2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大により、社会に大きな変化が起きた年となりました。そのなかで、自分の働き方や生き方について考えた人も多いはずです。でも、「これからどうしようかな……」「いまの会社に勤め続けていいのかな……」とぼんやりと考えても、答えはなかなか見つからないかもしれません。
そこで、採用DXサービスを提供する「ワンキャリア」を運営する株式会社ワンキャリアの取締役であり、著書『これからの生き方。 自分はこのままでいいのか? 問い直すときに読む本』(世界文化社)が話題となっている北野唯我(きたの・ゆいが)さんに、「これからの生き方」を考えるための方法を教えてもらいました。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人
生き方を考えるために「自分の価値観」を知る
私も含めて、若いビジネスパーソンは、これからの生き方について考える必要があります。もちろん、いつの時代も、「生きる」というテーマに対して関心をもつ人もいればそうでない人もいるのですから、後者の人はそうする必要はありません。
ただ、私たちが「生きる」というテーマに関心をもち、よりよい人生を歩みたいと思うのなら、やはりこれからの生き方を真剣に考えるべきです。なぜなら、よく言われることではありますが、時代の変化のスピードが加速度的に増しているいまは、20年先、30年先のことなどまったくわからない時代だからです。
それこそ、2020年はコロナ禍という過去にない社会にすべての人が身を置くことになりました。そのなかで、多くの人が自分のキャリアや働き方について考えたのでしょう。2018年に出版した私の著書『このまま今の会社にいていいのか? と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(ダイヤモンド社)は、2019年に比べてすごくたくさん売れています。
『転職の思考法』は、市場価値という観点から転職をとらえた本でした。一方、2020年に出版して間もない新刊『これからの生き方。 自分はこのままでいいのか? 問い直すときに読む本』(世界文化社)は、「自分の価値観」にフォーカスして、「自分が本当に求めていること」を把握するための本です。こうすることこそが、私の言う「これからの生き方を考える」ということなのです。
「自分の感性」を武器に変えて、一目置かれる人間になる
もちろん、私たちがいま勤めている会社がこの先もずっと雇用を保証してくれるのならば、それを信じてその会社に従属する生き方を選んでもいいでしょう。でも、もしそうでないのなら、やはり自分の価値観、自分が本当に求めていることを大事にして生きていくほうが生きやすいのではないでしょうか。どんどん変化していく時代のなかで常に自分らしく楽しく生きるためには、自分の価値観という確固たる軸が自分のなかになければそうできません。
また、自分が身を置いている領域において輝くためにも自分の価値観をきちんと把握することが大切です。結局のところ、どんな領域においても一目置かれている人というのは、自分の感性を武器にできている人だと私は考えています。
「感性」と聞くと、作家やミュージシャン、クリエイターなどをイメージするかもしれませんが、そういった人だけではなく、投資や経営などあらゆる領域においても、一目置かれる人は自分の感性を武器にしています。そして、その自分の感性を見つけて磨きをかけるためには、やはり自分の価値観を把握する必要があるのです。
「自分がインフルエンサーになりたいか?」と問われたら、おそらくほとんどの人の答えは「NO」でしょう。一方で、「みなさんは、自分が仕事をしている領域において一目置かれる人になりたいですか?」と聞かれたら、おそらく多くの人が「YES」と答えるのではないでしょうか。だとしたら、自分の価値観、自分が本当に求めていることを把握し、さらにはそれらをもとに自分の感性を見つけて磨いていきましょう。
「14の労働価値」が教えてくれる「自分の価値観」
では、そうするためにはどうすればいいのでしょうか。ここで、そもそも「価値観にはどんなものがあるか」を知る必要があります。価値観とは、なにかひとつのものがドンと存在しているわけではなく、さまざまな要素によってかたちづくられているものだからです。
「労働価値」と呼ばれるそれらの要素は、全部で14。アメリカの教育学者であるドナルド・E・スーパーが提唱したものです。まずはそれらを知ることからはじめましょう。
【14の労働価値】
- 能力の活用:自分の能力を発揮できること
- 達成:よい結果が生まれたという実感
- 美的追求:美しいものをつくり出せること
- 愛他性:人の役に立てること
- 自律性・自立性:自律できること
- 創造性:新しいものや考え方をつくり出せること
- 経済的価値:たくさんのお金を稼ぎ、高水準の生活を送れること
- ライフスタイル:自分の望むペース、生活ができること
- 身体的活動:身体を動かす機会がもてること
- 社会的評価:社会に仕事の成果を認めてもらえること
- 危険性・冒険性:わくわくするような体験ができること
- 社会的交流性:いろいろな人と接点をもちながら仕事ができること
- 多様性:多様な活動ができること
- 環境:仕事環境が心地よいこと
14の労働価値を知ったら、今度は自分が重視するものを探してそれらに優先順位をつけてみてください。でも、上位にくるもののなかにも、いまの仕事や生活のなかで満たせていないものがあるはずです。そこで、たとえば副業などそれを満たすための方法を考えてみてください。これこそが、これからの生き方を考えるということなのですから。
【北野唯我さん ほかのインタビュー記事はこちら】
キャリア戦略を見極めるための思考法。渋沢栄一が説く「3つの能力」に着目して
タイプ別・最高のキャリアを築く心得。“器用なだけ” の残念なタイプにはなるな!
【プロフィール】
北野唯我(きたの・ゆいが)
1987年8月21日、兵庫県生まれ。神戸大学経営学部卒業。就職氷河期に博報堂へ入社。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、採用DXサービスを提供する「ワンキャリア」に参画。現在、株式会社ワンキャリアの取締役として、人事領域、戦略領域、広報クリエイティブ領域を統括。また、テレビ番組や新聞、ビジネス誌など各種メディアに「職業人生の設計」「組織戦略」の専門家としてコメントを寄せる。著書に『分断を生むエジソン』(講談社)、『オープネス 職場の「空気」が結果を決める』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』(日経BP)、『このまま今の会社にいていいのか? と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(ダイヤモンド社)がある。
【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。