趣味に没頭すると頭がよくなる!? IQより重要な「ワーキングメモリ」を鍛える3つの方法

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「頭がさえなくて、仕事に集中できない」
「新しいことを学んだり覚えたりするのが億劫だ」
「資料を読むのに時間がかかる」

このように、仕事にまつわるタスクを困難に感じている人は、ワーキングメモリの働きが低下しているかもしれません

ワーキングメモリの能力が高い人は、集中力や自己コントロール能力が高く、仕事や勉強にコツコツ取り組むことができ、記憶力も高い傾向にあります。まさに「頭のよさ」をつかさどる能力であり、仕事や勉強をする際に欠かせないものだと言えるでしょう。

幸いなことに、このワーキングメモリは、日常的な習慣や行動を変えることで鍛えられます。その方法をいくつかご紹介しましょう。

「ワーキングメモリ」はあらゆる場面で使われている

ワーキングメモリは、短時間、脳のなかに情報を留めておく能力を指します。日常生活から仕事まで、ありとあらゆる場面で、ワーキングメモリが必要とされていることをご存じでしょうか。

たとえば、初めて訪れる場所で誰かに道を聞いたときに、道順を頭に留め、「目印の看板を右に曲がる」などと考えながら歩き、目的地へ向かう……という作業は、ワーキングメモリを使っているのです。

また、誰かとしゃべっているときも、相手の話した情報を記憶したり、頭の中にある単語や知識を集めたりして文章を成り立たせる……といった作業でも、ワーキングメモリは使われます。あるいは、プレゼン資料をつくるために、さまざまな情報を集め、それをパワーポイントに落とし込む際に、頭のなかに保持されている情報を引き出していく……そんな場面でも、ワーキングメモリは欠かせません。

加えて、ワーキングメモリは学習面でも大きな役割を果たしています。学生がよい成績を収めるための要素として、IQよりも重要であるという研究結果が出ているのです。スターリング大学とエディンバラ大学の研究者らによると、5歳の子どもが11歳になるまでの6年間の学業の成績を調査したところ、彼らが5歳のときに測ったワーキングメモリ能力の高さが成績のよさに比例しており、IQよりも高い因果関係が見られたそう。

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ワーキングメモリを鍛える方法

幸いなことに、ワーキングメモリはこれから伸ばしていくことが可能です。ワーキングメモリを鍛える方法を3つご紹介しましょう。

1. ストレスを減らす

じつは、ストレスが多いほどワーキングメモリの働きは低下し、単純なタスクを遂行するにも時間がかかったり精度が落ちたりしてしまいます。しかし、カリフォルニア大学の研究によると、マインドフルネスに関するトレーニングを受けた学生グループは、ワーキングメモリの働きが向上したのだとか。

研究では、48人の学生らを被験者とし、【マインドフルネスに関するトレーニングを受けるグループ】と【栄養学について学ぶグループ】のふたつのグループに分けました。前者のグループは、週に4回、45分のマインドフルネス・トレーニングを2週間にわたって受け、その道のプロフェッショナルに、マインドフルネスの実践方法などを学びます。一方、後者のグループは同じ期間に、適切な食事方法などについて学びました。

その後、被験者らにワーキングメモリを測るテストを受けてもらったところ、マインドフルネスのグループのほうがトレーニング後に高いスコアを獲得したそう。また、トレーニング前に比べて16%ほど、ワーキングメモリのスコアが上がっていたのだとか。

マインドフルネスの状態がストレスを軽減させるのに加え、雑念にとらわれずに、いまこの瞬間に集中する力がついたことで、ワーキングメモリが上がったと考えられます。「最近ストレスが多く、大事な仕事や勉強に集中できない」という人は、ストレスを減らす工夫をしたり、瞑想を生活に取り入れてみたりしてはいかがでしょうか。

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2. 有酸素運動と筋トレ

有酸素運動がワーキングメモリによい影響を与えるという研究結果が出ています。

運動科学者のクリスティーン・ルーボワ博士が率いる研究チームは、有酸素運動をする前後で、ワーキングメモリに影響があるのかを調査しました。その結果、運動直後はワーキングメモリの働きが一時的に低下したものの、少し時間をおいて測ると、運動をしていないときに比べて向上することが判明。激しい有酸素運動を短時間行なうことによって、このような結果が見られたそう。

集中しなければならない仕事や勉強をする前に、家の外で縄跳びをしたりランニングをしたりすることでパフォーマンスが向上すると考えられますね。

ほかにも、筋トレがワーキングメモリの働きを向上させるという研究結果もあります。カッセル大学の研究者らが、68名の健康な高齢者(65~79歳)を対象に、週に2日の頻度で10週間ウエイトトレーニングを実施してもらったところ、実施前と比べてワーキングメモリの能力が上がったことが判明したそう。

実験の対象となったのは高齢者ですが、ストレスなどでワーキングメモリが低下していると感じる人には、効果が期待できるのではないでしょうか。

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3. 新しいスキルを身につける

スウェーデン人内科医のターケル・クリングバーグ氏は、自身の著書『オーバーフローする脳 ワーキングメモリの限界への挑戦』のなかで、神経活動によってワーキングメモリが発達すると述べています。つまり、何かのスキルを上達させるために没頭することで、脳の発達が促されるということ。

たとえば、ギターの音色を聴いたときに活性化される脳の部分は、ギターを演奏できる人のほうが、演奏できない人よりもより活性化されます。音楽に限らず、何かしらの新しいスキルを身につけることによって、これまでよりも神経活動が活発になり、ワーキングメモリの働きの向上が促されるのだとか。さらに、スキルを習得する過程で「何かに没頭する」能力が向上し、心の雑念などに集中力を疎外されづらくなり、集中力が上がることも期待できるそうです。

新しい趣味に取り組んだり、しばらく練習していなかった楽器を再開したりと、楽しみながらワーキングメモリを鍛えられたら一石二鳥ですね。

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まだまだ未知なことも多いワーキングメモリ。でもたしかなのは、鍛えることでその能力を向上させることが可能だということです。ご紹介した方法で、仕事や勉強などに欠かせないワーキングメモリを鍛えていきましょう!

(参考)
Mentalist DaiGo Official Blog|努力や練習が報われない理由と【唯一の科学的に正しい努力の方法】
The Guardian|Tracy Packiam Alloway: working memory is a better test of ability than IQ
Science Direct|Investigating the predictive roles of working memory and IQ in academic attainment
Psychological science|Brief Mindfulness Training May Boost Test Scores, Working Memory
NCBI|A Randomized Controlled Trial Examining the Effect of Mindfulness Meditation on Working Memory Capacity in Adolescents
NCBI|Short-term exercise to exhaustion and its effects on cognitive function in young women
Nature resarch journal|Instability Resistance Training improves Working Memory, Processing Speed and Response Inhibition in Healthy Older Adults: A Double-Blinded Randomised Controlled Trial
ターケル・クリングバーグ(2011),『オーバーフローする脳 ワーキングメモリの限界への挑戦』,新曜社.
Business Insider|Working memory is key to focus, and you can improve it it in 3 simple steps
The Art of Manliness|Think Better on Your Feet: How to Improve Your Working Memory

【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。

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