ウィンザー効果とは?信頼を得るための方程式

ウィンザー効果とは1

ウィンザー効果とは、直接の利害関係がない第三者による情報は高い信憑性を獲得しやすいという現象。マーケティングの分野ではよく知られています。

あなたも心理学を活用して、高い評価や信頼を勝ち取ったり商品を売ったりしてみませんか? 本稿では、ウィンザー効果とはどんな心理効果なのか、どのように利用できるのか、詳しく解説していきます。

ウィンザー効果とは

ウィンザー効果とは、「第三者が発信した情報は信頼されやすい」という心理的傾向。米国生まれの作家アーリーン・ロマノネス(1923~2017)による『伯爵夫人はスパイ』(講談社、1991年)(原題:The Spy Went Dancing)に由来すると考えられています。作中で、ウィンザー伯爵夫人が「第三者の誉め言葉がどんなときにも一番効果があるのよ、忘れないでね」と言ったためです。

「私はとても優しい人間です」と言う人がいても、言葉をそのまま受け取ることは難しいですし、むしろジョークのように思えますよね。しかし、ほかの人が「あの人、とても優しいんだよ」と言うなら、納得できるのではないでしょうか。このように、当事者からの評価よりも、第三者からの評価のほうが、信頼されやすいのです。

ウィンザー効果は、非常に身近な心理効果です。あなたも、どこかいいカフェや居酒屋はないかと探しているとき、「食べログ」などの口コミを参照したことがあるのではないでしょうか。匿名の情報でも、実際に店を訪れた人による率直な感想だと思われるため、飲食店が自ら発信している情報と比べて信頼できると感じているはずです。

飲食店を探すとき以外にも、買い物をする前に通販サイトのレビューを見たり、気になっている映画の感想をSNSで検索したりなど、現代人は日常的に口コミ情報を利用しています。ウィンザー効果は、私たちの行動や意思決定に大きな影響を与えているのです。

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ウィンザー効果の例

レストランの話を例に、ウィンザー効果をもっと詳しく説明したいと思います。

あるレストランが、「うちのパスタはとてもおいしいですよ」と広告でアピールしたとします。しかし、自分の店を悪く言うはずがないので、このアピールには何の説得力もありませんよね。

「パスタがおいしい」という情報が広まれば、レストランは得をするので、レストランには「ウソの情報を伝えるメリット」がある、ということになります。そのため、私たちは「このアピールはウソの可能性がある」と思い、情報の信頼性を疑うのです。堅い言い方をすると、「情報発信者が情報元と利害関係を持つとき、信頼性が乏しくなる」というわけ。

しかし、利害関係のない第三者が褒める場合は別です。あなたの友だちが「あのレストランのパスタはとてもおいしかったよ」とあなたにウソをついたとしても、友だちが何か得をするわけではありません。あなたは「ウソをつく動機がないので、きっと本当の情報なのだろう」と判断し、友だちからの情報を信頼するわけです。

もっとも、「レストランに客を紹介すれば報酬がもらえる」「そのレストランの客を減らせば自分の店がもうかる」などの事情を抱えている場合、利害関係のない第三者ではないため、情報の正しさは疑わしくなります。ウィンザー効果が発生するためには、情報発信者が「情報元と何の利害関係もない、純粋な第三者」でなければいけないのです。

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ウィンザー効果の活用法(ビジネス)

ウィンザー効果の仕組みを理解したあとは、実際に活用してみましょう。まずは、ビジネスシーンでウィンザー効果を利用する方法をご紹介します。

1.「お客様の声」を取り上げる

あなたがマーケティングや広報の部門にいるなら、ウィンザー効果を大いに利用しましょう。ウィンザー効果をビジネスに活かす典型的な例が、「お客様の声」を広告やWebサイトに掲載することです。

テレビのCMで、その商品を利用している客(と思われる人)が、「○○を飲みはじめてから膝が痛くなくなりました」「××のおかげで10キロも痩せられました」などと話しているのを見たことがあるのではないでしょうか。メーカー自身が商品のメリットを力説するよりも、顧客に感想を語らせるほうが、信ぴょう性が高まると考えられているためです。

あなたも、商品の販売や広報を担当する立場にいるのなら、「お客様の声」を活かしてみてはどうでしょう? 顧客の感想を集めるには、以下のような方法があります。

アンケートに回答してもらう

最も基本的な手段は、アンケートに記入してもらうこと。アンケートを回収する手段としては、店頭にアンケート用紙を置いてその場で書いてもらう、ハガキで郵送してもらう、Webフォームに入力してもらうなどの方法がありますが、マーケティング戦略の開発などを手がける株式会社アーティスのチーフディレクター・田村奈優太氏によると、紙媒体よりもWebアンケートのほうが経費を削減できるとのこと。紙媒体だと、アンケート用紙の印刷を印刷所に発注しなければなりませんからね。

それに、紙媒体だと、顧客が書いてくれた意見をコンピューターに入力して集計しなければなりませんが、Webアンケートなら、入力しなおす必要はありませんし、集計は自動です。総合的に考えると、「お客様の声」を収集するには、Webフォームを利用するのが効率的だといえるでしょう。

インタビューする

顧客に直接インタビューをし、意見を吸い上げるという方法もあります。「売上アップコンサルタント」の山本健太氏によると、インタビューで「お客様の声」を集めるメリットは、「お客様の話を聞きながら質問を臨機応援に変更できる」こと。

たしかに、紙やオンラインのアンケートだと、事前に一律で決めた質問に顧客が回答してくれるのを待つだけですが、対面のインタビューならば、顧客の話をさらに掘り下げて聞くこともできますよね。文章を書いたり感想を積極的に述べたりするのが苦手な顧客もいますが、対面インタビューならば、アンケートだけではわからない「お客様の声」を獲得できるのです。

モニターを募集する

モニターを募集する、という方法もあります。株式会社日本リサーチセンターによると、公募で人を集め、情報収集・意見交換を一定期間中に複数回行なうシステムを、モニター制度といいます。モニター制度には、以下をはじめとするメリットがあるそうです。

  • 意識の高い顧客から積極的な意見が得られる。
  • 状況の変化に応じて、同じ相手から意見を複数回聞ける。

2. 口コミマーケティングに挑戦する

ウィンザー効果をビジネスに活かすため、「口コミマーケティング」に挑戦してはいかがでしょうか。現代では、「食べログ」や各種通販サイト、SNSなどに投稿される口コミ(レビュー)が、消費者の購買行動に大きな影響力を与えているためです。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が2018年、20歳以上のインターネット利用者を対象に行なった調査において、「今までに利用したことがない商品やサービスを購入するときに、インターネット上の口コミやレビューを確認していますか」という設問に、34.4%の人が「確認する」、50.0%の人が「確認することの方が多い」と回答しました。7割以上の人が、インターネットの口コミを重視していることになります。

言葉としてすっかり定着した「インスタ映え」も、ウィンザー効果を利用したマーケティングと関係しています。カラフルなチーズホットドックや超ビッグサイズのパフェなど、視覚的にインパクトのある商品は、Instagramに投稿してもらうことを狙って作られているのです。

商品の購入・サービスの利用を促すなら、インターネット上の口コミを軽視するわけにはいきません。企業が商品・サービスをアピールするのではなく、一般の消費者という「第三者」に情報を発信してもらいましょう。口コミマーケティングの手法としては、以下のようなものが挙げられます。

インフルエンサーに宣伝してもらう

インフルエンサーとは、SNSで多くのフォロワーを抱える人気ユーザーのこと。インフルエンサーに自社商品を提供したり、宣伝を依頼したりすれば、数万~数十万人のユーザーに自社製品を認知してもらえるかもしれません。商品が人気を博せば、情報が一気に拡散(バズ)され、さらに多くの人の目に留まるでしょう。

インターネット上のキャンペーンを企画する

独創的なキャンペーンによって注目を集め、インターネット上での口コミを促す手法もあります。たとえば、森永乳業株式会社は2019年7~8月、「CRAZYpino CONTEST」という企画を展開しました。森永乳業の人気アイス「ピノ」に別の食材を組み合わせ、未知の食べ方を考案してYouTubeに投稿してもらうという企画です。

「CRAZYpino CONTEST」特設サイト上で、動画作成時に利用できる画像や音声素材が提供されたほか、動画の撮影に使える専用スタジオが渋谷にオープンするなど、動画を作成・投稿しやすい環境が整えられていました。結果として、チーズにピノを絡める「チーズフォンデュピノ」や、流しそうめんをイメージした「流しピノ」など、多数の動画が投稿され、ソーシャルメディア上で盛り上がりを見せたのです。

このように、ウィンザー効果は、マーケティングで大いに活用できるわけですね。

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ウィンザー効果の活用法(日常)

ウィンザー効果は日常でも利用できます。

たとえば、「いつも笑顔が素敵ですよね」と相手を褒めたとします。素直に受け取ってくれる人もいるでしょうが、「ただのお世辞だろうな」「本当にそう思ってるのかな?」と疑ってしまう人も少なくないでしょう。

そこで、ウィンザー効果を利用するのです。「いつも笑顔が素敵だって、部長が言ってましたよ」「いつも笑顔が素敵だって、社内で評判ですよ」――このように、「第三者の意見」として褒め言葉を伝えると、説得力が高まりますよね。「第三者の誉め言葉がどんなときにも一番効果があるのよ」というウィンザー効果の、最も基本的な使い方だといえるでしょう。

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ビジネスをはじめ、さまざまなシーンで利用できる「ウィンザー効果」をご紹介しました。シンプルながら、人に何かを訴えたいときには大きな力を発揮します。言葉の説得力を増すためのスキルとして、ぜひウィンザー効果を意識してみてくださいね。

【ライタープロフィール】
佐藤舜

大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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