人間関係に疲れるのは「気を使いすぎ」だから。「人と深く関わる必要はない」と心理学研究でもわかっている

内藤誼人先生インタビュー「人間関係に気を使いすぎる必要はない理由」01

多くの人と関わりながら仕事を進めるビジネスパーソンにとって、「人間関係こそ重要」だとよく言われます。

ただ、「たしかに人間関係は重要だが、だからといって気を使いすぎる必要はない」と説くのは、立正大学客員教授であり心理学者の内藤誼人(ないとう・よしひと)先生。そう言える理由を、研究結果を交えながら解説してもらいます。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

人間は「思い込みによって行動する生き物」

そもそも論になりますが、人間がストレスを感じる最大の要因は「人間関係」です。どんな調査でも、ストレス要因として人間関係がトップになるのです。つまり、人間関係さえよくすることができれば、世の中の悩みの9割くらいはなくなると言っていいでしょう。だからこそ、周囲と良好な人間関係を築いていくことが重要です。

ただ、人間関係が重要だから周囲に気を使わなければならないかというと、それは違います。気を使いすぎる必要などありません。なぜなら、その気遣いの多くは、自分の「思い込み」によるものだからです。

人間は、「思い込みによって行動する生き物」です。人間関係のことで言えば、周囲は気にもしていないのに、「こうしなければ嫌われてしまう……」という思い込みによって行動を決めていることもよくあるケースです。

たとえば、人に会うときには相手に不快感を与えないように、髪型や服装などの身だしなみをきちんと整えないといけないと思っている人がほとんどだと思います。特にビジネスパーソンであれば、マナー本などにもよく書かれていることですから、「靴は常にきれいにしておくべき」と考える人は多いのではないですか?

ところが、心理学的に言うと、じつは靴なんて多くの人が気にしていません。「アイトラッカー」という、人間がどこを見ているかという視点を追跡する装置を使って調べてみると、人間は誰かと会っているときにはほとんど相手の上半身だけ、特に顔ばかりを見ていることがわかりました。つまり、靴やスカート、スラックスなどに気を使いすぎる必要はないのです。

そうであるにもかかわらず、「頭のてっぺんから爪先まできちんと整えなければ……」「100点をとらないといけない」なんて思い込みに従っていると、それだけ心に負担をかけることになります。でも、そうではなくて、「きちんとするのは上半身だけでいいんだ」「60点くらいでいい」と思えたなら、ちょっと心が軽くなる気がしませんか?

内藤誼人先生インタビュー「人間関係に気を使いすぎる必要はない理由」02

「周囲との人間関係を深めるべきだ」というのも思い込み

そして、この「ただの思い込みに過ぎない」ということが当てはまるのは、身だしなみだけではありません。

まさに人間関係の構築そのものに関わることですが、ビジネスパーソンの場合、社内外の人たちと頻繁に飲みに行ったり、場合によっては休日にも会ったりして「つながりの強い濃密な人間関係を周囲と築くべきだ」と思っている人も多いものです。

でも、私に言わせればこれも思い込みに過ぎません。心理学における研究で、決して強いと言えないつながりでも人間関係は十分に成立するし、お互いに満足感も得られるし、なんの問題もないとわかっているのです。

もちろん、人と関わりながら仕事をする以上、人付き合いはすべきです。しかし、その人付き合いの程度は、数か月に一度のメールだとか年賀状のやり取りだけでも十分というものです。

このことは、心理学の研究などもち出さなくとも、相手と立場を入れ替えて考えればすぐにわかることではないですか? あなたの知人のなかに、数か月に一度しかメールをくれない、年賀状のやり取りしかしていないという人がいたとして、はたして「この人は薄情だから、今後の付き合いはやめよう」なんて思うでしょうか。

先の身だしなみについても同様です。昨日、今日会った人はどんな靴を履いていたでしょう? よほどファッションに興味がある、あるいは相手のファッションが奇抜だったというのでなければ、靴どころか上半身の服装さえほとんど思い出せないはずです。

自分自身が相手のことを覚えていない、つまり気にしていないのですから、相手もあなたのことをあなたが思うほど気にしていないということ。ですから、人間関係は重要ではあるものの、気を使いすぎる必要などないのです。

内藤誼人先生インタビュー「人間関係に気を使いすぎる必要はない理由」03

「気を使いすぎる必要はない」という思考の「水路」をつくる

しかし、いま現在、人間関係に気を使いすぎている人に、「気を使いすぎる必要はない」と言ったところで、すぐにそう思えるものではありません。なぜなら、これは思考習慣に関わることだからです。思考習慣は、ほかの習慣と同じように、変えていくには一定の時間が必要です。その時間は、早い人で3週間程度、長い人で数か月くらいです。

では、一定の時間がかかるという覚悟をもったうえで、思考習慣を変えていきましょう。そうするには、心理学用語で言う「水路づけ」という手法を使います。

子どもの遊びではないですが、砂山の頂上から水を流す場面をイメージしてみてください。最初はどこに流れるかわかりません。でも、最初に流した水によってちょっとだけ溝ができます。すると、そのあとは最初にできた溝に沿って水が流れ、溝はどんどん深くなってまさに水路ができあがります。

思考にもこのことが当てはまります。最初にあることをポジティブに考えた人は、そのあとも同じことについては必ずポジティブに考え、逆に最初にネガティブに考えた人は、ずっとネガティブに考えるようになります。

つまり、いま「人間関係には気を使わなければならない」と思っている人には、そう考える水路のようなものができているということ。そこから「人間関係に気を使いすぎる必要はない」と考える水路を新たにつくり直す必要があるため、一定の時間が必要なのです。

そうするには、繰り返し繰り返し「思い直す」ことがポイントとなります。「身だしなみは整えなければならない」「濃密な人間関係を築かなければならない」「人間関係には気を使わなければならない」なんて思ったら、そのつど、「ああ、そうじゃなかった」と思い直すのです。そう繰り返していくうち、「人間関係に気を使いすぎる必要はない」という強固な思考の水路ができあがっていくでしょう。

内藤誼人先生インタビュー「人間関係に気を使いすぎる必要はない理由」04

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【プロフィール】
内藤誼人(ないとう・よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースにした心理学の応用に力を注いでおり、とりわけ「自分の望む人生を手に入れる」ための実践的なアドバイスに定評がある。『はじめての心理学』(成美堂出版)、『気持ちがほっとゆるまる心理学』(三笠書房)、『ビジネス心理学の成功法則100』(青春出版社)、『あなたの隣の「困った人たち」から身を守る本』(廣済堂出版)、『がんばらない生き方大全』(SBクリエイティブ)なと著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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