「文章力を磨きたい……」と考えている方には、スマートフォンのアプリでトレーニングする方法がおすすめです。電子書籍による読書で語彙力をつけたり、自分で記事を書くことで言葉を使いこなすスキルを高めたりすることで、文章に対する苦手意識が薄れていきますよ。
今回は、文章の書き方を体得できるようなアプリを6つ紹介します。無料で使えるものがほとんどなので、ぜひこれらのアプリを利用して文章力をトレーニングしてみてくださいね。なお、情報は2020年11月時点のものです。
- アプリで文章力をトレーニングする方法
- 文章力をトレーニングできるアプリ1:i読書
- 文章力をトレーニングできるアプリ2:Kindle
- 文章力をトレーニングできるアプリ3:語彙力診断
- 文章力をトレーニングできるアプリ4:note
- 文章力をトレーニングできるアプリ5:Twitter
- 文章力をトレーニングできるアプリ6:三題噺
アプリで文章力をトレーニングする方法
文章力を磨くには、アプリを通じた以下のトレーニングをおすすめします。
「型」を身につける
文章力を磨くのに大事なのは、上手な文章をよく読むこと。文章力は、それまで触れてきた文章の量・質に比例するからです。
絵画や書道の練習は、お手本の模写から始まる事が多いですが、文章の場合もまったく同じ。上手な文章を書くには、手本となる文章をたくさん読み、「いい文章とはこういうものだ」というイメージをつかむことが大切なのです。多くの文章に触れることで、「どんな構成にすれば読みやすくなるか」「どんな言葉を選べば印象的になるか」など、優れた文章を書くコツが自然と身につきます。
読むものは本に限らず、新聞や雑誌、ブログなど、なんでもOK。あえて下手な文章も読み、「どうして読みづらいんだろう?」と考えれば、反面教師的な学びを得られますす。
読みやすい・おもしろいと感じた本や、好きな著者が書いた文章を、「どこが『いい』のだろう?」と分析的に読み込みましょう。“これぞ” と思える文章のモデルが見つかれば、上達はさらに速まります。
◆「型」を身につけるトレーニングの例
- 本や新聞、雑誌、ブログなど、多くの文章に触れる
- 手本となる文章を分析する
語彙を増やす
的確な文章表現には、一定以上の語彙力も欠かせません。語彙力は、いわば言葉の「画素数」。語彙力が高いほど、表現の幅が細やかになります。
たとえば、「悲しい」という気持ちを表せる語彙は、「悲痛」「悲哀」「哀愁」「もの悲しい」などさまざま。ボキャブラリーが多彩であればあるほど、ニュアンスの違いを意識して言葉を使い分けられるのです。
文献学者の山口謠司氏によると、語彙力は「社会人としてふさわしい言葉遣いをする」うえでも必要な能力。たとえば、ビジネスシーンで「忘れておりました」と言っても意味は通じますが、やや砕けているため、礼節に欠けた印象を与えかねません。「失念しておりました」がベターですね。
言語学者の石黒圭氏によると、語彙力を高める方法としては、以下の3つがあるそう。
- さまざまな本を読む
- さまざまな人と会話する
- さまざまな経験をする
文章を読むのはもちろん、人と話したり多様な出来事を経験したりすることも、語彙を増やす訓練です。日頃から、なるべく多彩な情報に触れましょう。ビジネス用語や専門用語を手っ取り早く覚えたいなら、市販の用語集や、後述する語彙力アプリを活用する手もあります。
アウトプットする
文章力を磨く最良の方法は、やはり実際に書くことです。日記やブログ・SNSなど、なんでもかまいません。とにかくまとまった量の文章を日常的に書き続ければ、書くことへの苦手意識が少しずつ取り払われます。
経営コンサルタントの堀越吉太郎氏は、何かを紹介するブログ記事の執筆を推奨しています。「今朝のニュースで知ったこと」「最近触れた本・映画」「小耳に挟んだ豆知識」など、本当になんでもいいので、人に教えたりすすめたりするつもりで書いてみてください。文章のテーマや目的がはっきりするため、いいトレーニングになります。
本や新聞の内容を要約することもおすすめです。書く内容をゼロから考える必要がないため、初心者にもピッタリ。読解力や語彙力、文章構成力が鍛えられます。
数百字程度でも、最初は難しいかもしれません。しかし、書き続けるうちに自分なりの「型」をつかめ、サクサク書き進められるようになるはずです。
◆アウトプットするトレーニングの例
- 何かを紹介するブログを書く
- 本などを要約する
上で挙げた「型を身につける」「語彙を増やす」「アウトプットする」という3つの観点から、文章力トレーニングに役立つアプリをご紹介しましょう。
文章力をトレーニングできるアプリ1:i読書
「読む」ことで文章力をトレーニングできるアプリが、「i読書」(iOS)。著作権の切れた文学作品などを無料で公開している「青空文庫」のリーダーです。
青空文庫には、夏目漱石や芥川龍之介による日本の近代小説や、フランツ・カフカなどの外国文学、勝海舟やマハトマ・ガンジーといった歴史的偉人の著作、グリム童話やアラビアンナイトのような童話・民話まで、古今東西のあらゆる古典が収録されています。無料とは思えないほど豊富なラインナップです。
筆者のおすすめは、文豪・芥川龍之介の作品。簡潔で論理的な文体なので、文章のお手本として優れています。ストーリーもわかりやすいため、古典文学に不慣れでも楽しめるはず。短編作品がほとんどなので、移動中の電車内で読むのにぴったりです。
「i読書」の優れた点は、青空文庫のデータをスマートフォンやタブレットにダウンロードできること。地下鉄などのオフライン環境でも問題なく読むことができます。
◆「i読書」の特徴
- 世界中の名著を無料で読める
- オフライン環境でも読める
Androidなら、「青空文庫ビューア Ad」がいいでしょう。名著を通して文章力をトレーニングしたい方は、ぜひこれらのアプリを利用してみてください。
文章力をトレーニングできるアプリ2:Kindle
文章力をトレーニングできるアプリとして「Kindle」(iOS/Android)も挙げておきます。Amazonで購入した電子書籍を読むアプリです。
Kindleならではの便利機能は、「ハイライト」。気に入った文を蛍光ペンのようにマークできる機能です。ハイライトした文は、「マイノート」に記録され、まとめて読み返せます。要約トレーニングにも大変便利です。
「Kindle Unlimited」(税込980円/月)に加入すると、12万冊以上もの日本語書籍が読み放題になります。洋書を含めると120万冊以上です。司馬遼太郎『坂の上の雲』、バートランド・ラッセル『幸福論』などの名著や、『ニューズウィーク』『週刊現代』などの雑誌類も含め、バリエーション豊富な書籍が読み放題。月に何冊も本を買う人や、広く浅く読みたい人にとって、かなりお得ではないでしょうか。
◆「Kindle」の特徴
- スマートフォンやタブレットで読書できる
- 気に入った文に線を引き、一覧にまとめられる
- 「Kindle Unlimited」では月額980円で12万冊が読み放題
アプリを使ってたくさんの電子書籍を読み、文章力をトレーニングしていきましょう。
文章力をトレーニングできるアプリ3:語彙力診断
語彙力を通した文章力トレーニングには、「語彙力診断」(iOS/Android)というアプリも有効。語句の意味・使い方を問う4択問題や、漢字の書き取り問題などにチャレンジできます。ゲーム感覚で楽しく語彙を増やせるでしょう。
クイズの形式は、日替わりで5問ずつ出題される「練習」、タイムリミットつきの「テスト」、語彙力を測定する「診断」など、さまざま。毎日でも飽きずに学習できます。
便利なのが、間違えた問題だけ出してくれる「復習」モード。「問題を解く→復習する」を繰り返せば、アプリに収録された語句を徹底的にマスターできます。
◆「語彙力診断」の特徴
- 語彙や漢字のクイズを出題
- ゲーム形式が多様で、飽きにくい
- 間違えたものだけ出題する「復習」モード
◆類似のアプリ
クイズアプリを通して、気楽に文章力をトレーニングしましょう。
文章力をトレーニングできるアプリ4:note
アウトプットによって文章力をトレーニングできるアプリが「note」(iOS/Android)。文章だけでなく、音声や動画も投稿できるプラットフォームです。基本的にはブログのようなもので、編集画面に文章を入力し、オンラインで公開できます。
「note」について特筆すべきなのは、優れた機能性です。画像やリンク、SNSの投稿など、テキスト以外を記事に盛り込むときも操作が簡単ですし、記事の見た目がスタイリッシュに整います。SNSの要素もあり、興味・関心が近い仲間や、目標となるプロのクリエイターをフォローすることも可能です。
ほかにも、「note」ならではの機能が盛りだくさん。書くことで文章力をトレーニングしたい、すべての人の助けになるアプリです。
◆「note」の特徴
- 機能性に優れ、使いやすい
- デザインがスタイリッシュ
- 書いた記事を販売できる
- 音声や動画の記事埋め込みが簡単
- ほかのユーザーとつながる機能
文章力をトレーニングできるアプリ5:Twitter
意外かもしれませんが、「Twitter」(iOS/Android)などのSNSアプリでも文章力をトレーニングできます。投稿の質や頻度を意識的に高めれば、トレーニングに最適な場となりますし、ブログなどに比べて文章が短いため気軽に続けられるのがメリットです。
特に「Twitter」は、要約トレーニングにおすすめ。投稿を140文字以内に抑える必要があるため、メッセージを簡潔にまとめる練習になります。
本や雑誌、テレビ番組などの内容を要約し、140文字に落とし込んで投稿してみましょう。原稿用紙の半分にも届かない、非常に少ない文字数です。どの情報を残すべきか、かなり頭を使います。
例として、筆者が最近読んだ、ローレンス・レビー『PIXAR 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』(文響社、2019年)を要約してみました。
1993年当時、ピクサーは無名の弱小企業だった。赤字は通算5,000万ドル。オーナーのスティーブ・ジョブズが自腹で補てんしている状況だった。94年『トイ・ストーリー』のヒットで、ピクサーは一躍、1億ドル企業に。その後もクリエイター・ファーストの経営方針を貫いて、ヒットを連発した。
たった140字なら、毎日続けても負担にならないはず。「1日に1回以上」などアプリでの投稿目標を決め、コツコツと文章力のトレーニングに励みましょう。
文章力をトレーニングできるアプリ6:三題噺
「ライトレ-三題噺-」(iOS/Android)は、物語の制作を楽しみつつ文章力をトレーニングできるアプリです。
三題噺とは、3つの「お題」で話をつくる遊びで、もとは落語の一形態。客からお題を3つ募り、即興で話をつくる話芸です。ちなみに、落語の有名な演目「芝浜」は、酔漢・財布・芝浜の3つでつくられました。
江戸時代のこと、熊という魚屋がいた。熊は、魚屋としての腕はいいのだが、毎日酒浸りで暮らしている酔漢である。ある朝芝浜で、熊は50両もの大金が入った財布を拾った。大喜びで友だちを集め、気前よくごちそうをしたはいいものの、その後「財布を拾ったのは夢だった」と知ることになり……。
「ライトレ-三題噺-」では、ランダムに提示された3つの単語を使い、100文字以内でストーリーをつくります。何を書いても自由ですが、かなりの創造力が求められるもの。「文字数無制限」や「時間制限」、ほかのユーザーと協力して話をつくる「リレー」などのモードがあり、さまざまなアプローチで三題噺を楽しめます。
◆「ライトレ-三題噺-」の特徴
- ランダム表示された3つの単語で話をつくる
- 文字数無制限モード
- 時間制限モード
- リレーモード
- つくった話の保存・お気に入り登録
- SNSとの連動
三題噺は、発想力・文章構成力の鍛錬にも効果的。文章力のトレーニングのみならず、趣味・娯楽としてもおすすめのアプリです。
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文章力のトレーニングに使えるアプリを6つご紹介しました。スキマ時間を活用したスキルアップ手段として、ぜひダウンロードしてみてください。
和田秀樹(2007),『国語力をつける勉強法』, 東京書籍.
山口謠司(2016),『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ【超「基礎」編】』, ワニブックス.
新R25|単語を覚えるだけじゃダメ。語彙力を鍛える方法を言語学者に聞いてきた
堀越吉太郎(2020),『メモの変態が手帳をスマホに変えた理由』, 小学館集英社プロダクション.
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。