げられています。精神科医の長沼睦雄氏によれば、非HSPがほとんど気にしないようなことにも、HSPはクヨクヨと悩み続けてしまうそうです。

では、傷つきやすさは弱さなのか? といえば、その答えは「NO」です。ヴァルネラビリティの研究を行なう、ヒューストン大学のブレネー・ブラウン博士に教えてもらいましょう。

物憂げな金髪の女性

「傷つきやすい人」は勇気がある?

ブラウン博士が人々にインタビューを行なったところ、大まかにふたつのタイプに分けられるとわかったそうです。

ひとつは愛情と帰属意識(自分の居場所があると感じること)が強く、自分は価値ある人間だと信じることができ、人とのつながりをもてるAタイプ。

もうひとつは、愛情や帰属意識が弱く、自分に価値があるのかどうか常に疑問を抱えているBタイプ。自分には価値がないという不安や恐怖があるため、人とつながりにくいのだとか。

Aタイプの人は、たとえばお金があったり、容姿がよかったり、出世していたり、立派な肩書きをもっていたり、人気者だったり、誰よりも楽観的でいつも明るかったりと、〇〇が人よりすごいから自分に価値があると信じているわけではありません。不完全な自分のままで十分だと思えるからこそ、自分の価値を信じられるのだとか。

いうなれば、Aタイプには「傷つきにくい人」も「傷つきやすい人」も存在するということ。それどころかブラウン博士は、ヴァルネラビリティ(脆弱性)も自分の一部だと受け入れ、ありのままの不完全な自分をさらけ出せる人には勇気があると述べています。

したがって、「傷つきやすさ」イコール「弱さ」ではないのです。

晴れた日に清々しい表情で仕事の電話をする女性

「傷つきやすさ」を「力」にする

傷つきやすいからといって、弱い人間、自信がもてない人間とは限らないとわかりました。とはいえ、傷ついて心が折れ、すっかり自信をなくしてしまうことだってありますよね。そんな状況で「傷つきやすさ」を「力」に変えるには、どうしたらいいのでしょう?

そこで役立つのが次に紹介する思考術です。おそらく通常は自分の経験や環境で身についた思考のクセ(考え方のパターン)に巻き込まれてしまうはず。だからこそ、傷つくこと、落ち込むことがあったら、いったん “自分が何を考えるか” をいくつか並べて「思考の選択」をしてみるのです。

自分が “何を考えるか“ を意識的に選ぶなんて技は、人間にしかできないので、「自分(人間)ってすごいなー」と感心しながらやってみてください。それだけでも傷ついた心が少し軽くなるはずです。

物事を前向きにとらえている女性

「思考の選択」のやり方

具体的な「思考の選択」については、「UNIQLO DREAM WALL」の原案者であるテニスインストラクターの川田洋介氏の説明を参考にします。同氏によれば、物事には次の順序があるのだそう。

  • 第一段階:「疑問の選択肢
  • 第二段階:「疑問に対する答えの選択肢

多くは後者の答え(スポーツなら “どの戦術にしたか” など)に注目しますが、川田氏は前者の「疑問の選択肢」を重要視しています。「疑問の選択肢」とは、いわゆる「何を考えるか?」ということ。

ここで、「傷つきやすさ」を焦点にした例を挙げてみましょう。たとえば自分にとってイヤなことを言われて傷ついたとき――「自虐的なことは何か? と考える」のか、「自分を慰めるようなことは何か? と考える」のか、「冷静になるためにどうするか? と考える」のか、「前向きになるにはどうするのか? と考える」のか、「それより明日の準備はどうするのか? と考える」のか、といった具合に疑問の選択肢を挙げ、何を思考するか選択するのです。

それなら、どれを選ぶかで気分や行動も変わってきますね。川田氏いわく、メンタルが弱い・強いも「思考の選択の結果」とのことです。

だからぜひ、「傷ついた」「もうイヤだ」と感じたときは、それが誰にでもある感情であり、決して弱さではないことを思い出し、なおかつ自分は思考を選択できることを思い出してみてください

***
「傷つきやすさ」が「力」となる思考の選択について説明しました。「冷静に思考を選択できた自分」を感じたとき、自分を信じるパワーも充電できるはずです。

(参考)
順天堂スポーツ健康医科学研究所| 傷つきやすさを科学する -スポーツ健康医科学研究所だから出来ること-  博士研究員 山口 慎史
山口慎史・川田裕次郎・中村美幸・広沢正孝・柴田展人(2018),「大学生アスリートにおけるヴァルネラビリティが精神的健康に与える影響」, 日本健康心理学会大会発表論文集, 31巻, p.39.
テニスサポートセンター渋谷店|【川田コーチ連載コラム】練習編~第36回「メンタルが強い弱いは、思考の選択」~
エキサイトニュース|思考のクセを見直して、ストレスから身を守ろう
STUDY HACKER|HSP気質とは? 特徴と付き合い方まとめ
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